著者
原子 純
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.77-89, 2014-12-25

遊びによって、一人ひとりの子どもに期待される健康な心と身体、豊かな感情や社会性、積極的にものごとに取り組む意欲や態度などの発達は、日々の生活の中で、身近で具体的・直接的な遊びを通して、総合的に助長されていくものである。このように遊びは、子どもに開放感や楽しさや満足感を与えると同時に、子どもの心身の能力や態度を発達させ、子どもの人間形成(人格形成)にとって重要な役割を担っている。今日では、遊びを知らない子どもや遊べない子どもが増加しているといわれている。みんなと遊びたいという欲求は持っているけれども遊びの中に入っていけない子ども、年長児になっても基本的生活習慣の出来上がっていない子ども、自然に触れあう経験の乏しい子ども等、こうした子どもたちは社会の変化の中で生まれた子ども達の姿である。そういった中で、幼稚園教育要領や保育所保育指針にも述べられているが、幼稚園や保育所では、子どもたちを遊びの中で主体的に活動に取り組むよう、子どもを育てなければならないのである。本研究は、子どもの成長における遊びの意義について文献調査により整理する。そこから子どもの遊び環境の構成と創造について考察する。
著者
仁木 賢治 新谷 公朗 糠野 亜紀 金田 重郎 芳賀 博英
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.601-614, 2009-02-15

保育所では,子どもの発達状況を記録する「発達記録」の作成・保存が,厚生労働省の指導によって義務付けられている.発達記録については,作成・保存するための発達記録システムが数社から市販されている.しかし,既存の発達記録システムでは,子ども1人ひとりの発達傾向を表示するグラフ機能は持っているが,クラス全体の保育傾向を示す機能は持っていない.そこで,本論文では,保育者の保育傾向をグラフによって読み取ることのできる,発達記録システムを提案する.具体的には,ヴィゴツキーの発達の最近接領域理論を観察項目スコアの付与方法に適用する.これによって,発達記録を作成する際の項目間のスコア付与基準のバラツキを排除する.次に,発達記録データを主成分分析し,その第1主成分を保育者にフィードバックする.プロトタイプシステムを用いて評価データを取得し,その第1主成分を保育者に提示するとともに,グラウンデッド・セオリ・アプローチで分析した.その結果,第1主成分には保育者の視点が反映されることを確認できた.
著者
齋藤 千賀子 西脇 美春
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
山形保健医療研究 = Yamagata Journal of Health Sciences
巻号頁・発行日
vol.8, pp.53-63, 2005-03-01

Keyword:menstruation pattern, premenstrual syndrome (PMS), menstrual discomfort symptom (dysmenorrhea), daily life, coping method. キーワード:月経パターン、月経前の不快症状(月経前症候群:PMS)、月経中の不快症状(月経困難症)、日常生活、対処方法
著者
小竹 光夫
出版者
奈良学園大学
雑誌
奈良学園大学紀要 = Bulletin of Naragakuen University
巻号頁・発行日
vol.11, pp.75-84, 2019-09-30

奇しくも、「昭和」から「平成」に続いて、「平成」から「令和」への改元に遭遇することとなった。元号に対しては、さまざまな立場・思想に基づいて多くの主張があるところである。ある意味で自主・自治が認められている大学という環境下では、頑ななまでに元号不使用を唱える研究者もおり、それは授業資料の日付表記にまで及んでいた。思想がないと叱責されるかも知れないが、論者にはそこまでの主張はなく、元号にしても、西暦にしても、必要に応じて使い分ける、あるいは併記するという形で用いてきたのが実際のところである。明治以降、我々は「一世一元」を通常と考えてきたが、今回の改元は「生前退位」という形をとり、我々が常識と考えてきた形態とは異なるものとなった。歴史を遡れば、「一世一元」の方が稀であり、従前はいわゆる「年号」として扱われていたのであるから、法的な立場を離れればこと珍しいことではない。本論においては、「元号」の思想的な部分に焦点を当てるのではなく、極めて「特殊」な形で提示された「令和」という墨書文字に切り込み、論者が関わる書写書道教育、つまりは文字学習の視点からの問題点を分析し、考察を加えようとしている。なお、新元号の発表が4月1日、改元が5月1日であったことから、掲げる資料の多くがキャプチャー画像によることをお詫びするとともに御理解いただきたい。
著者
佐藤 秀人 亀田 昌志
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第70回, no.人工知能と認知科学, pp.519-520, 2008-03-13
著者
髙橋 直哉
出版者
法学新報編集委員会
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.121, no.11・12, pp.1-27, 2015-03-16

