著者
渡辺 勇士 井上 愉可里 原田 康徳
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.468-473, 2017-05-15

ビスケットはコンピュータの専門家ではない人でもプログラミングを楽しく理解できるツールである.2016年にアプリ版がリリースされ,タブレットで使えることによって,指で操作できるため,ペンを使うことに慣れていない児童でも,ストレスを感じずにプログラムをつくることができる.ビスケットは開発されてから,言語の進化と同時にビスケットの教え方も進化してきた.根底にある原理は「子供たちの驚きと喜びを最大化する」ように情報を提示することである.本稿では,実際の子供たちへの教え方になぞって,我々がどのように子供たちに教えているのか解説する.
著者
松崎 学
出版者
山形大学教職研究総合センター
雑誌
山形大学教職・教育実践研究 = Bulletin of Teacher Training Research Center, Yamagata University
巻号頁・発行日
no.1, pp.29-38, 2006-03-21

特定の小学校における教師の大半が,民主的な教師-子ども間関係のあり方とその具体的な対応について,親学習プログラムSTEPを通して学習した。民主的な学級機能が存在する場合の子どもの認知を想定して質問項目が用意された。各学期末において,学級機能と子どもの適応状態を測定した。学年末のデータにもとづく因子分析によって「学級機能尺度」が作成された。また,その因子間関係が共分散構造分析によって検討された。他方,3学期間の学級機能因子構造の変遷についても検討された。その結果,学級機能は,3因子で構成され,教師のかかわり(第Ⅰ因子「子どもの主体性を尊重した教師のかかわり」)を通して,学級集団内での所属感のある関係性(第Ⅱ因子「学級集団への所属感と有能感」)が創出され,その経験の中で,集団凝集性(第Ⅲ因子「集団凝集性」)が高められるように機能していることが明らかになった。また,3学期間の因子構造の変化については,STEP実施後の影響か,2学期で教師のかかわりが一つの因子としてまとまりを見せ,さらにその積み重ねの結果か,集団内における有能感や所属感に関する因子が3学期においてまとまりを見せた。キーワード:学級機能, 親学習プログラムSTEP, 教師のリーダーシップ, 教師-子ども間関係
著者
山本 冴里
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究
巻号頁・発行日
vol.47, pp.171-206, 2013-03-29

日本発ポップカルチャー(以下、JPC)に対する評価や位置づけは、親子間から国家レベルまで様々な次元での争点となった。そして、そのような議論には頻繁にJPCは誰のものか/誰のものであるべきかという線引きの要素が入っていた。本研究が目指したのは、そうした境界の一端を明らかにすることだった。
著者
木村 尚志
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.186-176, 2017-03-31

歌語「夜の鶴」は『和漢朗詠集』の「第三第四絃冷々 夜鶴憶子籠中鳴」(管絃・五絃弾・白居易)に基づく。高内侍は長子伊周が流罪となった時に、病に倒れ「夜の鶴都のうちに籠められて子を恋ひつつもなきあかすかな」(栄花物語・浦々の別れ)と詠んだ。百七十年後、源平の合戦に敗れ捕虜となった平家の武将平宗盛とその子清宗は、鎌倉へ向かった後、京都へ送還され、近江国篠原宿で斬首された。宗盛が清宗のことを思って泣いていたと聞いた西行は、「夜の鶴都のうちをいでてあれな子の思ひには惑はざらまし」(西行法師家集)と詠んだ。二首ともに「都のうち」に五絃弾の詩から取った「籠の中」という言葉を掛けて「夜の鶴」の縁語として詠み込み、そして栄枯盛衰の時代状況の中で生まれたものである。本稿では鶴という歌語全体の性質にまで視野を広げつつ、このような「夜の鶴」にまつわる逸話が後の時代の歌語「鶴」の展開にどのように関与するのかを家の意識等にも着目しつつ考察する。
著者
島倉 秀勝

