著者
谷 直樹 風間 一洋 榊 剛史 吉田 光男 斉藤 和巳
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.31-41, 2017-06-28

Twitterは現実世界の状況を把握するソーシャルセンサとして活用されており,位置情報が付加されているジオタグ付きツイートを用いた人間の移動や観光地情報の分析がさかんに行われている.本論文では,ジオタグ付きツイートを内容や移動速度,移動距離などの条件に基づいて選別・集積して得られる位置情報から,それらの発言者たちが共通で利用している交通路を抽出する方法を提案する.実際には,まずツイート投稿中またはその前後にユーザが移動したと推定されるツイート群を抽出し,対象地域を細分化した矩形領域内のツイートをHough変換して,交通路の断片である近似線分群を求める.次に,連続していると推定される近似線分をグループ化して,3次スプライン曲線で近似・補間することで,連続した交通路として抽出する.実際に,JR山手線周辺の領域の抽出結果を可視化して,提案手法の特徴を分析する.また,特に鉄道路線に着目して,国土数値情報鉄道時系列データと比較することで,提案手法を評価する.さらに,動的に生成される経路抽出の応用例として,桜並木に沿って移動する花見客の経路を分析する.
著者
坂本 亘 関嶋 政和
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO) (ISSN:21888590)
巻号頁・発行日
vol.2017-BIO-50, no.43, pp.1-6, 2017-06-16

創薬において創薬標的タンパク質や薬候補化合物の立体構造の可視化は重要な役割を果たしている.しかし,現在多くの分子構造描画システムでは本来 3 次元の立体構造を 2 次元のディスプレイで描画している.本来3次元であるタンパク質や薬候補化合物の立体構造は,その相互作用や化合物の最適化を考える上で,3 次元で可視化した方がより有用な知見が得られると考えられる.そこで,本研究ではタンパク質や化合物の立体構造を Mixed Reality (複合現実) を実現するデバイスである HoloLens を用いて複合現実で描画するシステムを開発した.HoloLensの性能に起因する表示上のパフォーマンスに課題はあるものの,今後課題を解決していくことで,創薬において本システムは有用なものになると考えられる.
著者
小林 祐樹 Yuki Kobayashi
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2016-03-25

本論文では, モンテカルロ木探索を用いた囲碁プログラムのデータ構造を考え, 学習手法やヒューリスティックの有無がプログラムの強さにどのように影響するかを考察した.モンテカルロ木探索は木探索部とシミュレーション部に分けられ, さらにシミュレーション部は大きく2つに分けられる. 1つは盤全体の着手確率のテーブルを保持して, その中からランダムに着手を選ぶ非決定論的シミュレーションであり, もう1つは直前の着手に対応する良さそうな手があったら, 即座にその手を選ぶ決定論的シミュレーションである. 決定論的シミュレーションを行うオープンソースソフトウェアにPachi やFuego などがあるが, それらと同等の棋力を持つ非決定論的シミュレーションを行うオープンソースソフトウェアは存在しない.本研究では, 非決定論的シミュレーションを用いる囲碁プログラムを設計し, Pachi やFuego よりも強い囲碁プログラムの開発を目指した.プログラムに利用している学習手法の妥当性や, ヒューリスティックの有効性を示し, 13路盤と19路盤ではPachi とFuego よりも強いプログラムを開発できた.非決定論的シミュレーションを行うプログラムを作成し, オープンソースソフトウェアとすることで, 様々な手法の有効性を2つのシミュレーション手法の違いを含めて検証できるようになった.
著者
井庭 崇
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.48, no.SIG19(TOM19), pp.75-85, 2007-12-15

本論文では,2人のモデル作成者によるコラボレーションによってモデリングを行う「ペア・モデリング」の方法を提案し,その実践事例を報告する.ソフトウェア工学の最近の研究では,ペアによるプログラミング作業が,個々に仕事を割り振って分業するのに比べて,生産性の観点からも品質の観点からも優れているということが知られており,モデリングにおいてもそのような効果が期待できる.本論文では,ペア・モデリングの方法について論じた後,ペア・モデリングの原理を,ニクラス・ルーマンによって提唱された社会システム理論に基づいて考察する.最後に,私たちの提案するモデリングツールを用いたペア・モデリングの実践事例を紹介する.
著者
濱野 健
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要, 人間関係学科 (ISSN:13407023)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-16, 2017-03

