著者
曽我 麻佐子 鈴木 卓治
雑誌
じんもんこん2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.315-320, 2018-11-24

蒔絵万年筆は,照明などの光や湿度によって劣化するものがあり,恒常的な展示に適さない.また,細かい柄等が肉眼で見えにくいといった問題もある.本研究では,博物館の来館者に蒔絵万年筆をより細かいところまで自由に鑑賞してもらうことを目的として,HMD とペン型デバイスを用いた万年筆の展示支援システムを開発した.本システムでは,HMD 用いてVR 空間に表示した万年筆の3DCG を,ペン型デバイスで操作して鑑賞することができる.直感的に万年筆を操作するために,ペン型デバイスに搭載したジャイロセンサから検出した角速度をもとに,万年筆の3DCG を回転させている.また,HMD を装着した状態で複数の万年筆から一つを選んで簡単に切替えられるようにするため,HMD の画面の中心にカーソルを表示することで,頭の動きのみで鑑賞する万年筆を選択することが可能である.開発したシステムは,国立歴史民俗博物館の企画展において8 週間運用した.来館者の評価により,本システムのコンセプトの有用性を確認した.
著者
内田 早紀子 松村 敦
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:21888930)
巻号頁・発行日
vol.2018-CE-147, no.9, pp.1-5, 2018-11-24

2020 年度から小学校でプログラミング教育が必修化される.暗記型のプログラミング教育では,小学生がプログラミング的思考を習得することは困難とされている.そこで,小学生にとって身近な日常の活動を題材としたプログラミング的思考育成ツールを開発した.小学校 2 校で利用実験と評価を行ったところ,プログラミング的思考の向上の効果が異なった.これは,プログラミング的思考の評価方法の違いが大きく影響している可能性がある.また,ファシリテーターの教え方に差があったため統制された評価になっていないことも一因と考えられる.アンケートでは,参加者の約 8 割の子供から楽しく学習でき,ツールは使いやすかったと回答があり,本ツールは小学生が利用するのに適している事がわかったが,約 3 割が難しいと感じていた.子供たちの理解に合わせた動きや事象と問題のレベルの設定については,再度検討する余地がある.
著者
松本 訓枝 日比 薫 谷口 惠美子
出版者
岐阜県立看護大学
雑誌
岐阜県立看護大学紀要 = Journal of Gifu College of Nursing (ISSN:13462520)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.101-111, 2018-03

本研究の目的は、ひきこもり状態にある子どもの親の困難を明らかにすることにある。 ひきこもり者の状況についてある程度整理し語ることが可能な親のうち、研究への同意が得られた父親1 名、母親3 名に半構成的面接調査を実施した。 その結果、ひきこもり当初の親の対応では、ひきこもりをどう理解し対応して良いのかに苦慮し、なすすべがない困難な状況下で【接触を回避する】【怒る】【子どもを信じるしかない】など、かろうじて可能な対応を講じていた。しかし、その後の現在の対応では、ひきこもり状態から歩み始めたケースでは【経済的支援の模索】と【待つ】対応を、自室に閉じこもりひきこもり状態に変化がないケースでは【家族との会話をもつことの模索】【かかわるきっかけの模索】といった対応をとり、ひきこもり状態に即した対応の相違が浮き彫りになった。今後、親として対応すると良いと思うことでは、ひきこもり者への支援が行き届かない分、家族、とりわけ親の関わりが問われる事態となっていることが想像された。親が考える社会参加の内容には【就労する】【仲間と良い体験をする】があがった。一方で、【地域に存在する】【地域での認知】という対面的な関わりのある近隣コミュニティの認知、受け入れをあげた親もいた。ひきこもり者の社会参加の意思には【就労したい】【人と関わりたい】があがった。 ひきこもり状態から歩み始めたケースでは、子どもを経済的に自立させるという社会化エージェントの役割を果たせないことによる困難が、ひきこもり状態に変化がないケースでは、ひきこもり当初の親の対応にみられた子どもをどう理解すべきか、講じるべき対応がない、わからないというケア役割を果たせないことによる困難があった。身近な近隣コミュニティとひきこもり者・親との関係をつなぐ支援、親を含めた周囲のひきこもりへの理解と対応の啓発、地域社会の関係機関が連携した体制整備が求められる。
著者
OISHI Yoko WIE Dainn
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.18-16, 2018-11

