著者
桑原 歩 黒川 宏之 谷川 享行 井田 茂
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.176-185, 2023-09-25 (Released:2023-10-05)

近年の観測から,多くの原始惑星系円盤においてダストの空間分布にリング・ギャップ構造が見つかっている.ダストのリング・ギャップ構造の惑星による起源として,従来研究の多くは海王星質量以上の惑星 (≳ 15 地球質量) によるガスギャップ形成の影響を議論してきた.本研究は,∼ 1–20 地球質量程度の小質量惑星に着目する.円盤内に埋もれた小質量惑星は,自身の重力によって周囲のガスの流れを乱す.円盤内に存在する小さなダストはガスの流れの影響を強く受ける.本稿では,小質量惑星が駆動するガス流れ場がダストの動力学に及ぼす影響に関する我々の研究について解説し,ガス流れ場によるダストのリング・ギャップ構造形成シナリオを新たに提案する.そして,本稿が提案するシナリオの観測的検証に向けた議論を行い,ガス流れ場が惑星成長率に及ぼす影響と系外惑星の質量-軌道半径分布への示唆についても議論する.
著者
神原 歩 満石 寿 原田 祐規
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第20回大会
巻号頁・発行日
pp.7-8, 2022 (Released:2022-11-24)

コロナ禍になり,親しい人とオンライン上で時間を過ごす人が増えた。本研究は,親密な他者とオンライン上で会うことが,直接会うことと同様の身体的・心理的効果をもたらすのかを検討した。参加者は22組の友人ペアで,独り群(個室に1人),対面群(友人と同じ個室),オンライン群(zoomを介した画面越しに友人が居るが個室に1人)の3群に割り振られた。参加者は個室でストレス課題が与えられ,課題前,課題中,課題後の3時点の心理指標(肯定的感情,覚醒度)と身体指標(血圧,心拍)が測定された。その結果,課題後の身体指標に群間の差が認められ,オンライン群と対面群は,独り群に比べてストレス後の回復が早かった。一方,心理指標には群間の差は認められなかった。従って,親密な他者の存在の効果は,オンラインと対面の両方で認められることが判明した。そして,その効果は認知的プロセスを経ずに身体に直接影響を与えている可能性が示された。
著者
堤 聡 木村 秀 松本 大資 古川 尊子 松岡 裕 木原 歩美 浜田 陽子 湯浅 康弘 石倉 久嗣 沖津 宏 阪田 章聖 山下 理子 藤井 義幸
出版者
徳島赤十字病院
雑誌
徳島赤十字病院医学雑誌 = Tokushima Red Cross Hospital Medical Journal (ISSN:13469878)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.124-127, 2011-03-25

リポイド肺炎は脂肪を貪食したマクロファージが出現する肺炎であるが,一般に無症状であり胸部異常陰影にて偶然見つかることが多い.今回診断に苦慮し胸腔鏡下肺生検にて診断しえたリポイド肺炎を経験したので報告する.症例は79歳,女性.僧房弁狭窄症に対する弁置換術後のフォローアップ中に,胸部X 線像で右中肺野にすりガラス陰影の出現を認めたため当科へ紹介された.明らかな自覚症状や各種検査での異常所見を認めなかったため経過観察としていたが,初診から8カ月後に肺野陰影の増強と拡大を認めたため胸腔鏡下肺生検を施行した.病理組織像では肺胞内に浸出物と泡沫状マクロファージを多数認め,最終的にリポイド肺炎の診断を得た.症状に乏しい胸部異常陰影の鑑別疾患のひとつとしてリポイド肺炎は考慮する必要がある.
著者
竹田 正幸 篠原 歩
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.763-769, 2002-07-15

テキストデータを圧縮したままパターン照合を行う「圧縮テキスト上でのパターン照合」が新しい研究課題として脚光を浴びるようになった.本稿では,この課題に関する最新の研究成果について,理論と実用の両面から解説する.
著者
原 歩 吉岡 政洋 伊藤 貴 西澤 雅彦 市川 雅 高橋 重人 緋田 めぐみ 竹森 政樹 石原 直毅 日比 紀文
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.98, no.12, pp.1379-1383, 2001-12-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
20

