著者
曽田 修司
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.75-90, 2009-09-15

本論考では、2008年春に立て続けに生起した「びわ湖ホールのオペラ制作費削減問題」や橋下徹大阪府知事の行財政改革「大阪維新」にともなう文化予算の削減問題を入り口として、地方自治体の文化政策のあり方について考察を加えた。財政難を理由として自治体の文化予算を削減しようとする考え方が今日の大勢であるのに対して、文化的価値の重要さを正面から訴え、文化が公共財であると強く主張するやり方では、多くの場合、双方の主張が平行線をたどるだけで最終的な説得力に欠ける。本稿では、文化人類学における所有のあり方を論じた松村圭一郎著「所有と分配の人類学」の成果を応用し、文化は市場財か公共財かという従来からの対立的な議論の構図から脱却するために、現代社会における「共同財としての文化/アート」という視点を導入した。さらに、アートの公共性を考えるための補助線として、従前から文化経済学において指摘されてきた正の外部性の存在に加え、アートによる複数の参照系の保障、文化圏が形成されることによる経済圏の視覚化などについての概念を提起し、これらを活用した注目すべき文化政策の事例を全国各地の取り組みの中からいくつか紹介した。このことにより、今後、地方自治体の文化政策において「共同財としてのアート」に注目し、これを積極的に活用することで「文化の自己決定性」を高め、文化振興とまちづくりのための施策とが持続的な好循環を作り出す可能性が高まることを示した。
著者
Bersani Leo 酒井 隆史
出版者
太田出版
雑誌
批評空間 2期
巻号頁・発行日
no.8, pp.115-143, 1996-01
著者
上村 清 荒川 良
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.161-162, 1986
被引用文献数
2 5

チョウバエ科昆虫によるハエ症は泌尿生殖器, 消化器, 気道, 眼瞼内より少数報告されている。著者らは今回富山市在住の69歳女子膀胱炎患者の泌尿生殖器系に寄生していたと思われる1虫体を尿中に検出し, オオチョウバエTelmatoscopus albipunctatusの成熟幼虫と同定したので報告する。
著者
桑野 栄治
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学文学部紀要. 国際文化学科編 (ISSN:09188983)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.89-114, 2002-03

本稿は、「まれなる独裁者、世祖」と評される朝鮮一五世紀後半の世祖代を国家儀礼の側面から照射したものである。従来、世祖の王権についてはおもに圜丘壇祭祀の復活という側面から論じられてきたが、本稿では対明遥拝儀礼の実施状況とあわせて検討し、一五世紀ソウルの儀礼空間を通して世祖の王権を考察した。一四世紀末に朝鮮王朝を開創した太祖李成桂は、正朝と冬至に王都漢城の王宮から明皇帝の居城を遥拝することによって事大政策を標榜し、以後、この儀礼は第四代朝鮮国王の世宗代まで王朝国家の重要な国事行為として継続実施された。この対明遥拝儀礼を望闕礼といい、望闕礼を終了すると王宮内では異域(日本・女真・琉球)からの使節を取り込んだ朝賀礼と会礼宴が催された。ところが、世宗の死後、短命な文宗・端宗の時代をへて第七代朝鮮国王世祖が即位すると、正朝・冬至の国家儀礼のあり方に大きな変化が生じるようになる。世祖は、本来は中国の皇帝のみが行いうる祭天儀礼を王都漢城の南郊で実施し、その一方で明帝を遥拝する望闕礼を放棄した。世宗は晩年に望闕礼を王世子または百官に代行させていたが、世祖は王世子による代行さえ認めなかったのである。にもかかわらず、朝賀礼と会礼宴は王宮内で盛大に催され、とりわけ王権の強化につとめた即位のはじめには五〇〇名余りの「倭人」と「野人」を参席させるなど、世祖は「夷」をしたがえる皇帝を彷彿させる。一五世紀の儀礼空間を通してみた場合、世祖の治世年間は朝鮮時代史上、まれにみる時代であったといっても過言ではあるまい。
著者
相馬 庸郎
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.45-54, 1994-09-10

「楢山節考」にはじまり、戦後文学の近代主義的性格の虚を衝く作品を発表しつづけて、特異な位相を持つ深沢七郎の現実の政治的姿勢を検証してみた。彼は共産党→全学連→赤軍派→連合赤軍→日本赤軍と支持をつづけたが、それは理論的にも党派的にも矛盾する心情的なラディカリズムで、結局彼の求めたのは、彼の深部にある一種の「千年王国」とでも言うべきものであった。そこに深沢的反逆の特質があった、と私は考える。
著者
小野 浩
出版者
労働政策研究・研修機構
雑誌
日本労働研究雑誌 (ISSN:09163808)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.15-27, 2016-12

