著者
永野 伸一
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌/ 日本頭頸部癌学会 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.475-479, 2004-10-25
参考文献数
5
被引用文献数
1

日本人の長い歴史性・文化性を無視し欧米から輸入された医療上の進言, 特に告知におけるマスメディア挙げての一つの図式的な世論誘導に, 医療の現場では混乱を起こしていると思う。インフォームド・コンセントを尊重するという事は, 患者さんが「死にたい」と発した時, 我々は患者さんを殺さなければならなくなる。しかしその患者さんの言葉は「本音」ではなく医師にもっと心配して欲しいという意思表示であり, 日本人特有の甘えによる屈折した表現なのである。その様な言葉を使う日本人の背景には仏教・神道を始めとする独特の宗教観があり, それは欧米のキリスト教圏の民族とは理解しえない面がある。マスコミの主導する医療上の進言は全て個人主義を目指したキリスト教圏の出来事であるが, 家族主義的ムラ社会を構築してきた日本民族は個人の確立を求めていない。死の淵に立った時, 求めるのはむしろ他者との関係であると私は考える。

10 0 0 0 OA 本朝書籍目録

出版者
長尾平兵衛
巻号頁・発行日
1671

編者未詳。1巻1冊。我が国最古の国書の伝存目録で、写本で伝わり、永仁2年の奥書と康安2年の奥書のある本の2系統に分かれる。当館本は寛文11年長尾平左衛門の刊本。内容は、神事、帝紀、公事、政要、氏族、地理、類聚、字類、詩家、雑抄、和歌、和漢、管絃、医書、陰陽、人之伝、官位、雑々、雑鈔、仮名、諸家名記の21項目に分類し、後半に「本朝書籍目録外録」として、神書、附諸書、歌書、抄物等、四家式、五家髄脳、雑々、私記、源氏物語諸抄大略の分類で、書名と冊数を記す。当館本は伴信友の手になる、禁裏御本との校異その他の書き込みがある。(岡雅彦)
著者
青野 那々子 磯谷 海斗 杉山 康貴 中田 有紀 矢野 元暉
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-07-04

1.研究の背景今日、マイクロプラスチック(以下、MP とする)による海 洋の汚染が進行している。海洋生物が MP 自体と、それに付 着した有害物質を摂取すると、生物濃縮によって海鳥や人間 の健康にも影響を及ぼす可能性がある。汚染の度合いを調べ るためには MP の量を把握する必要があるが、静岡県内には その計測データが少ない。そこで、高校生でもできる MP の 検出方法を確立し、伊豆半島の周辺の海、川にどの程度 MP があるかどうかを調べた。2.研究の手順①狩野川、静浦ダイビングセンター、静浦漁 港センター、淡島、我入道(狩野川河口)、沼 津港で試料採取を行った。②それらの場所の水をポンプで汲み上げ 315 μmのプランクトンネットを用い、500L ろ過し て浮遊物を採取した。③プランクトンネットに残っていたものを ろ紙でろ過し、乾燥させた。④汲み上げたものには、MP 以外にも草、木、 プランクトンなどの有機物があるため、10% KOH水溶液でそれらを分解させるために、 2日間放置した。⑤2日後、溶液をろ過し、再び乾燥させた。⑥そのサンプルを 30%H2O2水溶液につけ 2 日間放置し、有機物を分解した。⑦2日後、溶液をろ過し、乾燥させた。⑧乾燥したサンプルを双眼実体顕微鏡下で観察し MP を探した。⑨70%NaI水溶液に試料をつけウォーターバスで 60°Cの湯煎をしながら、6 時間以上放置。⑩その後、冷却して、NaIを再結晶させた。 ⑪再結晶させたものの上澄み水溶液と、再結晶した上半分の 結晶と試料を採取した。⑫採取したものを水で薄め、ろ過をし、乾燥させた。⑬⑫をブルーライトで当て、専用眼鏡で観察した。3.研究結果地点 採取日 個数狩野川 9/4 8静浦ダイビングセンター 9/16 3静浦漁港 9/16 2淡島 10/19 2我入道 11/4 5沼津港 11/4 114.現在までの成果 学校の設備では細かすぎると観察できな いのでプランクトンネットの網目を 315μmにし MP の採取に成功した。採取した川 や海の水から有機物等を取り除き、MPを 検出しやすいサンプルを作ることに成功 した。そのサンプルから MP を検出するこ とにも成功した。サンプルにブルーライ トを当てると一部のプラスチックが発光 することが分かった。5.考察高校生でも高校にある設備で伊豆半島及び狩野川に存在す る MP を検出できることが分かった。研究結果から判断する と沼津港以外の海洋より、河川の方が検出された MP の数が 多い傾向にあることからこの地域の海洋汚染の原因は河川 からの MP の流出である可能性が高いことが考えられる。し たがって、海洋汚染を進めないためには河川にごみを投棄し ないことが重要であると考える。また、漁港である沼津港は プラスチックの使用頻度が高いことで検出数が多くなって いると思われる。MP の量は人間生活に深くつながっている と考えられる。6.今後の展望各地点ごとに、検出されたプラスチックの種類を調べる。使 用したプランクトンネットの網目が 315 μmであるため、対 象を 315 μm以下のサイズの MP まで広める。今回の計測では 台風 19 号の後に計測した値も含まれるため、試料の採取を より広範囲で、定点観測を行うようにして伊豆半島海岸域に おける MP の量や流出場所を推定する。また、ブルーライト を用いた MP の検出方法を確立させるほかにブルーライトで は反応しない MP の検出方法を見つける。7.参考文献海岸域におけるマイクロプラスチックの調査手法の確立 http://www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko- 510/documents/412slide.pdf8.謝辞静岡県環境衛生科学研究所 平松 祐志様筑波大学 下田臨海センター 佐藤 壽彦様
著者
森本 頼子
出版者
日本音楽学会
雑誌
音楽学 (ISSN:00302597)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.78-91, 2014-10-15 (Released:2017-04-03)

