著者
駒井 匠
出版者
立命館大学
巻号頁・発行日
2014-03-31
著者
小村 純江 Komura Sumie
出版者
神奈川大学日本常民文化研究所 非文字資料研究センター
雑誌
非文字資料研究 = The study of nonwritten cultural materials (ISSN:24325481)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.25-55, 2017-09-30

妙見信仰は北極星や北斗七星を神格化した信仰である。古代、中近東の遊牧民や漁民に信仰された北極星や北斗七星への信仰は、やがて中国に伝わり天文道や道教と混じり合い仏教に取り入れられて妙見菩薩への信仰となり、中国、朝鮮からの渡来人により日本に伝わったといわれる。 秩父地方も古くから妙見信仰が伝わった地域であり、その信仰体系の中には現在「屋敷神的要素」「氏神的要素」「生産神的要素」の三つの要素を認めることができる。 本稿で秩父地方を事例とし、この三つの要素を基に妙見が地域に果たす役割と地域の人々の妙見への思いについて調査したところ、次のような傾向を認めることができた。 一つ目の「屋敷神的要素」については、秩父市中宮地にある関根家の敷地内に祀られている「妙見塚」と周辺地域に伝わる妙見を調査した。その結果、「妙見塚」と宮地地域に伝わる妙見は、関根家の屋敷神的存在であるとともに地域の屋敷神的存在として代々守り伝えられていた。二つ目の「氏神的要素」については、秩父神社を災いから守るために祀られたと伝えられる「秩父七妙見」の一つである身形神社を調査したところ、妙見に対する地域の人々の意識は以前と変わらず、今後も妙見を守り伝えていく心意気を持っていた。三つ目の「生産神的要素」については、妙見の祭祀である秩父神社の「御田植際」と「秩父夜祭」を調査した。この二つの祭祀に係る人々は、現在、秩父市内で農業や商業・加工業等、主に生産業に携わっており、妙見への祈りは生産神への祈りとなっている。また、この三つの要素は互いに影響し合う一面を持っていた。 以上の調査を踏まえ、現在の秩父地方の妙見を概観すると次の二つの様相が認められた。一つは「古態の持続性を維持する」妙見であり、「屋敷神的要素」を持つ妙見と「氏神的要素」を持つ妙見の中に伝えられていた。もう一つは妙見の祭祀を媒介とし「地域振興の育成」に貢献する妙見であり、「生産神的要素」を持つ妙見の祭祀の中に伝えられていた。
著者
有吉 洸
巻号頁・発行日
2011-03-24

近年の日本では、若い世代を中心にインターネットカフェで一晩を過ごすという新しい就寝のスタイル が市民権を得つつある。インターネットカフェとは、『有料でインターネットにアクセスできるパソコンを利用できる施設』であり、『漫画喫茶の付属設備のひとつとしてインターネットが利用できるパソコンの導入が進められた』結果誕生した(wikipediaフリー百科事典「インターネットカフェ」より引用)。多くの店舗が24 時間営業を行っており、インターネット・テレビ・ゲーム・漫画・雑誌といったコンテンツを利用する事ができる。また、ブランケットやクッションの貸し出し、シャワールームの設置を行っている店舗も多く、比較的安い料金で一晩を過ごす事が可能な事から、仕事や趣味・娯楽を目的とした利用に加えて、ビジネスマンや旅行客、就職活動中の学生などがホテルに宿泊する代わりに利用するケースも見られる。そのため、いわゆる「ネットカフェ難民」の問題が盛んに議論された時期もあったが、現在では「インターネットカフェで一晩を過ごす」という行為は一つの社会現象の域を超え、日常的な施設利用のスタイルとして定着している。インターネットカフェの施設種は基本的に飲食店だが、その営業形態の特性から、「風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律」の規定する「風俗営業」に該当する可能性がある。『 「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。(中略)六喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの』(「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」第一章 第二条より引用)風俗営業に該当した場合、営業時間を始めとする様々な制約が生じる。そのため多くのインターネットカフェでは、制約を回避するために、店舗の仕様や提供するサービスにいくつかの制限を加えている。例えばインターネットカフェのブースは1.5 ~ 2.0 ㎡程度の広さのものが一般的だが、これを壁で仕切って完全な個室にすると上記の風俗営業に該当するため、多くの場合は人の背丈程度のパーティションによって仕切られている。またブースの出入口のドアも、窓の付いた物や、下半分が空いている物など、外から見通す事が可能な形状のドアが使用され、施錠もできないようになっている。このようにインターネットカフェで提供される環境・サービスは、通常のホテルのように宿泊を前提としたものにはなり得ない。そのような状況のもとで、各自が居場所や寝場所を成立させるには、提供される空間に対して積極的に工夫を行い、プライバシーの確保される個人的な領域を構築する必要があると考えられる。そこで本研究では、インターネットカフェのブース内に形成されていると予想される個人的領域を研究対象とし、まずブースの物理的な実態と特徴を把握し、さらに実際の利用における具体的なブースの使われ方を分析することによって、インターネットカフェにおける個人的領域の形成に関する基礎的な知見を得ることを目的とする。
著者
鈴木 麻純
出版者
首都大学東京
巻号頁・発行日
pp.1-79, 2019-03-25