本稿は、犯罪化の正当化条件の総体を体系的に示す「犯罪化論」の構築を試みるものである。犯罪化は、国家が刑罰という峻厳な制裁を用いてある行為を規制するものであるから、それが正当化されるためには、そのような行為を規制することが国家の果たすべき役割に含まれるといえ、かつ、そのように強制的に規制するだけの特別な理由がなければならない、という認識を出発点として、犯罪化の正当化条件を、「国家の介入の正当性」「犯罪化の必要性」「全体的な利益衡量」「刑罰法規施行後の検証」の四段階に分けて、それぞれの意義・内容、および、それらの相互関係について考察を加えている。従来、わが国ではあまり理論的分析が加えられていなかった刑事立法のあり方について、道徳哲学・政治哲学の知見も交えながら一試論を展開するものである。
著者
浦 和男
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 = Bulletin of The Faculty of Language and Literature (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.149-191, 2010-03-01

笑いに関する研究が国内でも本格的に行われるようになって久しい。大学でも笑い学、ユーモア学の名称で授業を行い、笑い学という領域が確実に構築されている。笑いそのものの考察に限らず、笑いと日本人、日本文化に関する研究も少しずつ行われている。これまで江戸期の滑稽に関する笑いの研究はすぐれた専攻研究が多くあるが、それ以降の時代の笑いに関する研究は十分に行われていない。本稿では、基礎研究の一環として、明治期に出版された笑いに関連する書籍の目録をまとめた。本稿で扱う「笑い」は、滑稽、頓智などに限定せず、言語遊戯、風俗など、笑いを起こす要素を持つものを広く対象としている。目録としてだけではなく、通史的に編纂することで、明治期を通しての笑いの在り方を考察できるように試みた。また、インターネットで利用できるデジタル資料情報、国立国会図書館で所蔵形態についての情報も付け加えた。
著者
Charles Yuji Horioka Emin Gahramanov Aziz Hayat Xueli Tang
雑誌
AGI Working Paper Series
巻号頁・発行日
vol.2019-14, pp.1-41, 2019-12

In this paper, we conduct a theoretical and empirical analysis of the impact of bequest motives on the work and retirement behavior of households in Japan using micro data from the Preference Parameters Study of Osaka University. Our empirical findings are consistent with our theoretical model and show that respondents with an altruistic or strategic/exchange bequest motive work more at the intensive margin than those without any bequest motive but that respondents with a strategic or exchange bequest motive work less at the extensive margin (i.e., retire earlier) than those without any bequest motive. Our findings for the strategic or exchange motive suggest that respondents with such a motive tend to work harder than others before they retire so that they can earn more, leave a larger bequest to their children, and elicit more care from them but that they tend to retire earlier than others so that they can start receiving care for themselves and their spouses from their children sooner. A policy implication of our findings is that the exchange of bequests for the care of parents by children may be very sensitive to the inheritance tax framework.
著者
一棟 宏子 萩原 美智子 金 貞仁 崔 在順 中野 迪代 若井 希水子 イチムネ ヒロコ ハギワラ ミチコ KIM Jungin CHOI Jeasoon ナカノ ミチヨ ワカイ キミコ Hiroko ICHIMUNE Michiko HAGIWARA Jungin KIM Jeasoon CHOI Michiyo NAKANO WAKAI.Kimiko
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.44, pp.121-136, 2007-03-20

本研究の目的と方法 韓国ソウル市内の分譲アパート5団地を訪問し、管理方式の実情把握と問題点を考察するために、2005年9月、2006年3月、2006年8月、アパート管理に携わる団地の住宅管理所長(住宅管理士)、住宅代表役員、住宅管理会社社長にインタビュー調査を実施した。結果と考察 韓国では70年代以降、共同住宅が短期間に大量建設された結果、伝統的な住宅様式である戸建住宅数を大幅に上回り、今では住宅ストックの6割以上を占めている。住戸の国民住宅規模は85m~2で日本と比べて広い。供給は分譲アパートが中心で、高層化した大規模団地が多く、多様な住戸規模と平面型が混在している。韓国の管理方式の特徴は、(1)管理に携わる職員の人数が多く、その役割分担は所長、管理事務職、設備系技術職、清掃員、警備員で、警備員の多さが目立つ。(2)建物のメンテナンスは従来20年程度で建替えてきた経緯があり、住民の管理に対する意識は低い。住宅法施工以来、住民の関心は建替えからリモデリングへと移っている。(3)管理を推進する住民の代表役員は立候補や推薦で決められる。全区分所有者による総会開催義務はなく、役員以外は管理に携わる義務もないため役員のなり手不足で、 代表役員の定員に欠員があるまま運営される団地がみられた。(4)韓国の管理方式は、設備中心で日常管理の質は一定程度確保でき、問題解決に機動性が発揮される反面、住民全体の合意形成の手続きが省かれたために、長期計画の展望を持ちにくく、住民自身の管理に対する役割意識が醸成されにくい状況がみられる。