著者
大木 麻理奈 横関 博雄 中村 悟 谷口 裕子 佐藤 貴浩 片山 一朗 西岡 清
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, 1997

アトピー性皮膚炎(AD)と病巣感染との関連についての報告は少ない.今回,扁桃の感染病巣の治療として扁桃摘出術(扁桃)を施行したAD患者10例と,歯科の感染病巣を治療したAD患者6例について,その効果を検討した.1990年4月から1996年6月までに当院に入院した成人AD患者183名のうち,扁桃の感染病巣が疑われた28名に扁桃マッサージ試験を施行.25列で,体温,白血球,血沈の上昇,皮疹の増悪のいずれかに陽性所見を認めた.このうち7例と,試験陰性もしくは未施行でも耳鼻科的に適応が認められた3例に,扁摘を施行.経過を追跡しえた7例中5例で6ヵ月以内に皮疹が軽快し,うち2例では1年以上にわたり皮疹の再燃を認めない.扁桃マッサージ試験で皮疹の増悪が認められた患者に,扁摘有効例が多く認められた.また,齲菌や歯根膿瘍などの歯科病変を合併し,抜歯などの歯科治療を施行したAD患者6例中,4例で歯科治療中にADの増悪を認め,全例で歯科治療終了後に一時的にせよADの軽快傾向を認めた.これらの感染病巣の除去により軽快するのは,顔面および頸部の■漫性紅斑ならびに漿液性丘疹,体幹の貨幣状湿疹様の皮疹が主であり,苔癬病巣や結節などは軽快しにくかった.ADの一部の症例では扁摘および歯科治療が有効であり,扁桃炎および歯根膿瘍などの感染病巣の存在も,ADの増悪因子の一つであると考えられるため,AD患者において感染病巣の積極的な検索が必要であると考えられる.
著者
加藤 逸郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.726-729, 1998-11-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4

硫酸工業は歴史が古く, 当初の硝酸式硫酸製造方法は現在全て接触式に切り替わった。原料は環境問題等から硫化鉄鉱から回収硫黄および製錬ガスに変わった。触媒は圧力損失の減少および接触面積の拡大を図ったリング触媒が登場した。SO_3吸収工程の吸収熱は廃棄されていたが, 高濃度・高温度硫酸でSO_3を吸収し, 発電に利用する技術が開発された。硫酸冷却器は従来のイリゲーションタイプに代わってステンレス製電気防食式のシェル・チューブタイプのものが普及しつつある。
著者
島田 信宏
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.631, 1976-10-25

前回までは3回にわたり,CPDの診断までの過程を解説してきました。その妊産婦が完全にCPDであると診断されたような場合,帝王切開術が唯一の分娩様式となります。しかし実際には,このような症例よりもCPDかどうか判定に苦しむ症例,たとえば,児頭計測値は9.5cm,TCの値は10.4cmで,その差0.9cmといったような場合は,ほんとうにCPDといって,帝切のみがこの症例の唯一の分娩様式といい切れるのかどうか,誰でも疑問に思えてくることでしょう。 そこでこのような場合CPDと明確に判定できないという理由で,borderline caseとして,一応経腟分娩を試みてみる。そしてそれが駄目なら帝切にするという方式をとります。このような分娩形式を試験分娩test of laborといいます。もしそれが不可能ならいつでも帝切にきりかえられるように,その準備も同時にしておかなくてはなりませんので,経腟分娩,帝切と2つの異なった分娩様式のセットを同時に作らなくてはならなくなります。この両者同時の準備をdouble set-upと呼び,試験分娩を行なう時は,いつでもこの体制でのぞまなくてはならないとされています。
著者
SPILLMANN Franz
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1941, no.20, pp.27-32, 1941

