著者
伊藤 孝士
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.149-153, 2015-02-25

惑星や小惑星・彗星といった太陽系天体の運動はケプラー運動でよく近似できる.これらの天体の多くはより重い中心天体を周回し,そこに働く摂動は一般に小さい.また現代に於いては天体同士の衝突も稀であり,力学的には太陽系を保存系と看做すことも妥当である.これらの性質により太陽系力学はシンプレクティク数値積分,特に微小摂動系向けの計算方法と親和性が高い.本節では太陽系力学の様々な局面で利用されるシンプレクティク数値積分法のいくつかを紹介し,その現状と課題・将来の展望について簡潔に述べる.
著者
上宮田 裕 森本 涼子 柴原 尚希 加藤 博和
出版者
日本LCA学会
雑誌
日本LCA学会研究発表会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.71-71, 2009

LRT導入に伴う環境負荷の変化をLCAによって評価する。特に、排出割合の大きい走行起源分について、停車や加減速を考慮し、電停・信号間隔や優先信号の有無といった走行環境の違いを反映できる推計方法を構築している。また、並行バス路線廃止など、周辺の交通状況の変化も推計範囲に含めている。この方法を、日本全国の様々なLRT導入事例・整備計画に適用することで、LRT導入によって環境負荷が削減されうる条件を明らかにしている。
著者
黒田 祐二 桜井 茂男
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.86-95, 2003
被引用文献数
6

本研究は, 友人関係場面における目標志向性と抑うつとの関係に介在するメカニズムを明らかにすることを目的として行われた。両者に介在するメカニズムとしては, Dykman (1998) により提唱されたディストレス生成モデル (目標志向性が対人行動を通してネガティブな出来事を促進 (ないし抑制) し, その結果抑うつが促進 (ないし抑制) される) に加えて, 新たにユーストレス生成モデル (目標志向性が対人行動を通してポジティブな出来事を促進 (ないし抑制) し, その結果抑うっが抑制 (ないし促進) される) を提唱し, この2つのモデルを検討した。重回帰分析による結果から, 3つの目標と抑うつとの関係はいずれもユーストレス生成モデルで説明できることが示された。すなわち,(1) 「経験・成長目標→関係構築・維持行動及び向社会的行動→ポジティブな出来事の発生→非抑うつ」,(2)「評価一接近目標→関係構築・維持行動→ポジティブな出来事の発生→非抑うつ」,(3)「評価一回避目標→関係構築・維持行動の不足→ポジティブな出来事の非発生→ 抑うつ」,という結果が示された。本研究の関連する既存の研究領域及び教育的介入に対する示唆が論じられた。
著者
松村 隆
出版者
法政大学大学院
雑誌
法政大学大学院紀要 (ISSN:03872610)
巻号頁・発行日
no.75, pp.105-120, 2015

近年、国内の銀行において投資信託(投信)販売等による手数料ビジネスによる収益が増加している。この収益は、主に投信の販売量に比例する販売手数料と、投信の販売残高に比例する信託報酬からなり、共に巨視的に見れば、投信市場にどれ位の資金が流入してくるのかに依存している。そこで本稿では、投信市場全体への資金流入額が、金融市場の変動によってどのような影響を受けるのか、月次ベースの投信市場へのネット資金流入額と、金融市場指標(S&P500 指数、TOPIX、ドル円為替レートの 3 指標)からなる構造 VAR モデルを構築し、インパルス反応関数(IRF)を用いて、各変数のショックの波及効果を分析した他、分散分解によって、ショックが各変数の変動にどれ位寄与しているのか分析した。IRF によるショックの波及効果分析の結果、TOPIX の月次収益率が 1% 上昇すると、投信市場へのネット資金流入額が 1 期目(当月)では約 40 億円、2 期目(翌月)では約 150 億円増加し、12 期間(1 年間)の累積では約 1,000 億円程度増加するという結果が得られた。一方、ドル円為替レートの月次収益率の 1% 円安ショック、S&P500 指数の月次収益率の 1% 上昇ショックは、初期においてはネット資金流入額を減少させる方向に寄与するが、その後、しばらくすると増加させる方向に寄与し、12 期間(1 年間)の累積ではネット資金流入額を増加させるという結果が得られた。当初は個人投資家の利益確定の動きが強まることでネット資金流入額が減少するものの、市場環境が良好なため、しばらくするとそうした動きが弱まり、再び投信市場へ資金を投入するという投資家の行動が表われていると推察される。こうした本稿の分析結果は、中長期的に見た場合、金融市場の収益率とネット資金流入額には正の相関があるという、既往研究で得られている結果と整合的なものとなっている。また、分散分解の結果、12 期(1 年)後のネット資金流入額の変動に対して、最も影響度合いが大きいのはネット資金流入額自体の変動であるが、時間が経過するにつれ、その影響度合いは小幅低下し、代わりにTOPIX の影響度合いが徐々に高まる傾向があるという結果が得られた。
著者
深澤 克朗 沢登 千恵子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.152-157, 2016

本稿では、中世古典文学の数作品について「係り結び」を構成する係助詞の頻度を計測し、それをベースにテキストマイニングを試みた。統計的手法としては、比率の検定、主成分分析、クラスター分析、判別分析を行った。「係り結び」は鎌倉・室町時代あたりから衰退が起こってきているということが定説であり、本稿の作品群においても、時代を追ってその傾向が見られる[1][2]。さらに、その作品間での差を段単位での係助詞の頻度により調査した。その結果、「宇治拾遺物語」は他の作品とは差があるという傾向が見受けられた。
著者
平瀬 直樹
出版者
金沢大学大学教育開放センター
雑誌
金沢大学サテライトプラザミニ講演記録
巻号頁・発行日
vol.8, no.8, 2007-12-15

史跡や絵巻物の画像、復元図をもとに、中世(平安後期~戦国期)の諸国に展開した、現代人にとって異文化な場を訪ねます。正式な僧は何がゆえに権力を持っていたのでしょうか?ヒジリ(念仏聖と山伏)や陰陽師などは何をもって庶民に接していたのでしょうか?農民や商人は、何を期待して寺社に奉仕する神人になったのでしょうか?禅宗や一向一揆も同じような社会的土壌から成長するものと思われます。これら宗教者が集う聖地が、政治や流通の拠点でもあったことが見えてくるでしょう。