著者
佐藤 公治
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.117, pp.171-203, 2012-12-26

本論では,城戸幡太郎の心理学研究と心理学思想について,彼の心理学史研究の集大成である『心理学問題史』といくつかの著作の内容的検討から明らかにする。城戸は心理学の研究として自然科学的方法だけに依拠するのではなく,文化とその歴史的文脈の中に人間精神を 位置づけていくことの必要性を論じている。そして,文化の中で人間発達は実現すると同時に,人間には文化的創造者としての役割があることを「文化的個性化」の概念として定式化する。城戸は「文化的個性化」を実現していくためのものとして教育を位置づける。城戸の心理学研究の背景には哲学的人間学,特にカントの実用的人間学の思想がある。

1 0 0 0 OA 苦痛の薬理学

著者
佐藤 公道
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.13-18, 2007 (Released:2007-01-12)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

痛み(痛覚)に関する研究は,複雑であるが故に,他の感覚(視・聴・触・味・嗅)に比べて遅れている.生理的に重要な生体警告系の痛み以外の痛み(感覚と情動両面)はヒトのQOLを低下させる要因である.痛みを完全にコントロールする術を手に入れるために,動物実験は不可欠である.本稿では,痛みの定義,動物における神経因性疼痛を含む痛みの評価法と動物モデル,感覚としての痛みの成立機序について,筆者の独断と偏見を交えて概説し,さらに,研究が緒についたばかりである痛みに伴う負の情動と扁桃体の関連についての筆者らのデータを紹介する.
著者
佐川 志朗 山下 茂明 佐藤 公俊 中村 太士
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.95-105, 2003-08-25
被引用文献数
2

1.北海道北部の河川支流域における秋季のイトウ未成魚の生息場所の物理環境特性を2つの異なる河川規模において調査し,年級群による比較を行った。さらに同所的に生息するサクラマス幼魚との植生の比較により,採餌様式および種間関係について考察をおこなった。2.解析の結果,イトウは当歳魚よりも1歳以上魚の方が深い水深を必要とした。一方,流速には両者間での差がなく,当歳魚および1歳以上魚共、流速が0m/sec程度に緩和された箇所に生息した。3.2次水流では当歳魚が多く,3次水流では1歳以上魚が多い傾向がみられた。さらに,当歳魚は岸寄りに,1歳以上魚は流心に定位する傾向がみられた。4.イトウ未成魚の体サイズと水深およびカバー長との間には有意な関係が認められ,さらに,成長に伴い必要とする水深およびカバーの規模が大きくなることが示唆された。5.胃内容物分析の結果,サクラマス幼魚は流下動物依存型の採餌様式を持つのに対して,イトウ未成魚は河床上もしくは河床中の底生動物依存型の採餌様式を持つことが示唆された。また,イトウ当歳魚はカゲロウ目に依存した採餌様式を示すが、1歳以上魚になると魚類への依存度が最も高くなり、共食いのケースも確認された。6.本研究結果より,イトウの保全のためには,上流域から中流域への未成魚の分散経路の保全,未成魚の生息場所となるカバーを有する様々な水深の緩衝帯の保全、餌資源の生息場所となる河畔林および砂礫底の保存が極めて重要であることが示唆された。
著者
坪井 良子 石川 ふみよ 平尾 真智子 奥宮 暁子 佐藤 公美子 村松 仁
出版者
山梨医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

研究期間を通して,国立国会図書館所蔵のGHQ/SCAP Recordsから公衆衛生福祉局(PHW),民間情報教育局(CIE),民間史料局(CHS)及び経済科学局(ESS)のSheetsから,看護改革に関連する英文書を検索・収集し,分析を行ってきた。平成13年度に翻訳したNursing Education Council(看護教育審議会)の第1回から第6回分(1946.3〜1946.6)の会議録,議事録を統合して,看護教育改革の経緯を明らかにした。さらには,Council on Medical Education(医学教育審議会)の翻訳も進め,両方の会議のあり方,審議内容,その経緯など,関連性を追究してきた。これら会議での決定方針を具現化した,看護のモデルスクールであるTokyo Demonstration school of Nursingにおける設立時の教育内容(カリキュラムを含む)を見出し,占領初期の看護教育改革の実施過程を明らかにした。また,占領当時GHQ/SCAPに関与した看護職や占領期研究者へのインタビューを行った。研究活動の主な成果は,医学・看護系学会の学術集会で発表してきた。そして,従来の日本側の看護改革研究にGHQ/SCAP文書からの視点を加えて,新たな知見を提言した。特に,看護教育の改革構想に影響を与えた参加者名及び発言内容を明らかにしたことで,GHQ/SCAP, PHWが遂行した看護改革の意図,目標及び目的,経緯が明らかになり,今後の研究発展のための基礎資料となった。
著者
有馬 拓也 福元 俊 鹿嶋 雅之 佐藤 公則 渡邊 睦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.470, pp.1-6, 2010-03-08
参考文献数
5
被引用文献数
2

