著者
長橋 聡 新井 翔 佐藤 公治
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.81-108, 2011-08-22

【要旨】本論では,ヴィゴツキーがゲシュタルト心理学の立場から展開された発達理論に関してその理論的可能性についてどのような立場を取っていたのかを考察する。ヴィゴツキーはゲ シュタルト心理学に対しては,行動主義が取った要素還元主義を超えるものとして肯定的な評価を下している。このことは,彼の多くの著書で明らかになっている。ヴィゴツキーがゲシュ タルト派の発達理論に対してどのような批判的検討を行っていたのかを明らかにすることは,ヴィゴツキーの発達に対する理論的姿勢を明確にしていくことでもある。ここではゲシュタル ト派発達論として知られるクルト・コフカの理論についてヴィゴツキーが行った批判論文とその内容を検討する。併せて同じゲシュタルト派発達心理学者のクルト・レヴィンの理論に対し てヴィゴツキーがどのような考え方を取っていたのかを考察する。
著者
佐藤 公則
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.197-204, 2013 (Released:2013-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

1)職業歌手は話声(日常会話)には支障がない程度の,喉頭所見に乏しい微細な声帯病変でも歌声の異常を訴えた.2)主訴は,歌声の高さに関連した歌声の質に関するものが多く,多種多様であった.必ずしも音色(音質)の障害(嗄声)を訴えなかった.3)治療法の選択は音声障害の程度,声帯の病態に加えて声のemergencyを考慮して決定すべきであった.4)職業歌手の診療でも音声障害の病態の把握と病態に応じた治療が重要であり,他の音声障害の診療と何ら変わることはなかった.5)職業歌手の声帯の器質的病変に対する手術は,喉頭微細手術による緻密な手術手技が必要であった.6)職業歌手の音声障害を診療するためには,歌声を含めた発声の生理・病理・病態生理・声帯の組織解剖の理解と熟練した手術手技が不可欠であった.
著者
御村 光子 佐藤 公一 井上 光 並木 昭義
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.141-144, 2003-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
7
被引用文献数
1

目的: 発症より1年以上経過した帯状疱疹後神経痛 (PHN) における局所麻酔薬による神経ブロックの効果を retrospective に検討した. 方法: 発症後平均31.5ヵ月を経過したPHNの6症例を対象とし, 痛みの推移を pain relief score (PRS) を指標として評価した. これら症例においてはアミトリプチリンを併用し, 1%リドカインを用いた星状神経節ブロックまたは硬膜外ブロックを初診より1~2ヵ月間は週1~2回の頻度で行った. 結果: 6症例はすべて女性, 平均年齢64歳, 平均観察期間は19ヵ月, 罹患部位は三叉神経第1枝3症例, 頸, 胸神経各々1, 2症例であった. 初診より約4週間において痛みの程度の低下は顕著であり, その後疼痛が軽減した症例は1症例のみであった. 5症例については神経ブロックにより段階的に痛みが軽減した. 初診時の痛みの程度を10とするPRSでみた場合, 最終的に3症例でPRS 5, 2症例で3, 1症例で1となった. 結論: 発症後1年以上を経過したPHN症例においても, アミトリプチリン併用下に局所麻酔薬を用いた神経ブロックにより痛みの軽減を期待できる.
著者
佐藤 公俊 吉川 友子 野口 一英
出版者
長岡工業高等専門学校
雑誌
長岡工業高等専門学校研究紀要 (ISSN:00277568)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.35-42, 2012-11

