著者
徳田 良英
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100108, 2013

【目的】バランスや歩行の観点で婦人靴のヒールの高さの許容範囲を身体運動学的に評価し明らかにする.【方法】動的バランスの解析 対象:健常な女子大学生7名(年齢:21.4±0.8歳,身長:157.0±3.1cm,BMI:20.4±2.3 kg/m²,靴のサイズ:23.0cm~23.5cm)とした.測定方法:市販のスニーカーおよび婦人靴(ヒール高さ3cm,5cm,7cm,10cm)の計5種類の靴をランダムに履いて,筋電計(DHK社TRAISシステム,サンプリング周波数1,000Hz)の電極を下腿三頭筋部に装着し,フォースプレート(Kistler社, サンプリング周波数100Hz)上で静止立位の状態からファンクショナルリーチテスト(以下FRT)を実施し,FRTの測定値,下腿三頭筋の筋活動量,重心動揺を同時に計測した.各計測は筋疲労などの影響が及ばないように十分な間隔を空け,自覚症状がないことを確認して行った.解析は,スニーカーおよびヒール高さ3cm,5cm,7cm,10cmそれぞれのFRTの測定値を比較した.FRTでの下腿三頭筋の筋活動量を比較するために,各筋電波形の計測3秒間の積算値を筋活動量とし,各被験者でスニーカーの活動量を基準にヒール高さ3cm,5cm,7cm,10cmそれぞれの比率を筋活動量として算定した.FRTでの前後方向の重心移動距離をスニーカーおよびヒール高さ3cm,5cm,7cm,10cmそれぞれの比較をした.歩行パラメーターの解析 対象:健常な女子大学生18名(平均年齢:21.1±0.9歳,身長:157.8±4.2cm, BMI:20.3±1.7kg/m²)とした.測定方法:被験者に上記5種類の靴で被験者に廊下を普段歩く速さで歩くように指示して10m歩行を行わせた.各計測は筋疲労などの影響が及ばないように十分な間隔を空け,自覚症状がないことを確認して行った.歩行速度(m/min),ストライド(m),ケイデンス(step/min)を,スニーカーおよびヒール高さ3cm,5cm,7cm,10cmのそれぞれについて比較した.統計学的解析はWilcoxon の符号付き順位検定にて有意水準5%で検定した.【倫理的配慮、説明と同意】学内倫理委員会で研究計画の承認を得た上で,各実験に際しては被験者に予め実験の趣旨と方法,リスクを説明し,口頭および書面による同意を得て行った.【結果】動的バランスの解析の結果,ヒール高さ10cmではスニーカーに比べFRTの値が小さかった(p<.05).FRT時,スニーカーに比べヒール高さ7cmおよび10cmはFRTでの前後方向の重心移動距離が小さかった(p<.05).FRT時,スニーカーに比べヒール高さ5cm,7cm,10cmは下腿三頭筋の筋活動量が高かった(p<.05).特にヒール高さ10cmの場合,筋活動が著明に高かった.歩行パラメーターの解析の結果,スニーカーに比べ,歩行速度は,ヒール高さが高くなるに従い遅くなる傾向であった.ケイデンスに差がなかった.ストライドはヒール高さ3cm,5cm,7cmでは約10cm短く,ヒール高さ10cmでは約20cm短かった.【考察】ヒール高さ10cmは,いずれの評価でもスニーカーに比べ差が認められた。このデザインの靴の場合,足関節を極度に底屈位にするためバランスや歩行の観点で実用性が著しく劣ると考える.ヒール高さ7cmは,FRTではスニーカーと差がなかったことから,今回の被験者のような若年者が履く場合,立って手を前方に伸ばすということにおいては一応可能である.その時の重心の前方移動距離を見ると,スニーカーに比べ小さいことから,FRT時に十分な重心移動ができず腰を引いた姿勢で無理をして手を前方に伸ばしていることが理解できる.ヒール高さ5cmは,FRTで手を前方に伸ばす範囲,その時の重心移動距離に差はない.足底圧測定と歩き心地,トレッドミル歩行の疲労解析をした先行研究で婦人靴のヒール高さ5cmを超えたところに限界があるとしている(細谷,2008).また,歩行時のエネルギーコストを比較した先行研究では,婦人靴のヒール高さは5cm位までを推奨している(Ebbeling CJ, et al, 1994).本研究の結果から若年者が履く婦人靴の実用的な許容高さとしてヒール高さ5cmは概ね妥当と考える.しかし,FRTでの筋電図から筋活動量を比較した結果,ヒール高さ5cmの婦人靴はスニーカーに比べ筋活動量が多いことから,長時間履くとスニーカーより疲れやすいことが示唆された.ヒール高さ3cmは,FRT,FRTでの重心の前方移動距離,FRTでの下腿三頭筋の筋活動量のいずれもスニーカーと差がなく,この点において最も推奨できるヒールの高さと考える.エネルギー代謝の観点からヒール高さを検討した先行研究では最適値は3cmとしている(石毛, 1961).本研究の結果は先行研究を追認する.一方,歩行パラメーターの評価ではスニーカーに比べ,歩行速度が若干遅くなり,ストライド小さく,やや小股で歩く傾向であった.ヒール高さ3cmの婦人靴は,動的バランスではスニーカー程度の性能があるが,歩行時はスニーカーよりストライドの小さな歩行になることが考えられる.【理学療法学研究としての意義】婦人靴によるけがや障害予防のためのユーザーへの注意喚起に必要な基礎的データを示すものとして意義がある.
著者
鶴田 猛 富崎 崇 酒向 俊治 太田 清人 田上 裕記 南谷 さつき 杉浦 弘通 江西 浩一郎
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E4P3193-E4P3193, 2010