現在の家電製品等のシステムは,利用者が意識的・意図的に動かすものである.その結果,一部の利用者の意思のみが反映される場合がある.複数の利用者の内部状態を推定し,これらの総意によってシステムを制御すれば最大多数の最大幸福が実現できると考えられる.そこで,非拘束状態で撮影した映像から明度ヒストグラムとオプティカルフローを抽出し,部分空間法を用いた各個人の挙動認識を行うことにより各々の内部状態を推定し,それらを統計処理することでシステムの制御を行う手法を考案した.今回は,内部状態が挙動として表出しやすくかつ動作の個人差が少ない「暑い」「寒い」という状態を推定対象とし,多数決により制御目標を決定する方式を採用した.屋内環境における複数人での評価実験を行い,有効性を確認した.
著者
陳 明石 清水 忠男 佐藤 公信 一海 有里
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.13-18, 1999-07-31

調査対象となった岐阜県高山市の商店街路は, 私有地と公有地とを取り込み, 同じ舗装を施し, 一体感や広がり感を作り出している屋根付きの歩行者空間である。ここには, 平日, 週末を問わず, 店舗の営業時間に呼応して, 様々な仮設的要素が路上に置かれているのが観察された。それら仮設的要素の置かれ方は商店街の協定に基づいているため, 広い通行空間がほぼ確保され, 歩行者は歩きながら商品を楽しみ, 店内の様子をうかがうことが可能である。この点はアンケート調査においても肯定的に受けとめられていた。この空間は, 行政と商店側が双方の所有地を共同で計画, より幅広い歩行者空間としてデザインし作り上げた公私融合型歩行者空間ということができる。このようななりたちの歩行者空間は, 立場の異る様々な人々の多様な活動を支援し, コミュニケーションを促進する場となり, 商店街を活性化させる一つの有効なあり方を示している。
著者
佐藤 公則 渡邊 睦 鹿嶋 雅之
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究はドアノブを握るという自然な動作の中で取得しやすい掌紋を個人認証に用いることを提案した.認証手法としては回転や移動,拡縮,明度変化にロバストであるSIFT特徴を用いている.ドアノブを握る動作の中で取得される1枚の画像のみでは握りの強弱により歪みが発生する.そこで,ドアノブを握る動作の動画を用い,複数の掌紋画像を時系列に時間幅を持たせて比較することを提案し,掌紋の歪みを考慮した認証を行うシステムを構築した.その結果,等価エラー率EERは3.16%となった.また他人受入率が初めて0%となる箇所を見た場合,本人認証率は93.7%となった.
著者
望月 聡 上野 洋子 佐藤 公一 樋田 宣英
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.495-500, 1999-05-15
被引用文献数
8 11

冬期および夏期に漁獲されたマサバを用い, 死後変化に対する貯蔵温度の影響を検討した。魚体が完全硬直に達するまでの時間は, 冬期夏期ともに5℃で貯蔵したときが最も長かった。背肉中のATP, IMP, イノシン, およびクレアチンリン酸の含量の変化は冬期では5℃で貯蔵したときに最も遅く, 夏期では0℃で貯蔵したときに比較して5℃および10℃で貯蔵したときの方が遅かった。K値は冬期夏期ともに10℃で貯蔵したときの上昇速度が速かった。筋肉破断強度の経時変化は冬期は顕著に, 夏期はわずかではあるが5℃で貯蔵したときに高い値を維持した。以上の結果から, マサバの死後変化を遅くするための貯蔵温度は, 漁期を問わず5℃程度が適当であると考えられた。
著者
玉置 宏之 吉澤 晃 鳥越 昌隆 佐藤 公一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.130-135, 2002-06-15
被引用文献数
1

