著者
榊原 一也
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第85集 日本的ものづくり経営パラダイムを超えて (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.F55-1-F55-8, 2015 (Released:2019-09-25)

従来の撤退戦略は,主に事業ポートフォリオ理論に依拠し,衰退段階に至った事業のキャッシュを再配分するという点に重きが置かれていた。だが本研究は,経営環境の変化への適応のため,あるいは将来の事業構想のために,積極的に事業ポートフォリオを調整し,断行する「能動的撤退」に注目する。事業売却を除けば,この撤退には,事業撤退が起点となって製品差別化を果たす「適応的撤退(撤退した事業で培った知識を既存事業において活用するもの)」と,新規事業創造を果たす「創造的撤退(撤退した事業で培った知識を事業創造において活用するもの)」の2つが存在する。本研究は,キヤノン株式会社の3つの撤退事例(シンクロリーダー事業,パソコン事業,ディスプレイ事業)から,これらの能動的撤退プロセスを明らかにした。
出版者
改造社
巻号頁・発行日
vol.第十三卷, 1934
著者
奥平 准之
出版者
明海大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ヒトゲノム解読以降、ジャンク配列とされてきたtransposable遺伝子(転移遺伝子)の機能解明に様々な分野から注目が集まっている。中でも、1細胞中に約52万コピー(全ゲノムの約17 %)存在するLong Interspersed Element-1(LINE-1以下L1)は特徴的で、80-100コピーは正常細胞中でも転移機能を有している(retrotransposition以下RTP)。L1-RTP誘導のメカニズムは不明な点が多く、疾患発症との繋がりも指摘されている。本研究では、社会問題化している乱用薬物の依存形成にL1が関与している可能性を考え、薬物とL1-RTP誘導能を解析した。
著者
松井 元英
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.162-167, 2016 (Released:2019-07-22)

レールは鉄道の重要部材であるが,その材料劣化要因の一つである転がり疲労のメカニズムは十分に 解明されたとは言い難く,国内外でその解明に向けた取り組みが精力的に実施されている.本稿では, その取り組みの一つとして検討している X 線フーリエ解析について,車輪との繰り返し接触による転が り疲労がレール表層部の金属組織に与える影響と併せて,実物レールに適用した例について紹介する. X 線フーリエ解析は転位密度等の塑性ひずみに関連の深い指標を見積もることが可能である.使用履歴 の異なる実物レールを解析したところ,転がり疲労を受けたそれぞれの金属組織の相違を反映するよう に転がり疲労の影響が小さいと思われるものについてはX線フーリエ解析からも同様の結果が得られた. また,総じて転がり疲労層の最表面から内部に向かって転がり疲労による材料劣化が和らいでいくこと が確認された.このようなことから,レール転がり疲労層の最表面から急激に深さ方向に変化していく 材料劣化状態の定量化への適用が期待される.
著者
増沢 力 松本 多恵子 韮山 ひとみ
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.105-112, 1975 (Released:2013-02-19)
参考文献数
7

中国産天日塩の品質向上を目的とし, その不純物を結晶内部と結晶表面とに分類し, その存在量と存在形態とを検討して次の結果を得た.1. 中国産天日塩の塩化ナトリウム純度は94~95%, 不溶解分0.5%, 水分3%程度で, 溶液および固体で存在する不純物ともオーストラリア, アメリカの天日塩に比較してやや多かった. なお, 最近数年間の品質には, 塩化ナトリウム純度はやや向上しているが大きな変化がなかった.2. 中国産天日塩の結晶中の不純物量は不溶解分0.14%, 液泡中の水分0.67%とアメリカなどの天日塩のそれらより多かった. また, 同じく総不純物に対する結晶内不純物量は18~30%で, これが洗浄により品質向上できる限界と考えられた.3. 推定した母液組成のマグネシウム濃度はMg10~43mol/1,000mol H2Oであり海水濃縮線から検討すると濃縮の進んだ組成をしていた. このことは, 硫酸イオンを含む結晶が析出した母液にかん水を混合する方法で, にがりを繰り返し使用すると推定された.4. 中国産天日塩結晶は, 泥土などでやや汚れた1~10mmのやや透明な結晶で, 内部には数η'm~100μm程度の直方体の液泡が多くみられた. このほか, 結晶内部には10~50μmの大きさの主として硫酸カルシウム2水塩と考えられる結晶がみられた.5. 試料中の不溶および可溶性不純物は, 2mm以下に粉砕して不完全洗浄すれば, その50~60%を除去することができた.
著者
米井 祥男 増沢 力
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.269-276, 1967 (Released:2013-02-19)
参考文献数
13