本稿は,長岡高専インターアクトクラブと沖縄高専WSBとのお互いの地域を行き来しての文化・世代・国際交流を紹介し,その意義と課題を検討した.長岡高専インターアクトクラブは,1965年に長岡ロータリークラブの認証による創設され,それ以来の福祉施設の双葉寮訪問などの社会貢献活動と,この20年来,スキー研修,バーベキュー,長岡大花火見物,餅つきなど本校や他校の留学生との文化・国際交流活動を行ってきた.メンバーは多数の留学生を含めて40人前後である.沖縄高専国際交流委員会WSBは,2010年4月に顧問が全沖縄高専生に呼びかけて集まったうちの2名を発起人として同好会設立を届け出た.6月からは週1回の定例会活動を始め,7月には沖縄高専初の留学生歓迎会などの行事を実施した.メンバーは留学生を含めて平成24年5月現在で31人である.2011年3月から長岡高専インターアクトクラブと沖縄高専WSBとは,3月の国際交流スキー研修と9月の沖縄交流平和研修で,お互いに行き来してのホームアンドアウェイの遠隔地間の交流をし,留学生とのロータリアンも交えての多文化・多世代交流を始めた.これらの行事の実施に当たり,国際ロータリー第2560地区ガバナー,第2580地区ガバナー,長岡ロータリークラブ,那覇ロータリークラブ,那覇西ロータリークラブから様々な形で大きな支援を受けたことに感謝したい.
著者
佐藤 公彦
出版者
公益財団法人史学会
雑誌
史學雜誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.43-80, 145-143, 1982-01-20

Eight trigrams sect (Pa-kua-chiao 八卦教) was the most popular religious secret society in north China through the Ch'ing dynasty, and in the process of its expansion we can often find a lot of boxing training by its members. In this paper we will consider the relationship between the Eight trigrams sect and boxing training such as I-ho-chuan (義和拳), etc.. Eight trigrams sect is said to have been founded by a man called Li Ting-yu (李廷玉) in either the Shun Chih (順治) or Kang Hsi (康煕) reign periods at the beginning of the Ch'ing dynasty. It was organized according to the principle of the division into eight trigrams, and also divided into a "Wen" (文) or literary sect, and a "Wu" (武) or military one which had widely developed itself ; the society consisted of four "Wen" trigrams and four "Wu" trigrams. The combination of Eight trigrams sect and boxing training had already taken place in early Yung Cheng (雍正) period. In the Wang Lun (王倫) rebellion (1774), which was raised by a society called Ching-Shui-Chiao (清水教), a branch of the Eight trigrams sect, the boxing styles used inside the sect had been Pa-kua-chuan (八卦拳, Eight trigrams boxing), Chi-hsin-hung-chuan (七星紅拳 Seven star red boxing), and I-he-chuan (義合拳, Righteous harmony boxing). From this we can see that the I-ho-chuan was the same as the White Lotus religion or more precisely as the boxing which had combined with the military sect of Eight trigrams sect, Ching-Shui-chiao. From the incident of the I-ho-chuan in 1778, 1783 and 1786, we can guess that the I-ho-chuan had close relationship with the Li (離) trigram, a branch of the Eight trigrams sect. In 1813, Eight trigrams sect raised an uprising. A careful examination of the materials on the boxing in this uprising such sources as those on general leader of the military sect, Feng Ke-shan (馮克善), the group members led by Sung Yueh-lung (宋躍〓) and the case of Ke Li-yeh (葛立業) who learned and practiced I-ho school boxing (義和門拳棒), show that I-ho school boxing had been practiced inside Sung Yueh-lung's group in the Chili-Shantung boundary area, and that this group belonged to the chain of Li trigram. Hence we can easily identify the I-ho school as one of small regional group in the Li trigram in Eight trigrams sect. It becomes clear that the reason why boxing was combined with the Li trigram, representative of Wu trigrams, depends on the principle of organization. The boxing practiced in the Eight trigrams sect had been influenced by its religious thought, and came to have incantationary-religious characteristics, The I-ho-chuan and Eight trigrams sect in Chin-hsiang (金郷) county seem as though they were in conflict, but this example proves that there was a close relationship between the two. It is clear that historically boxing such as the I-ho-chuan, Pa-kua-chuan, etc., expanded widely in the north-west Chili-Shantung boundary area and south-west region of Shantung, by maintaining continuous relationship with Eight trigrams sect. Another phenomenon, however, also appeared. Social disturbance and confusion after the late Tao-Kuang (道光) period, brought about a wide expansion of the boxing training that was not directly related with Eight trigrams sect. The boxing which had combined with Eight trigrams sect, though taking on religious character, gradually started to secede from it, was accepted as a function of violence or defence in rural society. In the Hsien-Feng (咸豊) and Tung-Chih (同治) Periods, boxing which had permeated into rural society gradually came to be related to "Tuan militia" (団) and the "Allied village societies" (lianzhuanghui 連荘会) coexisted with the order of rural society, and built up the social foundation for the organization of I-ho-chuan society. Eight trigrams sect, not only scattered widely in this way, but also combined forces with bandits in the process of the mutual permeation with these military plunderers' groups. Thus some societies -such as Long Spea
著者
佐藤 公治 西山 希
出版者
北海道大学大学院教育学研究科
雑誌
北海道大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13457543)
巻号頁・発行日
no.100, pp.29-49, 2007