The Sheremetev Serf Theater (1775-1797), managed mainly by Count Nikolai Petrovich Sheremetev (1751-1809), was one of the few theaters that imported and performed the French genre tragedie lyrique, which was never staged in any other Russian theaters (not even the court theater). This paper aims to present the facts regarding the performances of tragedie lyrique at the Sheremetev Theater according to the handwritten correspondence, in French, between Count Nikolai and Monsieur Hivart (date of birth and death unknown), a musician of the Paris Opera, which is preserved at the Russian State Historical Archive. Furthermore, this work aims to promote appreciation of said theater's activities. Many performances of tragedie lyrique were held at the Sheremetev Theater between 1784 and 1791. Count Nikolai was increasingly interested in tragedie lyrique, including the fashionable operas by C. W. Gluck and his followers, which were imported into the theater every year. When these operas were performed, the troupe expended great effort on preparing the performances under the leadership of Count Nikolai. For example, Renaud, by A. Sacchini, was imported with much assistance from Monsieur Hivart, and the entire text was translated into Russian, with great difficulty. Ultimately, Count Nikolai ordered Monsieur Hivart to create an opera in three acts, Tomiris reine des Massagetes, which has choruses, dances, and recitatif (that is, the same qualities as tragedie lyrique). Given the challenges of performing tragedie lyrique, Count Nikolai demanded character in the music, spectacle, and festivity of the opera. He demonstrated his utmost concern for the performance of fashionable works. These challenges reveal the Sheremetev Serf Theater as an "opera theater" capable of staging full-scale operas. In addition, the circumstances suggest that the foundation for the flourishing of the operatic culture in the 19th century was laid by nobles in the late 18th century.
著者
Haruhiko SATO
出版者
Japanese Society of Physical Therapy
雑誌
Physical Therapy Research (ISSN:21898448)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.8-14, 2020-06-20 (Released:2020-06-20)
参考文献数
72
被引用文献数
12

Despite the fact that children with cerebral palsy may not have any deformities at the time of birth, postural deformities, such as scoliosis, pelvic obliquity, and windswept hip deformity, can appear with increasing age. This may lead to respiratory function deterioration and, in more severe cases, affects survival. To date, postural care is believed to help improve the health and quality of life of children with cerebral palsy. This review provides an overview of the cause and clinical management of postural deformity that is seen in children with cerebral palsy.
著者
秋山 光和
出版者
国華社
雑誌
国華 (ISSN:00232785)
巻号頁・発行日
no.1011, pp.p3-26, 1978-05
著者
高橋 寿光 西坂 朗子
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.2-13, 2016-09-30 (Released:2019-10-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

The second boat pit of Khufu is located on the south side of the pyramid of Khufu at Giza, Egypt. In 2011, the cover stones of the second boat pit were lifted up by the Japanese-Egyptian joint mission. The graffiti in red, yellow and black inks were recognized on some of the cover stones. It is well known that the graffiti written on building stones provide information about transportation procedures and workmen involved in the work. This paper aims to examine the graffiti on the cover stones in order to understand transportation process and workmen responsible for these works. The graffiti on the cover stones can be chronologically divided into at least two stages by observing the surface treatment of each cover stones. The stone surfaces which show the older stage were roughly shaped. On the other hand, the surfaces at new stage were carefully smoothed. According to observation, it was presumed that the old stage corresponds to the phase from quarry to workshop and the new stage coincides with the phase after shaping stones at workshop. The old stage graffiti include the simple signs such as "ankh," "hetep," "nefer" which seem to represent the team of workmen in charge of transporting stones. The destination marks in old stage such as "pyramid," "temple" instruct transportation from quarry to pyramid area. The graffiti in new stage include inscriptions with the name of Khufu or Dedefra which represent the workmen in charge of drugging stones in the pyramid area. The destination marks include "boat" or "boat-pit" which seems to indicate the instructions of delivery to the second boat pit. The study of graffiti on the cover stones from second boat pit suggest that two distinctive organizations were involved in the transportation of stones from quarry to the building site at Giza.
著者
金 吉晴 小西 聖子
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.7, no.Special_issue, pp.155-170, 2016-05-31 (Released:2016-06-02)

