著者
佐々木 光俊
雑誌
千葉経済論叢 = The Chiba-Keizai ronso (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.29-64,

古代メソポタミアの代表的な物語の一つである「エタナ物語」を採り上げ、その背後にある<ワシの力>という観念の重要性に注目した。そして、この観念がシュメール文化の最初期から確認され、変容・変化を遂げながら新アッシリア時代の物語にまで引き継がれていることを、この物語の再読と他の物語との連関を探ることによって明らかにすることを試みた。この観念がもつ主権性との近縁性のために生じる他の諸神との競合として「アンズー物語」をとらえる。またニヌルタ神をワシの力や樹のイメージという「エタナ物語」の表象を通して、この神格の特性を捉えかえす。最後にもう一つの代表的な物語である「ギルガメシュ叙事詩」とこの物語にみられる共通性とその意味について検討した。
著者
久保 進
出版者
松山大学総合研究所
雑誌
松山大学論集 = MATSUYAMA UNIVERSITY REVIEW
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.1-32, 2016-12-01
著者
田村 美由紀
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:24343110)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.75-100, 2023-03-31

本稿は、武田泰淳と武田百合子の口述筆記創作に着目し、書くことの協働性が具体的な文学実践のなかにどのように織り込まれているのかを考察するものである。 二人は「男性芸術家とその妻」であり、創作現場における「口述者と筆記者」でもあったが、作家夫婦にしばしば生じる支配と従属の関係とは一線を画するものとして、肯定的に評価されることが多い。しかしながら、二人の関係性を無前提に称揚してしまうことは適切ではないだろう。重要なのは、二人の関係性が望ましいものであることを論の前提とするのではなく、何がそうした関係を切り拓く鍵となっていたのか、その背景を解きほぐしていくことである。本稿では、泰淳の病後、百合子の筆記によって彼の執筆活動が成り立っていたことに目を向け、書くことのディスアビリティに対峙した両者の姿から見えてくる問題について、ケアや中動態の概念を補助線に検討をおこなう。 分析対象に取り上げる『目まいのする散歩』(1976年)は、病後の不如意の身体に対する泰淳の意識が強く反映されており、書く行為を他者に委ねるという状況を彼自身がどのように捉えていたのかを考える上で興味深いテクストである。テクストに示された自律した主体像への懐疑的なまなざしを、中途障害を抱える自らに対する内省として捉え、そうした依存的な自己のありようを凝視することが、他者との開かれた関係を構築する契機となっていることを明らかにする。 また、テクスト後半のロシア旅行に関する章で用いられる百合子(筆記者)の日記を借用するという方法に焦点を当て、それが「書かせる」(能動)/「書かされる」(受動)という単純な二元論に回収し得ない、書くことの協働性に結びついていることを論じる。ケアの思想に基づくこれらの分析を通して、一方的な搾取や支配の関係ではなく、互いの他者性や依存性を否定しない倫理的な関係を築くための視点を導出することが本稿の目的である。
著者
佐々木 哲也 天内 大樹 下澤 嶽 ササキ テツヤ アマナイ ダイキ シモサワ タカシ Tetsuya SASAKI Daiki AMANAI Takashi SHIMOSAWA
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.23, pp.151-160, 2023-03-31

大学生協は、法令に基づき、学生や教職員らの組合員により組織された機関によって民主的に運営されている。多くの大学生協は全国大学生活協同組合連合会や各地の事業連合に加盟しており、これらの組織から支援を受けつつ、専従の生協職員を雇用して事業を行っている。これにより多様なサービスの安定的・効率的な供給を実現させている一方で、機関運営と事業運営とが隔てられ、組合員による機関運営の役割や裁量は限定的なものとなり、ガバナンスの形骸化という組織運営上の問題を抱えている。 静岡文化芸術大学生活協同組合(以下、文芸大生協)では、2021年度に当時雇用していたパート職員が文芸大生協の資産を不正に取得する被害が発生し、これに対して、損失の処理、情報公開、不正の再発防止などの対処を行った。同様の不正の被害は全国の大学生協で散発しているものの、過去の事例を参照できず、文芸大での不正の対処は困難を極めた。また、不正の再発防止において対策にかかるコストや役員の負担などの難しい課題を残すなど、大学生協のガバナンスの問題を浮き彫りにした。 本稿では、文芸大生協での不正とその対処を事例として報告した上で、大学生協のリスク管理の改善には、全国・地域単位での多層的なガバナンスの構築と、大学の主体的な関与が必要であることを提示する。
著者
宇田川 幸大
出版者
中央大学商学研究会
雑誌
商学論纂 (ISSN:02867702)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5-6, pp.1-31, 2023-03-01
著者
定藤 博子 サダトウ ヒロコ Hiroko Sadato
出版者
鹿児島国際大学附置地域総合研究所
雑誌
地域総合研究 = Regional studies (ISSN:09142355)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.55-65, 2019-03-30