In this paper, we investigate the impact of trade liberalization on the demand for female workers using Indonesia’s tariff reduction in the 1990s and 2000s as a natural experiment. This paper utilizes variation in output and input tariffs to examine two different channels through which trade liberalization affects female employment: import competition and imported technology. We find that a 10%-point reduction in output and input tariffs hurt women’s employment by 0.5% point and 4.5% point, respectively, in light industries in the 1990s. We show that output tariffs affect women’s employment in a competitive industry, while input tariffs increase firms’ utilization of foreign inputs instead of domestic inputs. We also find that output tariffs encourage women’s employment in heavy industry, while input tariffs have hurt women’s employment in heavy industry since 2000. Our results suggest that there exists a race between gender inequality in education and imported technology in developing countries.
著者
藤田 米春 三好 聡 西島 恵介
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.15(1995-CH-029), pp.7-12, 1996-01-27

本報告では、論理と感情が縦横に絡んだ文書である短編推理小説を事例にとり、論理と感情を含む文書における人間の思考・行動課程をシミュレーションするための、文書の構造データ化について述べる。まず、推理小説において出現する情報を分析し、設定情報、登場人物の知識、読者に期待される知識の3種に分類し、また、こらの情報の提示形態についても分析している。さらに、これらの情報の間に成り立つ、時間的順序関係、因果関係、含意関係について述べている。これらの分析に基づき、それぞれの情報の構造的表現法について検討している。
著者
西島 恵介 神山 文子 藤田 米春
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.110(1996-CH-032), pp.7-12, 1996-11-15

本報告では,短編推理小説において,明示的に現れる情報の論理的関係の抽出について述べる.これまでに,論理と感情を含む文書を理解するための,文書の構造データ化を行なっている.今回,文書理解に必要な明示情報の論理的関係を抽出した.特に,時間的順序関係,因果関係,含意関係,等に関して検討を行なった.
著者
小出 明弘 斉藤 和巳 風間 一洋 鳥海 不二夫
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.164-173, 2013-08-21

本稿では,Twitterのフォローネットワークを分析することにより,ユーザのフォローがどのような目的で行われているのか議論する.まず,フォローネットワークの特徴を把握するため,ネットワーク内の高次数ノードに着目し,ブログの読者関係とレビューサイトのお気に入り関係を表したそれぞれのネットワーク構造の特徴と比較する.その結果,ブログやレビューサイトでは,比較的小規模な高コリンクグループが得られたのに対し,フォローネットワークでは,強い双方向関係により構築された大規模な高コリンクグループと,双方向関係がほとんど見られない複数の小規模な低コリンクグループが存在することが分かった.さらに,高次数ノードのツイート集合を分析し,これらのグループは同じようなツイートをしているにもかかわらず,フォロワとの関係に大きな違いが見られることが分かった.
著者
大河原 一憲 笹井 浩行
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.02, pp.152-158, 2015-01-15

日常生活下の身体活動量を客観的かつ高精度で評価するため,近年,物理的・生体的計測値から活動量を推定する加速度計法や心拍数法などが用いられている.また,これらのいわゆる“活動量計”は,安価に購入できるようになったことから,専門家のみならず,一般にも広く認識されてきた.本稿では,小型化,大容量化,複数の物理的・生理的指標の取得,コンピュータネットワークの利用など,より複雑化されてきた活動量計の測定原理,妥当性,活用の可能性について解説している.今後,活動量計は,研究調査での利用のみならず,多くの人の健康管理ツールとして,益々の発展が期待される.
著者
石井 康太 今枝 龍介 和田 健太 横濱 道成 Kouta Ishii Imaeda Ryusuke Wada Kenta Yokohama Michinari
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.114-123,

