著者
上野 一彦 大隅 敦子 Kazuhiko Ueno Atsuko Oosumi
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 = The Japan Foundation Japanese-Language Education Bulletin (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.4, pp.157-167, 2008-03-17

日本語能力試験は1994年度より障害を持つ受験者に対する特別措置を開始し、2006年度は95名がこの措置を利用している。中でもLD(学習障害)等と分類される学習障害や注意欠陥・多動障害、高機能自閉症に関する措置については、原則を立てつつ試行を重ねている段階である。 一方坂根(2000)によれば、既に日本語教育の現場でもLD(学習障害)等に相当する障害を持つ学習者を受け入れており、教師は「LD学習者の対応は、学習目標、LDの程度や症状の問題など、多くの要因が複雑にからみあうため、一律の対応をするのがよいのか」と懸念しているという。 本稿ではLD(学習障害)等の中核をなすと言われる発達性ディスレクシアに焦点を当て、専門家と実施主体が連携しながら、WAIS-Ⅲをはじめとする認知・記憶特性を理解し、特性に基づいた過去の措置を踏まえて特別措置審査を行っているさまを、実際の事例とともに紹介する。
著者
佐藤 弘夫
出版者
リトン
雑誌
死生学年報
巻号頁・発行日
vol.11, pp.53-69, 2015-03-31

From the 14th century, Japanese people experienced an enormous shift in terms of intellectual history. The idea of “the other world,” which during the early part of the medieval period had been overpowering reality, went through a rapid process of decline. While a wave of secularization swept society as a whole, the image of a far away Pure Land as the place for one’s rebirth after death faded among people, and the view that this present world was the only reality, began to spread. As a result, peace for dead people was no longer found in setting off for a distant Pure Land, but in abiding in a specific spot in this world, waiting for periodic visits by descendants and listening to the chanting of sutras.The formation of a general social notion according to which the dead abided in their graves meant the rise of the belief that in the afterlife, one would also be able to keep an eye on the daily lives of one’s loved ones from inside the grave. The feeling of “resting under the sod” shared by modern people developed after this cosmological shift, gradually spreading throughout early modern Japanese society. These days, as the notion of a person’s death occurring at a specific point in time demonstrates, people think there is a clear line to be drawn between life and death. Most people nowadays have a general image of someone passing from the world of the living to that of the dead more or less in an instant. However this understanding which might now be thought to have been so familiar to people in the middle ages, is entirely peculiar to the modern and contemporary periods of human history.
著者
木下 健 Ken Kinoshita
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.17-30, 2015-09-20

本稿の目的は、政治家とインタビュアーのコミュニケーションにおける相互作用の実態をケース・スタディにより明らかにすることにある。政治討論番組は、視聴者にわかり易く政治状況を伝えるとともに、マスコミが政治家に対して直接質問することによって、政府や政党を追及することに意義があるといえる。本稿においては、テレビの政治討論番組がインタビューを行う過程において、出演する政治家に対して、いかなる質問を行い、どのような回答を得ているのかを明らかにする。その際、司会者はどのような争点を質問し、出演する政治家はその質問に対して、いかに答えているのか、質問を回避しているのかを明らかにする。分析の結果、以下の3点を明らかにした。第1に、政治討論番組において、議題はテレビ局及び司会者が設定するため、唐突に質問の議題が大きく転換する点が存在することである。第2に、質問にはフェイスへの脅威が存在する場合があり、脅威には程度の違いが存在していることである。第3に、議題、フェイスへの脅威、及びクローズドエンドクエスチョンかどうかという質問の形式によって回答が明確に答えられるかが変わりうることが明らかとなった。
著者
原 陽子 仲村 美輝 角 典以子 石井 亘 飯塚 亮二
出版者
京都第二赤十字病院
雑誌
京都第二赤十字病院医学雑誌 = Medical journal of Kyoto Second Red Cross Hospital (ISSN:03894908)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.45-54, 2019-12

重症外傷では,迅速な初期診療を行うことが患者の予後を左右する.初療室での処置・治療だけでなく,外科的治療を要する場合は迅速および的確に行うことが求められる. 当院は併設型の救命救急センターで,手術室は10 室,手術症例数は年間約7,000 件である.初療室での手術治療は「人,物,場所」の確保が難しい環境のため,主に重症外傷手術は手術室で行っている.しかし,手術を要する重症外傷患者の初療室搬入から手術室入室までの所要時間は,2012 年までは平均で90 分以上かかっていた.2013 年より,重症外傷手術を短時間で開始するため,重症外傷手術に必要な物品・資機材が準備された部屋を夜間帯・休日に一室作成し運用した(ダメージコントロール手ルーム:DCS ルーム).運用後,初療室搬入から手術室入室までの所要時間は平均で約30 分に短縮した. DCS ルーム運用により,重症外傷患者を迅速に的確に安全に受け入れ,医師や手術室看護師が安全な治療を提供できる有用な取り組みであった.
著者
小井土 守敏
雑誌
大妻国文 (ISSN:02870819)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.107-128, 2022-03-16
著者
宮武 慶之 Yoshiyuki Miyatake
出版者
同志社大学文化情報学会
雑誌
文化情報学 = Journal of culture and information science (ISSN:18808603)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1-2, pp.154-140, 2022-03-31

江戸の地廻り酒問屋である鴻池屋永岡家が所蔵した「五節句図」(大倉集古館蔵)には抱一書簡二通が付属し従来、宛名の鴻儀とは作画を依頼した永岡伊三郎とされてきた。しかしながら鴻池屋歴代の活動時期は明らかにされていない。そこで鴻池屋が江戸町会所御用達であった点に着目し、御用達に関する記録から鴻池屋歴代の活動時期を区分し抱一書簡を再検討することで当時の周縁を明確にする。
著者
大熊 浩也 瀧田 愼 森井 昌克
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.2, pp.987-992,

二次元コードとしての QR コードはウェブページへのアクセス,特に最近では決済への利用等,幅広い用途に用いられている.QR コードは高い認識率を誇るものの,その内容を人が直接解釈できないことから,悪意のあるものが偽装した QR コードを作成し,不用意な操作から悪性サイトに導かれることが問題となっている.偽装された QR コードは必ず悪性サイトに誘導されるがゆえに発見が容易であり,早い時点で対策が講じられる.著者らは既に誤り訂正符号の性質を用いて発見が困難な QR コードを開発している.前回の報告ではその具体的な作成方法において,一つのモジュールにドットを付加または輝度値を変更など,注意深く観察することにより通常の QR コードと識別できる例を与えた.一つのモジュールだけでなく,QRコード全体に変更を加えることで,通常のQRコードとの識別が困難な偽装QRコードを作成することも可能である.本稿では,そのような QR コードの作成方法を提案するとともに,偽装 QR コードの危険性を明示する.さらに,提案した偽装 QR コードに限らず,様々な方法で偽装される可能性がある QR コードについて,その対策を述べる.