食塩結晶中の不純物について, 主として4工場の並塩, その他イオン交換かん水析出塩を含む15工場の並塩そして精製塩および局方塩の表面に付着している不純物を洗浄により完全に除去して検討した. すなわち熱および化学分析さらに検鏡, X線回折などにより不純物の組成, 形態および量を検討した結果は次の通りである.(1) 結晶中の不純物の化学組成は, カリウムイオン; 0.013~0.033g/100g 試料 (16~37%), へマグネシウムイオン; 0.007~0.017g/100g試料 (4~7%), カルシウムイオン; 0.003~0.014g/100g 試料 (10~45%), 硫酸イオン; 0.022~0.069g/100g試料 (5~23%) であった.(2) Jäneckeの三角図表. マグネシウムーカリウムの不純物組成から, カリウムが食塩の結晶格子中に混入していることが推定された. この量は塩化カムリウムとして0.02~0.05g/100g 試料で結晶中総量の70~80%にあたる.(3) カルシウムは, せつこうとして結晶中に混入していることを缶内被および結晶中のカノレシウム濃度の違いと偏光顕微鏡で確認した. 塩田かん水および海水直煮の析出塩では混入の仕方には規則性がなく, 大きさも一定でない. 一般には長径; 0.03mm×短径; 0.O1mmの立方柱状が多かった. 化学分析値がカルシウムイオンで0.003g/100g試料の試料を100個検鏡した結果26個の粒子中にせつこうの混入を認めた. イオン交換かん水析出塩では, 他に比してせつこう混入量が多く, 規則的に混入している. 形態はX線回折の結果無水塩を確認した.(4) 液泡量を間接法により推定した結果0.15~0.24g/100g試料であった. イオン交換かん水析出塩の液泡量は製造年によって大きな差があった. 液泡の生成要因として缶内液濃度が影響していることがわかった.
著者
増田 久美子
出版者
駿河台大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、ドメスティシティという概念がいかに広範に19世紀米国社会の文化形成にかかわっていたかを検討するため、「白人女性文化」という支配的枠組みに抗して、黒人男性作家の家庭小説にみられるドメスティシティ分析を主眼とした。その結果、ドメスティック・イデオロギーが人種・ジエンダー・階級を横断して多様な人びとに共有あるいは流用されていたこと、また。このイデオロギーが個別の場において特殊な文化的政治性を持ちうることが論証された。
著者
大山 和生 田中 利和 神山 翔 和田 大志 野内 隆治 落合 直之
出版者
東日本整形災害外科学会
雑誌
東日本整形災害外科学会雑誌 (ISSN:13427784)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.192-195, 2018 (Released:2018-09-08)
参考文献数
13

われわれはトリアムシノロンアセトニド腱鞘内注射により生じた長母指屈筋腱断裂の1例を経験し,その病理学的検討を行った.断裂した腱は先細りし,もろく変化していた.組織変化としては腱組織の変性・線維化,腱内部の白色沈殿物とその周囲の肉芽組織,腱内血管の変性ならびに血栓形成などが確認できた.これらは長期的かつ頻回に投与され,正常腱細胞がアポトーシスをきたしたため起こったものと思われた.
著者
小村 照寿 今永 広人 渡辺 信淳
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.892-895, 1970-05-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
9
被引用文献数
1

塩化マグネシウムの電解における陰極電流効率の低下に対する酸化マグネシウムおよび酸化ホウ素の作用機構について検討した。酸化マグネシウムはマグネシウムの溶解度には影響しないので,その効果は浴中へのマグネシウム粒子の分散を引き起こすためと考えられる。このようなマグネシウム粒子の凝集の妨害は, 溶融塩中に分散した酸化マグネシウムがマグネシウム粒子の表面に吸着することによるものと推定される。また, 酸化ホウ素の添加はマグネシウムの溶解度にほとんど影響がないうえ, これは陰極で電気化学的な還元もうけない。しかし, 酸化ホウ素はマグネシウムと反応してマグネシウムの損失をまねくばかりでなく, 反応の結果マグネシウム粒子の表面に酸化マグネシウムやホウ化マグネシウムなどを生成する。そのため, マグネシウム粒子の分散をも助長することになるので, マグネシウムの電流効率は大きく低下するものと推定される。