【目的】我々は、日常生活における活動場面において、その活動目的や趣味、嗜好に合わせ履物を選択し使用している。仕事で使う安全靴やスポーツ活動で使用する運動靴、外見の美しさを追求するパンプスなど、履物の種類は多種多様である。様々な活動に必要な姿勢変化や動作が安定して行われるためには、足底と床とが十分に接し、足部にて荷重を適切に受け止める必要がある。歩行による、骨・関節、軟部組織など足部の機能変化は、支持基底面や足部支持性に影響を及ぼし、安定した立位や歩行などの能力改善をもたらすものと考える。これまで、履物と歩行との関連に関する研究は多数報告されているが、足部機能等の評価法の一つである「足底圧」との関連を報告した例は少ない。本研究は、歩行時における履物の違いによる重心の軌跡の変化を捉えることにより、履物が足部機能に与える影響を明らかにすることを目的とする。<BR><BR>【方法】対象は健康な若年成人女性6名(年齢18~32歳)とし、使用した履物は、一般靴及びパンプス、サイズはすべて23.5cmとした。歩行にはトレッドミルを用い、速度4km/h、勾配3%に設定し、裸足、一般靴、パンプスを着用し、1分間の慣らし歩行の後、30秒間(各靴3回測定)の足圧測定を行った。足圧測定には、足圧分布測定システム・F―スキャン(ニッタ株式会社製)を使用し、裸足、スニーカー、パンプス着用時の重心(圧力中心)の移動軌跡長を比較検証した。実験より得られた足圧分布図において、重心点の開始位置(始点・踵部)及び終了位置(終点・踏み付け部)を算出し、(1)始点(2)終点(3)重心の長さの3項目について、それぞれの全足長に対する割合を求め、裸足、一般靴、パンプスにおけるそれぞれの値を対応のあるt検定にて比較検討した。<BR><BR>【説明と同意】被験者には、本研究の趣旨、内容、個人情報保護や潜在するリスクなどを書面にて十分に説明し、同意を得て実験を行った。<BR><BR>【結果】始点において、裸足は一般靴及びパンプスとの比較で有意に値が小さく、パンプスは一般靴よりも有意に大きな値が認められた。終点において、裸足はパンプスとの比較で有意に小さな値が、パンプスは一般靴よりも有意に大きな値が認められた。裸足と一般靴との間に有意差は認められなかった。重心の長さにおいて、裸足は一般靴及びパンプスとの比較で有意に大きな値が認められた。一般靴とパンプスとの間に有意差は認められなかった。<BR> 始点は、裸足、一般靴、パンプスの順で裸足が最後方(踵部)に最も近く、終点は、一般靴、裸足、パンプスの順でパンプスが最後方(踵部)から最も遠く、重心の長さは、パンプス、一般靴、裸足の順でパンプスが最も短かった。<BR><BR>【考察】裸足歩行では、一般靴及びパンプスを着用した歩行に比べて重心の長さが顕著に長く、始点が最も後方に位置していることから、踵部でしっかりと荷重を受けた後、踏み付け部に重心が至るまで、足底全体を使って歩行していることが分かった。また、足圧分布図の重心軌跡を見てみると、重心線の重なりが少なく、履物を着用した歩行の重心軌跡に比べて、足部内外側へのばらつきが大きいことが見られたことから、履物を着用することにより、足関節及び足部関節の運動が制限され、結果的に重心の移動範囲が限定される傾向があることが示唆された。 <BR> パンプスを着用した歩行では、始点・終点ともに最も前方に位置していることから、本来、踵部で受けるべき荷重の一部が前足部に分散し、前足部における荷重ストレスが増強していることが推測される。更に、踵離地における荷重が踏み付け部前方もしくは足趾においてなされている傾向があり、蹴り出しに必要な足趾の運動が制限されるなど、足部が正常に機能していない可能性がある。また、重心の軌跡が最も短いことから、足部の限局した部位を使用した歩行であることが示唆された。このような足部の偏った動きが、将来足部病変をもたらす可能性につながると思われる。<BR><BR><BR>【理学療法学研究としての意義】我々は、ライフスタイルや職業の違いにより、様々な履物を着用して活動しているが、外反母趾や扁平足、足部の痛みや異常を訴えるケースは非常に多い。歩行時における履物の違いが足部に与える影響を理学療法学的に検証することで、より安全で機能的な履物の開発の一翼を担うことができ、国民の健康増進に寄与できるものと考える。
著者
上田 邦良
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
福祉工学シンポジウム講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2002, no.2, pp.141-144, 2002-11-05
被引用文献数
1
著者
小塩 真司
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.280-290, 1998
被引用文献数
2

