著者
細川 治 渡邊 透 佐藤 広隆 真田 治人
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.3551-3559, 2012 (Released:2012-11-30)
参考文献数
37
被引用文献数
3

我が国においてX線を用いた胃がん検診は50年以上続いて来たが,日常臨床においてX線検査が減少したことから今後の持続性が疑問視されている.内視鏡がこれに替わる位置にいるべきだが,円滑な移行にはほど遠く,検診件数は5%に満たない.その最大の理由は胃がん死亡率減少のエビデンスがないことで,僅かずつではあるがこれを証明しようとする試みが行われている.現在の段階では,内視鏡検診がX線検診に比較して胃がん発見率ならびに陽性反応適中率,早期胃がん比率において高く,胃がん1例あたりの発見費用が安価であることを主張して,自治体に働きかけざるを得ない.内視鏡検診は精度管理を行うことが必須であり,苦痛を少なくするために経鼻内視鏡スコープの導入などが必要と思われる.血液検査でリスクを評価して対象を選定する試みは議論の途上にある.
著者
佐藤広英 宮脇奈々美#
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第60回総会
巻号頁・発行日
2018-08-31

問題と目的 SNS(social networking services)上では,さまざまなストレッサーが存在することが報告されている(総務省, 2013; 佐藤・矢島,2017)。それと同時に,SNS上で愚痴や文句を投稿してストレス発散を行うという報告もみられ(アメリカンホーム保険,2011),ストレス・コーピングが行われている。従来,SNS上におけるストレッサーに焦点をあてた研究は行われているが,SNSにおけるコーピングに焦点をあてた研究は少ない。本研究では,SNS上におけるコーピングの程度を測定する尺度を作成することを通して,SNS上におけるコーピングが精神的健康に及ぼす影響を検討した。方 法 予備調査 面接調査によりSNS上におけるコーピングに関する項目を収集した後,大学生278名(女性116名,年齢:M = 19.18,SD = 1.05)を対象に質問紙調査を実施した。SNS上におけるコーピングに関する33項目についてカテゴリカル因子分析(重みつき最小二乗法,プロマックス回転)を行った結果,5因子31項目が抽出された。具体的な項目はTable 1に示した。 本調査 クロス・マーケティング社に委託し,ウェブ上でSNS利用者(LINE,Twitter)を対象とする2波のパネル調査を実施した。1回目(2017年10月)は大学生478名(女性245名,年齢:M = 20.30,SD = 1.33),2回目(2017年11月)は大学生200名(女性105名,年齢:M = 20.54,SD = 1.27)を有効回答とした。両調査において,(a)SNS上におけるコーピング尺度(予備調査で作成),(b)心理的ストレス反応尺度(鈴木他,1997),(c)SNS利用状況などに回答を求めた。結果と考察 SNS上におけるコーピングと精神的健康との因果関係を検討するために,交差遅れ効果モデル(Finkel, 1995)を用いて分析を行った(Table 2)。モデルの適合度は,CFI=1.00,RMSEA=.00~.04であり,十分に高い値であった。得られた結果は次の三点に整理された。第一に,LINE上で問題解決を多く行うほど,ストレス反応が高まることが示された。第二に,Twitter上で各種コーピングを多く行うほどストレス反応が高まり,特に問題解決の効果が大きいことが示された。第三に,ストレス反応の高い者ほどTwitter上で対決を多く行うことが示された。以上の結果,SNS上におけるコーピングは,ツール間の差異はあるものの,総じて精神的健康を損ねることが明らかとなった。
著者
佐藤 広英
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.17-28, 2012-09-30 (Released:2017-05-02)
被引用文献数
2

本研究の目的は,他者の匿名性を情報の種類の観点からとらえ,コミュニケーション行動に及ぼす効果を検討することであった.研究1では,匿名性を他者情報の種類の観点から分類するため,CMC場面を想像させる場面想定法を用いて検討を行った.その結果,他者情報は,私的情報,属性情報,識別情報に分類され,特に他者の属性情報が初対面の相手に対するコミュニケーション行動に影響を及ぼす可能性が考えられた.研究2では,匿名なCMCにおいて他者の属性情報を実験的に操作し,コミュニケーション行動に及ぼす効果を検討した.結果は次の3点に集約された.第一に,他者の属性情報は,効果は弱いものの,コミュニケーション中の不安感を低減させ,発言量を促進することが示された.第二に,他者の属性情報は,敬語表現の増加やパラ言語の減少など,対面場面に近いコミュニケーション行動を促進していた.第三に,自己開示および親密感に対する他者の属性情報の効果は見られなかった.最後に,他者の私的情報および識別情報による効果について考察を行った.
著者
佐藤 広志
出版者
関西国際大学
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
no.14, pp.147-160, 2013-03