In Japan, Divorce numbers have increased, so have disputes in separated families over breaches of child visitation arrangements (including child support). Insisting upon the signi cance of the changing social status of shared parenting after divorce in Japan, both some juridical professionals and the parents involved are seeking more functional social support systems to deal with it, as well as the possibility of reforming Japan’s family law. As such, in reviewing rising claims of family disputes, this article explores the ways in which the family today can deal with this complicated matter, in conjunction with public, non-juridical family support instruction. In so doing, it rst attempts to describe the ways in which troubles with child visitation in the Japanese separated family has lately has been problematized. Then, regarding the concept of “good divorce” as a key idea in the construction of parenting in a separated family, it reviews the principle of shared parenting by divorced families in several Western societies. Finally, brie y introducing the role of a government-funded institution of multi- family support established in Australia in 2006, this article will consider the ways in which different shared parenting circumstances are both flexibly and inclusively supported by the public sector, as well as by the private efforts of each family for the best interests of the children.

2 0 0 0 OA 江戸の暖簾

著者
小泉 和子
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.75-86, 1987-03-28

Noren is a well-noted symbol of Edo merchants as marked in the restored model. The way of hanging a screen at the entrance of a store to separate it from the outside world had long been put into practice which was the original form of Noren. In the Heian period, screens were used in the homes of aristocrats called Shinden-style house (the palace style of Heian period architecture), as the partition which later developed into the original form of Noren bringing its design gradually into sophistication. The term ‘Noren’ was first observed in the Muromachi period used as a screen at the entrance of a temple for Zen study. The present style of Noren emerged when such an entrance screen showed the effect of a signboard. It was due to the economy being activated in the 1600s, but the designs were simple. It was in the 1700s when colourfully designed Noren emerged. On the other hand, elaborately designed Noren came to be used inside the theatres and was distinguished from others by being called ‘Uchinoren’ (Noren for the interior). Noren won its status as the symbol of business at merchants' shops, while small-sized Noren made with rope called Nawanoren also came into use at small restaurants like taverns or saloons where sake was served. This created a local scene as well those days. Another type of Noren also emerged in Edo at the beginning of the 1800s : A short in length but wide Noren attached along a stick was fixed outside of a stretched-out, arcade-shaped eave at the entrance of a shop. There, Noren did no longer play the role of screen but did that of a substantial wall. This tactful measure was an inevitable outcome of necessity having to make as many shops as possible on a narrow ground originally planned to build the road. This stirs the imagination that there could have been a different characteristic on building up a city in Edo from that in Kyoto.
著者
岡野 初枝
出版者
岡山県立大学短期大学部
雑誌
岡山県立大学短期大学部研究紀要 (ISSN:13404687)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-11, 1997-03-31

社会福祉労働について一つの定義をあげれば,社会福祉の制度とか政策が住民に活用されるために,社会福祉に従事している人々により行われる労働ということができる。労働の分類では直接財貨を生産しないために,非生産的労働としてサービス労働に分類されている。しかし社会福祉労働は非生産的な労働ではなく,憲法にもとづく生存権を保障するために社会福祉行政に伴って現れる有用な労働である。 社会福祉労働は,生活に課題を持つ個人およびその家族に対して働きかける有用な労働であり,その対象は現実の社会的な諸関係に制約されている生きた肉体を持った個人の生活課題とそれに付随する精神的・人格的課題に対して行われる。そのとき社会福祉労働は個人の恣意として行われるのではなく,社会の責務として人問の社会権存在権を保障するために行われる。 社会福祉労働に従事する場所は,社会福祉事務所や児童福祉施設などが主であったが,高齢社会を迎えた現在では,老人福祉施設など高齢者を対象にした施設での従事者が増加している。また地域福祉や在宅福祉サービスの整備によりホームヘルパーの増加などその一端を示している。 社会福祉労働に従事する場合,基本理念としての倫理性が重視される。同特に,存在権を保障する方法については専門的技術を必要とする。高齢社会を迎えた現代の社会福祉労働の新しい課題は,社会福祉労働者によって住民の環境としての社会制度や政策を変革していくことである。
著者
孫 英敬 山口 由紀子 嶋田 創 高倉 弘喜
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.1163-1174, 2017-05-15

