著者
芦田 均
出版者
日本栄養・食糧学会
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.213-223, 2017 (Released:2018-03-12)

ポリフェノールは生活習慣病をはじめとする様々な疾病の予防・改善に関わる機能性を発揮することが期待されている。本稿では,フラボノイドによる薬物代謝系調節作用機構と肥満・高血糖予防作用機構について,われわれの知見を中心に解説する。薬物代謝系調節作用機構の鍵分子であるアリール炭化水素受容体(AhR)に対して,フラボノイドは,そのサブクラスの構造に依存した抑制効果を示す。特に,フラボンとフラボノールは,AhRのアンタゴニストとして作用することで,化学発がん物質による薬物代謝酵素の発現誘導を抑制する。肥満予防効果の鍵分子は,さまざまな組織でエネルギーセンサーとして働くAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)であり,一方で,高血糖予防効果の鍵分子はグルコース輸送担体4型(GLUT4)である。また,筋肉細胞においてはAMPKがGLUT4の細胞膜移行を促進する。これらの鍵分子に対するポリフェノールの作用例を紹介する。
著者
北川 章 細江 智夫 河合 賢一 北川 弘之 河合 清
出版者
日本マイコトキシン学会
巻号頁・発行日
no.2, pp.65-69, 2019 (Released:2019-12-03)

Eupenicillium sheariiから分離された新規のマクロライド系抗生物質であるeusherilideの抗真菌性活性に関する分子機序を明らかにする目的で,新鮮な単離ラット肝ミトコンドリアを用いてミトコンドリアの呼吸機能について検討した。Eusherilideは,L-グルタミン酸系とコハク酸酸化系呼吸の両方を阻害した。この阻害は,ロテノンとアンチマイシンAの阻害部位の上に電子伝達シャントを生成するN,N,N',N'-テトラメチル-p-フェニレンジアミン(TMPD)およびシトクロムcオキシダーゼのための人工基質であるアスコルビン酸によって回復されなかった。シトクロムの酸化還元スペクトルにおいて,シトクロムa,b,cの全てがeushearilide存在下で還元型を保っていた。このことから,eushearilideが電子伝達系のシトクロムcオキシダーゼ(complex IV)を阻害することが示唆された。EusherilideはKCl等張溶液の中で懸濁されたミトコンドリアの膨化を誘導した。このミトコンドリア膨化の誘導は,内膜で透過性孔の生成を示すシクロスポリンAによって阻止された。これらの結果から,eushearilideがミトコンドリアの電子伝達系のcomplex IV部位(シトクロムcオキシダーゼ)の阻害により呼吸機能を減弱させ,ミトコンドリアを膨化させることが示唆された。
著者
紙谷 雄志 岩井 和也 福永 泰司 木村 良太郎 中桐 理
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.336-342, 2009 (Released:2011-04-05)

本研究は、超臨界抽出により脱カフェイン処理したコーヒー豆抽出物の糖質分解酵素阻害と、その主成分であるクロロゲン酸異性体の寄与、さらにラットによる糖質負荷後の血糖値上昇抑制作用について検討した。(1)コーヒー豆抽出物のクロロゲン酸類含有量は38.8%であり、8種のクロロゲン酸異性体はコーヒー豆抽出物の糖質分解酵素の阻害活性に63.1-85.8%寄与することが確認された。(2)クロロゲン酸異性体の阻害活性はジカフェオイルキナ酸が最も強く、順にカフェオイルキナ酸、フェルロイルキナ酸であった。その阻害活性にはカフェオイル基がフェルロイル基より強く作用し、カフェオイル基数と共にキナ酸への結合部位も重要であることが推察された。(3)コーヒー豆抽出物はα-GI剤(アカルボース、ボグリボース)と類似した作用機序を示し、効果量より低いα-GI剤量に対して、相加的な併用効果があることが推測された。また、α-グルコシダーゼ阻害を介した血糖値の上昇抑制作用を示し、糖尿病予防効果のある健康食品素材としての可能性が示唆された。
著者
安井 喬
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.1074-1080, 2013 (Released:2014-05-12)
著者
太田 尚子 遠藤 茉里 澤木 心美 岸川 めぐみ
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.183-191, 2014 (Released:2014-09-25)

α-カゼイン(α-CN)は非常に熱に対する安定性の高いタンパク質として知られているが,オボアルブミン(OVA)との共存下で特徴ある物性を有するゲル状凝集体をつくり得ることが判った。また,この混合タンパク質の試料溶液を調製するにあたり,脂肪酸塩の添加がより均質なサスペンジョンを調製する上で効果的であった。カプリン酸ナトリウム添加のα-CN/OVA混合システムは,OVAに比べ加熱処理の過程でより緩やかな相転移現象を経てゲル化に至り,結果的にこれまでのOVAゲルとは異なる新規なテクスチャーをもつことが示唆された。
著者
佐合 隆一
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.429-434, 2009 (Released:2011-03-05)
著者
辻井 弘忠
出版者
信州大学農学部
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.111-113, 1987 (Released:2011-03-05)

木曾馬の歩法を連続撮影して分析を行った。その結果,純系に近い木曾馬は側対歩で,やや純系に近い馬は半側対歩であった。また外国種の血が入った木曾系種は,サラブレッドと同じ常歩を示した。木曾馬は先天的な側対歩であると言われている。従って,歩法は今後,木曽馬の種牡選抜の際の一つの指標になると思われた。
著者
加藤 百一
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.425-431, 2009 (Released:2011-04-05)
著者
森 文一
出版者
水利科学研究所
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.44-52, 1959 (Released:2016-05-23)
著者
嶋 雅康 田村 茂之 稲部 善博 野鼻 重典 高山 典雄
出版者
石川県農業総合研究センター
巻号頁・発行日
no.27, pp.33-36, 2006 (Released:2011-01-21)