Kirishima International Music Festival was founded under the name of "Kirishima International Music Festival / Master courses" in 1980. There were 3 aims, rising the cultural level in Kagoshima, rising the educational level of Japanese artists and the tourism resources development of Kagosima. Sharing these purposes, the people in Kagoshima, especially in Kirishima, support this festival, the foundation makes the programs and the local government offers the financial support. The inhabitants, the business and the government, these 3 elements certify the authenticity. This is why this festival has continued for 40 years.
著者
中野 由章
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.331-335, 2021-06-15

大学入試センターが,2020年11月に「平成30年告示高等学校学習指導要領に対応した大学入学共通テストの『情報』の試作問題(検討用イメージ)について」を発出した.プログラミングについては,Python風の擬似言語で出題されており,Pythonを知らなくても取り組める工夫がされている.「情報デザイン」や「データ活用」については,今後の提案が待たれるところである.試作問題全体を通して,特定領域の知識有無よりも,文章からその文脈を読み取り,論理的に思考して判断するような,広く総合的な問題解決力を問うものが多い.「情報I」や総合的な探究の時間だけでなく,発展的科目である「情報II」の開設も各高等学校において積極的に行われるべきである.
著者
辻野 雄大 山西 良典 山下 洋一 井本 桂右
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.96-103, 2019-09-13

ダンスゲーム譜面は,操作を要求される頻度,リズム構成の複雑さなど,複数の要素によって特徴づけられる.これらの要素によって,ダンスゲーム譜面の難しさおよび「面白さ」に影響する特性が形成される.この特性を客観的かつ多次元で表現する特徴量を提案する.提案した特徴量に基づいてk-means法によるクラスタリングを実施し,特性が類似した譜面のクラスタを得る.クラスタ毎に楽曲と譜面の関係を深層学習させることによって,クラスタの特性を備えた譜面の自動生成が可能となり,多様な「面白さ」に対応した特徴的な譜面の提供を実現した.
著者
鈴木 孝 中島 明彦 上杉 利明 浅見 令美 佐藤 正則
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第39回, no.応用, pp.2268-2269, 1989-10-16

平成4年1~2月期にH-Iロケットで打ち上げ予定の地球資源衛星1号(ERS-1:Earth Resources Satellite-1)はディジタル型の高精度三軸姿勢軌道制御方式を適用した地球観測衛星である。図-1にその外観を示す。本衛星のサブシステムの一つである姿勢軌道制御系(AOCS:Attitude and Orbit Control Subsystem2)は、ディジタル計算機を内臓した姿勢軌道制御電子回路を中心に構成されている。ディジタル計算機はビットスライス型LSI(AMD2901)を用いたマイクロプログラム方式16ビット計算機であり、ハードウェアとファームウェア共に宇宙環境下での放射線による障害の対策を施したカスタムメイドの衛星搭載計算機である。図-2にその外観を示す。諸元は、0.1MIPS、固定小数点演算、命令数74、ROM16KW、RAM2KWである。搭載計算機に格納されるソフトウェアは、計算機インタフェースを介して、センサデータを入力し、AOCSの制御アルゴリズムの計算、フェールセーフアルゴリズムの計算等を行い、再び計算機インタフェースを介して、アクチエータデータ及びコンポーネントオンオフデータを出力する。図-3にその機能ブロック図を示す。軌道上での搭載ソフトウェアのバグが衛星の運用に非常に大きな影響を与えることは明らかであり、このためにもいかに搭載ソフトウェアを設計製造段階で検証し、その品質を保証するかが大きな課題となっている。
著者
飯島 巧介 國井 洋一 Kosuke Iijima Yoichi Kunii
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.143-153, 2023-03-10

本研究では,千葉県に所在する龍角寺岩屋古墳の建設において,現在の技術および古代の技術を用いた際における両者の工程表や積算についてそれぞれ検討および比較を行い,文献調査をもとに現在の建設現場に活かせる技術を推察することを目的とした。現況の龍角寺岩屋古墳に対して地上レーザスキャナによる3次元測量を実施し,形状および大きさを把握した上で,各時代の工事条件を適用することにより比較を行った。その結果,古代における施工は,現在と比較すると約3倍の時間と約46倍の人員を必要とすることが明らかとなった。また,千年以上経過した現在でも一部を除いて原型を留めていることが確認されたことから,適切かつ優れた締固め技術が使用されたと推測される。本対象地で締固めに使用された技術と道具の特定が可能であれば,現在の建設現場,とりわけ僻地や狭隘地等での活用が期待できる。