著者
横田 恭子 古川 恵一
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.27-30, 2012-01-20 (Released:2013-01-15)
参考文献数
13
被引用文献数
2

A 47-year-old Chinese woman with no significant medical history admitted for sudden-onset seizures and transient right homonymous hemianopsia had moved from China to Japan 4 years previously. Contrast brain computed tomography (CT) showed multiple calcified nodular lesions with surrounding edema, one in the left parietal lobe being likely responsible for her visual symptoms. After admission, two painful intramuscular nodular lesions were found in her left lower limb. Histopathologically biopsy specimens from these lesions were not diagnostic. Serum antibody testing (ELISA) for Taenia solium, however, was positive, yielding a diagnosis of (neuro) cysticercosis. The woman responded well to albendazole and prednisolone treatment. In the two years since discharge, she has not developed any new symptoms or seizure recurrence. With increasing global travel, clinicians must thus consider the possibility of neurocysticercosis in cases of nodular brain lesions in subjects from areas where Taenia solium remains endemic.
著者
松永 恒司 古川 恵司 原 昌道
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.7, pp.529-534, 2002-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

1) 樽酒から簡便に杉樽由来成分を抽出する方法を設定した。2) GGMS分析の結果, 樽酒中で15種類のセスキテルペン類を同定した。3) 樽酒に含まれるセスキテルペン類は主にセスキテルペンアルコールであった。4) 樽材から抽出されるセスキテルペン類の量は, 貯蔵期間が長く, また貯蔵温度が高くなるほど多くなった。5) 樽材の木粉からエタノール水溶液で樽材成分を抽出したところ, エタノール濃度が高くなるほどセスキテルペンとセスキテルペンアルコールを合わせた総量は多くなった。総量に占める割合は前者が高くなった。6) 市販樽酒中のセスキテルペン類含量とアセトアルデヒド含量や着色度との間には相関は認められなかった。
著者
尾崎 昌大 森 広史 古川 恵太郎 坂本 春生
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.285-289, 2018-11-25 (Released:2019-05-24)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

2015年7月,当院の血液腫瘍内科で入院していた患者から多剤耐性緑膿菌が検出された.その後,環境付着菌検査を行った温水洗浄便座の洗浄ノズルからMDRPを検出し,アウトブレイクであると判断し,感染対策を行った.アウトブレイクの一因として,清掃スタッフによる院内感染対策上不適切な清掃方法が行われていたことが挙げられた.その他にも製造時期が古い温水洗浄便座の洗浄ノズルにおいて,適切な清掃ができないなどといった温水洗浄便座を院内で使用する際に留意すべき問題点も判明した.このことから,院内で使用している設備・機器の洗浄方法や導入などにICTの積極的な介入が必要であることが改めて認識された.
著者
藤本 潔 羽佐田 紘大 谷口 真吾 古川 恵太 小野 賢二 渡辺 信
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

