著者
中山 颯 鉄 穎 楊 笛 田宮 和樹 吉岡 克成 松本 勉
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.1399-1409, 2017-09-15

IoT機器の中にはTelnetサービスが動作し,容易に推測可能なIDとパスワードでログインができるものが大量に存在しており,この状況を悪用したサイバー攻撃が多数観測されている.本研究ではTelnetを利用したサイバー攻撃において,特にログインチャレンジとログイン成功後に使用されるシェルコマンド系列に着目した分析を行う.特にハニーポットにより観測される攻撃とハニーポットにより収集したマルウェアの動的解析により観測される攻撃を突合することで,攻撃元のマルウェアの識別を行い,マルウェア流行の状況把握を試みる.また,攻撃に利用されるID/パスワードを調べることで攻撃目標となっている機器の種類が増加傾向にあることを示す.
著者
市川 幸宏 伊沢 亮一 白石 善明 森井 昌克
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.2524-2534, 2006-08-15

コンピュータウイルスによる被害を軽減させるためには,ネットワーク上において早期に検知し,いち早く廃棄する必要がある.コンピュータウイルスを検知するためには,まずそのコンピュータウイルスを解析する必要がある.通常,その解析はアンチウイルスベンダに所属する技術者によって,基本的にそのウイルスコードを1 行1 行解析する手法がとられている.亜種も含めて,大量にコンピュータウイルスが発生する現在,その解析能力は飽和状態にあり,ウイルス解析者を支援するシステムの開発が希求されている.本論文では,既知のコンピュータウイルスだけでなく,未知のコンピュータウイルスを解析することを目的として,ウイルス解析者を支援するシステムを提案している.提案システムは,ウイルスコードを直接解析するのではなく,実行時に動作するメモリ上に展開されたコードを解析し,難読化が施されたコードであっても解析が可能となっている.
著者
金子 格 須川 賢洋
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1068-1069, 2017-11-15

選挙区割,SNSなどによる選挙操作,ディジタルゲリマンダについて解説する.「1.ディジタルゲリマンダの法規制の可能性」では法的規制を行いうるかを解説する.「2.ディジタルゲリマンダとプライバシー,自己決定権」では,プライバシー/個人情報保護,人格権の観点から考察を行う.「3.ソーシャルメディアと想像の共同体」ではマスメディアからソーシャルメディアに転換したことによる社会への影響を論じる.「4.ディジタルゲリマンダへの工学的アプ ローチ─ディジタルにはディジタルを─」では,数学・工学モデルを利用して問題の分析を行い対策の可能性を論じる.
著者
福嶋 良平 片寄 晴弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.1756-1764, 2017-11-15

ビデオゲームの世界観を構築するうえで,Non-Player-Character(以下NPC)にタイプの異なった性格付けを行うことはデザイン上の重要なタスクである.従来,これらの性格付け,それらが表出するNPCの振舞いについては,ゲーム制作者の経験的知識によって実装されてきたが,プレイヤが見出すNPCの性格とは,与えられた制約条件下で最適化が行われた結果,典型化した振舞いに対して付与されたラベルとみることもできる.本研究では,この考え方に基づき,島モデル遺伝的アルゴリズム(以下島モデルGA)を用い,先験的な情報を与えずに個性が表出するNPCの振舞いを獲得する手法を提案する.提案手法を2Dアクションゲームに対して実施したところ,慎重型,積極型などのように解されるNPCの振舞いが獲得された.
著者
中橋 友子 Tomoko NAKAHASHI 尚美学園大学総合政策学部非常勤 Shobi University
出版者
尚美学園大学総合政策学部総合政策学会
雑誌
尚美学園大学総合政策論集 = Shobi journal of policy studies, Shobi University (ISSN:13497049)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.75-94, 2016-12-25

暴言王トランプの当選に世界は驚いた。しかしアメリカの有権者の多くが置かれている状況を考えれば、それは驚くに値しない。ここではアメリカがどのような文化・社会的問題を抱え、人々が何を彼に期待して投票したのかを論じる。
著者
岩堀 由裕 水野 信也
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2017-IOT-38, no.7, pp.1-7, 2017-06-17

静岡理工科大学では現在脆弱であった情報基盤の整備を進めている.これには当然ながらコスト削減も必要であるが,教育機関として役割を果たすために次のような観点で計画を進めている.(i) 教育にフィードバックできる情報基盤の作成,情報基盤は見えない部分が多く,学生にとっては内部でどのような処理がなされているか見えない部分が多い.これには可視化が欠かすことができず,WiFi やウイルス対策状況など可視化しフィードバックをしている.またデータセンターの見学も行い,実際の運用環境を見ながら教育を実施している.(ii) クラウド環境利用の取り組み,クラウド ・ コンピューティングの環境は様々な場面で利用されているが,本学では教育クラウド環境と呼び,多くの学生に利用されている.また教員にもバックアップを個々で管理できるような環境が整備されている.クラウドの利点を活かし,幅広い利用を実施している.(iii) 情報基盤データの IR 利用,IR の重要性が高まる中,情報基盤データを IR に利用する取り組みをしている.学内には様々なデータがあるが,そのデータ整合性を取るために Office 365 を用いた統合認証環境を導入した.今後 IR を活用し,教育にフィードバックしていく.本研究では現在の取り組みをコストや可用性の面だけでなく,教育への貢献の面からも議論していく.
著者
阿部 新助 アベ シンスケ Shinsuke ABE
出版者
総合研究大学院大学
巻号頁・発行日
2001-03-23