本化石はエクアドル國太平洋岸サンタ・エレナ半島, ラ・リベルタ戸附近の崖に露出するデルタ堆積中の化石帯に發見さる。本化石帯の時代はPleistoceneに屬し, 筆者はβ化石帯と呼ぶ。化石帯の厚さ約50cm, アスファルトの存在により化石は茶褐色を帯ぶ。随伴せる動物群は主として草原性にして<I>Neohippus・Protauckenia・Smilodon。Protolycaloper・Palaeospeothus-Palaeoodocoileus・Megatherium・Mylodon</I>・數種の小型齧齒類・其他鰐・龜・多數の昆蟲・現棲種の鳥類・蛇・蛙等發見さる。<BR>。化石は大臼齒を完全に有する左側下顎骨1個及び3個の分離せる下顎臼齒にしてCaviidae科の亜科・Hydrochoerinaeに屬す。<BR>著者は本化石により<I>Prohydrochoerus sirasakae</I>なる新屬新種を創れり。現生<I>Hydmhoerus</I>屬は水中及び濕地に棲息し, 短頭, 短躯, 四肢短し。齒隙は下顎に於て齒列より短し。<I>Protohydrochoerus</I>屬は草原性にして, 頭骨及び四肢長く, 齒隙は齒列より長し。<I>Hydrochoerus</I>及び<I>Protohydrochoerus</I>に於てはlamellaeに狹き連絡あるも<I>Prohydrochoerus</I>は純然たるelasmodontなり。齒隙及び齒の構造より見て<I>Prohydrochoerus</I>は<I>Hydrochoerus</I>及び<I>Protohydrochoerus</I>の中間型なるべし。<BR>本稿をエクアドル・エスメラルダス州に於て調査に從事中不幸にも犠牲となりし故白坂虎吉技師の靈に捧ぐ。
著者
村木 俊之 垣野 義昭 村上 大介
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.965-969, 2003-07-05 (Released:2009-04-10)
参考文献数
4
被引用文献数
1 2