症例は71歳,女性.他院での種々の検査の結果,特発性再発性アフタ性口内炎と診断されていた.本症例は約2年6カ月の間,再発するアフタ性口内炎に対して副腎皮質ホルモンの投与を受けていた.著者らは本症例のアフタ再発時にマレイン酸イルソグラジンを投与した.アフタは1週間で消失し,継続投与にて1年6カ月の間,アフタは再発していない.本症例はアフタ性口内炎に対するマレイン酸イルソグラジンの有効性を示唆した.
著者
伊藤 真 濟川 貴 杉原 歩 堀江 遥 井内 志穂 粟木 陽子 岡田 みなみ 勝部 遥子 山本 千尋
出版者
広島大学大学院教育学研究科音楽文化教育学講座
雑誌
音楽文化教育学研究紀要 (ISSN:13470205)
巻号頁・発行日
no.24, pp.11-20, 2012

The purpose of this study is to develop music classes using Etenraku, which is one of the oldest existing music in Japan called Gagaku (traditional Japanese court music), as a material in elementary and junior high school. The main points of view on developing music classes are as follows: (1) to pursue the musical substance, (2) to center a proactive and action-oriented learning of students, and (3) to promote and enhance language activity.The music class in elementary school has two goals. One is that students develop an understanding for a mechanism of producing sounds with double reed through the activity to make hand-made musical instrument. The other is that students understand the role of hichiriki (a kind of flute) in Gagaku ensemble, discovering sound aspects of hichiriki, and expressing the sound aspects with their own words.The music class in junior high school has two goals. One is that students understand the musical style of Gagaku through creating rhythm patterns of percussion section for the melody of Etenraku. When creating, students write musical note using composition software. The other is that students engage in entire learning process with language activity, for example, talking together about what they want to express in their work, describing their intention put into their work, or expressing what they feel when they listen other's work.
著者
ディプタラマ 石黒 裕也 成澤 和志 篠原 歩 ジョーダン チャールズ
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.154-161, 2015-10-30

一般化三並べはFrank Hararyによって提案された2人完全情報ゲームであり,碁盤面上に先手後手が交互に石を1つずつ置き,あらかじめ定められた動物を先に作ったプレイヤが勝ちというゲームである.2人完全情報ゲームの勝敗判定問題は与えられたゲームに対して,先手必勝,後手必勝または引き分けとなるかを判定する問題である.オセロや五目並べなど,多くの2 人完全情報ゲームの勝敗判定問題はPSPACE完全であることが知られている.それに対して,代表的なPSPACE 完全問題としてQuantified Boolean Formula (QBF) に対する充足可能性問題(TQBF)が存在し,TQBFを高速に解くプログラム,QBFソルバが開発されてきた.本研究では一般化三並べの拡張であるGTTT(p,q)およびTorusGTTT(m,n)の勝敗判定問題をTQBFに帰着し,QBFソルバを用いてゲーム勝敗判定問題を解く.ゲームのパラメータによっては既存のゲームの探索手法より,QBFソルバの方がより速く勝敗判定問題を解けることが見られた.
著者
西原 歩 巽 好幸 鈴木 桂子 金子 克哉 木村 純一 常 青 日向 宏伸
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

破局的カルデラ形成噴火を生じる膨大な珪長質マグマの起源を理解するために,3万年前に生じた姶良火砕噴火で噴出した入戸火砕流中に含まれる本質岩片の地球化学的・岩石学的特徴を考察した.流紋岩質の白色軽石及び暗色軽石に含まれる斜長石斑晶のコア組成は~An85と~An40にピークを持つバイモーダルな分布を示すことに対して,安山岩質スコリアの斜長石斑晶は~An80にピークを持つユニモーダルな分布を示す.高An(An#=70-90)と低An(An#=30-50)斜長石コアのストロンチウム同位体比は,それぞれ87Sr/86Sr=0.7068±0.0008,0.7059±0.0002である.これらの測定結果は,姶良火砕噴火で噴出した膨大な量の流紋岩質マグマは,高An斜長石の起源である安山岩質マグマと低An斜長石の起源である珪長質マグマの混合によって生じたことを示唆する.苦鉄質マグマからわずかに分化してできた考えられる安山岩質マグマから晶出した斜長石のSr同位体比は,中新世の花崗岩や四万十累層の堆積岩など,高いSr同位体比をもつ上部地殻の岩石を同化したトレンドを持つ.このことは,安山岩質マグマと珪長質マグマの混合が上部地殻浅部で生じたことを示唆する.また,流紋岩質マグマは基盤岩より斜長石中のSr同位体比が低く,基盤岩との同化をほぼ生じていない安山岩質マグマ(英文にあわせてみました)と似たような組成を持つ.このことは,珪長質マグマと苦鉄質マグマは,姶良カルデラ深部の下部地殻のような同一の起源物質から生じているとして説明できる.