長時間労働の是正は働き方改革の最優先課題である。労働時間を減らし,仕事と生活が両立できるような働き方を実現させるため,国は政策・法律を施行し,企業は報酬制度,インセンティブを改めるなど試みを重ねてきた。しかし日本の正規労働者の総労働時間は1990年代から一向に減っていない。本稿では長時間労働問題の本質は,政策や法制度といった「見える」ところではなく,社会規範や雇用慣行に埋め込まれた「見えにくい」ところにあると考える。長時間労働問題の説明力を高めるには,報酬・評価制度などを取り入れた経済学的アプローチと同時に,社会的コンテクストを考慮したより社会学的な考察が必要だ。長時間労働は日本的雇用慣行の制度補完性とその背景にある文化的特性が生みだした副産物である。問題の原因としては,インプット重視社会,シグナリングに頼る雇用慣行,働き方に組み込まれた集団意識と上下関係,内部労働市場,曖昧な職務内容,男女間性別分業といった要素を明らかにする。最後に,長時間労働を減らすにはどうすべきかを考える。
著者
千葉 成夫
出版者
中部大学
雑誌
貿易風 : 中部大学国際関係学部論集 (ISSN:18809065)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.68-105, 2006-03-31

<Gutai< (Japanese anti-art) and <Mono-ha< are two most important movements in the Japanese post-war art-trends. <Mono-ha< is especially characteristic of research for a new art which is not based on the European modern art. The starting point of <Mono-ha< is Nobuo SEKINE's epoch-making work, <Sphere -Earth< (1968) which was tremendously influential upon the young artists. And the two representative artists appeared: U-Fan LEE and Kishio SUGA. U-Fan LEE, among others, presented us a new viewpoint not only through his works but also by his writings on art: we couldn't find any similar viewpoint in the modern Japanese writings on art. His famous sentence symbolizes it well: <Because evertything is already realized from the very beginning, and because the world is opened as it is from the very beginning, it is impossible to create through artistic realization an another world<. The artistic creation (in its European meaning) is impossible in this Japanese archipelago. Here will be possible, instead, our <encounter< with <the world as it is< (or, <the nature itself<): <creating something< in the European sense is not possible for us in the end. We can only look for some possibility of <creating something by way of creating nothing<, so to speak. U-Fan LEE, Korean=Japanese from 1956 on, has this thought in common with Japanese way of artistic thinking, for <the nature is everything< for us as well as for him. The human being, in this Japanese archipelago, is from the origin not independent of the <nature itself<, such as the plants are not independent of it; so, he cannot objectify the <nature itself<. But Korean people think always that the human being is the natute itself. It means <human being is nature itself< at the same time <the nature is everything<. This is a humanism, but that is totally different from the Occidental humanism. The human being is <lêtredans-le-monde< in the Western world, but he is, for Korean people, a <relation< between <lêtre humain< and <le monde<. We can find this difference, between Japan and Korea, in the works of fine art. One example is the difference of the notion of realizing <garden<. Japanese garden is not the nature itself but an artificially presented nature, or represented nature after the natutre itself, in the site of the house. But, Korean garden is composed of the house and of the nature itself: in other words, Korean house is made in the midst of the real nature, in the best natural location. The garden doesn't exist in the Korean Peninsula because the nature is the garden itself. The Korean concept of garden (nature) and U-Fan LEE's thought suggest us one possibility of the <new way of creation< by way of confronting directly with the nature itself.
著者
樋口 耕一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.334-350, 2017
被引用文献数
16

<p>筆者はテキスト型 (文章型) データの分析方法「計量テキスト分析」を提案し, その方法を実現するためのフリーソフトウェア「KH Coder」を開発・公開してきた. 現在ではKH Coderを利用した応用研究が徐々に蓄積されつつあるように見受けられる. したがって現在は, ただ応用研究を増やすのではなく, KH Coderがいっそう上手く利用され, 優れた応用研究が生み出されることを企図しての努力が重要な段階にあると考えられる. そこで本稿では, 現在の応用研究を概観的に整理することを通じて, どのようにKH Coderを利用すればデータから社会学的意義のある発見を導きやすいのかを探索する.</p><p>この目的のために本稿では第1に, 計量テキスト分析およびKH Coder提案のねらいについて簡潔に振り返る. 第2に, KH Coderを利用した応用研究について概観的な整理を試みる. ここではなるべく優れた応用研究を取り上げて, 方法やソフトウェアをどのように利用しているかを記述する. また, なるべく多様なデータを分析対象とした研究を取り上げることで, 応用研究を概観することを目指す. 第3に以上のような整理をもとに, 計量テキスト分析やKH Coderを上手く利用するための方策や, 今後の展開について検討する.</p>
著者
仲田 公輔
出版者
史学会 ; 1889-
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.125, no.7, pp.1254-1277, 2016-07