著者
木田 隆文
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.29, pp.190-166, 2021-01

" 漢口(武漢)日本租界に関する研究は、これまで政治史や建築・都市研究の分野で一定の成果が挙げられてきたものの、居留民社会、特にその文化面の研究は資料不足も相俟ってほとんど進展がなかった。 しかし先ごろ稿者は、漢口で発行された文学雑誌『武漢歌人』および『武漢文学会雑誌 武漢文化』の二誌を入手した。両誌は現地居留民が結成した文学者団体、武漢歌話会・武漢文学会の会誌であったが、やがて汪兆銘政権が設立した翼賛文化団体である中日文化協会武漢分会の機関誌へと位置づけを変えた。そのためこの両誌からは、現地居留民社会の文芸文化の動向だけではなく、汪兆銘政権統治地域における文化支配の実態をうかがい知ることもできる。 本稿はその両誌の改題および記事細目を紹介することで、武漢居留民社会の文化動向および文化支配の実態を解明する基礎資料を提示することを試みたものである。"
著者
謝 銀萍
出版者
国際基督教大学キリスト教と文化研究所
雑誌
人文科学研究 (キリスト教と文化) = HUMANITIES (Christianity and Culture) (ISSN:24346861)
巻号頁・発行日
no.52, pp.(237)-(257), 2020-12-15

本稿では、屏風絵地獄変の誕生に関わる絵師良秀、小猿、良秀の娘の死に着目し、それぞれをいかに理解すべきかを追及し、芸術における死の意味を突き止める。そして「戯作三昧」における馬琴像との関係性を踏まえ、芥川が本作を通して求めようとした芸術家のあるべき姿を明らかにする。先行研究では、芸術と権力、芸術と生活という二項対立の前提の下で、良秀の死が芸術至上の表現か、生活への敗北かと言われ続けてきた。けれども、小猿の死と良秀の娘の死を合わせて考えれば、むしろ「地獄変」は芸術対生活の構図から脱構築の作品として読める。小猿の殉死の前後に見られる良秀の表情の変化からすると、その死があってからこそ、良秀は家族愛という世俗観から抜け出し、完全な芸術家へ進化することに成功したといえる。小猿の人間的な一面に引き立てる良秀の原始的で野性的な意欲が、目の前の地獄よりも地獄である現実を受け止めさせたのであろう。良秀の意図的な自殺により、これまで亀裂のある良秀の両面が統合し、完全な芸術家かつ完全な人間像が完成する。良秀の死のタブー化と、威厳に感じられる屏風図より、命の代わりに永遠に超えられない芸術的な地位という良秀、いわば作者芥川の野心は実現したと指摘できる。また、良秀の娘の死は彼女が自主的に選んだものであり、父親の芸術に献身したといえる。彼女の悲劇的な死があったからこそ、地獄変の芸術的価値が昇華される。小猿、娘、良秀の死により、芸術至上のテーゼが見とれる同時に、世間の五常もまっとうとしている。このような設定により、芸術と生活の対立は和解され、立体的で人間らしい芸術家の形象が成り立つこととなる。 「地獄変」での大胆な試みの以前に、芥川は「戯作三昧」で芸術家を悩ませる外部的な影響要素と戦いながら、やっとのことで初心に咲き返し、一時的な三昧地を手に入れた馬琴像を構築した。しかし馬琴が到達した非日常的な空間はあくまで一時的なものであり、それが良秀の場合になると、その自殺により永遠なものとなってしまう。日常に縛り付けられる馬琴が人間の五常を凌駕する良秀へ変身するところに、売文、家族などに縛り付けられている芥川は作品の世界で、徹底的に芸術創作に取り込み、完全な芸術家となるという野心を実現したといえよう。
著者
Zi WANG Yoshihisa OHATA Yukari WATANABE Yiwen YUAN Yuki YOSHII Yoshitaka KONDO Shoko NISHIZONO Takuya CHIBA
出版者
Center for Academic Publications Japan
雑誌
Journal of Nutritional Science and Vitaminology (ISSN:03014800)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.347-356, 2020-08-31 (Released:2020-08-31)
参考文献数
29
被引用文献数
11

