著者
岡崎 正道
出版者
岩手大学人文社会科学部
雑誌
人間・文化・社会
巻号頁・発行日
pp.347-366, 1997-03-28

「国体」と言えば,戦後世代には「国民体育大会」の略称としか伝わらない。しかし戦前においてはこの言葉は,天皇を神聖不可侵の絶対的存在と位置づげ,これに対する無限の忠誠を日本人の崇高な責務として強要する,イデオロギーの表現にはかならなかった。大戦末期には,「国体護持」に固執するあまり戦争終結の方策を誤り,ついに原爆の惨禍を阻止することもかなわなかった。すなわち「国体」と引き換えに,幾十万の無筆の生命が奪われたのである。アジアの無数の民にはかり知れぬ痛苦を与えた侵略行為の根底にも,この「国体」の妄想があったことは言を持たない。そしてこの観念に対し異を唱える者は「国賊」「非国民」の罵声を浴び,疑念なくこれを信奉すべく大多数の日本人が徹底的に精神を呪縛された。まさに一億総マインドコントロールの恐怖である。だがかかる「国体」の観念は,実は戦時中の軍国主義の特産物ではない。その淵源は,幕末期のナショナリズムの高揚の中で唱導された,国家独立の希求のスローガンにある。本稿では,そうした前史をふまえつつ,近代日本における国体観念の諸相について論じてみたい。
著者
石居 基夫 イシイ モトオ Motoo Ishii
雑誌
ルター研究 = Luther Studies
巻号頁・発行日
vol.8, pp.49-70, 2002-12-25
著者
三浦 清美
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1-2, pp.73-96, 2005-01-31

This paper aims to bring into light the medieval Russian folk pagan cult, which was mentioned inseveral preaches by the medieval Russian authors as the cult to "Rod i Rozhanitsa". The presentauthor has collected all the materials about it and analyzed them, using the method of "theprospective and retrospective way", proposed by B.A. Uspenskii. It has been proved that this cultwas associated with the worship of the Earth-Great Mother, retrospective to the Indo-Europeanarchaic religious views. This paper is composed of two parts, the first part of which analyses andinterprets the materials, is printed in this bulletin. The second part, which analyses the religiousphenomena, will appear in the next issue of this journal.
著者
胸組 虎胤 Toratane MUNEGUMI
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 = Research bulletin of Naruto University of Education (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.58-72, 2019-03-11

STEM (Science, Technology, Engineering, and Mathematics) and STEAM (Science, Technology, Engineering, Arts, and Mathematics) have been educational topics for more than ten years or so, but the contents, the definition and integrated styles of them are still controversial. This paper summarizes the past researches about the definition and history of STEM and STEAM as well as the integration of disciplines. Important three integration categories : context integration, content integration, integration level are extracted from the past researches. These three categories are supposed to be useful to analyze the quality and quantity of the integration of all disciplines. The difference between the terms: disciplinary, multidisciplinary, interdisciplinary, and transdisciplinary became clearer. The role of arts in the integration of disciplines must be clearer in the future.
著者
福光 瑞江 Mizue Fukumitsu 京都学園大学非常勤講師
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.83-95, 2007-03-01

哲学者J.マッキーは、①「神は全能である」、②「神は全善である」、③「悪は存在する」という三つの命題の間には論理的な意味での矛盾があり、これら三つを同時に整合的に固執することができないと見て、「善なる全能者と悪のパラドクス」および「全能と自由意志のパラドクス」を指摘する。そして、これらのパラドクスが、有神論者を自己矛盾に陥らせていると批判する。この批判に、分析哲学に精通したアングロ・アメリカ系の神学者、A.プランティンガとR.スウィンバーンが以下のように応戦する。「全能なる神でさえ、丸い四角形を作るような論理的矛盾を犯すことはできない」、また、「神は全能ではあるけれども、自分が気に入った可能世界のどれをも現実化できたわけでもなければ、道徳上の善をふくむが道徳上の悪をふくまない世界を創造することができたわけでもない。」こうした哲学と神学の攻防が、学問の進歩を誘導することになる事態を、本稿はクローズアップする。
著者
村端 佳子
出版者
宮崎国際大学教育学部
雑誌
宮崎国際大学教育学部紀要 教育科学論集 (ISSN:21887896)
巻号頁・発行日
no.6, pp.15-27, 2019-12

