著者
大久保 雄
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.3-11, 2019-10-31 (Released:2019-12-24)
参考文献数
40

Adequate knowledge of trunk muscles is useful to provide the best possible treatment of low back pain, as well as for improvement of athletic performance. Thus, trunk muscle exercises are commonly performed and taught on the athletic field.Muscle function in the neutral zone is important for trunk stabilization. Trunk muscles are classified into a local and a global muscle system. The local muscle system includes deeper muscles with their points of origin or insertion directly or indirectly on the lumbar vertebrae such as the transversus abdominis and the lumbar multifidus. The global muscle system includes muscles that are not directly attached to the lumbar vertebrae, such as the rectus abdominis and the external oblique muscles. Local muscles play a key role in trunk stability and postural responses. Hodges and Richardson reported that the onset of the transversus abdominis is earlier than that of agonist muscles (early activity) during upper limb movement. Moreover, local muscles are partially activated through low-load tasks and postural control such as with walking (tonic activity). In contrast, high-load movements such as running and jumping lead to co-activation of local and global muscles (phasic activity). Adequate training to achieve motor control of the local muscles using specific exercises is important to enhance optimal activation of trunk muscles during various movements. Therefore, I explain progressive trunk muscle training with electromyographic data from motor control exercise to bridge exercises and co-contraction of the trunk muscles along myofascial line.Many studies investigated the effects of core stability training on athletic performance. Some recent systematic reviews revealed that core stability training provides marginal benefits to athletic performance. However, further research is necessary to better understand how trunk stability and stability affect athletic performance.
著者
村上 三郎 中島 三恵 吉田 裕 橋本 大樹 辻 美隆 大久保 雄彦 浜田 節雄 平山 廉三
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-6, 2004 (Released:2009-06-05)
参考文献数
32
被引用文献数
6 3

血液透析治療中に繰り返し発症した宿便性大腸穿孔症例を経験したので,文献的検討を加えて報告する.症例は76歳,女性.慢性腎不全にて血液透析治療を受けている.3年前に宿便性S状結腸穿孔にてHartmann手術を施行されている.今回,突然の腹痛が出現し再入院となった.腹部X線写真および腹部CTで,freeairおよび多数の宿便を認め,宿便性大腸穿孔の再燃と判断し緊急手術を行った.S状結腸に穿孔を認め,その近傍に宿便を認めた.前回のストーマ造設部に新たなストーマを造設してHartmann手術を行った.水分摂取の制限を要した血液透析患者で宿便性大腸穿孔が発症したことを考えると,圧迫壊死という物理的因子以外に便塊表面の粘稠度の充進や腸粘液分泌減少などによって便塊が大腸粘膜へ強固に付着すること,さらに,それに続く大腸壁の局所循環血流障害などが本疾患の発症に関与している可能性がある.