チモシー1番草の耐倒伏性の効果的な改良方法について知見を得るため,栄養系およびその後代系統の耐倒伏性の指標を調査した。後代系統の倒伏程度は6-10日間隔で3回調査されたが,その傾向は互いに異なっていた。またその親子相関は,耐倒伏性の指標を調査した時の生育ステージの親子間差が最も小さい場合に最も高かった。以上のことからチモシー1番草の耐倒伏性は,生育ステージごとに異なる要因によって支配されているため,その調査は各生育ステージごとに行われるべきであるが,それら個々の要因の狭義の遺伝率が高いため,1回の個体選抜でも相当程度の改良が期待できると考察された。
著者
玉置 宏之 吉澤 晃 鳥越 昌隆 佐藤 公一 下小路 英男
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.136-141, 2002-06-15
被引用文献数
1

採草用チモシーにおける1番刈後の競合力の効果的な改良方法を検討するため,同一の後代系統を単播条件とシロクローバとの競合条件の2つの試験に供試した。両試験および後代系統の親栄養系に対する調査から,2番草競合力は狭義の遺伝率の高い形質であること,3番草競合力は2番草ほど重要でないこと,および競合条件の試験を行わずに競合力を的確に推定することは困難であることが結論された。これらのことからチモシーの競合力は,それが競合条件下で検定されていれば,1回の個体選抜でも相当程度改良できると考えられた。
著者
足利 和紀 玉置 宏之 出口 健三郎 佐藤 公一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.19-23, 2008-04-15
被引用文献数
4

チモシー1番草における栄養価関連形質の広義および狭義の遺伝率を把握するため,15の栄養系とその後代系統を同年同一圃場で栽培し,近赤外分析法(NIRS)を用いて栄養価関連形質を推定した。その結果,栄養価に関する3指標(低消化性繊維(Ob)/細胞壁物質(OCW),0b含量および可溶性炭水化物(WSC)含量)は(1)狭義の遺伝率が高く,(2)指標相互間の遺伝相関は効率的な並行改良が可能である相関か,もしくは弱い相関で,(3)同一熟期内であり,収量性で選抜がなされた材料においては,乾物重とこれらの指標との遺伝相関は弱かった。したがって,これら3指標を用いた個体選抜で効率的な改良が可能であり,また指標相互間の並行改良および収量性と栄養価の並行改良は可能である,との結論に達した。
著者
玉置 宏之 吉澤 晃 藤井 弘毅 佐藤 公一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.52-54, 2004-04-15

チモシー種子収量性の効率的改良に供するための簡易検定法の開発を試みた。チモシーの種子収量は1穂種子重,さらには穂1cmあたり種子重(種子密度)と密接に関連しているため,少数の穂から実際に採種を行い,その1穂種子重や種子密度を調査する方法が簡易検定法として適当と考えた。この考えに基づき,圃場の株から引き抜かれた節間伸長茎を以後温室内で水栽培する方法の有効性について検討した。2002年5月に圃場から引き抜かれた節間伸長茎を温室内で採種時まで水栽培した結果,それらの1穂種子重と種子密度は,特に2000年の圃場試験の結果とよく一致したため,この方法はチモシー種子収量性の簡易検定法として有効であるとの結論に達した。
著者
玉置 宏之 吉澤 晃 藤井 弘毅 佐藤 公一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.47-51, 2004-04-15
被引用文献数
1

牧草の種子収量性は茎葉の収量性ほど考慮されないが,牧草品種の商業的な成功には種子収量性も重要な要素である。チモシー種子収量性の年次変動と狭義の遺伝率を調べるため,栄養系とその後代系統を採種試験に供試した。その結果,チモシーの種子収量性には(1)試験年次など,環境が変わることにより序列が大きく変化しうること,および(2)同一環境条件下で評価・推定される狭義の遺伝率が高いこと,という2つの特徴があり,したがってその効果的な改良のためには,1回の検定を基に選抜を行う場合は複数回の選抜が必要となり,また1回の個体選抜しか行わない場合は複数の環境条件下における検定が求められる,との結論に達した。
著者
陳 明石 清水 忠男一 佐藤 公信 一海 有里
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.65, no.528, pp.171-178, 2000
被引用文献数
4 4

This study aims at getting an idea which explains the usage and function of Gi-lou spaces through close examination of identification of the temporary elements and the changes in kind and number of elements involved in these spaces with the change of time. As a result, it was found out that the kind and number of these elements increase remarkably in the afternoon to evening of Saturday and Sunday compared to a weekday in keeping with the increase of the traffic. It seems that the spaces are deeply incorporated into the lifestyle of city people in Taiwan.