著者
大石 裕
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法学研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.399-424, 2004-12

根岸毅教授退職記念号一 問題の所在二 言説分析の批判性 : 合意、正当な論争、そして逸脱三 水俣病に関する新聞報道 (一) 出来事の物語化とニュース・バリュー : 対立と紛争 (二) 出来事の物語化とニュースの物語① : 紛争の発生―展開―終結 (三) 出来事の物語化とニュースの物語② : 報道の中立性、そして客観報道との関連で四 「潜在化(non-event, non-issue)」する水俣病 (一) 「地域振興」という物語、そして儀礼としての選挙 (二) 「中心=われわれと周辺=彼ら」という物語五 結び
著者
吉田 英嗣
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.3, pp.568-578, 2010-06-25 (Released:2010-08-30)
参考文献数
112
被引用文献数
2 2

The Japanese Islands are tectonically active and humid. Thus, erosion and deposition are the primary processes controlling geomorphic development. Catastrophic sector collapses at volcanoes should be considered significant in this context. This study examines the geomorphological role of volcanic sector collapses in Japan, introducing 58 cases with their respective occurrence ages and volumes (≥ 1×108 m3). We find that the frequency of sector collapses becomes exponentially higher as the collapse magnitude decreases. The total volume of the dissected volcanic edifice caused by catastrophic collapses amounts to ca. 6.4 km3 (640×108 m3) during the last 500 years. This value can be translated into an annual denudation rate of 0.53 mm/y per unit area of the Quaternary volcanoes (ca. 24000 km2), which is comparable to the contemporary denudation rate of non-volcanic mountains in Japan. Therefore, although volcanic sector collapses occur intermittently, we have to consider them as sediment sources that are indispensable to an understanding of geomorphology in Japan.
著者
阿久津 智
出版者
拓殖大学人文科学研究所
雑誌
拓殖大学論集. 人文・自然・人間科学研究 = The journal of humanities and sciences (ISSN:13446622)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.48-67, 2018-11-10

本稿では,古典文学の音読と文法(文構造)との関係について論じた。文構造は,プロソディー(イントネーションなど)に,ある程度反映される。隣り合う2つの文節が関係する(前の文節が後ろの文節に係る)ときには,イントネーションによって,1つの句(音調句)にまとまりやすい。文構造の違いは,意味の違いになり,それが読み方の違いに現れる場合もある。たとえば,『枕草子』の「春はあけぼの」において,「やうやう白くなりゆく」と「山ぎは」とを区切って(別の音調句として)読めば,別々の文となり(「やうやう白くなりゆく」のは「山ぎは」ではない),つなげて(1つの音調句として)読めば,連体修飾となる(「やうやう白くなりゆく」のは「山ぎは」である)。文構造(意味)の違いは,必ずしも音読で表せるわけではないが,それでも,音読の仕方を考えることが,その文の構造や意味を考えることにつながると思われる。
著者
江利川 滋 山田 一成
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.112-119, 2015-11-30 (Released:2015-12-17)
参考文献数
11

The purpose of this study is to test whether multiple-answer formats (MA) and forced-choice formats (FC) produce similar results in Web surveys. Data were based on a Web survey of 1,559 Japanese adults in the Tokyo metropolitan area in March 2010. The results revealed the following: (1) Respondents endorse fewer options and take less time to answer in MA than in FC. (2) For MA respondents, options are more likely to be endorsed when they appear in the first half of a list than in the second half. These findings suggest that MA may encourage weak satisficing response strategies. In addition, these tendencies can be seen not only in attitudinal questions (judgment-type questions), but also behavioral questions (recall-type questions). However, the differences between FC and MA are greater in attitudinal questions than in behavioral questions.
著者
内田 良
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.13, pp.203-210, 2010-02
被引用文献数
1

本稿の目的は,学校管理下の体育的部活動時に発生した重大事故(死亡や重度の負傷)の件数に関して,既存の統計資料を二次分析にかけることで,どの種の部活動が重大事故につながりやすいのかを明らかにすることである。今日,学校安全が不審者対策と同一視されることがある。本稿は,学校安全を不審者対策に特化しない。学校管理下の多種多様な災害の集計データを幅広く見渡し,「エビデンス・ベイスト」の視点から体育的部活動に焦点を合わせ,どの部活動で事故が高い確率で起きているのかを明らかにする。これまで学校事故のデータの「集計」はなされてきたが,そこに一歩踏み込んで「分析」をくわえようという試みはおこなわれてこなかったのである。分析の結果,中高の部活動のなかでもっとも重大事故に遭う確率が高いのは柔道部とラグビー部であることがわかった。確率が高い部活動においては,早急な安全対策が求められる。
著者
中村 晃
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-20, 2004-06-30
被引用文献数
1

現在まで自己愛(narcissism)の概念に関しては多くの議論が重ねられてきているが,また同時に混乱が多い分野であることが知られている。その混乱の最も大きな原因は,自己愛そのものの定義が研究者によって異なっており,「自己愛」という用語がさまざまな意味で使われていることが挙げられる。そこで本研究では,今までの自己愛に関する議論を整理することを目的とした。特にこれまで重ねられてきた議論をふまえ,自己愛の健康的・適応的な側面と,不健康的・不適応的側面の本質的な差異に注目し,自己愛の構造を検討した。その結果,健康な自己愛(self-love)と不健康な自己愛(narcissism)に分けて考えることの重要性が指摘された。また,不健康な自己愛の表れ方には,大きく分けて「誇大型」と「過敏型」の,一見正反対の性質のように見える2種類に分類できることが示されたが,両者に共通する性質として「他者が待つ自分に関する評価への関心の集中やこだわり」があり,これが不健康な自己愛の本質であることが考えられた。このようにこれまでの自己愛の定義にある「自分自身に対する関心の集中」を,「本当の自分自身に対する関心」と「他者から見られる(評価される)自分に対する関心」の二つの側面に分けることが自己愛の健康性を考えるうえで重要であることが考えられた。