著者
手島 隆一郎
出版者
愛知教育大学
巻号頁・発行日
2021-03-23

「主体的・対話で深い学びの実現」に向けた授業改善が進んでいる。しかし,対話的活動を組織しても, 個別には全く発言しなかったり,発言したとしても1,2回で済ませ,話し合いを他の生徒に任せてしまう生徒が見られ, 表面的な「対話的な学び」が多いことも課題である。本研究は,理科授業における「対話的な学び」に着目して,生徒たちが問題解決で協働しつつ,自分たちの話し合いの状況について自己評価が行える手法であるスパイダー討論を導入した場合の話し合いの在り方やその指導方法について検討し,授業実践を通して,その効果検証を行うことを目的とした。生徒たちは,目標をルーブリックに置き,話し合いや振り返りを行い,教師が発話状況を可視化するクモの巣図を描いて振り返ることを重ねて実践した結果,生徒たちは話し合いに意欲的に参加し,協力するためのスキルや他者の考えを発展させたり,自分の考えを分かりやすく納得を得るように発言したりするスキルを磨くことが確認できた。また,話し合い活動における平等な参加が,生徒集団の親密化を促進し,言語活動の充実にも寄与したものと考えられる。
著者
鍵本 優
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 社会科学系列 (ISSN:02879719)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.293-330, 2022-03-31

「self」「personality」「主体」「identity」「自己」「自分」といった諸用語は,類似した意味を含みながらも,それぞれ特徴と限界をもつ。本稿の目的は,「自分」と諸用語を比較検討し,社会学的な「脱・自分」論の対象を分類・整理する認識枠組みを示すことである。本稿の結論は次のようになる。「自分」の語と概念には近代日本社会特有の複雑さがある。自分が「脱」の対象となるとき,その複雑さはとくに反映される。この考察は社会学に新たな理論的知見をもたらす。自分の再帰性には,内容の多様性以外に,形式の多元性が関わる。今後は,自分の再帰性に関わる多元的な形式にも着眼した社会学的議論が期待される。
著者
玉山 和夫
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学経営論集 = Sapporo Gakuin University Review of Business Administration (ISSN:18841589)
巻号頁・発行日
no.5, pp.9-18, 2013-03

本稿は平成バブル期から今日までの家計と企業の資産構成を振り返ることにより,いわゆる土地神話は本当に終焉したのかを検証するものである。結論から言えば,地価上昇を疑いなく信じるという意味での土地神話は崩れたといえる。しかし,不動産の評価価値を基準に家計・企業の資産構成が決定されるという構造で,土地神話は生き続けている。現にバブル崩壊後,家計は金融資産を増加させることで企業は負債を減少させることで土地資産の減少をカバーしようとしている。この健気な行動がデフレ・スパイラルを生み,政府の財政赤字を補ってなお余りある貯蓄過剰をもたらしている。また,土地神話に踊らされたとされる株式市場での土地含み益と株価の関係も改めて見る。結局バブル崩壊後も株価は地価によってその上値が抑えられている。この限りにおいても株式市場での土地神話も終わってはいない。ただし,6大都市の一部に地価反転の兆しはみられる。下げ過ぎた反動だけでも意外に大きいかもしれない。
著者
野口 大介
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 = apan Society for Science Education Research Report (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.59-64, 2022-06-04

大学における分析化学実験では,配位数6のカルシウムイオンCa2+にエチレンジアミン四酢酸イオン(EDTAアニオン)が六座配位子としてキレートした錯体の化学構造が示されることが多い.しかし,そうした構造であることの根拠となる学術論文は引用されておらず,文献によっては異なる構造が示されている.そこで,本研究ではアルカリ土類金属イオンをキレート配位したEDTA錯体の結晶構造を報告した研究論文を文献調査によって体系化した.その結果,12種類の結晶構造のいずれもが配位数6の中心金属イオンにEDTAアニオンが六座配位子として配位した錯体ではなく,配位数が6より大きいものや,六配位座数未満のEDTAアニオン配位錯体が多いと判明した.また,溶存状態におけるCa-EDTA錯体であっても,必ずしも配位数6のCa2+にEDTAアニオンが六座配位子として配位しているとは限らないことを示す分光学的研究も見受けられた.従って,アルカリ土類金属-EDTAキレートの配位構造として誤解を招きかねない説明をすることは,なるべく避けるべきだろう.
著者
堅田 香緒里
雑誌
科学研究費助成事業 研究成果報告書
巻号頁・発行日
pp.1-4, 2016-05

研究成果の概要 (和文) : フェミニストのベーシック・インカム(基本所得)に対する評価は両義的である。そこで本研究では、ベーシック・インカムをめぐるフェミニズムの二つの立場―女の解放のための「解放料」と捉える立場/抑圧のための「口止め料」と捉える立場―の主張について整理した。両者を分かつ論点は多岐にわたるが、その主要な対立点は、ベーシック・インカムが性別役割分業に与える影響に関する見立てに求めることができる。そこで続いて、ベーシック・インカムが性別役割分業に与え得る影響について、これに類似した二つの所得保障政策―ケア提供者手当と参加所得―との対比を通して検討した。
著者
小山 一成
出版者
立正大学文学部
雑誌
立正大学文学部論叢 (ISSN:0485215X)
巻号頁・発行日
no.122, pp.5-18, 2005-09-25