著者
森脇 克行 大下 恭子 堤 保夫
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.91-99, 2021-06-25 (Released:2021-06-25)
参考文献数
27

2022年1月1日に国際疾病分類第11版(ICD-11)が発効される.ICD-11には,はじめて慢性疼痛の分類コードが加えられる.この分類コードは国際疼痛学会(IASP)のタスクフォースによって開発された慢性疼痛の体系的な分類に基づいている.分類の特徴は慢性疼痛を3カ月以上持続または再発する痛みと定義した上で,慢性一次性疼痛と慢性二次性疼痛に分けたことである.慢性一次性疼痛には基礎疾患や組織障害が明らかでない線維筋痛症や複合性局所疼痛症候群などの慢性疼痛症候群が含まれる.一方,慢性二次性疼痛は基礎疾患や組織障害による二次的な疼痛で,病態や身体部位によってさらに6つのカテゴリーに分類されている.IASPの分類には慢性疼痛に関する最近の新しい科学的知見をもとにした疼痛概念が反映されており,今後の慢性疼痛の診療に大きな進歩をもたらすと考えられる.また公開されたWHOのICD-11ブラウザは,慢性疼痛の診療用ツールとしても有用である.
著者
羽生 京子 仲村 洋子 ハブ キョウコ ナカムラ ヨウコ Kyoko HABU Youko NAKAMURA
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
no.44, pp.11-26, 2004-03-31

わが国独自の和服は、着付けることによって衣服としての機能を果たす。着装後時間を経過することによって、動きに伴い着装直後と形状の変化つまり着崩れが生じる。この着崩れについて、前報に引き続いて究明したのが本研究である。前回の実験について疑問視された、いくつかの点について解決を計るために、今回も、3タイプ、つまりS・M・Lサイズの被験者について、標準寸法と割り出し法による仕立て上がり寸法を採用した試着衣を新たに作製し、着装実験を行った。試着衣の作製条件として、視覚的判断を考慮して実験に用いる浴衣地の図柄などを同一にすること、ある程度幅のある標準寸法を一律に定めること、一定の技術で縫製し均一に仕上げることなどについて配慮した。着装実験によって、前回とほぼ同様な結果を得ることが出来た。つまり、S・Mサイズについては、標準寸法を統一したことで着装スタイルの変化はあっても、着崩れ量の変動は少ないし、割り出し法においてのスタイル・着崩れ量も同程度と判断できた。Lサイズに関しては標準寸法での不足が一層明瞭になり、割り出し法によっても許容範囲ではあるが充分ではない。ただし、それによる着崩れは同程度であることを確認した。加えて、Lサイズについて、課題を解決する手掛かりとして、幅の広い浴衣地を準備し布幅の関係で、試みてない割り出しで算出した数値によって試着衣を作製し再実験を試みた。結果、着装スタイルはほぼ満足出来る形となったが、接合線位置つまり各身幅の比率について新たな課題が残される結果となった。
著者
井田 安雄
出版者
[西郊民俗談話会]
雑誌
西郊民俗 (ISSN:09110291)
巻号頁・発行日
no.257, pp.19-30, 2021-12
著者
中川 敏宏
出版者
専修大学法科大学院
雑誌
専修ロージャーナル (ISSN:18806708)
巻号頁・発行日
no.8, pp.153-166, 2013-01

2012年5月24日,韓国大法院は,日本による植民地統治下において三菱重工(旧三菱)・不二越により強制徴用を受けたとして,その被用者らが同会社を相手に損害賠償と未払賃金の支払いを請求した事件において,原審である釜山高等法院が同じ請求を棄却した日本における判決(最高裁で本件原告らが敗訴確定)を受け入れ原告らの請求を棄却したのに対して,その原判決を破棄し,釜山高等法院に事件を差し戻した。この日本企業に対する戦後補償の可能性を認めた大法院判決は,韓国のマスコミでも大きく取り上げられ,さらなる追加訴訟を提起する動きも伝えられている。その意味で,本判決は,韓国において,対日本企業のみならず対日本国の戦後賠償問題に関し象徴的な意味を有するものになるであろう。本判決については,今後わが国でも様々な観点からの検証・分析が求められるが,そのような多角的な検証・分析は訳者の能力の域を出ており,ここでは,本判決の重要性に鑑み,公表されている三菱重工に対する訴訟の大法院判決を取り上げ,判決文の翻訳を試みたい。翻訳に際して,できるかぎり原文のニュアンスを尊重したが,日本人読者への便宜から,日本における一般的呼称等に従っている箇所がある(例えば,韓国と日本を指す際,韓国語では「韓日」と表現されるところは「日韓」と訳出している)。
出版者
日経BP社
雑誌
日経automotive
巻号頁・発行日
no.86, pp.70-73, 2018-05

新型シビックは、日本仕様向けにエンジン1種類のみを設定した。「デュアルVTECターボエンジン」と呼ばれる1.5L直列4気筒直噴ガソリンエンジンは、ミニバンの「ステップワゴン」と比べて、スポーティーさを演出することを狙い、2000rpm以上の領域で出力を高める設…
著者
中野 治美 井上 栄
出版者
Japan Society for Occupational Health
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, 2010
被引用文献数
4 3

