著者
鳥塚 莞爾 伊藤 健吾
出版者
Japan Radioisotope Association
雑誌
Radioisotopes (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.33-43, 2008-01-15
被引用文献数
4 3

全国PET施設のアンケート調査の回答結果から保険適用外の18種類の腫瘍における[<SUP>18</SUP>F]FDG-PET(FDG-PET)の有用性を検討した。すなわち神経内分泌腫瘍(神経芽細胞腫,褐色細胞腫,カルチノイド),悪性中皮腫(悪性胸膜中皮腫,悪性腹膜中皮腫),泌尿器領域癌(腎細胞癌,尿管癌,膀胱癌,Wilms腫瘍),男性性器癌(前立腺癌,精巣癌),縦隔腫瘍,副腎腺腫,皮膚癌(悪性黒色腫を除く),乳房外Paget病,多発性骨髄腫,心臓内腫瘍(左心房悪性線維性組織球腫),脾臓腫瘍(脾臓血管腫)の18疾患,133例(男性98例,女性35例)における成績を検討した。「極めて有用」は神経芽細胞腫,悪性腹膜中皮腫,腎細胞癌,尿管癌,膀胱癌,Wilms腫瘍,副腎腺腫,乳房外Paget病,左心房悪性線維性組織球腫,脾臓血管腫の10疾患であり,「有用性が高い」はカルチノイド,悪性胸膜中皮腫,前立腺癌,皮膚癌,多発性骨髄腫の5疾患であり,「有用」は褐色細胞腫,精巣癌,縦隔腫瘍の3疾患であった。なお,報告された泌尿器科領域癌及び皮膚癌は全例,術後の症例で,再発・転移巣の有無の検索のためにFDG-PETが実施された症例であって,術後の経過観察にFDG-PET検査は極めて有用と考えられた。
著者
柳 五郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.61-66, 1992-03-31
被引用文献数
2 2

明治初期における公園の特徴は,公園地の主たる撰定基盤が官有地に置かれていた。その為に官林地化された社寺境内地及び城跡地にも公園の基盤が求められたのである。しかし,官林地の取扱が内務省地理局から農商務省山林局に委ねられると,森林法の適用外とされた官林地公園の性格は,森林法で規定する保安林の中に潜在的な基盤を見出すようになる。そして,官林地公園は,公園の公益性から保安林の解除を求めざるを得ない状況となり,保安林との関係が森林法の改正につながって行く中で新たな段階を迎えた。この結果,大正期における官林地公園は,一時的な保存林的性格から森林法が適用される永続的な公園制度の実現に至ったものである。
著者
芳賀 博文
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.116-134, 1998-05-31

本稿の目的は, 第二次世界大戦後における邦銀の国際展開の空間的な側面を明らかにすることにある. 1960年代までは, 都市銀行, 特に外国為替専門銀行である東京銀行主体の海外展開がなされ, ニューヨークとロンドンの2大国際金融センターを主要な進出先としていた. 1970年代に入って邦銀の国際業務が拡大するとともに, 進出先は2大国際金融センター以外の都市へも広がっていく. 同時に, ニューヨークとロンドンに香港を加えた3大センターを軸とする, 世界三極体制がこの時期確立される. 1980年代は円高と好景気により, 地方銀行やその他の金融機関も加わって邦銀の海外進出が加速する. 地域的には, 北米や欧州といった先進国の都市やオフショアセンターへの進出が活発化する. そしてバブル経済後の1991年以降には, 店舗配置のリストラが起こるとともに, アジア諸国での急速な経済発展と当地域での規制緩和を受けて, 邦銀の国際展開はアジア指向が強くなった. こうした世界的な三極構造を基底とする邦銀の海外展開は, ニューヨーク・ロンドン・香港の3大国際金融センターをユーロ取引による外貨資金調達の主要な窓口とし, 取り入れた資金を主に日系企業の海外進出に伴う現地貸付として運用することで, それぞれの後背地域の都市間において比較的安定した階層的な関係を有しながら進出がなされて, 店舗ネットワークが形成されてきたと考えられる.
著者
黒田 康裕
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.196-199, 1995-05-01

