著者
近藤 久美子
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
no.3, pp.43-73, 1988-03-31

叙事詩には、ふつう、ことばの上でもまた内容的にも繰り返しが多くみられる。ホメロス学者のミルマン・パリーは、なぜ同じことばで同じことを何度も繰り返す必要があるのか、を問題にした。ホメロスが後世の、あるいは現代作家と同じように、紙とペンを使って書いたのであれば、むしろ繰り返しを避けたのではないか。つまりホメロスは文字を使わずに、あのように長く、複雑な物語詩を作り上げたのである。繰り返し使われる詩句は、特定の意味を伝えると同時に、詩行の特定の部分を埋めるよう工夫されている。したがって詩人は、そのような定型句をモザイクのように巧みに組み合わせることによって、口頭で、しかも一定の速度で物語らなければならないという要求に答えたのである。パリーの研究によると、ホメロス作品はすべて定型句から成っているという。しかも意味と定型句の関係は、ほぼ一対一対応である。何世代にもわたって受け継がれ、練り上げられてきた定型句、いわば叙事詩のことばを、用いたからこそ、ホメロスは素晴らしい叙事詩を残すことができたのである。小論は、以上のようなパリーの口頭詩論にもとづいて、フェルドウスイーの『シャー・ナーメ』が口頭詩の技術をもって作られていることを明らかにするものである。イランの代表的叙事詩とされながらも、『シャー・ナーメ』は、著者自ら文字資料に言及しているため、これまで狭義のliteratureとして扱われ、叙事詩としての特徴は、特に問題にされることもなかった。それどころか、先に述べたような口頭で作られた叙事詩に特有の語句やテーマの繰り返しは、文学作品として規定されているため、欠点として指摘されている。そこで、小論はパリーの後継者、アルバート・B・ロードが挙げる、口頭詩であるか否かを決める三つの規準、(a)定型句が使われていること、(b)一詩行内で文が完結していること、(c)一行が定型句から成るように物語がテーマの組み合わせによって作られていること、にそって『シャー・ナーメ』がどのように作られているかを順次考察していく。この手続きを経て初めて『シャー・ナーメ』を理解することができると考えるからである。
著者
瀬戸口 善則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.314-317, 1993-04-25

討論者は,「磁荷を用いるモデルは"artificial method"で"old theory"である」とするMaxwellの意見に賛成である.分極あるいは磁化について討論者が与えた正しい式は,細野氏の方法では決して与えることはできない.なぜなら,原子の数を失念しているとも原子の体積の評価が間違っているとも判断できるからである.
著者
深山 貴文 森下 智陽 奥村 智憲 宮下 俊一郎 高梨 聡 吉藤 奈津子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.59-64, 2016-04-01 (Released:2016-06-14)
参考文献数
17
被引用文献数
2

森林土壌のテルペン類の放出特性に関する研究は少なく,特に空間分布特性の評価が必要とされている。本研究はアカマツ林床が放出するテルペン類の主成分であるα-ピネンについて,その放出量を測定するための土壌チャンバーを開発し,空間分布特性と変動要因について検討した。野外観測の結果,樹幹からの距離とα-ピネン土壌放出量の関係性は方位の違い,個体差に関わらず認められなかった。アカマツのリター堆積量とA0層上の放出量の間には関係性が認められなかったが,リター堆積量とリター除去後に測定したA層上の放出量との間には春秋共に正の相関が認められた。室内実験で十分にリターを撹拌した場合,リター量とリターの放出量の間には線形的な関係が認められた。アカマツ林床では特に春に高い放出量が観測されるが,これはA0層上に存在する樹脂成分が放出量の不均一性をもたらすと共にその高い放出の原因となっている可能性が考えられた。
著者
竹村 幸祐 有本 裕美
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.40-49, 2008
被引用文献数
1