High speed dry turning is one of the most important themes in ecological manufacturing. But in conventional turning style, it is difficult to reduce cutting temperature because the cutting edge is contacted to the work-piece continuously. Then in mill-turning, high speed face milling is applied for machining of cylindrical parts, and it is possible to reduce cutting temperature by using high speed-interrupted-small depth cutting method so as high speed endmilling. In this study, we have made clear the ability of mill-turning, and optimum cutting conditions for tool life. So we developed the prototype cutters for mill-turning, and tested their performance
著者
池澤 秀起 井尻 朋人 高木 綾一 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ab1307, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 肩関節疾患患者の肩関節挙上運動は、肩甲骨の挙上など代償運動を認めることが多い。この原因の一つとして、僧帽筋下部線維の筋力低下による肩甲骨内転、上方回旋運動の減少が挙げられる。そのため、患側上肢の運動により僧帽筋下部線維の筋活動を促すが、可動域制限や代償運動により難渋する。そこで、患側上肢を用いない運動として、腹臥位での患側上肢と反対の股関節外転位空間保持が有効と考えた。腹臥位で股関節外転位空間保持は、股関節に加え体幹の安定を得るための筋活動が必要になる。この体幹の安定を得るために、股関節外転位空間保持と反対側の僧帽筋下部線維が作用するのではないかと考えた。そこで、僧帽筋下部線維のトレーニングに有効な股関節外転角度を明確にするため、外転保持が可能な範囲である股関節外転0度、10度、20度位における外転保持時の僧帽筋下部線維の筋活動を比較した。また、各角度での僧帽筋下部線維の活動を、MMTで僧帽筋下部線維の筋力測定に用いる腹臥位での反対側の肩関節外転145度位保持時の筋活動と比較した。これにより、僧帽筋下部線維の活動がどの程度得られるかを検証した。【方法】 対象は上下肢、体幹に現在疾患を有さない健常男性14名(年齢23.1±3.7歳)とした。測定課題は、利き足の股関節外転0度、10度、20度位空間保持と、利き足と反対側の肩関節外転145度位空間保持とした。測定肢位は、ベッドと顎の間に両手を重ねた腹臥位とし、この肢位から股関節屈伸0度位で設定角度まで股関節外転させ、空間保持させた。肩関節外転位空間保持は、MMTでの僧帽筋下部線維の測定肢位である、肩関節145度外転、肘関節伸展、手関節中間位で空間保持させた。測定筋は利き足と反対側の僧帽筋下部線維とした。筋電図測定にはテレメーター筋電計(MQ-8、キッセイコムテック社製)を使用した。また、肩関節、股関節外転角度はゴニオメーター(OG技研社製)で測定した。測定筋の筋活動は、1秒間当たりの筋電図積分値を安静腹臥位の筋電図積分値で除した筋電図積分値相対値で表した。さらに、股関節外転位空間保持において、股関節外転角度の変化が僧帽筋下部線維の筋活動量に与える影響を調べるために、各外転角度での僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値を比較した。加えて、僧帽筋下部線維の活動量を確認するため、腹臥位での肩関節外転145度位保持時と、股関節外転0度、10度、20度位保持における各々の僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値を比較した。比較には一元配置分散分析及び多重比較検定を用い、危険率は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には本研究の目的及び方法を説明し、同意を得た。【結果】 股関節外転位空間保持での僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値は、股関節外転0度で14.6±10.9、10度で17.1±12.3、20度19.9±16.6となり、股関節外転角度の増減により有意な差を認めなかった。また、肩関節外転145度位保持時の僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値は17.6±9.9となった。股関節外転0度、10度、20度位保持時の僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値と、肩関節外転145度位保持時では全てにおいて有意な差を認めなかった。【考察】 腹臥位での股関節外転位空間保持で、僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値は、股関節外転角度の増減により有意な差を認めなかった。この要因として、ベッドによる体幹支持、体幹筋や僧帽筋下部線維を含めた肩甲骨周囲筋の活動など、様々な要素が脊柱や骨盤の固定に作用したためではないかと考える。 一方、腹臥位での肩関節外転145度位保持時と股関節外転0度、10度、20度位保持時の僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値を比較した結果、有意な差は認めなかった。つまり、全てにおいて同程度の僧帽筋下部線維の筋活動が生じていたといえる。このことから、腹臥位での股関節外転0度、10度、20度位保持は、上肢の運動を伴わずに反対側の僧帽筋下部線維の活動を促せるため、可動域制限や代償動作により筋活動を促すことに難渋する対象者の治療に活用できる可能性がある。しかし、股関節外転位空間保持による反対側の僧帽筋下部線維の活動は脊柱の固定に作用することが考えられるため、起始部付近の活動が主であることが推察される。そのため、上肢挙上時の僧帽筋下部線維の筋活動に直結するかは検討の余地が残ると考える。【理学療法学研究としての意義】 腹臥位での股関節外転0度、10度、20度位保持は、反対側上肢の僧帽筋下部線維のトレーニングに有効であることが示唆された。これは、可動域制限や代償動作により僧帽筋下部線維の活動を促すことが難しい対象に対して有効であると考えられた。
著者
鵜飼 祐江
出版者
国立大学法人 東京医科歯科大学教養部
雑誌
東京医科歯科大学教養部研究紀要 (ISSN:03863492)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.50, pp.67-78, 2020 (Released:2020-05-09)

「近江の君」呼称の初出は、父内大臣の会話文中に見られ、異母姉弘徽殿女御のもとでの宮仕えを機に、女房 名のようにして用いられはじめる。「内大臣家のむすめ(姫君)」から女房的な存在へと、彼女の扱いに変化が生じて いることを窺わせる。同じく地名に因む呼称に明石の君の「明石」があるが、「明石」は、光源氏の流離と再起の物語 を内包する呼称であり、質が異なる。出仕名には、父兄の身分が反映されることが多いが、「近江の君」は父によって、 むしろ内大臣家から切り離された存在として呼ばれてゆくものと考えられる。
著者
黒田 長礼
出版者
日本動物学会
雑誌
動物学雑誌 (ISSN:00445118)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.277-279, 1960-09

In Japan there have been collected only four wild specimens of what we call the Female Mallard assuming the male plumage. Among these intersex specimens, no. 2 example which came from Teganuma, Chiba Prefecture, was studied by Dr.Yamashina ('48) and was found to have had its right and left ovaries turned into testes. Concerning the remaining examples the same phenomena have been seen in the old females, such as the Mandarin Duck, the Teal and the Pintail, which must have been brought about by the shrinkage or some other disorder of their ovaries. Bluba ossea, an organ belonging to trachea, peculiar to the male duck, does not exist in these intersex specimens and proved not te be affected by means of sex hormone.