著者
谷 冴香 三木田 直哉 古川 福実 金澤 伸雄
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.97-100, 2015-01-20 (Released:2015-01-20)
参考文献数
11

抗精神病薬や抗菌薬にて薬疹の既往がある57歳女性.市販の鼻炎薬Aを内服した翌日より全身に発熱を伴う発疹が出現した.抗ヒスタミン薬内服とステロイド外用開始後も症状は増悪し,顔面腫脹も出現した.尿と画像所見から尿路感染が疑われ,抗菌薬とステロイドの全身投与により皮疹,尿路所見ともに軽快した.薬剤リンパ球刺激試験とパッチテストにて鼻炎薬Aとその成分のベラドンナ総アルカロイドが陽性を示した.ベラドンナ総アルカロイドは各種市販薬に含まれるが,同様の報告はこれまでになく,注意が必要である.
著者
稲葉 豊 金澤 伸雄 古川 福実
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.26-30, 2013

34歳,女性。頭痛に対して鎮痛薬を使用したところ口唇の腫脹を生じた。数ヶ月後に別の鎮痛薬を使用したところ,上下口唇と手背の水疱および手指の紅斑を生じ,色素沈着を残した。両薬剤に共通な成分であるアリルイソプロピルアセチル尿素 (Allylisopropylacetylurea,AIAU),イブプロフェン,無水カフェインのいずれかによる固定薬疹を疑い,これらの成分に対して無疹部でのクローズドパッチテストを行ったがすべて陰性であった。そのため上下口唇の色素沈着部に AIAU とイブプロフェンをそれぞれ20%含有するワセリンを単純塗布すると,5分後に紅斑が出現した。また無水カフェインの口唇色素沈着部への,AIAU の手背色素沈着部への単純塗布はそれぞれ陰性であった。本症例は皮膚粘膜移行部の固定薬疹であり,同部でのオープンパッチテストは結果が早く得られ,安全で有用性の高い検査法であった。(皮膚の科学,12: 26-30, 2013)