- 著者
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徳丸 宜穂
- 出版者
- 北ヨーロッパ学会
- 雑誌
- 北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, pp.13-25, 2018 (Released:2019-07-01)
技術変化やグローバル化などに対応すべく、先進諸国で新しいイノベーション政策が試行されている。本稿では、北欧諸国がフロントランナーである「イノベーションの公共調達」政策が、どのような制度的・組織的条件の下で施行されつつあるのかを検討するために、フィンランドで当該政策の施行に関与する諸組織の機能・配置と、そのミクロ的基礎である人材移動について、質的・定量的に分析・考察を行った。その結果、第1 に「触媒作用」と呼びうる機能を果たす諸組織が補完的に分厚く存在していることを、主に環境志向的な公共調達を促す諸組織への聞き取り調査に基づき明らかにした。第2 に、部門をまたがる人材移動が盛んであるという事実を、LinkenInから取得したデータの分析から見出した。これらの事実は、コーポラティズムや人材流動性といった、北欧モデルを構成する諸要素が、新しい政策の実施にとって有益に作用している可能性を示唆している。