著者
小田原 誠 荻野 裕司 瀧澤 佳津枝 木村 守 中村 訓男 木元 幸一
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.81-86, 2008-03-15 (Released:2008-04-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

大麦黒酢,大麦糖化液,酢酸を高血圧自然発症ラット(SHR)に与え,大麦黒酢が血圧に与える影響について調べた.その作用機序の検討としてin vitroにおけるアンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害活性の測定を行った.また,酸度とエキス分を等しくした大麦黒酢と米黒酢について,SHRを用いた単回投与試験を行い,血圧降下作用を比較した.(1)単回投与試験,連続投与試験のいずれにおいても,大麦黒酢は蒸留水(対照)と比較して有意に血圧を降下させることが示された.これにより,大麦黒酢は血圧降下作用を有することが明らかとなった.(2)連続投与試験において,酢酸だけでなく大麦糖化液においても血圧降下作用が認められたことから,大麦黒酢の血圧降下作用は,酢酸と大麦由来の成分の両方によるものと考えられた.(3)大麦糖化液ならびに中和した大麦黒酢においてACE阻害活性が認められたことから,大麦黒酢には大麦由来の血圧降下作用物質が含まれ,ACEを阻害することで血圧上昇を抑制していることが示された.(4)酸度とエキス分が等しくなるように調製した大麦黒酢と米黒酢について,SHRを用いた単回投与試験を行った.大麦黒酢と米黒酢はどちらも対照と比較して有意に血圧が降下しており,今回の実験では大麦黒酢の方が血圧降下の程度が高かった.このことから,大麦黒酢は米黒酢と同等以上の血圧降下作用を有することが示された.
著者
甲斐村 美智子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.277-284, 2010
被引用文献数
1

本研究では,わが国の文化を考慮し新たに作成された自己肯定感尺度を用い,女子学生の初経教育時からの月経の経験と自己肯定感の関連について検討した.その結果,初経時に家族が祝福する態度を示す,肯定的月経観・積極的対処行動の促進,随伴症状の軽減により,自己肯定感が向上することが示唆された.これらのことから,初経は一つ上の発達段階に到達した重要な節目という意識をもち,祝福することの重要性が再確認された.さらに,月経問題を主体的に捉え積極的に対処するスキルが獲得できるよう,初経教育のみならず発達段階や月経の成熟に応じた月経教育を家庭・学校・地域が連携して行っていく必要性がある.
著者
赤林 隆仁 Takahito AKABAYASHI
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 経済経営学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University (ISSN:21884803)
巻号頁・発行日
no.14, pp.33-44, 2014-12

東日本大震災で住基・戸籍の両重要データが同時に失われた自治体におけるディザスタ・リカバリの実際について検証し、今後必要となる措置・対策に関する考察を行った。震災の経験に基づいて戸籍については国全体でバックアップデータを保持する仕組みが構築された。住基については自治体の状況によって媒体二重保管、レプリケーション、クラウドという対処方法があるが、広域同時災害に対処するにはその上で国または都道府県レベルでの集中バックアップ体制の構築が効果的であると考えられた。
著者
山本 百合子
出版者
福山市立大学
雑誌
福山市立女子短期大学研究教育公開センター年報 (ISSN:13485113)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.75-84, 2005

福山市の高齢者の実態調査を実施し,本報では生き甲斐と衣生活について検討した。[生き甲斐]1,男性は「労働」や「散歩」に,女性は「知識」や「楽しみの」領域の他,「労働」などの多くに生き甲斐を感じていた。2,前期高齢者は多くの生き甲斐をもっていた。後期高齢者は「信仰」に生き甲斐を感じていた。3,健康な人は多くの生き甲斐をもっていた。一人では外出できない人は男女とも「孫の成長」を楽しみにしていた。この他,女性は「一家団欒」や「おいしいものの飲食」を楽しみにしていた。[衣生活]1,「冠婚葬祭などは,儀式の場にふさわしい服装をする」や「下着は綿製品のものを買うようにしている」は男女とも意識が高かった。この他,男性は「ゆったりとした楽な服が好きである」,女性は「ボタン付け,すそあげなどは自分でする」,「自分の服は自分で買う」なども高意識であった。2,前期高齢者は「着る楽しみ」や「買う楽しみ」の領域の多くを意識していた。「前あきの服」や「楽な服」は後期高齢者の意識が高かった。[生き甲斐と衣生活]1,男性は生き甲斐の「労働」や「楽しみ」の領域と衣生活の4領域「買う楽しみ」,「着る楽しみ」,「手を動かす楽しみ」,「着心地」と相関が見られたが,女性はほとんど相関が見られなかった。

1 0 0 0 OA 家族戦略?