本論文では、ボードレールの「他処(ailleurs)」における「匂い/香り」の様々な機能を明らかにし、その重要性を探る。「他処」=「ここでないどこか」は、詩人ボードレールとその詩学において極めて重要なテーマの1つであり、ある種の強迫観念(オプセッション)として様々な作品のなかにあらわれている。現実世界という「今ここ」からの脱出を渇望する詩人は、自然豊かな異国の島や神秘的な未知の理想郷など、ありとあらゆる「他処」を描いていくのであるが、その「他処」には、必ずと言っていいほど香りが漂っている。記憶や想像力にはたきかけ、情景を一瞬にして喚起する「起動装置(déclenchement)」としての香りが動的に作用するのに対して、喚起された情景のなかを「漂う」香りの機能は限りなくささやかなものに見える。しかし、複数の詩篇において、このような「漂う」香りが描かれていることを見ると、「他処」には何らかの香りが漂っていなければならなかった、とさえ言える。したがって本論では、「記憶」と「夢想空間」をテーマとし、それぞれの「他処」のなかでどのように「匂い/香り」が機能しているかを考察する。第1章では「記憶」をテーマとする。第1節では、香りによる記憶の喚起が描かれる「髪」«La Chevelure»を取り上げる。この詩では髪の香りに解き放たれた詩人が、過去を見出すという物語が「航海」として描かれている。ここでは、「ほとんど死に絶えた(presque défunt)」世界までをも蘇らせる、香りの魔術性について論じる。第2節では、「憂愁」«Spleen»とともに『人工天国』の「記憶の羊皮紙」を扱い、まずは、詩人のなかに眠る記憶のあり方を考察する。これら2つのテクストの読解に加え、「記憶の羊皮紙」と、その原作であるトマス・ド・クインシー『深き淵よりの嘆息』を比較するなかで、記憶の膨大さ、不死性、未知性という3つの側面が明らかになる。また、「憂愁」を「漂う」香りは、記憶に「防腐処置をする(embaumer)」という機能をもつことがわかる。第3節では、「前世」«La Vie antérieure»を扱う。この詩では、神秘的で壮大な「他処」が、詩人の「長い間暮らした地」として表現されているが、ボードレールにおける「郷愁(ノスタルジー)」というフェリックス・リーキーの分析を中心に考察するなかで、それは記憶であるよりはむしろ「想像された前世」にちかいものであることがわかる。さらに、「他処」にいながら苦悩する詩人という「矛盾」に着目し、この詩では、「今ここ」の「他処」への侵入が現れていることを見る。この詩を漂う香りの機能は、ここでは曖昧なままであるが、夢想空間をテーマとした第2章のなかに、その鍵となる機能がある。第2章では「夢想空間」をテーマとする。第1節では、まず、記憶と想像力の不可分性について書かれたホフマンやバシュラールのテクストを考察し、そのことがあらわれている詩として「異国の香り」«Parfum exotique»を取り上げる。この詩では、恋人の乳房の香りによって夢想が始まり、詩人はそのなかで様々な情景を見る。自然豊かな島の景色は、若い頃のボードレールが滞在したモーリス島やブルボン島の風景を思わせるが、感覚描写などに注意して詩を読んでいくと、想像力の作用なしには、この詩の「生きた空間」は存在しえないことがわかる。最後に、夢想のなかに新しくあらわれる「緑のタマリンドの香り」がどのように作用しているかを考察する。第2節では、「旅への誘い」«L’Invitation au voyage»を取り上げる。ここでは、「匂い(odeur)」の語源である「満たす」という性質から出発し、ジョルジュ・プーレ、ミンコフスキー、テレンバッハのテクストを参考にしながら、夢想空間に「生命を吹き込む(animer)」という新たな機能について考察する。次に、«odeur»のもう一つの語源である「浸透する」という性質から、夢想を「深化させる(approfondir)」という香りの機能が明らかになる。第3詩節では、散文詩「二重の部屋」(La Chambre double)を取り上げ、より深くなった夢想のなかで香りの機能がどのように変化しているかを見る。まず、香りが観念に近いものとして表されていることから、香りと観念の関係について考察する。するとボードレールの美術批評の「香りが観念の世界を語る」という一節をはじめとして、「万物照応」«Correspondances»などでも、香りと観念の親和性があらわされていることがわかる。次に、匂いの表現が他の詩篇と比べて抽象的で曖昧であることに着目し、そこから、本来は繋がれていない2つの世界を「繋ぐ(relier)」という5つ目の機能が明らかになる。このように、香りは「他処」を喚起するだけでなく、過去の世界に「防腐処置(embaumer)」をし、それがいつか「他処」として、現在のなかに蘇ることを可能にする。空間を満たす香りは「生命を吹き込(animer)」み、浸透する香りは夢想を「深化させる(approfondir)」。そして最後に、香りは2つの世界を「繋ぐ(relier)」。つまり香りは、「今ここ」にいながら、あらゆる時空間で生きることを可能にするものだと言える。そして、それゆえに香りは、ボードレールの「他処」の詩学に欠くことのできないものなのである。
著者
山本 興太朗
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.237-244, 2011-11-01