兵庫県の大学等進学状況は,県外への流出も県外からの流入も多い流動的な状況にあり,結果的に県内の大学入学定員と県下卒業生数とがバランスする程度の量的規模になっている。2011年9月に,兵庫県北播磨地区に所在する全日制高校を対象に実施した高校2年生調査によると,その進学希望はまだ漠然としたものだろうが,一年上の学年の同地区の進学率実績をかなり上回り,潜在的な進学需要も観察される。北播磨地区のおかれた地理的条件を踏まえて考えると,同地区の高校生は通学の利便性を強く求めており,これはつまるところ,通学所要時間を主とした心理的コストへの鋭敏な反応であると考察できる。Hyogo prefecture provides a sufficient amount of opportunity for higher education for their high school graduates. However, the mobility of candidates is so fluid that half of them leaves the prefecture. In a specific district of Hyogo prefecture, North Harima, a maximum estimate of candidates exceeds the results in the previous year, when they replied their expectations in a questionnaire one-year before their actual decisions. Although many of them demanded a traffic convenience of commuting to university from home, it is difficult for them to meet under their geographical condition. To evaluate their decisionmaking about college entrance, their psychological costs of commuting time and distance should be taken into consideration.
著者
佐藤 広英 太幡 直也
出版者
信州大学人文学部
雑誌
信州大学人文科学論集 = Shinshu studies in humanities
巻号頁・発行日
no.2, pp.57-66, 2015-03

本研究では,高校生のインターネット上における情報プライバシーの実態を検討した。高校生663名を対象としたウェブ調査を実施し,インターネット版情報プライバシー尺度(MPS-I)に回答するように求めた。その結果,以下の点が明らかとなった。具体的には,(1)女性は男性よりも属性情報に対してプライバシーを感じる程度が低いこと,(2)学年間で情報プライバシーに差はみられないこと,(3)他の世代と比較して,高校生は属性情報に対してプライバシーを感じる程度が低いこと,(4)情報プライバシーとインターネット利用時間の間には負の相関がみられること,がそれぞれ明らかとなった。
著者
佐藤 広英 太幡 直也
出版者
WebLab
雑誌
メディア・情報・コミュニケーション研究 (ISSN:2432048X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.15-26, 2016-03

本研究の目的は,情報プライバシーに基づくSNS利用者の類型を明らかにすること,その類型とプライバシーに関わる被害経験および自己情報公開に対するリスク認知との関連を検討することであった。SNSを利用する若年層554名に対してウェブ調査を実施した。クラスター分析の結果,情報プライバシーの得点に基づき,四つの類型が示された。また,クラスター間でプライバシーに関わる被害経験の有無,自己情報公開に対するリスク認知の程度は異なっていた。全体として,識別情報に対する情報プライバシーが低い群において,他の群よりもプライバシーに関わる被害経験を有する割合が多く,自己情報公開に対するリスク認知が低いことが示された。This study aimed to investigate the relationships between types of information privacy, experiences of invasion of privacy, and risk perception for disclosing one's information. A web-based survey was conducted of 554 young Japanese social networking site users. Four clusters were derived based on information privacy scores. These clusters differed significantlyfrom each other with respect to experiences of invasion of privacy and risk perception for disclosing their information. Overall, the cluster, which was characterized by low concerns about their privacy for identifiable information, had more unfavorable characteristics, such as more abundant experiences of invasion of privacy and lower risk perception for information disclosure, compared to the other clusters.
著者
宮澤 宏文 白根 実央 佐藤 広祝 佐々木 和人 鈴木 英二
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.19-22, 2012 (Released:2012-03-23)
参考文献数
6