本研究の目的は, 自己愛傾向と自尊感情との関わりを検討すること, そしてその両者が, 青年期における友人関係とどのように関連しているのかを検討することであった。自己愛人格目録(NPI), 自尊感情尺度(SE-I), 友人関係尺度が265名(男子146名, 女子119名)に実施された。NPIの因子分析結果から, 「優越感・有能感」「注目・賞賛欲求」「自己主張性」の3つの下位尺度が得られた。NPIとSE-Iとの相関から, 自己愛は全体として自尊感情と正の相関関係にあるが, 特に「注目・賞賛欲求」はSE-Iと無相関であり, SE-Iの下位尺度との関係から, 高い自己価値を持つ一方, 他者の評価に敏感であり, 社会的な不安を示すといった特徴を有していることが明らかとなった。これらの結果は, NPIの妥当性を示す1つの結果であると考えられた。また, 友人関係尺度の因子分析結果から, 友人関係の広さの次元と浅さの次元が見出され, その2つの次元によって友人関係のあり方が四類型された。この友人関係のあり方とNPI, SE-Iとの関係が分析された。結果より, 広い友人関係を自己報告することと自己愛傾向が, 深い友人関係を自己報告することと自尊感情とが関連していることが明らかとなった。このことから, 青年期の心理的特徴と友人関係のあり方とが密接に関連していることが示唆された。
著者
大塚 英志
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.25-35, 2010-04-10

例えばアニメーション作家。新海誠はまず、小説に似たことばを連ね、それを自分で「声」として朗読し、その上に映像絵コンテを重ねていく。そんなふうに「ことば」や「小説」から立ち上がっていくアニメーションがある。あるいは発表者(大塚)が思春期の若者たち、あるいは時に医師を介して臨床の現場で「書きかけの絵本」を渡し完成させるワークショップ。そこでは一人一人が古典的で懐しい「成長の物語」を自ら描くことでささやかな自己治癒を果たしているように思える。「文学」とかつて呼ばれたものを「制度」と批判してみたところで古い文学に涙する学生たちを幾人も見る。「文学」について何かを語り、そして「文学」に何かを取り込み右往左往し、終わりや変容や脱構築を語る場所とは別のところで、「文学」の役割もその作法もいくらでも引き受けている場所がある。あるいは引き受ける方法がある。ただ、それを「文学」と呼ぶことはもう必要ない。必要なのは文学の役割であり、そう呼ばれることをめぐっての他愛のない何かでは多分ない。
著者
秦 裕緯 シン ユウイ Qin Yuwei
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学社会文化研究 (ISSN:1348530X)
巻号頁・発行日
no.17, pp.243-253, 2019