新しい企業経営とそれを支えるITの進展によって,従来型の企業情報システム(MIS・SIS)とは異なった新しい情報システムの利用が可能になってきている。特に企業のエグゼクティブにとっては,円高・価格破壊・リエンジニアリングといった今まで以上にITを駆使した経営スタイルが必要とされている。今回はエグゼクティブにとっての情報とそれを支えるITについて述べる。
著者
富樫 幸一
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.119-141, 2003-05-31

日本工業は1980年代までの競争優位を誇った時期から,1990年代には国内におけるバブル崩壊,国際的な円高や中国を始めとしたアジア諸国との競争の激化によって大きな変容を迫られた.この10年間を通じて工場数と雇用は減少を続けたが,出荷額と輪出額においては増減を示している.衣服など低付加価値部門における衰退は著しいものの,機械工業などでは新製品の開発や市場開拓,より生産性の高い技術や工程の導入によって競争力を維持しようと努力している.日本の産業組織の特徴であった企業間での横並び的な競争関係から,各企業における優位なコア部門への集中と劣位部門からの撤退,そしてグローバル化した日本企業の中における国内工業のより高度化した機能へのシフトが進められている.その空間的な帰結は,大都市圏の旧式工場や地方圏における不採算部門の双方からの撤退と,大都市周辺部や地方圏残存工場の高度化という,個別企業からみても地域的にも不均等なものとなっている.日本の中央に位置する岐阜県の工業を事例としてみると,繊維,衣服,陶磁器,刃物などの地場産業は,円高と不況の中で大きく工場数や雇用,輸出を減じている.他方では中堅企業はグローバル化に対応しつつ,独自製品の開発や市場開発,生産工程の改善などに取り組んでいる.さらに空間的な取引関係も広域化,国際化が進んでおり,狭域的な産業集積においては量的な規模的な縮小とその機能の低下と内部での企業の二極分化が生じている.アジア諸国への進出は,従来の系列取引を越えたビジネスチャンスとなっており,それが国内の事業にも反響をもたらしている.こうしたことからも,企業のグローバル化と地域経済の産業空洞化を単純な二律背反の関係と見ることはできない.既存の日本の経済地理学では,国内における市場分割型立地や,空間的な階層的分業関係が明らかにされてきた.しかし,最近のリストラクチャリングを通じて,企業間での合併・再編を通じた立地システムの合理化や工場閉鎖が進んでいる.さらに,グローバルな立地戦略の中での日本工業のプラットフォームの浮き上がりと,その中での個別戦略に応じた工場立地のダイナミズムが生じている結果,大都市圏と地方圏の空間的階層関係も,よりゆるやかでまだら模様の状態へと変化している.日本の産業立地政策も,大都市圏から地方圏への分散促進策から,グローバル競争の下での効率性重視と,大都市への再集中の容認へと転換した.産業クラスターなどの新たな集積政策が提示されているが,それ自体は上記のような企業行動と産業集積の変容の中では限界があると考えられる.国家レベルの産業政策の役割が経済のグローバル化の中で低下した一方で,地域レベルにおいては企業向の連携や,大学,自治体との協力関係を促すものへと代わっている.また地域政策自体も,従来の産業優先から,地域づくりを通じた社会的セーフティネットの整備や,環境保全などの枠組みを重視したものに変えていくことが必要であろう.
著者
富樫 幸一
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.86-94, 2003-03-31