1.‘ルビーロマン’は1994年に‘藤稔’の自然交雑実生で2005年3月に種苗法による品種登録の出願申請を行った。2.樹勢は強く、‘藤稔’‘安芸クイーン’並みである。花芽の着生は良好で花振るい性は中位で‘藤稔’と同程度である。病害虫の抵抗性は中位で‘藤稔’と同程度である。3.果房は有岐円錐形で、果粒は短楕円形で20〜23gである。果皮色は鮮やかな赤色で果粉は少ないが外観は優れている。はく皮が容易である。果肉の特性は塊状で軟らかい。果肉の色は白色で甘味は強く酸味が少ない。食感での渋みは無く、果汁が多く、香りはフォクシー香がある。果皮の厚さは中であるが、裂果性は年次によって多少みられる。4.成熟期は育成地における雨よけ施設栽培では8月下旬から9月中旬である。
著者
辻井 弘忠 吉田 元一
出版者
信州大学農学部
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.103-110, 1984 (Released:2011-03-05)

木曾馬は,戦後外部からの移入を完全に閉じた閉鎖繁殖集団を形成し,体型を昔の形に戻そうとする努力と,母集団が小さいことも手伝って近親交配がかなり行われている。本調査は,1969年から1984年までの登録簿からの各馬の3代前の先祖が明らかな牡5頭,牝26頭と,一部先祖が不明な牡4頭牝43頭についてWrightの式によって各近交係数を算出した。その結果,先祖が明らかなものにおける平均近交係数は木曾馬種牡で0.156,木曽系種牝で0.070と木曾馬種で特に近交係数が高まっていた。一部先祖が不明なものにおける平均近交係数は木曾馬種牝で0.030,木曽系種牝で0.032であった。登録馬全体の平均近交係数は0.066,現存する馬全体の平均近交係数は0.081,また,牡馬の平均近交係数0.095,牝馬の平均近交係数0.060といずれも近交係数が高まっているのが判明した。産年次別に平均近交係数をみると,ほぼ一直線に増加していた。今後,これらの結果を参考にして近交係数の高い馬同士の交配を避けなければならない。
著者
岩崎 雄介 織田 ももこ 佃 優里 永森 裕季 中澤 裕之 伊藤 里恵 斉藤 貢一
出版者
[日本食品衛生学会]
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.167-176, 2014 (Released:2014-10-29)

食品添加物は,保存料,甘味料,着色料,香料など,食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されている。個別では安全とうたわれていた食品中の化学物質でも生体内で相互的な複合反応を引き起こし,想定外な影響を与える可能性がある。本研究では食品添加物の安全性を評価するために,酸化防止剤と金属の複合反応に着目し,ラジカルを選択的に検出可能な電子スピン共鳴装置(ESR)を用いた活性酸素種(ROS)生成の評価を行った。酸化防止剤と各種金属を反応させたところ,鉄と銅以外のミネラルや微量金属はROSの産生に寄与しなかった。しかし,特定の酸化防止剤は銅と反応することで,ROSが産生されDNAの酸化と切断を引き起こし,酸化ストレスを惹起させていることが示唆された。
著者
辻井 弘忠 吉田 元一
出版者
信州大学農学部
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.37-48, 1984 (Released:2011-03-05)

昭和28年に報告された(昭和23年時)の調査データーと比較し,35年間で木曾馬の体型がどのように変化したかを調べた。開田村,上松町,田立村,名鉄木曾馬牧場の4才以上の木曾馬牝30頭について体高,体長,尻高,頭幅,腰幅,尻幅,頭長,尻長,胸深,胸囲,管囲を測定した。毛色等は牡5頭を含む総計45頭について測定した。毛色は鹿毛色が圧倒的に多く,月毛や芦毛はみられなかった。背に鰻線を有するものが17頭もおり,額に刺毛,星等を有する馬はいなかった。木曾馬種,木曾系種ともに昭和28年時と比べて殆どの部位で差が認められ,後軀に対する前軀の充実がみられた。これから木曾馬の体型に近付きつつあることが推察された。まだ明治時代の体型よりひとまわり大きいものの,大正,昭和23年時より明治時のそれに近付く傾向がみられた。
著者
林川 修二 嶽崎 研 福田 健
出版者
鹿児島県農業開発総合センター
巻号頁・発行日
no.7, pp.39-46, 2013 (Released:2014-01-23)

サツマイモは鹿児島県の主要作物である。可販部位である塊根を直接加害する害虫の中でコガネムシ類は広域的かつ恒常的に発生するため,その防除は商品性を維持する上で重要である。コガネムシ類防除では幼虫対象の薬剤防除が行われているが,効果が不安定な事例がある。この要因の一つとして,薬剤と幼虫の分布が異なることが影響していると考えられた。塊根の被害は年次間差があるが,アオドウガネ2齢幼虫の割合が高まる8月下旬~9月下旬以降に進展した。アオドウガネ卵を接種し経時的に掘り取った結果,畦間に接種した場合,1齢幼虫が畦内に侵入し,齢期が進んでも分布は畦の中下層に多いことが明らかとなった。薬剤を畦立時に処理する場合,コガネムシ類の分布が多い中下層まで均一に薬剤が混和されることが,防除効果を安定させる上で重要であると考えられた。