北米と同様に自発的入植の歴史を持つ北海道では,日本の他の地域とは異なり,ヨーロッパ系北米人に似た相互独立的な心理傾向が優勢であると報告されている(Kitayama, Ishii, Imada, Takemura, & Ramaswamy, 2006)。Kitayama <i>et al.</i>(2006)は,北海道で自由選択パラダイムの認知的不協和実験を行い,他者の存在が顕現化している状況よりも顕現化していない状況でこそ認知的不協和を感じやすいという,北米型のパタンを北海道人が示すことを見出した。本研究では,Kitayama <i>et al.</i>(2006)とは異なる方法で他者の存在の顕現性を操作し,彼らの知見の頑健性を検討した。実験の結果はKitayama <i>et al.</i>(2006)の知見と一貫し,他者の存在の顕現性の低い状況において北海道人は認知的不協和を感じやすく,逆に他者の存在の顕現性が高い状況では認知的不協和を感じにくいことが示された。<br>
著者
井田 良
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法学研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.103-111, 2010-05

特別記事 : 平成二一年慶應法学会シンポジウム 裁判員制度の理論的検証一 裁判員制度の特色二 裁判員制度は刑事裁判の質を高めるか三 裁判員制度が導入された理由四 ガラパゴス島からの脱出?五 裁判員制度は何をもたらすか六 法律学の自己反省
著者
横井 朗
出版者
慶應義塾大学大学院法務研究科
雑誌
慶應法学 (ISSN:18800750)
巻号頁・発行日
no.22, pp.9-26, 2012-03

テーマ企画 : 裁判員裁判の現状と課題はじめに第1 裁判員裁判の実施状況 1 起訴件数 2 裁判結果等 3 公判審理の日数等 4 現状の評価第2 施行状況の検討 1 「裁判員裁判に関する検討会」の設置 2 検討状況第3 これまでの検察の取組み 1 概要 2 具体的取組み 3 現状の評価おわりに
著者
大西 直樹
出版者
慶應義塾大学大学院法務研究科
雑誌
慶應法学 (ISSN:18800750)
巻号頁・発行日
no.22, pp.27-53, 2012-03

テーマ企画 : 裁判員裁判の現状と課題第1 はじめに第2 区分審理制度の概要 1 制度導入の経緯 2 制度の概要第3 区分審理決定の活用を検討すべき場合について 1 検討の前提 2 区分審理決定の適用に関する基本的な考え方 3 区分審理決定を検討するに当たっての考慮要素等(法71条1項) 4 区分審理決定の活用を検討すべき場合について第4 おわりに
著者
髙畑 満
出版者
慶應義塾大学大学院法務研究科
雑誌
慶應法学 (ISSN:18800750)
巻号頁・発行日
no.22, pp.55-92, 2012-03

テーマ企画 : 裁判員裁判の現状と課題1 はじめに2 公訴事実の概要3 被告人による事件の説明4 起訴段階の弁護方針5 公判前整理とその期間中に行われた手続の準備について6 公判前整理手続を終えて
著者
原田 國男
出版者
慶應義塾大学大学院法務研究科
雑誌
慶應法学 (ISSN:18800750)
巻号頁・発行日
no.22, pp.93-110, 2012-03

テーマ企画 : 裁判員裁判の現状と課題第1 はじめに第2 各事例の検討1 東京地判平成22年11月1日2 横浜地判平成22年11月6日3 仙台地判平成22年11月25日4 宮崎地判平成22年12月7日5 長野地判平成23年3月25日6 東京地判平成23年3月15日第3 まとめ
著者
大西 直樹
出版者
慶應義塾大学大学院法務研究科
雑誌
慶應法学 (ISSN:18800750)
巻号頁・発行日
no.31, pp.173-189, 2015-02

論説1 はじめに2 争点整理の位置づけと重要性3 裁判員制度施行後の実務における「試行錯誤」4 争点整理の在り方5 おわりに
著者
藤田 宙靖
出版者
青山学院大学
雑誌
青山法務研究論集 (ISSN:21850631)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.115-127, 2011-03
著者
藤田 宙靖
出版者
上智大學法學會
雑誌
上智法学論集 (ISSN:04477588)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-37, 2011-08