現在,日本のイワナ属魚類はオショロコマ(Salverinus malma),アメマス(S. leucomaenis)およびアメマスの亜種のゴキ(S.l. imbrius)の2種1亜種に分類する説と,オショロコマをオショロコマ(S. malma malma)およびミヤベイワナ(S.m. miyabei)の2亜種とし,アメマスとアメマスの亜種のゴキをまとめ,単にアメマス[地方名 : エゾイワナ](S.l.f. leucomaenis),ニッコウイワナ[地方名 : イワナ](S.l.f. pluvius),ヤマトイワナ(S.l.f. japonica)およびゴキ(S.l.f. imbrius)の4タイプに分ける説もあり,分類には論議が絶えず統一化されていない。また,日本においてイワナ属魚類はまだ形態学的特性による分類法では今のところ定説はない。そこで我々は,既に検出法が確立されているアイソザイムやmt-DNAおよびゲノムDNAの多型に加え,新たに生化学的手法による標識因子を開発するために北海道産のイワナ属魚類を用いて,血液タンパク質および筋肉タンパク質の多型座位の検索を試みた。1)血液タンパク質型の検索 イワナ属魚類において,血清トランスフェリン(Tf)型,血清エステラーゼ(Es)型,ヘモグロビン(Hb)型および血球膜タンパク質(Cell X)型について検索し,Tf型[基本バンドD,F,H,Lおよび不顕性(-)]は9種類のうち,F型が出現頻度0.712でオショロコマに特徴的な表現型であり,J型が出現頻度0.917でアメマス類に特徴的な表現型であった。Es型では3つの領域のうちオショロコマにはEs-II領域[基本バンドA,Bおよび不顕性タイプ(-)]およびEs-III領域[基本バンドF,I,Sおよび不顕性(-)]が,アメマス類にはEs-III領域[基本バンドD_1,D_2および不顕性(-)]がそれぞれ特徴的な領域であった。Hb型では2つの領域(IおよびII領域)に分けることができ,そのうちI領域(基本バンドA,B)に多型が認められ,アメマス類はA型に,オショロコマにはB型に偏った出現頻度を示した。Cell X型(基本バンドA,B)には明確な種間的差異が検出されなかったが3つの表現型に分類することができた。また,オショロコマにおいてTf型Es型(IIおよびIII領域),Hb-IおよびCell X型に,アメマス類においてはEs型のI領域に地域的差異と考えられる表現型が検出された。2)筋肉タンパク質(Mu)型の検索 イワナ属魚類において,Mu型(基本バンドA,B)ではオショロコマはA型に,アメマス類はB型に偏った出現頻度を示した。以上のことから,Tf型,Es型(I,IIおよびIII領域),Hb-I領域およびMu型においてオショロコマとアメマス類の2グループに分けることができる差異が検出され,アイソザイムやmt-DNAなどと同様に種間や種内の差異を明らかにできる座位の検出法が確立された。3)種間雑種個体の確認 丸瀬布町武利川で採取されたエゾイワナの1個体は,斑紋および形態的にはエゾイワナタイプであったが,Tf型およびMu型でオショロコマとアメマス類のヘテロ型と思われる表現型が検出され,オショロコマとエゾイワナの交雑した個体と考えられた。
著者
當仲 寛哲
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.982-988, 2014-08-15

ビッグデータ処理といえば,Hadoopを用いた分散ファイルシステムや分散処理が頭に浮かぶが,一方で,UNIX系OS(Linux,FreeBSD等)の基本機能であるシェルスクリプトを用いてテキストデータを処理し,コンピュータの性能を最大限に活かすプログラミング手法にも注目が集まっている.本稿はシェルスクリプトをベースにしたビッグデータ処理の事例として「ユニケージ開発手法」やシェルスクリプトによる並列処理,シェルスクリプトで動作する統計コマンド群などについて紹介する.