本論文は、流星および流星発光後に長時間輝くクラウド(永続痕;persistent trains)の未解明の発光過程について分光学的手法で観測的研究を行い 発光物質、励起温度、発光メカニズムなどについて明らかにした研究である。<br /> 「流星」とは、サイズがmmから数cm程度のダストが、秒速数10kmという高速で惑星間空間から地球大気に突入する際に、地球大気との衝突によって発光する現象である。発光高度は約100kmの電離圏(中間圏、熱圏)で、最小ダストの直径は0.1mm、質量にして1μg程度である。流星の中でも特に母天体が彗星や小惑星であるものを群流星と呼び、母天体から放出されたダストが形成するダストチューブの中を地球が通過する際に流星群として多数の流星が観測される。母彗星であるTempel-Tuttle彗星が逆行軌道のため、対地速度が最も速い(~71km/s)惑星間空間ダストの一団として観測されるのが「しし座流星群」である。「しし座流星群」の1時間あたりの流星数をみると、数百から数千、時には数万に達するいわゆる「流星雨」と呼ばれるような出現数も過去に記録されており、母彗星の回帰周期に伴い約33年毎に観測されてきた。私は、「しし座流星群」という希少な現象を確実に捕える目的で、7ヶ国から約30名の研究者達が集ったNASA主催の国際航空機観測ミッション(Leonid MAC)に1999年11月に参加し、主に分光観測を行ってきた。私が用いた分光装置は、370nmから850nmの帯域をカバーした光電子増倍管(I.I.)付のモノクロ・ハイビジョンTVカメラ(II-HDTV)に対物グレーティングを装着したもので、これまで観測が難しかった近紫外域(370-400nm付近)にピーク感度を持ち、更にデジタル10ビットの高いダイナミックレンジも備える全く新しい独創的な観測装置であった。国立天文台には、デジタル・ハイビジョンデー夕のコンバート処理を行う施設がないため、通信総合研究所や、民間の研究所の協力を仰ぎ、解析データの準備段階からかなりの労力を要した。データ解析に際しても、多数の原子分子が折り重なった複雑な流星の輝線スペクトルの同定、物理量の導出の精度を上げる目的で、シンプレックス法を用いた波形処理を流星スペクトルへ適応させるなどの新たな解析手法も確立した。今回、解析に使用したのは、クオリティーの高い「しし座流星群(Leonid)」3イベント、および偶然観測に捕らえられた[おうし座流星群(Taurid)」1イベントの計4イベントのスペクトルである。Leonidスペクトル中のFeとMgの時間変化は、地球大気成分の発光である酸素原子と同様のプロファイルを示すが、Naはこれらの物質よりも高高度で光始め、急速に減衰していくことが分かった。これは、超高速突入のため、より揮発性の高いNaから蒸発したことによる。一方、TauridのNaは、Leonidと異なるプロファイルを示し、FeやMgと同様の変化を示した。これは、地球突入速度の違い、あるいは、惑星間空間を周回する間にNaが減少した事に起因すると思われる。また、Tauridスペクトル中のFe/Mgアバンダンスは、Leonidの約2倍も高いことから、Tauridの母天体であるエンケ彗星は、より岩石質な天体であることが推察できる。エンケ彗星は、周期が3.3年と短いために太陽によって表層の揮発性物質がかなり失われた天体であることが予想される。これまで流星の励起温度は、550nmより短波長の金属輝線を使った温度平衡モデルで説明されてきたが、更に私は、対地速度が速い流星で現れるポテンシャル・エネルギーの高い分子に着目し、金属輝線の少ない長波長側(600~800nm付近)に観測された窒素分子のfirst positiveバンド(B3Πg→A3Σ+u)について、分子モデル計算を介して電子、振動、回転温度を決定した。その結果、電子 - 振動温度はともに、Te,v=4,500K±500Kとなり、鉄輝線で求まる励起温度、T=4,500±300Kと非常に良い一致を示した。この事は、熱平衡モデル近似の妥当性を示している。一方、初めて流星中の回転温度を試みたところ、Tr=2,500±500Kという温度が得られた。これらの振動-回転温度の差異は、化学平衡が十分に達成されず、厳密には温度平衡状態にはないことが示唆される。今後、分解能を上げた観測を行えば、更に詳細な議論が行えるであろう。流星の母天体である彗星は、太陽系が形成された当時の物質を閉じ込めた始原的な天体であると共に、惑星間塵や地上で採取される隕石(炭素質コンドライト)などの供給源とも考えられている。しかしながら人類は未だ、物質分析的にその起源を彗星と証明できる微粒子を持っていない。流星観測は、「地球大気を巨大なダスト検出器」に見たてた「地球に居ながらにしての彗星・小惑星探査」ともいえる。ハレー彗星探査で、C,H,O,Nが豊富に存在している事が明らかになった事から、彗星物質(流星)には耐火性有機炭素が豊富に含まれ、それらが地球に供給されている事が指摘されているが、未だにその証拠な無い。私は、彗星コマ中で近紫外線の非常に強い輝線として観測されるCN分子(B2Σ+→X2Σ+)のモデルスペクトルと、流星スペクトルの近紫外部を比較する事から、CN分子の宇宙起源説の検証を行った。地球突入速度の遅い「おうし座流星群」の“光初め゛に、CN分子と思われる超過が認められたが、鉄輝線などのコンタミもあり更に慎重な議論が必要である。<br /> 「流星痕」とは、極めて明るい流星(火球)の流れた後に数分以上も残る輝くガス雲である。常に宇宙空間からエネルギーの供給があり輝いているオーロラなどと異なり、永続痕は一度だけの流星の衝突エネルギーだけで長時間輝き続ける。この長時間輝き続けるメカニズムが未解決であった。出現予測が全くつかない希少な現象にあるため、永続痕がどのような物質で構成されているかでさえ明らかにされていなかった為、私はこの突発天体現象を確実に捕えるための携帯式の分光器システムを製作した。「しし座流星群」は対地速度が大きく、大気との衝突で解放されるエネルギーも大きいため、流星痕が発生する確率が最も高い流星群である。その結果、1998年「しし座流星群」に伴う“流星痕の分光観測に成功し、これまでにない高いクオリティーのスペクトルを得ることができた。解析の結果、初期(流星消滅後約30数秒後まで)の永続痕には、マグネシウム、鉄が最も多く含まれ、次いでナトリウムやカルシウム、アルミニウムなどの金属原子が豊富に含まれている事が明らかになった。原子スペクトルのモデル計算を行い物理量の導出を試みた結果、初期(流星消滅後約20秒後)永続痕の励起温度は2,200Kという高温状態であることが明らかになった。しかし、流星消滅後約30秒後には約1,000Kへと急激にクーリングされ、40秒後にはもはや顕著な原子輝線はなく、600nm付近をピークに持つ分子バンドが支配している事が明らかになった。永続痕本体(0次光)の時間変化の比較から、クーリングが卓越した状況が推定でき、熱エネルギーが光エネルギーに何ら関与しない、化学ルミネッセンスが放射過程に効いていることが推察できる。流星起源のFe、Mg、Naと地球大気起源の酸素原子による反応で、高励起状態の分子(FeO,MgO,NaO)が生成され、長時間の発光に関与しているものと思われる。
著者
若山龍太 白井清昭
雑誌
研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2014-NL-216, no.21, pp.1-8, 2014-05-15