絵本の集団読み聞かせ場面で、幼児はどのように反応し、また読み聞かせの活動にも積極的に参加していくことによって読み聞かせの楽しさを見出しているか、その微視発生的な過程を分析した。本研究では、子どもの発話活動が積極的に展開された読み聞かせの事例と、子どものイメージ活動が積極的に展開された事例について子どもの絵本への注視行動の分析と発話分析から受容過程の微視的分析が行われた。そこでは、それぞれがやや異なった活動のモードで展開しながらも子どもたちは読み聞かせに集中していた。また保育者の読みに子どもたちが途中から一緒に参加して発話をしていくといった同調行動や共振性を音声分析から明らかにされた。これらが子どもの読み聞かせの楽しさを生んでいる一因になっていると考察した。そこでは母子の間の読み聞かせとは異なった集団の読み聞かせの特性が明らかになった。また、保育者の効果的な働きかけや、子どもたちの反応を引き出すような作品の仕掛けについても関連づけて検討された。
著者
佐藤 公信 竹田 史章
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2011-MUS-89, no.19, pp.1-4, 2011-02-04

本研究は新たな声紋認証手法の開発を目的とする.提案システムは特徴量抽出に Fast Fourier Transform を用い,識別器に未知のパターンに対して排除能力が優れた Radial Basis Function Networks(RBFN) を用いる.提案手法は RBFN の出力細胞数を 1 としているために,特定個人の認識と未知のパターンの排除に優れると予測される.実験により認証対象者となる被験者の未学習データを評価し,提案手法の認証率および排除率を確認する.
著者
鶴田 伸一 押川 修士 鹿嶋 雅之 佐藤 公則 渡邊 睦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.470, pp.31-36, 2010-03-08
参考文献数
18

動画コンテンツのハイライトシーン抽出に関する研究は数多く見られるが,その多くはスポーツ映像やニュース映像など,構図やシナリオ等が既知のものを対象としている.本研究において,我々は映画やテレビドラマなどの動画コンテンツに対し,見せ場シーンに着目したハイライトシーン抽出手法を提案する.提案手法では動画コンテンツを音声と映像の2つの視点から捉え,それぞれから個別に特徴抽出を行う.これらの特徴抽出は,ハイライトシーン抽出の対象となる映像コンテンツに関する事前知識を全く必要とすることなく行われる.また,各々の特徴に対し重み付けを行い評価することにより,会話・動き・効果音それぞれに着目した映像メディアの検索が容易に行える.パブリックドメインのカラー実写映画およびアニメーションに対し,提案手法を適用し,特徴シーンの抽出およびそれに基づいたシーンの分割図の作成を行った.
著者
北島 伸之 佐藤 公洋
出版者
福岡県農業総合試験場
雑誌
福岡県農業総合試験場研究報告 (ISSN:13414593)
巻号頁・発行日
no.27, pp.53-57, 2008-03