イヌの食物アレルギーは重要なアレルギー疾患の一つである。食物アレルギーは環境要因と遺伝要因の両方が発症に関連していると考えられている。ヒトでは衛生環境の清浄化がアレルギー疾患の増加の一因だと考えられており、「衛生仮説」が提唱されている。近年、イヌもヒトと同じ環境で生活するようになっており、衛生環境の清浄化がイヌの食物アレルギーの発症にも影響を与えていると考えられる。また、食物アレルギーを発症しやすい犬種が報告されていることから、遺伝要因がイヌの食物アレルギーの発症に関わっていることも推測される。食物アレルギーの病態は大きくIgE依存性とIgE非依存性に分けられる。これらの病態が複雑に影響していることがアレルギーの機序の解明や診断方法・治療法の確立を困難にしている。現在、食物アレルギーの治療は原因食物の摂取を回避することが一般的に行われている。しかしながら、根本的な治療法は確立されていない。イヌの食物アレルギーを正確に診断し、有効な根治療法を適用できるようになれば、獣医療にとって大きなメリットがあると思われる。本研究の目的はイヌの食物アレルギーの免疫学的な解析を行い、それに対する治療法の研究開発を行うことである。 第1章では、高い頻度で食物アレルギーを発症する家系のイヌを調査した。本家系における食物アレルギーは常染色体優性遺伝が推定された。すべての食物アレルギーのイヌはIgE非依存性の食物アレルギーを示した。一部の食物アレルギーのイヌに対して食物負荷試験を実施し、食物負荷試験の前後で抗原特異的リンパ球の増殖能を検討したところ、3頭中2頭は原因食物アレルゲン特異的リンパ球の活性化が認められた。IgE非依存性食物アレルギーについての研究を行う上で、モデル動物として本研究の家系のイヌを用いることは意義があると考えられる。ヒトにおいてもIgE非依存性食物アレルギーの免疫学的機序は未だに不明な点が多く、今後、イヌの分野でも研究を進めて行く必要があると思われる。 第2章では、IgE依存性の食物アレルギーのイヌの血清学的解析を行った。一般的な食物アレルゲンである卵白の粗抗原に対するIgEを測定したところ、食物有害反応犬82頭中8頭(9.8%)が陽性を示した。ヒトにおいて調べられている4つの卵白精製抗原に対するIgE反応性を卵白粗抗原特異的IgE陽性を示した8頭のイヌで調べた結果、8頭中6頭(75.0%)はオボムコイドとオボアルブミンに陽性を示し、8頭中3頭(37.5%)はオボトランスフェリンに陽性を示した。本研究において、ヒトと同様にオボムコイドとオボアルブミンがイヌの主要な卵白精製抗原だということが示唆された。本研究におけるイヌの卵アレルギーはヒトのモデルとしても有用であることが判った。 第3章では、マウスを用いてアレルゲン発現組換え乳酸菌の経口免疫療法の基礎的検討を行った。食物アレルギーの根治療法の候補として研究されている経口免疫療法のさらなる治療効果向上を目的として、プロバイオティクスとして注目されている乳酸菌をアレルゲンの輸送担体として用いて実験を行った。卵白精製抗原であるオボアルブミンを発現したLactobacillus caseiをマウスに経口投与し、オボアルブミン発現L. caseiの抗アレルギー効果を検討した。オボアルブミン発現L. caseiを投与した群のアナフィラキシー反応や血清中IgEの結果は他の群と比較して違いがなく、抗アレルギー効果は認められなかった。今後、経口免疫寛容誘導に必要な抗原量の検討を行い、それらの情報を基にアレルゲン発現L. caseiの改良を行う必要があると考えられる。 本研究では、イヌのIgE依存性ならびに非依存性の食物アレルギーの免疫学的な解析を行った。さらにイヌの食物アレルギーの根治療法として、アレルゲン発現組換え乳酸菌を用いた経口免疫療法の基礎的な研究を行った。イヌの卵アレルギーにおいて卵の各精製アレルゲンに対するIgE抗体の反応性を検討して、ヒトの卵アレルギーにおけるIgE反応性とよく似ていることを明らかにした。本研究のイヌの卵アレルギーはヒトのモデルとしても有用であることが判った。また、本研究における遺伝的に非依存性食物アレルギーを発症するイヌも食物アレルギーを研究する上で有用なモデルとなると思われる。アレルゲン発現組換え乳酸菌を用いた経口免疫療法については今後さらなる研究を行い、有効な根治療法の開発をしていく予定である。
著者
坂上 文彦 尺長健
雑誌
情報処理学会論文誌コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:18827810)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SIG17(CVIM8), pp.100-108, 2003-12-15