1.はじめに<br><br>マングローブ林は、一般に潮間帯上部という極めて限られた環境下にのみ成立することから、温暖化に伴う海面上昇は、その生態系へ多大な影響を及ぼすであろうことが予想される。西表島に隣接する石垣島の海面水位は、1968年以降、全球平均とほぼ同一の年平均2.3mmの速度で上昇しつつある(沖縄気象台 2018)。すなわち、ここ50年間で11.5cm上昇した計算となる。近年の上昇速度が年10mmを超えるミクロネシア連邦ポンペイ島では、マングローブ泥炭堆積域で、その生産を担うヤエヤマヒルギ属の立木密度が低下した林分では大規模な表層侵食が進行しつつあることが明らかになって来た(藤本ほか 2016)。本発表は、本年2月および8月に西表島のマングローブ林を対象に実施した現地調査で見出された海面上昇の影響と考えられる現象について報告する。<br><br>2.研究方法<br><br>筆者らは、西表島ではこれまで船浦湾のヤエヤマヒルギ林とオヒルギ林に固定プロットを設置し、植生構造と立地環境の観測研究を行ってきた。今回は、由布島対岸に位置するマヤプシキ林に新たに固定プロット(幅5m、奥行70m)を設置し、地盤高測量と毎木調査を行った。プロットは海側林縁部から海岸線とほぼ直行する形で設置した。地盤高測量は水準器付きポケットコンパスを用い、cmオーダーで微地形を表記できるよう多点で測量し、ArcGIS 3D analystを用いて等高線図を作成した。標高は、測量時の海面高度を基準に、石垣港の潮位表を用いて算出した。毎木調査は、胸高(1.3m)以上の全立木に番号を付し、樹種名、位置(XY座標)、直径(ヤエヤマヒルギは最上部の支柱根上30cm、それ以外の樹種は胸高)、樹高を記載した。<br><br>3.結果<br><br> 海側10mはマヤプシキのほぼ純林、10~33mの間はマヤプシキとヤエヤマヒルギの混交林、33~50mの間はヤエヤマヒルギとオヒルギの混交林、50mより内陸側はほぼオヒルギの純林となっていた。70m地点には立ち枯れしたシマシラキが確認された。立ち枯れしたシマシラキは、プロット外にも多数確認された。<br><br> マヤプシキは直径5㎝未満の小径木が46%、5~10cmが37%を占める。20m地点までは直径10cm未満のものがほとんどを占めるが、20~33mの間は直径10cmを超えるものが過半数を占めるようになる。最大直径は23.3cm、最大樹高は5.7mであった。ヤエヤマヒルギはほとんどが直径10cm未満で、直径5cm未満の小径木が74%を占める。最大直径は47m付近の13.8cm、最大樹高は5.7mであった。オヒルギは直径5cm未満の小径木は少なく、50~70mの間では直径10cm以上、樹高6m以上のものがほぼ半数を占める。最大直径は19.9cm、最大樹高は11.1mに達する。<br><br>地盤高は、海側林縁部が標高+28cmで、内陸側に向かい徐々に高くなり、45m付近で+50cm程になる。45mより内陸側にはアナジャコの塚であったと思われる比高10~20cm程の微高地が見られるが、一般的なアナジャコの塚に比べると起伏は小さい。この林の最も内陸側には、起伏の大きな現成のアナジャコの塚が存在し、そこではシマシラキの生木が確認された。立ち枯れしたシマシラキはアナジャコの塚であったと思われる起伏の小さな微高地上に分布していた。<br><br>4.考察<br><br> シマシラキはバックマングローブの一種で、通常はほとんど潮位の届かない地盤高に生育している。立ち枯れしたシマシラキはアナジャコの塚上に生育していたが、近年の海面上昇に伴いアナジャコの塚が侵食され地盤高を減じたため、冠水頻度が増し枯死した可能性がある。船浦湾に面する浜堤の海側前縁部にはヒルギモドキの小群落が見られるが、近年海岸侵食が進み、そのケーブル根が露出していることも確認された。このように、全球平均とほぼ同様な速度で進みつつある海面上昇に対しても、一部の樹種では目に見える形での影響が現れ始めていることが明らかになった。<br><br>参考文献<br>沖縄気象台 2018. 沖縄の気候変動監視レポート2018. 藤本潔 2016. 日本地理学会発表要旨集 90: 101.
著者
古川 恵利 草野 可代子 宮下 弘子 西山 久美子
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大学医学部保健学科紀要 (ISSN:09160841)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.77-81, 2003-12