Calorie restriction (CR) by 30-40% decreases morbidity of age-related diseases and prolongs the lifespan of various laboratory animal species. Taurine (2-aminoethanesulfonic acid) is an important nutrient for lipid metabolism as it conjugates bile acids. Here, we investigated how taurine supplementation induces effects similar to the CR beneficial effects. Sprague Dawley rats were fed a diet containing different taurine concentrations (0, 0.5, 1.0, 3.0, 5.0%) to analyze the effects on growth, blood, and hepatic parameters. Rats fed a 5% taurine-supplemented diet showed a significant decrease in visceral fat weight, compared with control rats. Moreover, there were significant decreases in the serum total cholesterol, hepatic cholesterol and triglyceride concentrations in the taurine-supplemented groups compared with the control group in a dose-dependent manner. These results were associated with decreased mRNA expression of fatty acid synthase, and increased mRNA expression of carnitine palmitoyltransferase 1α. C57BL/6 mice were fed a 5.0% taurine-supplemented diet, and their response to 3-nitropropionic acid-induced oxidative stress was analyzed. The rate of weight loss due to oxidative stress decreased and the survival rate significantly increased in the taurine-supplemented groups compared with the control group. Finally, cells were treated with 100 μM taurine and their resistance to UV-induced oxidative stress was analyzed. We found that the p53-Chk1 pathway was less activated in taurine-treated cells compared with control cells. Furthermore, damage to cells evaluated by oxidative stress indicators revealed a reduction in oxidative damage with taurine treatment. These findings suggest that taurine partially acts as a CR mimetic.

1 0 0 0 OA 成る程の記

著者
林荘次郎 著
出版者
林荘次郎
巻号頁・発行日
1904

1 0 0 0 散楽と今様

著者
沖本 幸子
出版者
ぎょうせい
雑誌
国語と国文学 (ISSN:03873110)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.20-33, 2000-12
著者
渡邉 浩司
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.239-255, 2019-09-30

ロベール・ド・ブロワが13世紀後半に著した『ボードゥー』は,ゴーヴァンの息子ボードゥーの幼少年期に焦点を当てた物語である。母の手で騎士に叙任されたボードゥーが一連の冒険の末に,群島王の姫君ボーテを妻に迎える筋書きの中で重要な位置を占めるのは,ボードゥーが最初の試練で獲得する「オノレ」という名の剣である。そもそも古フランス語によるアーサー王物語群では,アーサー王の剣エスカリボール(エクスカリバー)を別にすれば,オノレのように固有名を伴う名剣は珍しい。オノレという名は騎士が守るべき「名誉」というキーワードをもとにしているが,この名の由来を作中人物が説明している点は特筆に値する。
著者
上江洲 薫
出版者
沖縄国際大学総合学術学会
雑誌
沖縄国際大学総合学術研究紀要 (ISSN:13426419)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.75-91, 2014-03

本研究では、沖縄県宮古島市におけるダイビング客への協力金の支払い求める協議会と募金を活用 した新たな産業化への取り組む NPO の活動を行う2つの環境基金の取り組みを考察し、離島の観光地域におけ る環境基金を活用した環境保全活動の特性とその活動の持続可能性を明らかにすることを目的とした。また、 筆者は以前に、石垣島における環境基金の活動特性を明らかしたが、本研究ではそれについて宮古島と比較検討を行う。
著者
大澤 康孝
出版者
横浜国際経済法学会
雑誌
横浜国際経済法学 (ISSN:09199357)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.27-48, 2010-03

來生新教授退職記念号
著者
渡辺 伸一 飯島 伸子 藤川 賢 渡辺 伸一
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本報告書は、カドミウム汚染による健康披害、土壌汚染、農業被害に関する社会学的調査の研究成果をまとめたものである。カドミウム汚染は、他の重金属公害に比べて全国的に多発しているが、本調査では、中でも代表的な事例である富山県神通川流域、長崎県対馬佐須地域、群馬県安中碓氷川流域の3事例を対象とし、比較考察すると同時に、全国的状況の総合的把握を目指した。本調査は、イタイイタイ病(イ病)およびカドミウム中毒に関する公害史の試みの一つでもあるが、環境社会学的視点から、とくに、被害者、家族、地域住民、行政、医学者、研究者等の各主体による認識と対応、および、公害にかかわる被害の社会的増幅・拡大(被害構造)を、地域ごとの違いを含めて明らかにすることに留意した。報告書では、前半で富山イ病を中心とする全国状況の把握、後半の各章で各地域の歴史と現状をそれぞれ紹介する。カドミウム中毒は、骨への激甚な被害をもたらすが、より微量でもカドミウム腎症(近位尿細管障害)の原因となることが明らかになってきた。それは、土壌汚染やカドミウム汚染米等の農業被害の問題ともかかわる。そのためもあり、カドミウムによる健康被害をめぐる医学論争は、イタイイタイ病訴訟や「まきかえし」の時代から30年以上たつ現在も継続している。本調査では、この論争をめぐる社会的要因を探ると同時に、論争の背後での被害者への影響を確認した。