植物の地上部器官は光の方向に屈曲する屈光性を示す.屈光性の機構としては古くから青色光受容体と植物ホルモンであるオーキシンの重要性が指摘されてきたが,その具体的な分子機構は不明であった.最近,モデル植物シロイヌナズナを利用した分子遺伝学的研究によって,光受容体はフラビンモノヌクレオチドを発色団とするフォトトロピンで,オーキシン極性輸送に関わり深いキナーゼ活性を持っていることと,オーキシン作用にはオーキシン極性輸送を担う排出担体PINタンパク質の細胞内局在調節が重要であることが明らかになり,フォトトロピンによるオーキシン極性輸送調節機構が明らかになりつつある.
著者
河内 将芳
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 = THE SHIRIN or the JOURNAL OF HISTORY (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.700-723, 2002-09-01

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著者
石 昌目
出版者
北海道大学法学部
雑誌
北大法学論集 (ISSN:03855953)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.183-207, 1999-11-30
著者
高見 進
出版者
北海道大学法学部
雑誌
北大法学論集 (ISSN:03855953)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3-4, pp.465-488, 1981-03-25
著者
高谷 康太郎 中村 尚
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.31-42, 2007-03-23

シベリア高気圧の季節内長周期変動及び年々変動の力学を明らかにする。シベリア高気圧の季節内変動の増幅過程には、ブロッキング高気圧の形成が対流圏上層に見られ、それらは2つの典型的なタイプに類別される。両タイプとも、シベリア高気圧の増幅には、対流圏上層のブロッキングを伴う循環偏差と、シベリア高気圧に伴う地表付近の循環偏差との相互作用が重要であることが渦位反転法によって示される。年々変動に関しても、対流圏上層にはやはり2つの典型的な循環変動のパターンが観測されること、さらにそれらの循環変動が惑星波活動の変調として解釈できることが示される。
著者
宮下 弘美
出版者
北海道大学經濟學部
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.140-161, 1994-03
著者
大形 徹
出版者
大阪府立大学人文学会
雑誌
人文学論集 (ISSN:02896192)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.67-84, 1996