本稿では,照明変動およびノイズに影響されない物体認識を目指す立場から,基本問題として正規化固有空間への部分射影を取り上げ,その最適化法を論じる.ここで,正規化固有空間とは,画像の輝度の総和を一定とする正規化画像空間内に構成される固有空間であり,輝度変化に対して不変であるという特長を持つ.本稿では,まず,問題の定義を与え,解法を論じる.ここで,正規化固有空間の同次表現(同次固有空間)を導入することにより,正規化固有空間への部分射影の最適化(最適部分射影)が同次固有空間への線形射影に帰着できることを示す.最後に公開データベースYale Database B上での認識実験により,同次固有空間を利用した最適部分射影の応用例を示す.本稿で示す最適部分射影はコンピュータビジョンの様々な問題に応用可能であると考えられる.
著者
古橋 健斗 松本 拓也 福田 浩章
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-140, no.1, pp.1-6, 2017-05-09

クラウドサービスでは,アプリケーションを提供するサービス提供者が物理マシンやネットワークを保有するインフラ提供者から必要に応じてリソース (e.g., 仮想マシン) を確保し,サービスを提供している.サービス提供者は,最大負荷 (必要になる仮想マシンの最大数) を見積もることでサービスの円滑な運用を目指しているが,予め見積もることは難しい.一方,インフラ提供者は,物理マシン,仮想マシンの負荷状況 (e.g, CPU やメモリ使用量) をもとに仮想マシンを再配置し,データセンタ全体の運用効率向上を目指している [1] [2].この検証には実運用に適用することが望ましいが,サービス提供者の SLA を保証する必要があり,実現は難しい.また,大規模なデータセンタを準備することも難しいため,シミュレーションでの検証を行わざるをえない [3].そこで本研究では,RaspberryPI を利用し,サービス提供者,インフラ提供者それぞれの要求を容易にテストできる環境を提供する.具体的には,複数の RaspberryPI を使用した仮想データセンタの構築と負荷状況の監視,仮想マシンの操作を実現する.また,必要に応じて仮想マシンを増減し,スケールアウトする機能を実現する.そして,仮想マシンの移動,スケールアウトを本環境で実行し,その機能性能を示す.
著者
清水 祐太郎 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-140, no.14, pp.1-11, 2017-05-09

メモリ技術の発達により,メインメモリサイズの巨大化が進んでいる.こうした主記憶が大規模な環境では TLB ミスによるレイテンシが問題となる.TLB ミスを減らす手法の一つとして,HugePage の利用が挙げられる.HugePage を利用することによって,ページテーブルの 1 エントリあたりがカバーできるアドレスの範囲が拡大し,TLB のカバレッジも同様に増加する.これまでに HugePage を利用するための手法がいくつか提案されている.しかしながら,アプリケーション自身がメモリ管理を行う場合では,いずれの手法でも十分に効率的な割り当ては行えない.本研究では,アプリケーションレベルでのメモリ管理を考慮しながら,効率的に HugePage を割り当てるための手法を提案する.今回提案する手法によって,必要とする分だけ HugePage を利用することが可能になる.本研究では,提案手法を Linux kernel 4.7.10 と memcached 1.4.31 上に実装を行った.性能評価を行い既存手法と比較した結果,実メモリ使用量のデフォルトからの増加量を 93.6% 程度削減しながら,既存手法の約 99.4% のスループットを達成した.
著者
田村 亮子
出版者
清泉女学院大学人間学部
雑誌
清泉女学院大学人間学部研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies Seisen Jogakuin College (ISSN:21893632)
巻号頁・発行日
no.14, pp.41-60, 2017-03-15

Levels of Japanese learners’ proficiency in English have been divided into two extremes. Proficiency level of the one extream is B1 or higher on the CEFR scale, while that of the other is A2 or lower. What is needed for English learners to attain B levels is intensive and extensive reading training on the basis of an integrated understanding of English Grammar. The number of those who do not have enough opportunities for this training is increasing, however. This is the first of my papers in which I examine the reasons which underlie this bipolarization, the problems it has been causing in the fields of English education, society, culture, and politics, and suggest ways to solve those problems.