著者
佐倉 統
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.137-141, 2016 (Released:2018-04-13)
参考文献数
27
被引用文献数
1

Rather poor reliability in reproducibility, i.e., less than 40 or 30% success in replication, has been revealed not only in psychology but also in the life and medical sciences. This has been driven by the strong pressure for privatization and commercialization among the academic fields. However, maintaining high standards in reproducibility is not the only approach to realize actual scientific method. Several examples have suggested the effectiveness of a pluralistic set of methods in ethology, cultural anthropology, cognitive psychology, primatology, etc. These include qualitative, rather than quantitative approaches, i.e., historical narrative, collecting anecdotes, and anthropomorphism. Methods should be subordinate to the goal of scientific researchers, and not the other way around.
著者
佐倉 統 五十嵐 太郎 片山 杜秀 菅 豊
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

この研究は、近代以降「『日本的』という標語がどのように語られてきたか」を分野横断的に比較し、近代・現代における「日本的」イメージの多様性を総覧するとともに共通性を抽出するものである。「民族」について様々な言説が乱れ飛ぶ現在、学術的かつ専門的な見地から、日本とその国民が自らをどのようにイメージしてきたかを明らかにして、現在におけるひとつの「規矩」を提供することは、社会的にも意義があると考える。
著者
佐倉 統
出版者
Primate Society of Japan
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.33-42, 1987 (Released:2009-09-07)
参考文献数
73
被引用文献数
5

Theoretical framework of sociobiology can be regarded as Lakatosian “advanced research program, ” which has high probability of problem solution and a flexible metaphysical structure. Some theories, however, should be expanded to apply to primate behavior, because a lot of primate behavior does not seem to have direct genetical bases. Learning ability of primates is higher than that of non-primates and some of higher primates even show cultural behavior. So that, it is necessary to clear up the relation between phenotype and behavior to establish primate sociobiology. For this purpose, a new concept on their relation, the “phenotype/sub-phenotype network” model, is presented here. If a behavioral parameter is genetically determined phenotype, behavior(s) which are influenced with this parameter can be called “sub-phenotype(s).” I also discuss some theories on cultural transmission and evolution, and confirm that the framework of sociobiology is useful to reveal this problem. These theories and models will provide fruitful perspectives on human origin and evolution, applied to primate pre-cultural behavior. Finally I discuss some problems and perspectives on primate sociobiology. On the development of primate sociobiology, it seems to be emergent and important to apply multiple variate genetic theory that has been developed by R. Lande.
著者
藤嶋 陽子 佐倉 統
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.3L4OS22b03, 2019 (Released:2019-06-01)

本研究では、ファッションデザイン分野への人工知能の適用可能性についての考察を目的としている。ファッションにおいては歴史的に、テクノロジーを芸術としての価値を否定する複製可能性や大量生産と結びつけ、否定的に捉える価値観が存在している。こういった思想的な背景は、今日急速に進展している人工知能のデザインへの適用の可能性と課題を検討するうえでも重要な前提となる。それゆえ本研究では、こうした歴史的文脈を踏まえて人口知能の技術的特性を分析し、ファッションデザインの制作プロセスとの親和性について検討を行った。そこには親和性が見出されたが、それはあくまで包括的なデザインプロセスの導入に当たるリサーチ段階に当たると考えられる。ファッションデザインの価値評価は強固にデザイナーの感性と結びついており、それは制作段階のひとつひとつの過程よりもむしろ一連の制作過程と結びついている。こうしたファッションデザインの文脈における価値体系を前提とすると、人工知能のデザイン適用には人間のデザイナーとの共生関係が必要となり、その協働の可能性を検討することが重要となってくる。
著者
佐倉 統 福住 伸一 中川 裕志
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.4Rin138, 2019

<p>この論文の目的は,人とAIが一緒に写っている写真を対象にしてそれらの構図を分析すること(図像分析)が,人−AI関係の文化的相違の解明に資すると示すことである.試行的に得られたインターネット上の画像から,日本由来の写真では人とAI/ロボットは横並びに位置してこちらを見ていることが多く,欧米由来の写真では人とロボットがお互いに向き合っている構図が多いことがわかった.共視論研究(北山,2005)によれば,日本の浮世絵の母子像は何か別の物(第三項)を一緒に注視していることが多く,西洋の絵画ではこのような共視は少ないという.このような"共視"は人では生後9か月から見られるようになる.浮世絵の母子関係と同じパターンが人−AI関係にも見られるのだとすると,それはAIやロボットが人間の子供と同じく何物か(第三項)を共同注視することのできる存在,それだけの認知能力をもった存在として日本では無意識に認知していることを示唆する.欧米ではAI/ロボットはもっと人に従属する存在として位置づけられているのではないか.今後より体系的な図像分析をおこない,東アジア内での国際比較(日韓台)をおこなう必要がある.</p>
著者
栃内 文彦 研谷 紀夫 玉井 建也 山本 博文 佐倉 統 宮本 隆史 佐野 貴司 添野 勉 飯野 洋
出版者
金沢工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