註)以下に示すのはPEの開発者であるEdna Foa教授によって作成され,日本で翻訳出版されている下記のマニュアルを,開発者の許可の元に抜粋したものである。この抜粋版は治療プロトコルの概要を示すだけのものになっており,これだけを用いて実際に治療を行うことはできない。PEの実施に当たっては,正規の指導者による24時間のワークショップに参加し,所定のスーパーバイズを受ける必要がある。なお心理教育,想像エクスポージャー,現実エクスポージャー,エクスポージャー後の処理などは,下記のマニュアルでは豊富な事例をもとに,どのようにして対話的に患者の理解を深めていくのかが示されている。本プロトコルでは,紙数の制約のために,その部分が記されていない。あくまで治療手続の概要にすぎないことを理解されたい。金 吉晴,小西聖子(監訳):PTSDの持続エクスポージャー療法.星和書店,東京,2009.(Foa, E., Hembree, E., Rothbaum, B.: Prolonged exposure therapy for PTSD. Oxford University Press, New York, 2007)
著者
坊農 真弓 吉川 雄一郎 石黒 浩 平田 オリザ
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.326-335, 2014-04-01 (Released:2014-04-01)
参考文献数
42

人間の「社会性」とは何か.この問いに対し,ロボット・アンドロイド演劇プロジェクトは一つの答えを示してくれる可能性がある.本解説記事では,まず本プロジェクトの経緯と背景を説明する(2.).次に,ロボット・アンドロイド演劇をエスノグラフィ及び会話分析することの意味を,演出場面に実際の起こったやりとりの事例分析に基づいて明らかにする(3.).続いて,ロボット・アンドロイド演劇のロボット工学・認知科学における意味を,制作の実態と世界公演に対する評価などから議論する(4.).最後に,ロボット・アンドロイド演劇の演劇としての意味を,社会におけるこの試みの位置付けを明らかにすることから考察する(5.).
著者
十合 晋作 小見山 博光
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

テロメススキャンによる高感度CTC検出の条件検討で、高感度ハイスループットのCTC検出法を独自の方法で開発した。結果:Stage0-I (n=28)早期肺癌患者中 CTC陽性率(2≧3ml/末梢血)82.6%CEA(5>)陽性率 7.1%で、CTC-/CEA+は0人。よって検診測定の血清腫瘍マーカーのCEAより早期に癌を発見可能な高感度測定を達成した。本法は、現在特許申請準備中である。また、CTC表現型解析では、EMT-CTCが悪性度が高く、治療抵抗性につながる報告をしたことから、あたらな間葉系CTC特異的間葉系バイオマーカーの探索のため、様々な間葉系抗体等で免疫染色を行ったが、Vimentinが最終的に信頼性の高いマーカーであることに帰着した。更に、近年、免疫チェックポイント阻害剤が肺癌での有効性が注目されているが、PD-L1-CTC、EMT-CTCの同時検出をVimentinとPD-L1の同時染色により検出する系を構築した。化学療法直前、投与後1コース後に採血してCTC数を測定する。実際のがん治療の奏効とCTCの経時変化の解析から抗がん剤の奏効予測、再発/耐性予測バイオマーカーとしての有用性を検証する前向き臨床試験倫理申請準備に着手した。本試験では、前記のCTC検出法を用いPD-L1-EMT-CTCのモニタリングを行える準備が整っている。研究代表者の十合はオンコリスバイオファーマ社との共同研究から、CTCからFISH法によりALK阻害剤が有効な肺がんのDriver変異であるEML4-ALK遺伝子変異陽性患者を検出することが可能となり、ALK阻害剤投与における非侵襲的な液体生検でテロメスキャンF35によるCTCで評価可能であることを論文報告した(Oncotarget. 2018.Watanabe J, Togo S. etal)。
著者
中山 毅 西原 富次郎 深田 せり乃
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.105-110, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1

食欲不振や嘔吐の症状を伴った妊娠悪阻の患者を対象とし,六君子湯による悪阻への治療の可能性についての後方視的検討を行った。方法は,北川らの提唱するEmesis index(EI)を用い,小半夏加茯苓湯内服,メトクロプラミドを投与した群を比較対照とした。すべての群において,内服後のEI 合計値の低下を認めたが,特に六君子湯群7日後のEI 合計値が,他群より有意に低下していた。また項目別の検討では,六君子湯群における悪心,嘔吐,食欲低下のスコア値が,小半夏加茯苓湯,メトクロプラミド投与群と比較し有意に低値であった。六君子湯が妊娠悪阻に対して,小半夏加茯苓湯やメトクロプラミド投与と同等に効果があり,特に悪心嘔吐や食欲低下といった症状の強い妊娠悪阻を軽快させる可能性が示唆された。また奏功しない症例の多くは気滞スコアが高い傾向にあり,随証療法の必要性,ならびに理気剤への変方を考慮することが必要であろう。