情報セキュリティへの脅威はますます増加しており,高度な技術を備えた人材を求める声が増大している.それにともない,日本では高等教育機関における情報セキュリティ教育課程を今後拡充していく方針が示されているが,情報セキュリティ教育課程は,実際の現場から要求される技術能力を満たす,現実に即した人材を育成するものでなければならない.そこで我々は,アメリカ国立標準技術研究所の下に設置されているNICE(The National Initiative for Cybersecurity Education)が定義した情報セキュリティ技術能力を情報セキュリティ人材の要求要件ととらえて情報セキュリティ教育過程の開発を目指した研究を行っている.本研究では,NICEにおいて783項目に表されている技術能力を62種類に分類・集約した.さらに,日本および,セキュリティ教育が進んでいる韓国の大学についてカリキュラムを調査し,NICE技術能力との相関分析によりカリキュラム分析を行った.
著者
青木 秀憲 宮下 芳明
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.50(2008-MUS-075), pp.37-42, 2008-05-21

本稿では,ウェブサービス「ニコニコ動画」でのコメント頻度によってその映像にともなう音楽のサビ部分の検出や映像要約に応用可能なのかを検証すべく,様々なジャンルの映像をとりあげ評価を行った.
著者
DeyueDeng 大塚孝信 伊藤孝行
雑誌
研究報告知能システム(ICS)
巻号頁・発行日
vol.2013-ICS-171, no.2, pp.1-8, 2013-03-11

近年行われた情報フィルタリングの研究では,共起情報を導入し,フィルタリングの性能を上げるには,学習データが大規模となることで,膨大となる処理時間への対応が課題となっている.したがって,共起の単語数を増加させた場合,爆発的なデータ数となる共起を高速に処理する方法を考えることが必要である.ストレージの容量的問題もあるが,データの処理,プログラムとデータベース間協調の効率を向上することが重要となる.また,共起の増加に伴いノイズも増加するので,処理性能に支障をきたす可能性もある.本研究では既存手法では構築困難な大規模な共起データを本扱う手法を提案する.提案手法では,並列処理を用いて,実用的範囲で許容できる時間内学習過程や判定過程を実行できるフィルタリングを実装できる.
著者
山根 信二 三上 浩司 長久 勝 中林 寿文 中村 陽介 小野 憲史 新 清士
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.2012-CE-116, no.4, pp.1-4, 2012-10-06

ゲーム開発のアプローチの一つであるゲームジャムが,近年世界各地で開催されている.即席チームによる短期開発であるゲームジャムでは,開発サイクルの全局面を体験することができる.ゲーム開発者団体のIGDA日本は,福島県南相馬市の協力を得て,即席チームが短期間でゲームを完成させるゲームジャムとして,「福島GameJam」を2011年より開催している.2回目の福島GameJam 2012では,南相馬市や国内外の会場をリアルタイム中継しながら同時多発ゲーム開発を行った.さらに南相馬市会場では小学生の全学年を対象としたワークショップを併設し,ゲーム開発を学びはじめた高校生が開発チームに参加した.この試みの背景解説および新たな人材育成の取り組みについて速報を行う.
著者
木村 裕二
雑誌
聖学院大学論叢 = The Journal of Seigakuin University (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.第29巻, no.第1号, pp.105-122, 2016-10

法務省は,2015 年3 月31 日,民法の改正案を国会へ提出した。その中に,次の2 つの規定が含まれている。(1)金銭の授受がなされる前は,借主は諾成的消費貸借契約を解除することできるが,貸主は損害賠償を請求できる。(2)借主は期限前に弁済することができるが,貸主は損害賠償を請求できる。これらの規定は「元本を期限まで利用する債務」「元本返済により失われた将来利息を補償する義務」を借主に負わせるものではないことを,論証する。また,元本返済により失われた将来利息を補償する義務を定めた当事者間の合意の効力を,利息制限法がどのように制限するかを検討する。