医療依存度の高い患者とその妻が在宅で療養生活を送る事を強く希望した.患者の状態は不安定であり在宅で療養する事は困難であるように思われた.しかし,患者と妻の思いを尊重し,介護者である妻の介護負担の軽減を考慮しながら,在宅で療養できるよう支援した.その結果,患者は在宅療養に至る事ができた.この事例への関わりの中で,自分自身も高齢であり弱視というハンディキャップを抱えながらも夫を連れて帰りたいという一心で努力する妻の姿から,在宅療養に至るには家族の存在がとても重要である事を学んだ.また,私たち医療従事者は患者だけでなくその家族を支える援助を行う必要性がある事を学ぶ事ができた.
著者
信迫 悟志 坂井 理美 辻本 多恵子 首藤 隆志 西 勇樹 浅野 大喜 古川 恵美 大住 倫弘 嶋田 総太郎 森岡 周 中井 昭夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)は,注意欠如多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder:ADHD)の約50%に併存し(McLeod, 2016),自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:ASD)にも合併することが報告されている(Sumner, 2016)。一方,DCDの病態として,内部モデル障害(Adams, 2014)やmirror neuron systemの機能不全(Reynolds, 2015)が示唆されているが,それらを示す直接的な証拠は乏しい。そこで本研究では,視覚フィードバック遅延検出課題(Shimada, 2010)を用いた内部モデルの定量的評価と運動観察干渉課題(Kilner, 2003)を用いた自動模倣機能の定量的評価を横断的に実施し,DCDに関わる因子を分析した。</p><p></p><p></p><p>【方法】対象は公立保育所・小・中学校で募集された神経筋障害のない4歳から15歳までの64名(男児52名,平均年齢±標準偏差:9.7歳±2.7)であった。測定項目として,Movement-ABC2(M-ABC2)のManual dexterity,視覚フィードバック遅延検出課題,運動観察干渉課題,バールソン児童用抑うつ性尺度(DSRS-C)を実施し,保護者に対するアンケート調査として,Social Communication Questionnaire(SCQ),ADHD-Rating Scale-IV(ADHD-RS-IV),DCD Questionaire(DCDQ)を実施した。MATLAB R2014b(MathWorks)を用いて,内部モデルにおける多感覚統合機能の定量的指標として,視覚フィードバック遅延検出課題の結果から遅延検出閾値(delay detection threshold:DDT)と遅延検出確率曲線の勾配を算出し,自動模倣機能の定量的指標として,運動観察干渉課題の結果から干渉効果(Interference Effect:IE)を算出した。M-ABC2の結果より,16 percentile未満をDCD群(26名),以上を定型発達(Typical Development:TD)群(38名)に分類し,統計学的に各測定項目での群間比較,相関分析,重回帰分析を実施した。全ての統計学的検討は,SPSS Statistics 24(IBM)を用いて実施し,有意水準は5%とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】DCD群とTD群の比較において,年齢(p=0.418),性別(p=0.061),利き手(p=0.511),IE(p=0.637)に有意差は認めなかった。一方で,DCD群ではTD群と比較して,有意にSCQ(p=0.004),ADHD-RS-IV(p=0.001),DSRS-C(p=0.018)が高く,DCDQが低く(p=0.006),DDTの延長(p=0.000)と勾配の低下(p=0.003)を認めた。またM-ABC2のpercentileとSCQ(r=-0.361,p=0.007),ADHD-RS-IV(r=-0.364,p=0.006),DCDQ(r=0.415,p=0.002),DDT(r=-0.614,p=0.000),勾配(r=0.403,p=0.001)との間には,それぞれ有意な相関関係を認めた。そこで,percentileを従属変数,これらの変数を独立変数とした重回帰分析(強制投入法)を実施した結果,DDTが最も重要な独立変数であった(β=-0.491,p=0.002)。</p><p></p><p></p><p>【結論】本研究では,内部モデルにおける運動の予測情報(運動の意図,遠心性コピー)も含めた多感覚統合機能不全(DDTの延長)が,DCDに最も重要な因子の一つであることが示された。</p>
著者
鶴谷 広一 中川 雅夫 木曽 英滋 古川 恵太
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.986-990, 2005
被引用文献数
4

鉄鋼スラグと浚渫土砂の干潟材料への適用性を調べるため, 水槽を用いて実験を行った. 水槽に鉄鋼スラグと底泥を適当な割合で混合して敷き詰め, ポンプで海水をくみ上げて, 底質の上に常時かけ流した. 底質の状況を調べるため, 表層の強度を貫入式強度計で測定し, 底質の間隙水を採取してそのpH, 全窒素, 全りん, 全鉄, COD, TOCについて測定を行った. 底質中の生物の生息状況を把握するため, メイオベントスとマクロベントスの分析を行った. 製鋼スラグを用いた底質では, 間隙水のpHが海水より若干高めであったが, 生息するベントスは自然材料と比べて特に大きな差は見られず, 干潟への適用に可能性が開けた.
著者
岡田 知也 古川 恵太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_31-I_36, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
9
被引用文献数
1

東北地方太平洋沖地震によって発生した津波によって,干潟・浅場は大きく地形変形し,藻場は消失するなど,宮古湾(岩手県)の生態系は甚大な影響を受けた.著者らは,アマモ場に着目し,アマモ,地形および底質環境を合わせた総合的な環境復元過程を検討すること考えた.本研究では,宮古湾において,アマモ場の復元のための初期の情報として底質の状況を把握することを目的とした.調査は2011年2月と10月に行った.2月調査により,津波被害後のアマモ場を,底泥の粒度分布からアマモ生育の適性度を評価し,3つにゾーニングした.10月調査では,ゾーニングに基づいて空間的に密な調査を実施し,詳細な底質およびアマモの分布状況を把握した.この底質の分布データは,今後の底泥およびアマモの回復過程の初期データとして有用となる.