- 著者
-
古田 和久
- 出版者
- 数理社会学会
- 雑誌
- 理論と方法 (ISSN:09131442)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, no.2, pp.234-246, 2018 (Released:2019-09-28)
- 参考文献数
- 38
本論文は高学歴化の進展とともに,学歴と職業との関連がどのように変容したのかを,1965年から2015年のSSM調査データを用いて検証した.出生コーホートと年齢段階による相違に焦点をあて,各学歴層の職業構成の絶対的変化および学歴間の相対的格差の長期的趨勢を吟味した結果,次のことが分かった.第1に大卒者は専門職従事率が維持されるなど,その職業構成は比較的安定する一方,高卒者の変化は大きく,事務職が減少し,熟練職や半熟練・非熟練職に集中した.第2に,1961-70年生まれ以降の大卒者は職業キャリアの中盤で管理職への到達が困難化した.他方,高卒者は職業キャリアの初期段階からブルーカラー職に就く傾向が顕著になった.第3に,学歴間の相対的格差は出生コーホート間で維持されていた.しかし,その内部では若年時の学歴間格差が,1960-70年代の教育拡大を経験した世代で縮小した.ただし,その動きは1990年代以降に大学進学を迎えた世代に継続されず,学歴差は維持されていた.