9月10日頃に定植するイチゴの早期作型で、1〜2月の収穫の中休みを解消するために、定植後の遮光処理が第1次腋花房の花芽分化に及ぼす影響を検討した。(1)'あまおう'における第1次腋花房の花芽分化に必要な遮光処理期間は、10月中旬から遡って25〜40日間であった。遮光処理により第1次腋花房の花芽は10月15〜20日に分化し、頂花房と第1次腋花房間の出葉数が少なくなった。この処理により、頂花房の花数や年内収量が減少したが、1〜2月の収量が増加したため総収量は同程度であった。(2)遮光処理による第1次腋花房の花芽分化の促進効果の起因は、株周辺気温および地温の低下により葉の表面およびクラウン内部のイチゴの体温が低下したことであった。(3)とよのか専用肥料を用いて基肥窒素量が10a当たり5〜10kgの範囲内では遮光処理効果が現れた。
著者
陳 明石 清水 忠男 佐藤 公信 一海 有里
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.7-12, 1999-07-31

商店街の「公有私用型」歩行者空間の例として, 千葉県千葉市の商店街を対象に調査を行った。対象地域の歩行者空間には, 日中, 様々な仮設的要素が路上に観察された。店舗からはみ出している商品や広告物に関しては, 商店側は歩行者の通行阻害になるのを認識しつつ意図的に路上に置く傾向がある。歩行者はそれら仮設的要素を「街の活気が感じられる」「歩きながら店の様子を知ることができる」「気軽に商品を見られる」と肯定的に評価する一方, 十分に歩行者の目を楽しませる魅力がないことについて否定的に評価している。また, 放置自転車については, 歩行者・商店側共に否定的な評価であり, 路上に設置された店舗側からの日除けの支持物についても, 歩行者側は否定的である。これらのことから, 商業地域の歩行者空間に見られる仮設的要素に関する人々の評価は, その種類や置かれ方及び評価する人の立場によって異なり, 相反することもあるといえる。従って, 商店街に活性化を促したり, 人々の利便性や楽しみを生み出すためには, 路上の仮設的要素を一律的に規制するのではなく, 多様な要求を念頭においた制御の仕方が求められる。
著者
荒木 琢也 柘植 喜治 佐藤 公信 清水 忠男
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.45, pp.314-315, 1998-10-30

The purpose of this study is to planning at water park where to touch water more simply , more delightful for making the opportunity with the people think about water once more. The water park is developed on the route in the city place to access simpler. The invenstigation at some water parks shows that the people are interested in moving water. The people don't try to touch the water which doesn't have a movement even if it is clean. Then we planned the water park that considered the movement of water.
著者
佐藤 公則 柏木 彰一 平野 実
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.100, no.5, pp.479-483, 1997-05-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
11
被引用文献数
8 8

新生児の声帯膜様部を透過型電顕で観察した. 1) 声帯の粘膜上皮は薄いが, 細胞間隙は非常に狭く, 細胞どうしが密に接し, desmosomeが比較的多く認められた. 粘膜上皮の細胞どうしがより強く接着していると考えられた. 2) 声帯粘膜上皮の基底膜および基底部の接着装置はほぼ完成していた. 声帯粘膜上皮と粘膜固有層の支持的機能がすでに十分に備わっていると考えられた. 3) 粘膜固有層は基質が豊富で線維成分の発達は乏しかった. 膠原線維は成熟した構造であったが, 弾性線維は未熟な構造であった. 新生児の声帯は振動体として必要な粘膜の粘弾性が乏しく, 振動に適した構造ではないことが示唆された.
著者
佐藤 公則
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.432-437, 2002-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
18
被引用文献数
11 8