質問タイプの分類はファクトイド型質問応答システムにおける重要な要素技術である.従来手法では,あらかじめ定義されている質問タイプの粒度が粗いため,実用的な質問応答システムに用いるには不十分であるという問題があった.本研究では,関根の拡張固有表現階層に基づく詳細な質問タイプを定義し,質問文の質問タイプを Support Vector Machine (SVM) ならびに k-NN 法を用いて自動分類することを試みる.また,分類器の訓練データとして,正解の質問タイプが付与された質問文のコーパスに加えて,固有表現タグ付きコーパスを併用する手法を提案する.実験の結果,質問タイプ分類の正解率は 60.3%となった.学習素性の有効性を検証した結果,自立語,疑問詞の素性が質問タイプの分類に有効であること,訓練データの量が多いときには単語 bi-gram も有効な素性であることがわかった.一方,訓練データとして固有表現タグ付きコーパスを併用することの効果は確認できなかった.
著者
伊藤 滉貴 阿原 一志
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.88-95, 2017-11-03

本研究は第一著者が考案したHICHAIN(以下本ゲーム)という二人完全情報ゲームの提案,実装と,そのAI開発に関する研究である.本ゲームはアルファベットのカードを使ったゲームで,サイズに制限のない2次元の盤にカードの向きを指定して着手することで実質的に3次元の盤を実現している.また1ターンあたり平均約1000手と多く,探索空間は10162になる.このような盤を構成するため「相対参照アルゴリズム」とルールの実装に必要なアルゴリズムを考案し,本ゲームのAIの実装に向けて探索アルゴリズムや評価方法を考察した.