著者
犬塚 典子
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-en Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.13, pp.133-147, 2019-03

日本における女性医師の比率は,2016年では21. %である。一方,OECD加盟国では概ね医師の2人に1人が女性という状況である(2015年)。海外における女性医師の養成並びに生涯学習の状況を知るために,カナダの医学教育,医師の専門分野における男女統計,女性医師団体による継続専門教育(Continuing Professional Development)の実践を考察する。カナダにおける女性医師比率は41.2%であるが,医師養成課程の在籍者数においては,1995年に50%を超え,2015年では55.1%である。医学教育の場では女性が多数派となり20年が経っているが,ワーク・ライフ・バランスやリーダーシップなどの面で課題は残されている。そのため,女性医師団体はネットワーキング活動と共に,カナダ専門医協会が定める継続専門教育の機会を提供し,女性のキャリア形成支援を行っている。
著者
大⻄ 裕也
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.e28-e34, 2021-03-15

2010年台後半から再び盛り上がりを見せている量子コンピュータの応用先として,量子化学計算が注目されている.本稿では量子化学計算とは何か,そして量子コンピュータによってどのような恩恵が量子化学計算にもたらされるのかを概観し,その道のりは決して平坦ではないが,制御レベル,ミドルウェア,ソフトウェア,アルゴリズムの面では非常に興味深い挑戦がいくつもあることを述べる.
著者
根無 新太郎
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.1-27, 2018-03

There were two types of military force used to suppress rebellions during the late Qing period: bing (兵), or regular troops consisting of the Green Standard Army and the Eight Banners, and yong (勇), or temporary volunteer troops organized into Yongying (勇營), mainly under governors-general and governors, in addition to tuanlian (團練) units on the village level. In Zhili (直隸) Province during the outbreak of the White Lotus Rebellion of the 1860s, bing, yong and tuanlian forces were deployed together to quell the insurrection, but the lack of discipline on the part of the bing-yong troops during the operation merely added to the civil unrest caused by the Rebellion. The Qing Court, in consideration of the effects of the worsening law and order on the capital of Beijing, reorganized the Green Army at the hands of the governor-general of Zhili in order to strengthen the government’s control, thus leading to the formation of Zhili Lianjun (直隸練軍).However, after the outbreak of the Nian Rebellion led to the further deterioration of law and order in Zhili Province, and as it became necessary to reinforce Zhili Lianjun with Yongying, the Court designed a new capital defense plan under which Yongying were deployed to limited areas, including southern and coastal areas of Zhili, either far away from Beijing or at the spot of the actual fighting, while Zhili Lianjun was stationed around Peking. This new capital defense plan was partly based on the Court’s, especially its Board of War’s (Bingbu 兵部), suspicion of Yongying, which included former rebels who had surrendered, and were thus deemed untrustworthy to serve around the Capital. This suspicion was further deepened due to the fact that Yongying also served as the governors-generals’ militia. As well, the Board of War had intervened several times during the establishment of Zhili Lianjun, owing to its concern over its close relationship with the governor-general of Zhili. The author takes up the Board as an excellent example of how the center’s attitudes toward the periphery began to change during the late Qing period.
著者
赤澤 紀子 赤池 英夫 柴田 雄登 山根 一朗 角田 博保 中山 泰一 Noriko Akazawa Hideo Akaike Yuto Shibata Ichiro Yamane Hiroyasu Kakuda Yasuichi Nakayama
出版者
情報処理学会
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.261-268, 2021-08-21

2022年より,高等学校の「共通教科情報科」は,必履修科目の「情報 I」と選択履修科目の「情報 II」が設置され,すべての高校生が,プログラミングなどを含む情報の科学的な理解を主とした「情報 I」を履修することになる.また,2025年から「情報 I」が大学入学共通テストで出題されることが正式に決定した.これにより,各大学の個別入試においても入試科目に「情報」が設置される可能性が増してきた.大学入学試験として情報を出題するためには,大学など出題する側と,受験する高校側で,出題内容や範囲,用語などの共通な知識体系が必要となる.しかし現在はまだ,「情報」の知識体系は明確に定められていない.そこで,本研究では,知識体系の明確化を目標として,「情報 I」の教科書で用いられる用語から知識体系に関する考察を行う.
著者
井原 今朝男
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.141-193, 2002-03-29

本稿は,長野盆地における大河川の氾濫原・沖積扇状地と山麓丘陵部という対照的な二つの地域における災害と開発の歴史を類型化する試みを提示するとともに,開発勢力に注目して中世社会の災害と開発力の歴史的特質を検討しようとするものである。前者,大河川の氾濫地域では開発が後れ,ほとんど近世の新田開発によると考えられていた。しかし,近年の大規模開発による考古学調査と用水や地名を中心とした荘園遺構調査など総合的地域史研究によって,10・11世紀における古代の先行した開発が確認され,大河川の洪水災害のあとも,伊勢上分米を開発資本として投資・復興させつつ御厨に編成しようとする動きと,国衙と結んで公領として再組織する動向とが拮抗していたこと。その開発勢力として伊勢平氏の平正弘一門が大きな役割を果たしたことを指摘した。他方,山麓丘陵部から扇状地一帯に古代の鐘鋳川を利用した条里水田が先行していたが,9・10世紀における土砂災害で鐘鋳川が埋没を繰り返す中で,国衙による条里水田の維持・復興が困難になり,院政期には後庁の在庁官人を指揮しうる院権力と結ぶ開発勢力が鐘鋳川を復旧・延長し,周辺部の再開発地に松尾社領や八条院領を立荘していった。さらにその縁辺部の非条里水田地域では,鎌倉~室町期に御家人平姓和田氏や国人高梨氏が六ヶ郷用水という第二次的補足的用水体系を開削して新しい開発地域を拡大していく努力を繰り返した。この開発勢力として院の北面や女院侍として活躍する一方鎌倉御家人をも輩出した越後平氏諸流の存在を「京方御家人」という概念で把握すべきことを指摘した。地域の開発景観が時代の変遷と開発主体の相違にもとづいて複合構造をなしていたといえよう。
著者
高嶋 和毅 大森慈子 吉本 良治 伊藤雄一 北村 喜文 岸野 文郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.3811-3820, 2008-12-15