著者
高木 祥 金岡 恒治 大久保 雄 大塚 潔 宮本 渓 辰村 正紀 椎名 逸雄 宮川 俊平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A3O2042, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】骨盤傾斜角度は脊柱アライメントに影響を与え、骨盤前傾位では腰椎前彎角は増加し、骨盤後傾位では逆に減少する。腰椎の過剰な前彎は腰痛の原因の一つと考えられ、腰痛のリハビリテーションとして腰椎前彎角を減ずることを目的に下肢のストレッチや骨盤後傾運動が行われている。骨盤前後傾運動においては,体幹の表層に位置するグローバル筋だけでなく,深層に位置するローカル筋の関与が最近の研究によって明らかにされてきているが,まだ詳細については不明な点が多い。また臨床において骨盤前後傾運動を実施する際,その運動範囲や運動様式には個人差が見られ,その評価は評価者の技術・経験などに影響される主観的なものであるため、より客観的に評価するための指標が望まれる。その指標の一つとして,骨盤前後傾可動域は比較的簡便かつ定量化が可能であり,有用だと考える。しかし,これまでに骨盤前後傾運動時の筋活動と可動域との関係を報告した研究は見当たらない。そこで本研究の目的は骨盤自動前後傾運動時の骨盤周囲筋の筋活動を明らかにし,さらに矢状面での骨盤前後傾可動域と筋活動との関係性を明らかにすることとした。【方法】健常成人男性12名(22.6±1.4歳,169.9±5.7cm,69.6±7.6kg)を対象とし,動作課題は立位骨盤中間位から最大前傾位までの骨盤前傾運動,次いで最大後傾位までの骨盤後傾運動を指示し,各運動中の筋電図を計測した。筋電図測定には,両側の腹直筋(RA)、外腹斜筋(EO)、脊柱起立筋(ES)および片側(右側)の広背筋(LD)、大殿筋(GMA)、半腱様筋(ST)、大腿直筋(RF)に表面電極(Vitrode F-150S; 日本光電)を貼布し,両側の腹横筋(TrA)、多裂筋(MF)にはワイヤ電極(UNIQUE MEDICAL社)を超音波ガイド下に23G注射針をガイドとして整形外科医によって挿入した。その後,電極が適切に刺入されていることを確認するために,電気刺激を加えて目的筋の収縮を超音波で描出した。ワイヤ電極刺入に関しては筑波大学倫理委員会の承認を得て実施した。サンプリング周波数は2000Hz,バンドパスフィルターは20-500Hzとした。等尺性最大随意収縮(MVC)時の筋活動で標準化した%MVCを算出し,さらに立位姿勢を保持するために要する筋活動の影響を取り除くため,骨盤前後傾運動時と安静立位保持時の%MVCの差で各筋を比較した。また骨盤前後傾可動域測定には,被験者の上前腸骨棘(ASIS)と上後腸骨棘(PSIS)にマーカーを貼付し,デジタルカメラを用いて矢状面における骨盤前傾位・中間位・後傾位の静止画を撮影した。その後,画像解析ソフトimage-J(NIH)を用いてASISとPSISを結んだ線が水平となす角度(骨盤傾斜角度)から骨盤前後傾可動域を算出した。さらに骨盤前後傾運動でそれぞれ大きい活動を示した筋を抽出し,筋活動と骨盤前後傾可動域との関係性について検討した。分析には骨盤前後傾運動時の各筋の筋活動の比較にTukey HSD法による多重比較検定を用い,骨盤前後傾可動域と筋活動との関係にはPearsonの積率相関係数を算出した。有意水準は5%未満とした。【説明と同意】被験者には事前に研究について書面と口頭による説明の後,同意を得て研究を実施した。【結果】骨盤前傾運動時には骨盤中間位に比較して,両側のMFが23.9%,右ESは19.0%,左ESは13.6%と有意に増加した。また骨盤後傾運動時は左TrAのみ14.7%と有意に増加した。また,特に大きい活動を示した両側MF(前傾)、左TrA(後傾)と骨盤前後傾可動域との相関係数はそれぞれ,0.68(右MF),0.62(左MF),0.53(TrA)であり,骨盤前傾可動域と両側MFでは有意に高い関係を示した。【考察】骨盤前傾運動では骨盤の上後方に付着するMFやESによって,骨盤の後方が引き上げられ,骨盤の前傾運動が生じると考えられる。一方の骨盤後傾運動では,これまで恥骨に付着するRAが主に作用すると考えられていたが,今回の結果ではRAよりもTrAの筋活動が大きかった。TrAは骨盤前方の腸骨稜や鼠径靭帯にも付着するため,収縮により骨盤の前方が引き上げられ,骨盤後傾運動が生じると考えられる。また,骨盤前傾可動域とMFの間には有意に高い関係が認められたことから,より大きく骨盤を前傾させるには,MFの大きい筋活動が必要とされることが考えられた。骨盤後傾運動では左TrAと後傾可動域に正の相関は認めたものの,ばらつきが大きく個人差や左右差が大きいことも推察された。【理学療法学研究としての意義】本研究により,骨盤自動前後傾運動時の筋活動が明らかとなり,骨盤の運動を客観的に評価する指標として,骨盤前後傾可動域の有用性が示唆された。
著者
