著者
山前 碧 小林 裕太 上原 哲太郎 佐々木 良一
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS)
巻号頁・発行日
vol.2015-DPS-162, no.39, pp.1-7, 2015-02-26

ここ数年で,PC の不揮発性記憶媒体として SSD(Solid State Drive) の普及が高まると予想される.IT 調査会社の IDC Japan によると,SSD 市場の 2017 年までの平均成長率は 39.2% と予測している.そのため,SSD の消去ファイルの復元率の把握が,PC の破棄の時点での事前処理や,デジタルフォレンジックのための証拠の確保可能性を知る上で重要となってきた.また,SSD には Trim 機能という特徴的な機能があり,この機能による復元の影響を検証する必要が出てきた.そのため,本研究では,SSD の Trim の有無,削除後の利用状況の差異,OS の差異に伴うデータ復元の確率について検証した.結果,Trim 無効時は,データの多くは削除してから一日しか残っていないことが明らかになった.また,Trim 有効時は削除直後でもデータは残っていないことが明らかになった.さらに,ファイルサイズや拡張子,OS による大きな違いは見られなかった.本稿では上記の検証とデジタルフォレンジックの目的での復元,PC 廃棄の目線からの考察を報告する.
著者
内藤 徹 Tohru Naito
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review) (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.713-731, 2021-09-17

本論文は,2017年に発生した九州北部豪雨で被災し,一部不通となった日田彦山線(添田-夜明)の利便性の低下を金銭評価するものである.推定には日田彦山線の沿線の公示地価のパネルデータをもとに差の差分法(DID)を用いて推定した.推定の結果,不通による利便性の影響は確認されたが,必ずしも大きい影響とは言えないことを示した.
著者
浅田 徹
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = The Bulletin of The National Institute of Japanese Literature (ISSN:03873447)
巻号頁・発行日
no.27, pp.47-93, 2001-03-29

藤原定家の下官集について、その内容を検討する。本書は草子の書き方を中心とした伝書で、文学の内容そのものとは直接関わらないため、和歌研究者からのまとまった考察がない。しかしその記述を考証していくことで、顕註密勘・三代集之間事・僻案抄といった歌学書群、あるいは定家本三代集の校訂作業などと同じ基盤を有していることを指摘できるのではないかと考える。従来の研究(国語学の分野からのもの)は仮名遣い規定に集中し、それ以外の部分は詳しい注釈も行われずにきているので、本稿ではまず全文を改めて検討することから始める。同時にそこに一貫する定家の姿勢を「他者と自分との差異を提示して、それを一つずつ根拠付けていく」ものと捉え、最終的にそれを歌道家当主としての自己定位の営みを象徴するものとして読むことを試みる。また、他者としての六条家の存在はここでも作品形成の一つの契機となっていただろう事を示す。 This is consideration of contents regarding Gekanshu by Fujiwarano Teika . This is a book called densho(伝書)mainly about how to write Soshi. There is no definite consideration of waka researchers, because it did not associate directly with the very contents of literature. However to study its description, it seems that it is possible to point out that it has the same substrate as “Kagaku-sho” group such as “Kenchumikkan”(顕註密勘), ”Sandaishu-no-aida-no-koto”(三代集之間事), “Hekian-sho”(僻案抄) or the textual collation of Teikabon-sandai-shu. At first the whole sentence was reviewed in this paper because the conventional study ( from field of the Japanese literature) concentrate Japanese grammar and others had not be written an extended comment. At the same time, it was considered that the consistent attitude of Teika as -Show a difference with others and oneself and based on it one by one-. An attempt was made to read it symbolizing his position as the head of the art of Waka poetry in the end. Then it was shown that the existence of Rokujo-ke as others would be one opportunity of the work formation here.
著者
歌島 昌由 Utashima Masayoshi
出版者
宇宙開発事業団
雑誌
宇宙開発事業団技術報告 = NASDA Technical Memorandum (ISSN:13457888)
巻号頁・発行日
pp.1冊, 1995-03-24

本レポートは、1992年7月より「フォボス探査研究会」(仮称)で検討した解析資料をまとめた。「フォボス探査研究会」は、日本の惑星探査の柱の一つとして、惑星の小衛星(火星のフォボスやダイモンなど)や小惑星などの小天体の観測を掲げて進むべきとの考えを持つ研究者達で構成された私的な研究会である。フォボス探査計画の概要は、以下の通りである。(1)H-2ロケットで打ち上げて、火星周回の長楕円軌道に投入する。(2)ダイモスをフライバイで観測する。(3)長楕円軌道をフォボス軌道とほぼ同じ略円軌道に変換する。(4)フォボス周回軌道(フォボス・ランデブー軌道)を実現して、約1火星年に渡りフォボス観測を行なう。(5)フォボス表面に接近して詳細な観測を行ない、その後、着地して現場観測を行なう。(6)可能ならば、サンプル・リターンを行なう。本レポートでは、(4)のフォボス・ランデブー軌道の設計・解析と、(5)の一部であるフォボス近傍観測軌道の設計・解析について記す。
著者
中村 羊一郎 Yoichiro NAKAMURA
雑誌
静岡産業大学情報学部研究紀要 = Bulletin of Shizuoka Sangyo University
巻号頁・発行日
vol.9, pp.266-225, 2007-01-01

日本列島の太平洋側東北部に位置する陸中海岸には、リアス式の海岸線が織り成す多くの入り江がある。なかでも岩手県下閉伊郡の山田湾には、暖流に乗って回遊するイルカがしばしば「浦入り」をしてきた。湾に面した大浦集落では、これを網で囲って海岸にまで追い込んで捕獲する、イルカ追い込み漁が近世の早い時期から行なわれており、この種の漁法としては日本の最北端での実施例に位置づけられる。村内外の出資者が金本、村内の有力者が瀬主(網元)となり、集落全戸が参加して行なう大規模な漁であり、時には一度に数千頭の漁獲があった。盛岡藩には、年間五貫文の礼銭を納入して漁の権利を確保したが、藩も新規参入者を認めず村方を支持して漁を継続させた。漁の収益は全戸に配布され、公共の用途にも使用された。明治以降、岩手県の水産行政ではイルカ漁は坪外に置かれたため、漁は慣例に従って続けられていたが、いわゆる旧漁業法が施行されてイルカ漁の位置づけも明確になり、正規の漁業権が確立した。本稿では、この過程を史料に基づいて跡づけるとともに、村落をあげての集団漁労活動の意義と、漁民のイルカ観を考える。なお、大浦におけるイルカ漁は、大正期に入ってからは数回の捕獲記録を残すのみとなり、昭和以降は全く行なわれなくなった。
著者
市原 勇一 黒木 淳 尻無濱 芳崇 福島 一矩
出版者
北九州市立大学経済学会
雑誌
北九州市立大学商経論集 (ISSN:13472623)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1・2・3・4合併号, pp.35-47, 2021-03

本稿は,中小企業における管理会計システムの整備度と管理会計活用能力のギャップが財務業績に与える影響を検証した。中小企業327社のデータを分析した結果,管理会計活用能力を超える過剰な管理会計システムをもつ企業ほど売上高経常利益率が低くなることが示された。これらから,優れた管理会計システムはそれだけで業績を向上させるわけではなく,十分な管理会計活用能力を有することではじめて業績が向上することが示唆された。
著者
廣田 吉崇
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.77-130, 2011-10-23

茶の湯の歴史について、現代の流派や家元のあり方をイメージしながら過去を論じていることはないだろうか。近世中期に生まれた家元という存在は、近代における紆余曲折をへて、現在の姿に至っているのである。