著者
武川 正吾
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.43-51, 2013-04-30 (Released:2014-11-07)
参考文献数
26
被引用文献数
2 1

この報告は,家族戦略論のなかに公共政策を新しい変数として導入することを提案する.家族戦略の「構造的諸条件」の多くが公共政策の決定の結果として生み出されているからである.他方で,個々の家族戦略の集積の結果として,これらの「構造的諸条件」は単純再生産されたり,拡大再生産されたり,構造自体が変化する場合もある.日本も他の先進諸国と同様,グローバル化と個人化の影響を受けている.しかしその影響が他国と同様に純粋的な形で現れないのは,日本では「家族」が緩衝地帯としての役割を果たしているからである.このようなことが可能となった背景には,日本の福祉レジームの存在がある.しかし,その家族そのものの数が現在減少しつつある.家族変動に対する公共政策の影響は,これまで十分に評価されてきたとはいえない.しかし,公共政策の最初の一撃は,家族変動を含む社会変動にとって重要である.家族戦略と公共政策との間の正のスパイラルを確立するために,現在の日本では「公共政策による最初の一撃」が求められている.
著者
本田 孝志
出版者
日本高圧力学会
雑誌
高圧力の科学と技術 (ISSN:0917639X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.149-156, 2016 (Released:2016-06-21)
参考文献数
28

In this article, we introduce our recent high-pressure study on magnetism and multiferroicity in olivine-type Mn2GeO4. This compound shows successive magnetic transitions at ambient pressure and a ferroelectric ground state driven by spin-spiral order, i.e., a multiferroic state. The multiferroicity under high pressure was taken by using a recently constructed measurement system equipped with a diamond anvil cell. The pressure evolution of the magnetic structures was investigated with powder and single-crystal neutron scattering experiments using a Paris-Edinburgh press. We found that the ferroelectricity in the lowest-temperature phase disappears at 6 GPa where an incommensurate-commensurate magnetic phase transition is observed. The origin of the pressure-induced transition is discussed. Some details of the high-pressure experimental techniques will be also presented.
著者
山田 悟郎
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

北海道の続縄文文化は、7世紀後半には土師器をもった農耕文化の影響のもとに擦文文化に変容する。土器からはそれまで使用されてきた縄文が消え、住居の構造は方形でカマドをもったものとなり、鍛冶の技術や機織りの技術、雑穀栽培の技術などが導入され、生活様式が大きく変革した。擦文文化の経済基盤は河川でのサケ・マス魚とされてきたが、最近の調査では各種の雑穀を栽培する畑作農耕を行っていたことも明らかになっている。畑跡はまだ確認されていないが、道内では7世紀後半から12、13世紀までの34遺跡からアワ、キビ、オオムギなど16種類の栽培植物種子が出土したほか、鉄製の鍬先,鎌などの農耕具が出土する。畑作農耕は7世紀後半から9世紀中頃までは石狩低地帯以南の地で展開されたが、擦文文化の集落が石狩低地帯以北や以東に進出する9世紀後半頃から12、13世紀には、温暖な気候を背景としてほぼ道内各地で畑作農耕が展開された。ただ、石狩低地帯以南では7〜8種類の作物がみられるのに対し、以北では多くても4〜5種類と作物の種類は少ない。また、10世紀以降の遺跡から出土したオオムギに違いがみられる。石狩低地帯以南のオオムギは東北地方北部にその系譜が求められ、以北のオオムギは大陸沿岸地方の鉄器文化で栽培されていたものにその系譜が求められる。大陸系オオムギの導入にはオホーツク文化の集団が関与していたことが明らかになった。擦文文化の集団は河川や海洋での漁業や海上・陸上での狩猟も行っていたことは、出土した魚骨・獣骨から明らかで、畑作農耕や漁労・狩猟での産生物をその経済基盤としていた。狩猟・漁労産生物の一部は、自ら産生できない鉄器などを導入した対価となっていたものと考えられる。海運による交易経済が発展した12、13世紀には、擦文土器や竪穴住居が使用されなくなり、擦文文化からアイヌ文化へと変容する。
著者
岡本 佳男 毛利 晴彦 中村 雅昭 畑田 耕一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.3, pp.435-440, 1987-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
4 7

光学活性なポリ(メタクリル酸トリフェニルメチル)(PTrMA)を3種の異なる方法で大孔径シリカゲルに化学結合させ,高速液体クロマトグラフィー用のキラルな充填剤を調製した。その結果,メタクリル酸トリフェニルメチルとメタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルとのブロック共重合体を用いるともっとも多量のPTrMAをシリカゲルに化学結合できることが明らかになった。メタノールを溶離液に用いた場合の種々のラセミ体に対する光学分割能は,従来までのPTrMA担持型充填填剤と類似していた。また,この化学結合型充填剤ではPTrMAが溶解するテトラヒドロフランやクロロホルムといった溶離液も使用可能であった。クロロホルムを溶離液に用いて,(±)-PTrMAを(+)体と(-)体に部分的に光学分割することができた。また,ラジカル重合で得られたポリ(メタクリル酸ジフェニル-2-ピリジルメヂル)も光学分割でき,このポリマーがらせん構造を有していることがわかった。化学結合型充填剤はGPC用の充填剤としての性質も有していた。分子量数千から百万までの単分散ポリスチレンを分析すると,分子量の対数値と溶出時間との間によい直線関係が得られた。