経済学の主流は経済システムの空間的側面にはそれほど関心を払って来なかったが,こうした状況は新しい地理的経済学の登場によって次第に変わりつつある.欧米における最近のいくつかの展望やリーディングスでは,政治経済学と新古典派経済学の両方の立場における経済地理学の再登場をよく裏づけている.日本国内の経済地理学者や中小企業研究者は,産業集積をめぐって独自の実証的な研究や政策提言に関わってきた.例えば,産業集積についての研究はしばしば英米でも取り上げられているし,外国人研究者も日本についての事例研究を著している.シリコンバレーや第三のイタリアはよく知られた例であるが,日本のいくつかの産業地区も,活力のある集積として研究されている.これらの産業地区についての実証的な研究は,地域内だけでなく,地域間やさらには国際的なリンケージも見られることを明らかにしており,空間的連関の分析上で集積やクラスターの側面だけを強調するのはそれを過大視することになろう.しかし,こうした既存の実証研究と新たな理論的発展の間での十分なやり取りがあるとは言い難い.新しい地理的経済学は抽象的なモデルにとどまるべきではないだろうし,より実証的な操作が可能な検討内容を提示すべきである.また経済地理学者も他の分野との交流を通じて,政策形成にも関与することが望まれるし,この学会としてもそうした経験をこれまでも全国大会や地域大会において続けてきている.1990年代中盤における急激な円高は,日本のメーカーや商社などの海外直接投資に拍車をかけた.国内の工場や下請企業は,海外への生産機能の移転による影響を被り,いわゆる空洞化問題が発生している.日本とアメリカの経済構造協議が始められ,日本政府は国内の農産物市場を開放することを決定した.アメリカ政府は大規模小売店舗法によってアメリカからの輸入が阻害されていることを問題として,この政策を規制緩和することを要求した.こういった規制緩和によって生じた地域的な影響の一つは,地方都市における中心商店街の空洞化であった.近年の大会シンポジウムのテーマは,明らかにこのような社会情勢と研究上の関心のシフトに狙いを定めたものである.2000年の「ITの空間的意義」における3つの報告では,それぞれ産業空間と都市空間,生活空間に焦点を当てていた.これまでのテーマでは,産業変動や立地を中心とする傾向が強く,生活空間の分野はあまり重視されてこなかった.家族やジェンダー,ロカリティなどは,日本だけではなく,国際的に見ても社会経済地理学において関心が高まっている.経済地理学者も,経済,社会,政治,文化の各領域やその相互作用に対してより幅の広い視点を持っていくことが必要であろう.
著者
伊藤 健二 田坂 修二 石橋 豊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1999, no.2, 1999-03-08

マルチメディア通信では, 複数メディアを同時に扱 う。このとき, ネットワーク遅延の揺らぎ等によって, 各メディアの時間関係が乱されることがある。この時間関係を維持するためには, メディア同期制御を行う必要がある。一方, メディアの転送方式には単一ストリーム方式とマルチストリーム方式がある。筆者らは, トランスポートストリーム数の違いと出力先でのメディア同期制御の有無の組合せとによって, 四つのタイプ(タイプ0〜3)のメディア同期方式(プロトコルセットと呼ぶ)を考えている。既に, 音声・ヒデオ各1ストリームに対するメディア同期プロトコルセットの性能を, 実験により定量的に評価している。しかし, これまで三つ以上のメディアを対象とした, 定量的な評価実験は行われていない。複数のメディアを扱う場合, 一部, 及び全てのメディアをインタリーブして多重化することが考えられる。そこで, 本稿では, 三つのメディア(2ビデオ, 1音声)を同時に扱う場合において, メディアのインタリーブが, 各メディアの出力品質に及ぼす影響を実験によって調査する。このために, QoS保証のないネットワークにおいて, 性能測定を行う。
著者
岡 一博 松井 甲子雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.1186-1191, 1997-05-25
被引用文献数
23 5

画像データの著作権保護の一手段として署名情報を画像内に密かに埋め込んでおく方法がある. 本論文では, その埋込み位置の決定に関数を導入し, ブロックごとに埋込みを施すことを提案する. まず, 署名したい原画像と埋め込みたい署名データを準備する. 埋め込む署名データはサイズが原画像の縦横各1/3である2値または多値画像とする. ここで原画像を3×3画素のブロックに分割し, 署名データ1画素に対し原画像の1ブロックを対応させる. 更に, 埋込み関数を用いて埋込み位置を一意に決定する. 次に, 選択されたビットプレーン上の画像情報に依存して埋込みを施す. このとき, 画質維持と署名の強度保持のため, 画素値の補正を行う. その結果, 画質の劣化が少なく攻撃にも強い署名法となることを示す.