著者
加藤 智子 尾﨑 啓子
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 = Journal of Integrated Center for Clinical and Educational Practice (ISSN:13477420)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.49-55, 2017

本研究は、平成27年度に教育学部附属特別支援学校中学部3年生で取り組んだ、木工製作活動の実践を素材として、他者とのかかわりの観点から生活単元学習のもつ可能性を検討した報告である。中学部2年間で積み重ねた学習経験から、知的障害のある生徒たちが見通しを持って取り組める木工活動を基盤にした他者とのかかわりを段階的に設定することは、自信や製作への動機づけを高めることに役立った。「誰が」「何を必要としているか」「誰に」「何を製作するか」を、活動の導入で伝えることが、生徒の主体性を引き出す上で重要であった。
著者
鈴木 隆生 葉石 光一
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教育学部 = Journal of Saitama University. Faculty of Education (ISSN:18815146)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.305-318, 2017

The purpose of the current study was to discuss the methodological issues of team teaching to boost autonomous learning among students with intellectual disabilities. We observed classroom practices in a special school and then divided team teachings as to function into 7 types based on Ibaraki Teacher Training Center (2000). From the viewpoint of the self-determination theory, the interactions between teachers and students were analyzed. It was ascertained that 3 basic psychological needs of self-determined theory (competence, relatedness and autonomy) were satisfied in the classroom practices regardless of the type of team teaching. Suggestions for future research include the need to study how 3 basic psychological needs were connected with each other and how students’ motivation varies in the activity of peer groups.
著者
伊藤 甲之介
出版者
鎌倉女子大学
雑誌
鎌倉女子大学紀要 = The journal of Kamakura Women's University (ISSN:09199780)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.113-119, 2017-03

This paper describes the differences between the self-reliance activity of children with visual impairment, auditory impairment, physical handicap, and poor health at special-needs schools and the self-reliance activity of children with intellectual disability with reference to the history of self-reliance activity. This study also examines the relation to the context of subject-specific guidance. The education for the disabled other than for those with intellectual disability is supposed to provide the same education as a normal school (equivalent education). However, for intellectual disabilities education, there is a correspondence from the characteristic of the disability in the subject of the content for under first year of elementary school. Self-reliance activities address the difficulties from disabilities other than intellectual disabilities, however, for the mentally retarded itself, subject-specific guidance address. Here we describe the differences and relationships of self-reliance activities.
著者
池原 悟
雑誌
情報処理学会研究報告情報学基礎(FI)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.87(1992-FI-028), pp.31-40, 1992-11-09

最近、自然言語処理においては、意味処理、意味解析、意味理解などに関する研究が盛んであるが、意味そのものについて、考察や議論を提起した研究はまれである。自然言語処理は社会的産物である自然言語が研究対象であるため、従来の自然科学と異なる困難さがあり、統一的な見解が得られない状況にあるが、意味処理の研究を促進するには、常識的な感覚に頼るだけでなく、言語表現の意味について言語処理の観点からあらためて考察を加え、定義を明確にして研究することが望まれる。本稿では、言語過程説の立場から、従来の言語哲学の分野での議論を振り返り、言語表現の意味とその処理について考察する。具体的には、言語表現には、対象の姿とそれに対する話者の認識が対応づけられていることに着目して、「対象」と「認識」「表現」の3者の関係を意味と考える。そして「意味処理」を、表現に使用された言語上の約束を特定するための「意味解析」と、言語表現と対象世界の対応付けを行う「意味理解」の二つの過程に分けることを提案する。また、この内の「意味解析」の例として、日英機械翻訳システムALT?J/Eの翻訳方式と意味辞書の関係について紹介する。
著者
高橋 照彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.131-184, 2001-03-30