高齢者は疾患にかかわらずバランス能力の低下をきたしていることが多い。当院ではスリングを用いて,運動戦略のうち,股関節戦略,足関節戦略を模したエクササイズを実施している。この股関節運動戦略エクササイズと足関節運動戦略エクササイズについて,各エクササイズ前後にfunctional reach test(以下FRT)とTimed Up and Go test(以下TUG)を実施した。また合わせて重心動揺計を利用して安定性限界の測定も行った。股関節運動戦略エクササイズではFRTの向上が認められ,静的バランスの向上が示唆された。足関節運動戦略エクササイズではFRT,TUGの両方で向上が認められ,静的バランスだけでなく動的バランスの向上が示唆されたが,安定性限界の測定については,有意な変化を認めなかった。
著者
佐藤 広志
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.14, pp.147-160, 2013-03-31

兵庫県の大学等進学状況は,県外への流出も県外からの流入も多い流動的な状況にあり,結果的に県内の大学入学定員と県下卒業生数とがバランスする程度の量的規模になっている。2011年9月に,兵庫県北播磨地区に所在する全日制高校を対象に実施した高校2年生調査によると,その進学希望はまだ漠然としたものだろうが,一年上の学年の同地区の進学率実績をかなり上回り,潜在的な進学需要も観察される。北播磨地区のおかれた地理的条件を踏まえて考えると,同地区の高校生は通学の利便性を強く求めており,これはつまるところ,通学所要時間を主とした心理的コストへの鋭敏な反応であると考察できる。
著者
永野 伸郎 吉本 宏 西鳥羽 剛 佐藤 広三 宮田 そのえ 日下 多 景 世兵 山口 達明
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.123-133, 1995 (Released:2007-02-06)
参考文献数
35
被引用文献数
3 4

慢性腎不全状態下で生体内に蓄積した尿毒症物質を消化管内で吸着し,糞便中に排泄させる機序により腎不全の進行を抑制させる目的で開発した新規経口吸着剤であるキトサン被覆酸化セルロース(キトサンDAC)の慢性腎不全動物に対する作用を検討した,ラットにアドリアマイシンを反復静脈内投与することで進行性の慢性腎不全ラットを作製後,キトサンDACを5%の割合で正常粉末食と混合し,paired-feeding条件下で約4カ月間飼育した.途中,2~4週間間隔で採尿,採糞および採血を行なった.また,対照薬として,保存期慢性腎不全患者に対しての有用性が報告されている活性炭経ロ吸着剤(クレメジン)を同様に混餌投与した.その結果,正常食群およびクレメジン群では摂食処置63~65日後より死亡例が観察されたのに対し,キトサンDAC群では100日後で初めての死亡例が認められた.摂食処置後の平均生存日数は,正常食群(93.9±7.8日)に対しクレメジン群(92.7±6.4日)では差は認められなかったが,キトサンDAC群(117.3±5.0日)では著明な生存日数の延長が観察された.また,アドリアマイシン投与ラットは高窒素血症,高クレアチニン血症,高リン血症,高脂血症,タンパク尿および貧血に特徴付けられた慢性腎不全症状を呈したが,キトサンDAC混餌投与により,血中尿素窒素値の上昇の抑制,血清クレアチニン値の上昇の抑制,血清リン値の上昇の抑制,赤血球数の減少の抑制が観察された.更に,キトサンDAC混餌投与により糞量の増加,糞水分含量の増加,糞中窒素排泄量の増加,タンパク質の見掛けの消化吸収率の低下,糞中リン排泄量の増加および糞中ナトリウム排泄量の増加が観察され,これらの作用が腎不全の進展に対して抑制的に作用したものと推察された.以上の結果は,慢性腎不全の薬物治療における経口吸清剤療法の新たな可能性を示唆するものと考えられた.
著者
太幡 直也 佐藤 広英
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.1.12, (Released:2018-05-18)
参考文献数
17

情報プライバシーは,インターネット(以下,ネット)上での不特定多数の他者への自己情報公開と負の関連がみられることが報告されている。本研究では,ネット上での未知の他者への自己情報公開を測定し,情報プライバシーと自己情報公開との関連を,対面の予期を操作して検討した。大学生に対し,ネット上で未知の大学生とチャットをするように告げた。対面の予期あり条件の実験参加者には,チャットをする相手と後日会ってもらう予定であると伝えた。一方,なし条件の実験参加者には,そのように伝えなかった。チャットをする前に,実験参加者に,相手に示すプロフィールを作成するように求めた。その結果,なし条件では,識別情報へのプライバシーが低い者ほど,プロフィール上で自己に関する事柄を多く表出していた。一方,あり条件では,情報プライバシーとプロフィール上の自己情報公開には関連はみられず,コミュニケーション動機が高い者ほど,プロフィール上の情報入力数が多く,また,プロフィール上で自己に関する事柄を多く表出していた。
著者
佐藤 広英 太幡 直也
出版者
信州大学人文学部
雑誌
信州大学人文科学論集
巻号頁・発行日
vol.5, pp.29-40, 2018-03-15