第二言語習得における最近の研究では、言語的マルチコンピテンスの観点からどのように複数言語が個人の頭の中で作用し合い、第二言語使用者はいかに単一言語使用者と異なるのかが探られており、その証左が多く報告されている。本研究では、とくに日本語の複数標識である「−たち」の使い方の例を挙げ、個人的なレベルではなく社会的なレベルにおける言語的マルチコンピテンスを探る。 英語では可算・不可算名詞を区別し、生物・無生物に関係なく数えられる物が二つ以上ある時には必ず複数形にする。一方、日本語では人間と一部の動物にのみ随意的に「–たち」をつけることがあっても、無生物につけることはない。ところが最近の日本語では、本来は容認可能とされない無生物名詞に「−たち」をつけた「本たち」のような使い方を頻繁に見かけるようになった。また人や動物にも多用されるようになっている。興味深いことに、たとえば一般的な複数を表す「サル」と個別化された複数の「サルたち」が使い分けられている。このような複数形の用法は、狩猟の獲物や食料を 表す deer/deers などの英語の名詞にも見られ、deers のような複数形を用いる時は、その動物の個別化をしているときであるという。すなわち、複数があるということは単数があるということであ り、単数と複数の区別をするということは、認知的には個別化を意味するのである。 現在使用されている日本語の「–たち」の複数形の用例と、英語の単数形・複数形の使い方の用例を比較し、複数形の認知的なプロセスを論じた上で、本論では日本語における「−たち」の多用が英語の学習や習得の影響であり、日本社会における言語的マルチコンピテンスとみなしても良いのではないかと提議する。
著者
松井 絵美
出版者
東京海洋大学
巻号頁・発行日
2021

東京海洋大学博士学位論文 2021年度(2021年9月) 応用環境システム学 論文博士 乙第42号
著者
橘 庸子
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
vol.37, pp.71-85, 1997-03-31

各種甘味料(オリゴ糖・低カロリー甘味料A・低カロリー甘味料B・低カロリー甘味料C・低カロリー甘味料D・低カロリー甘味料E・低カロリー甘味料F)を砂糖の代りに利用した時,これらの甘味料は砂糖と同様の調理効果を示すかを,卵白の起泡性に対する影響を取り上げ考察した。特に焼菓子であるスポンジケーキにおける調理効果について砂糖との比較において検討したところ次の様な結果が得られた。1.各種甘味料は砂糖と同様,卵白の起泡に安定性を与えた。更にオリゴ糖・低カロリー甘味料A・低カロリー甘味料B・低カロリー甘味料C・低カロリー甘味料D・低カロリー甘味料E・低カロリー甘味料Fは砂糖より卵白の起泡性を高める効果がみられた。2.低カロリー甘味料Fは共立て法の場合は起泡性を著しく低下させた。脂肪による消泡作用を受けやすい様に思われる。3.共立法によりスポンジケーキを作製した時オリゴ糖を用いたスポンジケーキは砂糖のものより表面の焼色もつきやすく,仕上り形態も良くない,内部の状態も味に於いても好まれなかった。4.低カロリー甘味料A・Cを用いたスポンジケーキは砂糖のものより表面の焼き色がうすく中央が山のように盛り上り,低カロリー甘味料A・Eと同様の外観である,内部の状態,味も同様に悪く全体的に好まれなかった。5.低カロリー甘味料Bを用いたスポンジケーキは唯一砂糖に次いで仕上り形態もよく,表面の焼色は砂糖に比べ,ややうすいが内部の状態はあまり良い評価ではない,甘味は砂糖に近いことから好まれた。6.低カロリー甘味料C・D・Eを用いたスポンジケーキは加熱による甘味の減少で非常に悪い評価を得ている。7.低カロリー甘味料Fを用いたスポンジケーキは他と同様の方法で作製した場合,外観,食感共に良い結果が得られなかった。甘味料を小麦粉に混ぜる方法で作製した場合は他の低カロリー甘味料と同様の外観を得ることが出来たが,いずれにしても良い結果はえられなかった。8.低カロリー甘味料を用いた焼き菓子であるスポンジケーキは製品としても品質が悪く又官能的にも好まれなかったことは砂糖として使用出来ない結果であった。しかし今回はこの方法でそうであったが,作り方,配合等が製品の性状を右左すると考えられたことから今後の検討課題にしたいと考える。9.低カロリー甘味料を用いたスポンジケーキは,砂糖と同程度の甘味になるように各甘味料を使用する場合は,保存性の低いことが観察された。
著者
高坂 史朗 Shiro KOHSAKA
雑誌
北東アジア研究 (ISSN:13463810)
巻号頁・発行日
vol.14-15, pp.151-167, 2008-03-31