キャラクタの瞬目率を制御することによってキャラクタの魅力や心理状態の表現を操作する手法を検討し,キャラクタの瞬目アニメーションに関する設計指針を提案する.本研究では,2つのキャラクタ印象評定実験を行った.実験1では,刺激に中程度のリアリティを持つキャラクタモデル(男女2体ずつ計4体)を用い,瞬目率を9,12,18,24,36 blinks/minと変化させた場合の観察者の印象をSD法により評価した.実験2では,カートゥーンキャラクタモデル(男女,動物,未知の生物を各2体ずつ計4体)を用いて同様の実験を行った.これらの結果,18 blinks/minの瞬目率が最も親近性のあるキャラクタであると判断され,この傾向は人型キャラクタにおいて顕著であった.また,36 blinks/minなどの高頻度の瞬目を行うキャラクタは活発でない印象を与え,9 blinks/minといった低頻度の瞬目では知的な印象を与えることなどが分かった.
著者
中宮 賢樹 赤司 陽介 山川 宏 Nakamiya Masaki Akashi Yosuke Yamakawa Hiroshi
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構特別資料: 第5回スペースデブリワークショップ講演資料集 = JAXA Special Publication: Proceedings of the 5th Space Debris Workshop (ISSN:1349113X)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-SP-13-018, pp.180-191, 2014-03-31

第5回スペースデブリワークショップ (2013年1月22-23日. 宇宙航空研究開発機構調布航空宇宙センター), 調布市, 東京
著者
WILS Jean-Pierre 河野 眞
出版者
愛知大学国際コミュニケーション学会
雑誌
文明21 (ISSN:13444220)
巻号頁・発行日
no.37, pp.81-107, 2016-12-20

翻訳:動物倫理の西洋文化Jean-Pierre Wils, Das Tier in der Theologie. In: Tiere und Menschen. Geschichte und Aktualität eines prekären Verhältnisses, hrsg. von Paul Münch. Paderborn u.a. 1998, 407–427.
著者
冨田 幸祐
出版者
日本体育大学オリンピックスポーツ文化研究所
雑誌
オリンピックスポーツ文化研究 (ISSN:24325538)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.103-123, 2021-06-30

本研究は、2017年度笹川スポーツ研究助成奨励研究「1964年東京オリンピックにおける参加国・地域に関する史的研究」及び令和元年度日本体育大学学術研究補助費「1964年東京オリンピックの歴史的意義を国際スポーツ界および国際社会との関係から再考する」の成果の一部である。
著者
川口 素子 Motoko KAWAGUCHI
巻号頁・発行日
vol.7, pp.25-37, 2008
著者
大川 康治 遠藤 聡志 谷口 祐治 久保田 恵子 庄司 博光 岸本 克巳
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT)
巻号頁・発行日
vol.2012-IOT-18, no.3, pp.1-5, 2012-06-21

琉球大学では,平成 22 年 3 月に千原キャンパスと上原キャンパスで新たな学内 LAN を構築した.この学内 LAN は各キャンパスそれぞれに設置する光集線装置と各研究室 (1600 カ所) をシングルモード光ファイバで直接接続するネットワークである.本稿では,GE-PON で隣接 ONU との通信ができない仕様の解決方法,およびスイッチネットワークと比較した運用時の課題解決について述べる.
著者
阿南 透
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.207, pp.223-252, 2018-02-28

本稿は,高度成長期における都市祭礼の変化を,地域社会との関係に注目しながら比較し,変化の特徴を明らかにするものである。具体的には,青森ねぶた祭(青森県青森市),野田七夕まつり(千葉県野田市),となみ夜高まつり(富山県砺波市)を例とする。青森ねぶた祭では,1960年代に地域ねぶたが減少するが,1970年代には公共団体や全国企業が加わって台数が増加し,観光化が進んだ。そして各地への遠征や文化財指定へとつながった。野田七夕まつりなどの都市部の七夕まつりは,1951〜1955年に各地の商店街に普及するが,1965〜1970年頃に中止が目立った。野田でも1972年にパレードを導入し,市民祭に近づけることで存続を図った。となみ夜高まつりなど富山県の「喧嘩祭」は,1960年頃に警察やPTAなどから批判されて中断し,60年代後半に復活した。このように,高度成長期前期には,どの祭礼にも衰退や中断,重要な変更がみられた。一方,後期には,祭礼が復興し発展したことが明らかになった。変化の要因として,前期の衰退には,経済効率第一の風潮のほか,新生活運動も関与していた可能性がある。後期の復興には,石油ショック以後の安定成長期の「文化の時代」に,祭礼が文化として扱われ,文化財指定を受ける「文化化」,祭礼が観光資源になる「観光化」,行政などが予算を立案し,業務として運営する「組織化」,さらに事故のない祭礼を目指す「健全化」などの特徴が見られる。