本研究の目的は,高齢者がインターネット利用に対してどのようなリスク,ベネフィットを認知しているのか,その具体的な内容を若年者との比較を通して検討することであった。高齢者および若年者を対象とする半構造化面接の結果,高齢者は若年者よりも詐欺被害に遭うリスクやウイルスに感染するリスクを認知していること,ネット自体に対する不安・恐怖を認知していること,インターネット上でのコミュニケーションに関するリスクをあまり認知していないことが示された。ベネフィット認知については,高齢者,若年者を問わず,情報収集の容易さや速さに対してベネフィットを認知していることが示された。その他,高齢者,若年者それぞれのインターネットの利用目的に対応したリスクやベネフィットが多く認知されることが明らかになった。
著者
佐藤 広美
出版者
首都大学東京
雑誌
人文学報. 教育学 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.111-141, 1994-03-25
著者
古口 日出男 佐藤 広美 前川 富哉 Chonlada Luangarpa
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.853, pp.17-00198-17-00198, 2017 (Released:2017-09-25)
参考文献数
15

Singular stress and electric displacement fields occur at the vertex of interface in piezoelectric joints under an external loading. It can be expected that concentrated electric displacements causes large electric fields in an adjacent space and electric potential will be induced on the surface of electrode when the electrode approaches to the electric field. In the present paper, a piezoelectric joint which four blocks of piezoelectric material are bonded using a resin is analyzed. In this joint, a singular field occurs at a center gathering four vertexes in blocks and the intensity of singularity in electric displacements around the center of cross section in the joint may be four times larger. The intensity of singularity is numerically investigated using several methods for analysis to pursue the possibility of application of the singular fields. Firstly, three loading conditions, e.g., compression in the poling direction, compression in the vertical direction of side surface and input a voltage, are investigated for increasing a response of electric displacement in the piezoelectric joint. In the case of compression in the vertical direction of side surfaces, the maximum response is obtained. Hereafter, the results in the analyses are obtained for the compression of vertical direction of side surface. It is shown that the intensity of singularity depends on a power law of the thickness of adhesive layer. Influence of material properties of adhesive layer, piezoelectric and dielectric properties in the block of the joint, on singular fields is also investigated. It is shown that when piezoelectric materials with large piezoelectric constant are used, amplified electric displacements are obtained.
著者
佐藤 広志
出版者
関西国際大学教育総合研究所
雑誌
教育総合研究叢書 (ISSN:18829937)
巻号頁・発行日
no.6, pp.71-85, 2013-03

キャリア教育が国策として強調され、正規のカリキュラムに組み込まれると同時に、キャリア認識に関する隠れたカリキュラムが生み出される。小学校から高等教育のレベルまでキャリアの定義は結構広い。初め、小学校レベルでは個人の人生全体として定義されるが、しだいに職業選択へと絞り込まれていく。キャリア教育プロセスの末端としての大学生への就職支援においては、ジョブ・マッチングの問題の社会的側面は無視されがちで、社会的現実への個人としての適応の努力が強調されがちである。学生に伝えられる隠れたカリキュラムとしてのメッセージとは、就職市場も含めて社会の仕組みは変えられないのであり、キャリア決定の責任はもっぱら学生側にあり、就職市場の問題は若者が現行の社会システムに適応できるかどうかにかかっているというものになる。Career education was emphasized as a national policy and included into formal curriculum, and at the same time, it generates hidden curriculum of career perception. From primary to higher education level, definition of career has wider range. At first, career is defined as a total personal life in the elementary-school level, and gradually focused on narrower targets as job-selection. Career guidance and support for college students, as a terminal of career education process, tend to neglect the social aspects of job-matching problem, to emphasize their personal efforts to adapt to social reality. Some messages as hidden curriculum reached students are that a side of social system included job-market is unchangeable, responsibilities of career determination only belong to students' side, and the problem of job market is focused on young people's adaptation to the present social system.