- 著者
-
今村 洋一
- 出版者
- 椙山女学園大学
- 雑誌
- 椙山女学園大学研究論集 : 人文科学篇・社会科学篇・自然科学篇 = Journal of Sugiyama Jogakuen University. Humanities, Social sciences, Natural sciences (ISSN:24369632)
- 巻号頁・発行日
- no.54, pp.95-103, 2023-03-31
本稿は愛知県,岐阜県を対象とした拙稿[1][2]に続き,三重県を対象として,明治~昭和初期の統計から近代花街の一端を明らかにしようというものである。なお花街とは,料理屋(料亭),待合茶屋,芸妓置屋が集積する遊興空間を指す。芸妓置屋に身を置く芸妓が,取次をおこなう検番の差配により,料亭や待合茶屋に出向き,芸を披露し宴を盛り上げたわけだが,こういった宴をお座敷と呼んだ。 かつては,全国津々浦々600か所程度はあったとされる花街だが,現在は30~40程度にまで減じている。本稿の対象である三重県内に限ってみれば,花街は現在,桑名しか残っておらず,三重県内にかつてあった花街について窺い知ることは容易でない。そこで本研究では,国会図書館に所蔵されている明治~昭和初期の『三重県統計書』(三重県発行)に掲載されている花街関連統計データを整理し,近代における三重県内の花街の盛衰を明らかにすることを目的としている。