永井 秀幸 赤坂 清和 乙戸 崇寬 澤田 豊 大久保 雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1254, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】下腹部引き込み動作(以下ドローイン)は通常背臥位で行われる。しかし,腰痛者が職場で背臥位やバランスボールを使用することはスペースや安全面から困難であり,椅子座位でエクササイズを施行する方が機能的・現実的であると考えられる。そこで我々は,椅子座位で施行出来る効果的な腰痛予防エクササイズを模索するため,超音波診断装置を用いてバランスディスクの有無とドローインエクササイズを組み合わせた腹部深層筋の筋活動が高まる運動課題を検討した。【方法】対象は,本研究に対して同意を得られた健常男性20名(平均年齢:22.2±2.7歳)とした。測定機器は,超音波診断装置(ALOKA社製PROSOUND6)を用いた。基準となる安静背臥位で腹横筋と内腹斜筋の筋厚を測定した。運動課題は,椅子座位,バランスディスク座位とし,各々に①安静,②左片脚挙上(以下knee elevation),③下腹部引き込み動作(以下ドローイン),④ドローインしながら左片脚挙上(以下ドローイン+knee elevation)を行なう合計8種類とした。測定部位は,最下位肋骨の下端と腸骨稜の中点かつ前腋窩線上とし,測定はすべて右腹壁にて安静呼気時に測定した。また,前述の運動課題施行中の難易度をVASにて測定した。さらに,筋厚の安静背臥位との比(以下,安静時比)を算出した。筋厚の比較は腹横筋と内腹斜筋における椅子座位,ディスク座位の2つの姿勢と前述の4つの運動課題の2要因による2元配置分散分析と多重比較を行った。また,各課題における難易度のVASの比較についても同様に実施した。統計処理にはSPSS Statistics version 21を使用し,有意水準を5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,埼玉医科大学保健医療学部倫理員会による承認(M-37)を得て実施した。【結果】各運動課題における筋厚の安静時比は,腹横筋について椅子座位でのドローインでは2.1倍,ドローイン+knee elevationでは2.4倍,ディスク座位でのドローイン+knee elevationが2.5倍となった。腹横筋の筋厚は,姿勢による有意差はなく,運動課題では,安静<knee elevation<ドローイン<ドローイン+knee elevationとなり,不等号部分にて,有意に筋厚が増加した。内腹斜筋の筋厚は,椅子座位よりもディスク座位で有意に増加した。また,運動課題間の比較では,安静<knee elevation,ドローイン<ドローイン+knee elevationとなり,不等号部分にて有意に筋厚が増加した。椅子座位における4つの運動課題の難易度は,安静<knee elevation,ドローイン<ドローイン+knee elevationとなり,ディスク座位における難易度は,安静<ドローイン<knee elevation<ドローイン+knee elevationとなり,不等号部分にて有意に難易度が増加した。各運動課題における椅子座位とディスク座位との難易度は,全てにおいてディスク座位の方が,難易度が高い結果となった。【考察】各運動課題における筋厚の安静時比の結果は,バランスボールの先行研究(Rasouri O, et al. 2011)と同程度であり,バランスディスクはバランスボールと同程度の効果を示唆した。座面の不安定性では,ローカルよりもグローバルマッスルが,有意に活動が増大したことを示唆した。また,knee elevationよりもドローインが腹横筋の活動を増大させ,内腹斜筋は両課題の有意差はみられなかった。一方,ドローインの影響は内腹斜筋より腹横筋の方が大きく,先行研究(Urquhart DM, et al. 2005)と同様の結果となった。ドローイン+knee elevation時の腹横筋・内腹斜筋の筋厚が有意に高くなった理由は,大腰筋の収縮が腰椎・骨盤の固定性をさらに高める必要性を生じさせ,両筋の筋活動がより増加したと推察する。これらから,内腹斜筋の過活動を抑えながら腹横筋の筋厚を高めるには椅子座位でのドローインが有用であり,両筋の活動増加を目的とする場合は難易度が高くなるが,椅子座位でのドローイン+knee elevationが有用であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】腹横筋について,バランスディスクの影響は少なく,knee elevationよりドローインの影響が大きいことが示唆された。また,ドローインでknee elevationさせると,腹横筋と内腹斜筋の筋厚が増加するととともに,難易度が増加することが示唆された。これらの結果は,臨床での腰痛者への運動療法を行う際,運動の選択における基礎的知見になると考える。
著者
大久保 雄 金岡 恒治 長谷部 清貴 松永 直人 今井 厚