日本の貨幣史については,既に文献史学や考古学の立場から様々な研究が進められているが,それらだけでは解明の困難な点が少なくない。その点を克服するため,筆者らの共同研究として,銭貨の理化学的な分析,なかでも鉛同位体比分析による調査を試みた。その成果を承けて,本稿では,文献史料や考古資料を含めて分析結果を再吟味し,日本の古代から近世に至る銭貨に関して原料調達という観点から歴史的に位置づける試みを行った。その変遷過程をごく簡単にまとめると,以下のようになる。 1.古代銭貨では,長門の長登鉱山周辺産鉛の使用が圧倒的であることが判明し,長門とともに鋳銭用鉛貢納国である豊前から産出された鉛の使用は少なかった可能性が高い。 2.中世銭貨のうち本邦模鋳銭では,14世紀代頃には中国産鉛を主体的に用いていたと推測されるのに対し,15世紀代頃以降には中国産鉛の使用がほとんど消滅し,西日本を中心とする国産鉛が使われるようになっていき,ごく一部ながら中国以外の海外産鉛も用いられることになる。 3.近世銭貨では,基本的に国産鉛が用いられているが,古寛永段階(17世紀前半)では鋳銭地近隣の鉱山を中心に原料供給を受けることが一般的ながら,東日本の鋳銭所では西日本産あるいは神岡鉱山産の鉛の供給を受けることがあった。 4.近世銭貨のうち,文銭の鋳造期(17世紀後半)には対馬の対州鉱山からの一括供給が行われ,その後は各地からの原料鉛の供給によっているが,次第に東北地方など東日本での鉛に依存していくようになるものと判断される。
著者
小林 健二
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = The Bulletin of The National Institure of Japanese Literature (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.43, pp.1-55, 2017-03-16

『舞の本絵巻』は江戸初期に刊行された絵入り版本「舞の本」三十六番を粉本に制作された大部で豪華な揃いの大型絵巻である。三十六番が絵巻として作られたと想定できるが、現在は散逸して国内外に十二軸十五番のものと六軸十一番の二系統の伝本が確認できる。それらを悉皆調査して「舞の本」から豪華な絵巻へと作られた様相を考察し、同時代の文芸享受史への位置づけをはかった。さらに、「舞の本」を粉本として豪華な絵本も同じ工房で作られたこと、これらの豪華な絵巻・絵本が松平家などの大名によって注文制作されたことにも言及した。また、現存する幸若舞曲を題材とした絵巻・絵本を概観できるように「幸若舞曲の絵入り本一覧稿(増補改訂)」を付した。The Illustrated Scrolls of Mainohon, grand both in number and size, gorgeously illustrated, were based on an early Edo-period woodblock edition of Mainohon, which was itself embellished throughout with pictures. Though this set of scrolls most probably included, in its original form, illustrations of all thirty-six kōwaka dances lyrics, extant versions contain only a portion of that number: one lineage of this work contains illustrations from fifteen dances in twelve scrolls, while the other contains illustrations for eleven dances in six scrolls. By examining all extant editions of this set of scrolls, I have attempted to trace the process whereby the picture-book Mainohon was at last transformed into the Illustrated Scrolls of Mainohon, as well as the latter’s place in the overall history of Edo-period art and literature. I discuss, furthermore, how the workshop which produced these illustrated scrolls also produced a number of other, similarly gorgeous picture-book editions, all based on the aforementioned Mainohon. All of these-illustrated scrolls and picture-books alike-were produced in response to requests made by the powerful daimyo family known as the Matsudaira clan. In order, finally, to facilitate a broader understanding of the field, I have thought it best to append a list of all extant illustrated books dealing with kōwaka dances lyrics.
著者
岡本和樹 太田正哉 大谷洸貴 佐藤司 本車田匡隆 山下勝己
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.45-46, 2013-03-06

本研究では,広く普及している任意のQRコードをマーカとするARシステムを提案する.本システムは,Android, iOS, Flashなどのプラットフォーム上でQRコードを認識するZXingを用いており,HTML5/Javascriptによって記述したARコンテンツを表示できるマルチプラットフォームなARアプリケーションを容易に開発できる.
著者
齊藤 鉄也
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.315-322, 2018-02-15