STRAY LEAVES FROM STRANGE LITERATURE is written by Patrick Lafcadio Hearn in New Orleans. LES COULISSES and THE GHOSTLY KISS are two special essays in this work since they share a special scene: the theatre. Which is barely appears in other essays of Hearn. The description of the theatre scenes in these two essays also shares many similarities, such as the association between this the stage and life, which Hearn called "the shining temple" ; and the association between the backstage and "the Unknown World" Correspondingly. The emphasis on the light and shadow also appears in both of the two essays. By analyzing these special ways Hearn describing the theatre we can find a deeper significance inside this scene, which reflects the author's views of life and death, and also exerts a far-reaching influence on the later works after Hearn came to Japan.
著者
福岡 安則 鄭 暎恵
出版者
千葉県立衛生短期大学
雑誌
千葉県立衛生短期大学紀要 (ISSN:02885034)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.51-60, 1986

以下に呈示する資料は, 1985年1月19日に,栃木県栃木市在住の青年たちから聞いた聞き取りの記録である。MCさんは1959年生まれ。MY君はMCさんの弟で1961年生まれ。MMさんはMY君の妻で1963年生まれ。TFさんは1960年生まれである。資料から,結婚問題をはじめとする部落差別の壁をのりこえていこうとしている,被差別部落の青年たちの生き方を,読み取っていただければ幸いである。記録の編集の仕方は,従来と同様である。なお,本稿末尾に,調査メソバーの一員である鄭暎恵による調査覚書を付した。
著者
田上 美由紀 猪狩 恵美子
出版者
福岡女学院大学大学院人文科学研究科発達教育学専攻
雑誌
福岡女学院大学大学院紀要 : 発達教育学
巻号頁・発行日
vol.3, pp.19-26, 2017-03

本稿は、日本におけるユニバーサルデザイン教育の研究動向を整理し、インクルーシブ教育の実現にむけたユニバーサルデザイン教育の可能性と課題を検討することを目的としている。通常学級の場で、障害の有無にかかわらず全ての子どもの学習参加を保障する実践として「ユニバーサルデザイン」が注目されつつある。しかし、用語のみが注目され、「ユニバーサルデザイン教育=特別支援教育」との誤解も生じている。そのため、「特別ニーズ教育」「インクルージョン」という考え方が国際的に広がり始めた1994年から今日までのユニバーサルデザイン教育をめぐる研究動向について、「日本授業UD学会」および「特別ニーズ教育」の視点から行われてきた実践・研究を概観することで、検討を行った。
著者
石井延久
雑誌
Pharma Medica
巻号頁・発行日
vol.22, pp.162-168, 2004
被引用文献数
1
著者
木庭 康樹 沖原 謙 塩川 満久 菅 輝 田井 健太郎 上田 丈晴
出版者
Japan Society for the Philosophy of Sport and Physical Education
雑誌
体育・スポーツ哲学研究 (ISSN:09155104)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-21, 2012

This study aims to identify the structure of sports games in order to analyze soccer games. In the last paper, we focused on the structure of "competition" as "play" to clarify the concept of "competition" which is the basis for the meaning of "bodily movement competitions (sports)". In doing this, we were able to formulate the function for this structure through the following comparative function.<br>On a condition of r, A = cf (a, b) = a>b, a = b, a<b<br>(where, r : rule, A : agon, cf : comparative function,<br>a : contestant, b : opponent,> : win, = : draw,< : loss)<br>Our next topic is to consider the concept of "bodily movement" that is an attribute of "bodily movement competitions (sports)". In this paper, we clarified that "bodily movement related to competition" has four characteristics: usability, expression, acquisition, and reciprocity.<br>Specifically, expression, which has a deep connection with the composition of human movement in sport. The human movement in sport is the imitation images created by <i>mimesis</i> (mimicry) as the geometrical phase shift. This geometrical phase shift allows for a variety of movement forms and for expression of individual physical ability.<br>Our future topic is the last aim of this study, to clarify the entirety of "bodily movement competitions (sports)" based on the results considered in our earlier papers.
著者
黒田 舞子
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian cultural interaction studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
no.10, pp.783-802, 2017-03

文部科学省グローバルCOEプログラム 関西大学文化交渉学教育研究拠点松浦章教授古稀記念号[研究ノート]In the relationship between Tang and Tibet, you can see that the principal offender was the basis of important diplomatic relations. About the Tang and Tibet in the 7th century - the first half of the 8th century, the whole history of Tibet has been revealed by many previous studies. Therefore, in this paper, in the history of Tibet, which mainly includes Chinese historical documents such as "Old Tang Book" and "New Tang Book", the relationship between Tang and Tibet in the history of Tibet, ~ The relationship between Tang and Tibet in the first half of the 8th century, the historical background of the lord's principal, will clarify the meaning that the principal owner of bride's wife married to Tibet and the impact on current.