近現代科学史資料の体系的・効率的な収集・保存のための方法論の確立に向けた実践的考察を、東京大学大学院情報学環社会情報研究資料センター収蔵の地質学者・坪井誠太郎に関する資料(以下、「坪井資料」)の調査を通して行った。資料調査の結果、坪井資料が日本地質学史研究において高い価値を有することが示された。こうした資料の収集・保管に際しては、資料の付加価値を高めるためにも、研究者に着目して<研究者資料>として資料を体系化することが有効であることを実証することができた。
著者
佐倉 統 福士 珠美
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.18-27, 2007-09-20
参考文献数
31
被引用文献数
1

近年、脳神経科学における高次脳機能画像の研究や脳-機械インターフェイス(BMI,BCI)などが普及することにより、極端に言えば「誰でも脳を研究できる」ようになった。その結果、非医療系研究者のおこなう実験において、脳に器質的な疾患が偶発的に発見される可能性が高まっている。医療行為に従事する資格を持たない研究者が直面するかもしれないそのような事態に備えて、非医療系基礎研究に関する倫理体制の整備が必要である。また、脳の情報はゲノム情報やその他の生理学的情報に比べると、一個人の精神活動に直接関係する度合いが高いという特徴をもつ。すなわち、社会においては脳といえば意識や自我、人格などと密接な関係にあるものとして位置づけられている。しかしこれらのトピックについて、そのような社会からのニーズに明解に応えるほどには科学的な解明は進んでいない。このような科学と社会の「はざま」に付け込むようにして、科学的に不正確な一般向け通俗脳科学書が氾濫している。マスメディアと科学の関係も含め、科学と社会の接点領域をデザインする展望が必要である。また、これらの諸課題に適切に対応するためには、省庁や学会の縦割り構造を超えて横断的に対応できる組織と指針の整備が必要である。
著者
星野 力 丸山 勉 HUGO deGaris 徳永 幸彦 佐倉 統 池上 高志 葛岡 英明
出版者
筑波大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

本研究課題でなされた研究をいくつかのカテゴリーに分け、概要を記す。(1)自己複製・自己組織化○マシンによって書き換えられるテープと、テープによって書き換えられるマシンの共進化を研究した。(池上)○自己複製のモデルを観察し、その条件とクラス分けを行なった。(田中、津本)○生物(大腸菌、酵素)による無細胞自己増殖系を実験した。(2)群と生態、進化○魚相互間の運動が創発的に出現する観察を行ない魚群行動を調べた。(三宮、飯間、中峰)○自然界の進化の特徴である進化と共に丸くなる適応度地形を考察した。(徳永)○個体の繁殖と分散のみを仮定した人工生命的シミュレーションを行った(河田)○多重遺伝子族におけるコピー数の増加シミュレーションを行ない、種々の遺伝的冗長性を調べた。(館田)(3)中立進化と頑健性○8つの赤外近接センサーと2つの車輪からなるロボットの行動モデルにおける中立変異の爆発的発現を解析した。(星野)○ロボットの行動進化において、フラクタル性と頑健性との関係を明らかにした。未解決の難問(3階層以上の多段創発の困難)を指摘した。(佐倉)(4)その他○ニューライトネットの進化を10万ニューロンの回路を進化させることで研究した。(deGaris)○細菌の走行性を支える分子機構をシミュレーションによって再現した。(大竹、辻、加藤)○脊椎植物の力学対応進化学を確立した。(西原、松田、森沢)○所要時間最短という利己的な行動を行なうカ-ナビの設計を研究した。(星野、葛岡)○FPGA(適応的に構造を再構成するゲートアレイ)を多数並列に結合しテープとマシンの共進化モデルを長時間計算しようとしている。(丸山)
著者
佐倉 統
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、科学コミュニケーションにおけるメディアの役割と影響を明らかにし、今後の科学コミュニケーションのあり方を提言することであった。とくに、メディアと科学者とがどのような関係を構築することが科学コミュニケーションにとって健全かつ生産的なのか、モデルケースを提案し、マニュアルやハンドブックのような形で成果をまとめる作業が積み残されていたが、研究費の年度繰り越しによって、その成果をある程度達成することができた。具体的には、「科学者のためのコミュニケーション・ハンドブック-メディアの活用『話せる科学者』になろう-」というタイトルでパンフレットをまとめ、印刷製本した。部数は90部と多くはないが、学会やシンポジウムなどの機会に関係諸氏に手渡しで配布することを想定しており、科学とメディア、あるいは科学と社会のコミュニケーションにおいてキー(ハブ)となる研究者、メディア関係者に行き渡るには十分な部数であると考えている。このハンドブックの内容は、マスメディアやインターネットなどの特徴を分析した理論的考察と、実際にマスメディアと接触した科学者の経験に基づいた考察の二部からなる。理論的考察と実践的活動の融合を目指した。当初は、より汎用性の高いモデル構築を目指していたが、実際に事例を分析してみると、さまざまな要因が複雑に絡みあっており、単純なモデル化は困難であるばかりか、むしろ危険であることが判明した。そのため、安易なモデル化は避け、まずは現状の理論的考察と実際の活動との相互作用を地道に促進する作業を完成させるべきと判断した。