本論文では,古典籍に用いられている仮名字母の出現傾向を利用し,その資料の書写者の推定や年代の推定を行った調査結果を報告する.具体的には,書写者や年代ごとに資料を分類することを目的に,同音の仮名字母の出現頻度率を特徴量とし,藤原定家とその近親者や側近の人物が書写した資料の調査を行った.その結果,定家筆の一部の資料が,他筆の資料と分類できる可能性があること,定家筆の資料の中では,年代が近い資料が分類できること,が明らかになった.本提案手法により,古典籍の資料の書写者の推定や年代の推定を行い,古典籍の研究の基礎となるデータの蓄積とそれを活用した研究の進展が期待できる.
著者
小谷 亮太 綱川 隆司 西田 昌史 西村 雅史
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.306-314, 2018-02-15

本稿では,日本語文書中の語句に,Wikipedia記事へのリンクを付与するwikificationタスクにおいて,リンク付与に値する重要な語句等を選択するアンカー抽出器について検討を行う.本研究ではWikipediaにおけるリンクのガイドラインに準じたアンカー抽出基準をベースに,文書に適度にリンクを付与してWikipedia記事と結び付けることにより,文書の理解の可能性を高めることをねらいとする.日本語におけるアンカー抽出に有効と考えられる素性として,アンカーの前接語・後接語との関係をとらえた素性,および共起するアンカーの条件付きkeyphraseness素性の利用を提案する.また,一般的な日本語文書に対するアンカー抽出器の性能評価を行うため,日本語Wikificationコーパスに対して本研究で定めたアンカー抽出基準に従ってアンカー抽出作業を行い,評価用コーパスを構築した.評価実験により,提案した素性を既存手法に加えることで性能が改善することが示された.また,評価用コーパスを用いた実験では,正解率においてアンカー抽出作業者の2者間一致率の平均と同程度の性能が得られていることを確認した.
著者
耒代 誠仁 高田 祐一 井上 幸 方 国花 馬場 基 渡辺 晃宏 井上 聡
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.351-359, 2018-02-15

古文書の研究者にとって,古文書デジタルアーカイブの活用を促すことは重要な課題である.本論文では,字形画像をキーとした横断検索技術による古文書Webデジタルアーカイブ活用への効果について述べる.字種は文書に対する現実的な検索キーの1つである.しかし,古文書において字形との対応は必ずしも確定しない.この課題を解決するために,私たちは字形画像をキーとした古文書Webデジタルアーカイブの横断検索を実装した.5カ月間の実験で入力されたキー数は合計で200,000件を超えた.これは字種による横断検索の件数と比較しても十分に大きい.また,私たちは古文書解読の専門家による評価実験を実施した.専門家は,使いなれた画像処理ソフトウェアを搭載したPCもしくは筆者らが作成した画像処理ソフトウェアを搭載したiPod Touch,またはその両方を使用した.「検索結果にキーと類似した画像が含まれるか」という旨の質問に対しては,すべての専門家が肯定的な回答を示した.検索精度と使い勝手の向上,および字形テンプレートの整備を通した活用のさらなる促進は今後の課題である.
著者
上羽 葵 武田 哲也 岡田 至弘
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第48回, no.人工知能及び認知科学, pp.11-12, 1994-03-07

従来の情景画像からの文字領域抽出の手法では、画像中の領域境界線を抽出し、文字領域の抽出処理を行っている。ここでは、文字領域が平坦な均一色である背景情報の上にのみ存在するという拘束条件を前提としている。しかし、文字領域の背景情報は、均一色であるとは限らず、グラデーション的な色情報を持つなど、極めて複雑な色情報を含む場合も多い。そこで、本研究では背景情報に依存しない文字領域候補抽出を行う。本研究の文字領域候補抽出手法として、グラデーション構造の記述に有効な等色線を用いる。等色線は、色の変化を記述するための一手法である。等色線は線の現れる位置の情報だけでなく、色変化も情報として持つ。また、色変化が急激な部分を領域分割線とすることによって、等色線による領域分割も可能となる。
著者
岩井 茂樹
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.31, pp.69-114, 2005-10-31

現在、能といえばすぐさま「幽玄」という言葉が想起されるほど、両者は固く結びついている。なるほど、世阿弥が残した能楽書には「幽玄」という言葉がたびたび使われている。だが、「幽玄」は、能の世界では長らく忘れ去られていた言葉であった。それでは、能と「幽玄」は、いつから、どのようにして、結びついたのだろうか。本論稿はこの点を明らかにすることを目的とする。