<b>東京圏在住サラリーマンの通勤時身体運動量:中野治美ほか.大妻女子大学家政学部公衆衛生研究室―目的:</b>東京圏在住サラリーマンの中強度以上身体活動の量を測定し,電車通勤者とクルマ通勤者とで比較する. <b>対象と方法:</b>歩数および身体活動の測定には,身体活動強度METs(=安静時の何倍かを表す単位)を1分ごとに記録する身体活動量計(オムロンHJA-350 IT)を使った.データをパソコンに移して,通勤時間帯および全日の運動量「エクササイズEx」(=METs(≥3)×時間)を計算した. <b>結果:</b>電車通勤男性群(74人)は,朝夕の通勤にそれぞれ70±30,103±43分を使い,朝+夕通勤時のExは3.4±1.7で,これは全日のEx 5.3±2.4の64%を占めた.この全日Exは,クルマ通勤男性群(78人)の全日Ex 1.8±0.8の2.9倍であった.1日の歩数は,電車通勤男性群9,305±2,651歩で,クルマ通勤男性群3,490±1,406歩の2.7倍であった. <b>考察:</b>厚生労働省「健康づくりのための運動指針2006」は,週23 Ex以上の身体運動を推奨している.東京圏在住の電車通勤サラリーマンの運動量は大きく,週日5日間では男性で平均26.5 Exとなり,電車通勤は生活習慣病予防に貢献しているように見える.<br> (産衛誌2010; 52: 133-139)<br>
著者
鍋島 茂樹
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

RSウイルス感染症は、小児においてインフルエンザとともに呼吸器疾患による入院あるいは死亡の原因となる重要感染症であるが、いまだ特異的治療薬はない。申請者らは、これまで麻黄湯が抗インフルエンザ作用を有することを報告してきたが、さらに麻黄湯にはRSウイルスに対する抗ウイルス作用もあることがわかってきた。その機序として、ウイルスが宿主細胞膜に進入する過程を阻害している可能性が高いが、詳細は不明である。本研究では、培養系およびマウスへの感染により、麻黄湯による抗RSウイルス作用の機序を解明し、その有効成分を同定する。また、あわせて麻黄湯が宿主の自然免疫系に与える影響についても解析する。
著者
山下 明子
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.317-343, 2003-09-30 (Released:2017-07-14)

キリスト教の土着化をめぐる従来の論議にはジェンダーの視点が欠けている。女性キリスト教徒の入信理由や信仰実践から、それぞれの土地の教会の「土着化」の現実を問い返すのが本稿の目的である。対象としては、筆者が長年のフィールドワークで出会ってきたインドのヒンドゥ・カースト社会に生きるダリットのクリスチャン女性たちと非カースト社会である山岳部族のミゾの教会女性、およびイエ制度が残る日本の教会女性と沖縄の祖先崇拝の社会のクリスチャン女性の中から典型的な層を選んで紹介し、信仰の特徴を比較考察する。教会を含めて父権的、性差別的な文化と共同体規範のなかで、それぞれの女性信徒たちがどのような葛藤によって苦悩し、これらと信仰的に折り合いをつけているのか、あるいはよりラディカルな解放・救済を求めて、いかに自立を達成しているのか。女性たちのスピリチュアリティは各自の信仰生活の内容や性的な自立の位相によって当然異なっているが、本稿では、キリスト教的な特徴として他者に対する友愛的な霊性が感じられる女性たちに焦点をあてて調べている。
著者
三浦 航太
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-16, 2018-07-31 (Released:2019-03-07)
参考文献数
8

2017年末に行われたチリの総選挙で、ピニェラ元大統領が勝利し、4年ぶりに右派政権が誕生した。他方で、2017年総選挙は、新しい選挙制度の導入と新興の左派勢力「広域戦線」の台頭という点で特徴づけられる。第一に、政治不信を生み出す一因とされた旧来の選挙制度にかわって、今回の選挙より新たな選挙制度が導入された。選出方法、区割り、議員定数の改正などを通じて、政党間競争を高め、政治の代表性を改善することが目指された。第二に、学生運動を起源に持ち、既存の政治や経済格差への不満を背景に近年支持を集めてきた、新しい左派勢力「広域戦線」が、今回の選挙を通じて台頭を見せた。チリでは民主化以来、左右の二大政党連合による固定的な政治の構図が続いてきた。新しい選挙制度の導入と、広域戦線の台頭は、そうした従来の政治を変える可能性をもたらすものである。
著者
T. Nakajima M. Kurano H. Iida H. Takano H. Oonuma T. Morita K. Meguro Y. Sato T. Nagata KAATSU Training Group
出版者
日本加圧トレーニング学会
雑誌
International Journal of KAATSU Training Research (ISSN:13494562)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.5-13, 2006 (Released:2008-05-22)
参考文献数
23
被引用文献数
32 149

KAATSU training is a novel training, which is performed under conditions of restricted blood flow. It can induce a variety of beneficial effects such as increased muscle strength, and it has been adopted by a number of facilities in recent times. The purpose of the present study is to know the present state of KAATSU training in Japan and examine the incidence of adverse events in the field. The data were obtained from KAATSU leaders or instructors in a total of 105 out of 195 facilities where KAATSU training has been adopted. Based on survey results, 12,642 persons have received KAATSU training (male 45.4%, female 54.6%). KAATSU training has been applied to all generations of people including the young (<20 years old) and the elderly (>80 years old). The most popular purpose of KAATSU training is to strengthen muscle in athletes and to promote the health of subjects, including the elderly. It has been also applied to various kinds of physical conditions, cerebrovascular diseases, orthopedic diseases, obesity, cardiac diseases, neuromuscular diseases, diabetes, hypertension and respiratory diseases. In KAATSU training, various types of exercise modalities (physical exercise, walking, cycling, and weight training) are used. Most facilities have used 5-30 min KAATSU training each time, and performed it 1-3 times a week. Approximately 80% of the facilities are satisfied with the results of KAATSU training with only small numbers of complications reported. The incidence of side effects was as follows; venous thrombus (0.055%), pulmonary embolism (0.008%) and rhabdomyolysis (0.008%). These results indicate that the KAATSU training is a safe and promising method for training athletes and healthy persons, and can also be applied to persons with various physical conditions.