著者
柏野 健次 カシノ ケンジ Kenji KASHINO
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.17-28, 2009-01-31

英語の数ある文法項目の中で「比較表現」についての文献は内外とも比較的少なく、また現行の中学校の検定教科書を見てもその扱いはきわめて簡単である。これでは、生徒にとっても、また教える側の教師にとっても情報不足の感は否めないであろう。そこで、本稿では教えるための英文法のケース・スタディとして「比較表現」を取り上げ、形容詞の文字通りの意味と中立的な意味、as ~as構文の表す本当の意味、as~as構文の表す語用論的な意味、「鯨の構文」の訳し方、比較級と否定、「no+比較級+than」と「as+形容詞+as」の比較、最上級とthe、日本の英語教育に見られる誤解について解説していきたい。その際、日本の学習英文法で知られていないこと、あるいは誤解されていることを中心に述べていくことにする。 本稿で明らかにした情報は自信をもって英語を教えるために、教える側の人間が必ず携えていなければならない種類のものである。「教えられたように教えるな」とよく言われるが、日本の英語教育界にあっては、かたくなに新しい知識の導入を拒み、従来の教え方を断固として変えようとしない教師が多いと聞く。英語研究も医学の研究と同じように、分からなかったことが次第に分かってくるという性質を帯びているのであるから、教える側の人間の研鑽が切に望まれる。
著者
古川 顕 Akira Furukawa
出版者
甲南大学経済学会
雑誌
甲南経済学論集 = Konan economic papers (ISSN:04524187)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3・4, pp.45-91, 2020-03-20

古代中国, なかでも春秋戦国時代は, 中国の長い歴史の中でも注目すべき激動の時代であった。春秋戦国時代の大きな特色の一つは, 従来の青銅器製造技術が高度に発達して鉄製農具が出現し, 牛を使って畑を耕す牛耕農業が出現したことである。牛耕農業の出現・普及は華北の農業生産力を飛躍的に発展させ, その農業生産力の発展を土台にして商取引の発展を促した。商取引の発展は, 商取引を円滑にする度量衡, 貨幣, 文字の全国的な統一をもたらした。古代中国の貨幣の起源を考察・検討するときにしばしば 着するのは貝殻, とりわけ子安貝である。子安貝は古来より世界的に注目されてきた貝殻であるが, なかでも古代中国の殷・周時代や春秋戦国時代などに貨幣として使用されたとされている。子安貝は, いわゆる貝貨の典型的な事例である。そうした古代中国の貨幣の発展を対象として,「近代考古学の父」と称される浜田耕作の, 古代中国の貨幣の起源を子安貝に求める独創的な考え方がある。
著者
畑本 裕介 Yusuke Hatamoto
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.11-24, 2018-03-01

この論文は、社会福祉行政における専門性概念がこれまでどのような意味合いを担い、これからどのような意味合いを担うようになるかを考察するものである。社会福祉行政においては社会福祉主事という福祉専門職が雇用されているが、その専門性は、行政庁内における他部局から分離するための意味合いが第一に求められていた。こうした専門性の考え方を、この論文では専門性の「形式的理解」と呼んだ。専門性の形式的理解においては、専門性の内実は、経験年数をはじめとした「熟練」で代替されるものであった。しかしながら、社会福祉士という国家資格が整備されたり、行政庁内において社会福祉行政の比重が高まったりすると、こうした形式的理解では不十分となっていく。代わって、求められるようになるのは、専門性の「本質的理解」である。この論文では、新たな専門性理解において求められる要素についても考察している。それは、①特別性を持つ対象への相談事務、②社会福祉計画策定技術、③庁内外での社会福祉関連知識の普及者としての役割、の3つである。
著者
松田 俊道
出版者
中央大学文学部
雑誌
文学部紀要 史学 (ISSN:05296803)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.135-161, 2021-03-10
著者
小倉 英里 工藤 真代 柳 英夫
雑誌
研究報告デジタルドキュメント(DD)
巻号頁・発行日
vol.2010-DD-78, no.5, pp.1-8, 2010-11-19

グローバル経済が加速する中で,英語版ドキュメントは海外市場進出の要となる.しかし,多くのメーカー企業では,英語版ドキュメントの言語品質の低さに悩まされている.英語のネイティブライターが関与していないことも原因のひとつだが,それ以上に,英訳を視野に入れて日本語版ドキュメントが作られていないことが,その最大の原因である.この研究では,英訳しづらい日本語の表現パターンを洗い出し,そのような日本語表現を規制できるかを検証し,規制された日本語は,その英訳の品質が改善することを明らかにした.
著者
小池 淳一
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.197, pp.145-158, 2016-02-29

本稿は筆記環境の近代化と消費文化の様相を万年筆を通して考えようとするものである。ここではまず,明治の日本において万年筆が販売に際してどのような位置づけであったか,について,丸善における広告宣伝を確認し,特に夏目漱石が書いた「余と万年筆」(1912)をはじめとする万年筆関係の文章を分析した。さらに三越百貨店における万年筆の販売の様相を『三越』『三越タイムス』からうかがい,その特徴について考察した。その結果として,万年筆は筆記の近代化のシンボルとして,明治末から大正の初めにはかなり普及したが,特に三越では舶来品としての万年筆の販売に尽力し,さらに関連する商品も視野にいれ,商品そのものばかりではなく,関連する知識や使用法の啓蒙にも努めていたことが明らかになった。日本における万年筆の歴史,筆記文化の近代を考えるためには,ここで論じた以外にも国産化の過程をはじめとする複眼的な考究が必要であろう。
著者
北西 弘
出版者
大谷学会
雑誌
大谷学報 = THE OTANI GAKUHO (ISSN:02876027)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.17-38, 1969-03
著者
神野 富一
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 = Studies in Literature and Culture (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.A1-A10, 2007-03-20

In this essay, I entered into a number of cases of Fudaraku Tokai, and showed that there was a historical change in the meaning of Fudaraku Tokai. In the end, I came to the conclusion that it had changed in the middle of 16th century. Before that, the meaning of Fudaraku Tokai was to reach Fudaraku alive. In the later half of the 16th century, however, it changed into "Jusuioujou" (i.e. to drown oneself wishing that he will be born again at Fudaraku), which was combined with the thought of the Pure Land.
著者
溝渕 翔平 西村 竜一 入野 俊夫 河原 英紀
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2015-MUS-107, no.60, pp.1-6, 2015-05-16

本研究では提案法を用いて通常歌唱音声にグロウル系歌唱の特徴を付与した際の印象を評価した.これまでの研究よりグロウル系歌唱音声特有の物理的特徴として 「1k~4kHz の帯域強調」,「基本周波数の振動」 及び,「スペクトル形状の高速な時間変動」 が確認された.従来法である 「スペクトル形状の高速な変動」 を付与したモデルは,観察された現象を表面的に模擬するために 4 個のガウス関数を組み合わせたものであり,声質の表現や発声の機構を考慮したものでは無かった.本研究では 「スペクトル形状の高速な時間変動」 を披裂喉頭蓋の形状変化と声帯音源波形の時間変化の相互作用としてモデル化することで,グロウル系歌唱音声の特徴を付与する手法をこれまでに提案した.本稿では,従来法と提案法を変換後の歌唱音声の一対比較実験により評価した.結果をサーストンの一対比較法により分析した結果,提案法がグロウル系歌唱音声の印象を付与するのに効果的であることが示唆された.