声帯萎縮の病理組織を解説した.1) 声帯萎縮とはいったん正常の大きさまで発育した成人・小児声帯の容積, あるいは声帯の層構造を構成する各組織の容積が単独にあるいは重複して減少し, 発声機能が低下する変化と定義できる.2) 各疾患・病態における声帯組織の萎縮部位は異なっている.3) 反回神経麻痺では, 声帯筋層の容積が単独に減少し, 声帯に萎縮が起こる.4) 声帯溝症では, 声帯粘膜固有層浅層の容積が単独に減少し, 声帯に萎縮が起こる.5) レーザーあるいは放射線照射後の声帯組織では, 被照射声帯組織の容積が単独あるいは重複して減少し, 声帯に萎縮が起こる.6) 加齢に伴う声帯の萎縮は, 声帯の粘膜固有層と筋層の容積が重複して減少するが, 特に粘膜固有層浅層の容積の減少が大きく関与している.7) 声帯の組織学的構造および萎縮声帯の病理組織像を理解することは, 声帯萎縮をきたす各疾患あるいは病態に対する治療理念を理解するために必要である.
著者
眞田 友明 田中 信三 佐藤 公則 平野 実
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 補冊 (ISSN:09121870)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.Supplement62, pp.27-32, 1993-06-15 (Released:2012-11-27)
参考文献数
10

One hundred ninety eight patients with Reinke's edema who visited our clinic between 1981 and 1990 were retrospectively studied. One hundred twenty four were males and 74were females. Ninety percent of the patients were between 30 and 69 years old. Brinkman's index was 400 or more in 78% of patients. This suggests that smoking was the most important etiological factor. Surgery was performed for 73 cases and the hoarseness improved in 63 cases. Thirty one patients stopped smoking for more than a month without surgery, and 16 cases showed vocal improvement. Surgery was effective regardless of the size of the lesion, while prohibition of smoking was effective only for slight edema. Voice therapy without surgery or prohibition of smoking had no effect on hoarseness.
著者
岡 秀宏 河島 雅到 清水 曉 宇津木 聡 大澤 成之 佐藤 公俊 藤井 清孝 Albert L. Jr. Rhoton
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.418-423, 2011-06-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

本稿では,側脳室病変に必要な微小外科解剖と種々の手術アプローチについて解説した.側脳室の部分は前角,体部,三角部,後角,下角に大別され,それらの構造とともにvelum interpositumの微小解剖についても解説した.主な側脳室各部への手術アプローチは以下のとおりである.前角部および体部への手術アプローチは経前頭皮質到達法と前方経脳梁到達法である.三角部へのアプローチは主に4種類あり,lower posterior parietal lobe approach,high superior parietal lobe approach,occipital transcortical approach,そしてtranssylvian approachである.これらの中で優位半球の高次脳機能障害を防ぐために最も推奨されるアプローチは,high superior parietal lobe approachである.下角へのアプローチには経脳溝到達法や経脳回到達法がある.以上,側脳室病変に必要な微小外科解剖と各部への種々の手術アプローチについて解説した.この知識は顕微鏡手術のみでなく最近進歩している神経内視鏡手術にも重要である.
著者
山崎 潔 鈴木 一幸 佐藤 公彦 大内 健 吉成 仁 磯崎 一太 中舘 一郎 班目 健夫 吉田 俊巳 柏原 紀文 佐藤 俊一 村上 晶彦
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.724-729, 1991-07-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
9 6

漢方薬が原因と推定された劇症肝炎の1例を経験した.症例は62歳男性.痔核治療のため漢方薬(金鵄丸)の服用を開始したところ,6週間後に倦怠感と尿濃染が出現した.服用中止により一旦症状の消失をみたが,服薬再開後5週間で上記症状が再出現,黄疸の出現をみ入院となった.凝固能低下が著明で(PT 28%, HPT 19%),種々の治療にもかかわらず,4週間後多臓器不全の状態で死亡した.剖検肝は495gと萎縮著明で,肝組織像は広範性肝壊死を示した.金鵄丸による薬剤性肝炎は本例を含め9例が報告されている.その特徴は,金鵄丸が原因との認識が遅れたため反復服用により肝炎の繰り返しをみる例が多いこと,発疹,好酸球増多がみられないことであった.本例は,漢方薬により劇症肝炎を来した初めての報告である.漢方薬の使用が増加しているおり,漢方薬によっても本例のごとき重症肝障害が惹起されうることに注意すべきである.