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0804, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】大腰筋は股関節および脊柱の屈曲に作用する深部筋である。先行研究において,腰痛患者では大腰筋の萎縮が生じていること(Baker et al., 2004)などから,リハビリテーション現場において大腰筋の重要性が示されている。また,中高齢者では大腰筋の筋断面積が有意に低下し,歩行能力低下と関連することが報告されている(金ら,2000)ことから,介護予防教室においても大腰筋エクササイズが注目されている。そこで臨床現場では,股関節屈筋群(大腰筋や大腿直筋など)のエクササイズとして,自動下肢伸展挙上(active straight leg raise,ASLR)が用いられているが,大腰筋は体幹の最も深部に位置するため活動様式を評価することが困難であり,ASLR時の大腰筋活動様式は明らかでない。そこで本研究では,ワイヤ筋電図を用いて大腰筋活動を測定し,ASLR時の大腰筋活動様式を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健常男性9名とした(年齢:25±4歳,身長:170.1±6.2cm,体重:60.3±4.7kg,mean±SD)。股関節屈曲0゜~最大屈曲角度まで右側ASLRを行わせた際の筋電図および股関節屈曲角度データを同期させて収集した。被検筋は全て右側とし,大腰筋にはワイヤ電極を,腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,大腿直筋には表面電極を設置した。大腰筋には超音波画像ガイドの下ワイヤ電極を刺入し,電極を留置後,電気刺激装置にて大腰筋の筋収縮を確認した。動作解析として,3台の赤外線カメラ(OQUS,QUALYSIS社製)を用いて,ASLR時の股関節屈曲角度を計測した。ASLR時の股関節屈曲角度から,屈曲初期,屈曲中期,屈曲後期の3phaseに分割し,各phaseの筋活動量(%MVC)を算出した。筋活動量の比較として,phaseと筋を因子とした二元配置分散分析を用い,有意差を認めた場合はTukey-Kramer法により事後検定を行った。また,ASLRの筋活動開始時点(onset)を「安静時の筋活動量±2SD」から求め,ASLR運動開始時点を基準(0秒)とした各筋のonsetを算出し,Kruskal-Wallis検定を用いて比較検討した。有意水準は5%とした。【結果】大腰筋の筋活動量は,屈曲初期:10.3±5.5%MVC,屈曲中期:18.1±9.3%MVC,屈曲後期:33.0±19.6%MVCであり,屈曲中期と後期で有意に大きかった。また,大腿直筋の筋活動量が屈曲中期:16.2±8.8%MVC,屈曲後期:18.3±14.6%MVCであり,他の筋よりも有意に大きい値を示した。ASLR運動開始時点に対する各筋のonsetは,大腰筋:-0.033±0.25 sec,大腿直筋:-0.003±0.12 sec,腹直筋:0.15±0.40 sec,外腹斜筋:0.27±0.36 sec,内腹斜筋:0.25±0.25 secであり,大腰筋および大腿直筋のonsetが内・外腹斜筋よりも有意に早かった。【考察】本結果より,大腰筋は屈曲初期から後期にかけて活動量が大きくなった。Yoshio et al.は屍体を用いた研究により,大腰筋は股関節屈曲0~15゜では大腿骨頭の安定化に作用し,股関節屈曲45゜以上から股関節屈曲作用が大きくなることを報告している(Yoshio et al., 2002)。さらにJuker et al.は,ワイヤ筋電図を用いて様々なエクササイズ時の筋活動量を比較した結果,股関節屈曲90゜位からの等尺性股関節屈曲運動で大腰筋活動が最も大きくなることを報告している(Juker et al., 1998)。以上から,ASLRにおいて大腰筋は股関節深屈曲位になる屈曲後期に活動量が大きくなることが示唆された。Onsetの比較では,下肢の股関節屈筋群が腹筋群よりもonsetが早かった。ASLRでは股関節屈曲運動に伴い骨盤前傾方向の回転モーメントが生じ,その骨盤の運動制御に腹筋群が活動した可能性がある。しかし,挙上側と反対側の内腹斜筋や腹横筋は,主動筋よりも先行して活動を開始するとの報告もあり(Hodges et al., 1997),今後は両側の腹筋群の反応を検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】本結果より,ASLRでは股関節深屈曲位にて大腰筋がより賦活化され,挙上側と同側の筋では股関節屈筋群から腹筋群の順に動員されることが明らかになった。ASLRは臨床現場で頻繁に用いられる運動であり,本研究はASLRを処方する際の有用な情報になると考える。
著者
田中 大貴 馬場 雪乃 鹿島 久嗣 齋藤 朋也 大久保 雄太
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

本研究では、運転時の位置情報や速度・加速度等の運転データを用いたドライバー識別に取り組む。既存研究では十数人のドライバー識別を対象にしていたのに対し、本研究では、最大1万人という大規模なドライバー識別を扱う。実データを用いた実験により、提案法がベースラインよりも精度良くドライバーを識別できることを示した。特に、位置や時間に関する特徴量が大規模ドライバー識別に極めて有効であることを示し、また、速度や加速度情報もドライバーの識別に一定の寄与があることを示した。
著者
秋山 昭人 大久保 雄平 高嶋 力彌 古堅 進亮 栃本 真人 土屋 哲
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.1269-1272, 1994-08-20
被引用文献数
4 1

骨盤内悪性腫瘍に対する放射線照射に起因する出血性膀胱炎はしばしば難治性であり,これまでのところ決定的な治療法が確立されていないのが現状である.今回我々は他の保存的治療が無効であった2例の重篤な放射線性出血性膀胱炎に対し高圧酸素療法による止血を試み,良好な成績を得た.治療は,症例1に対しては2絶対気圧下100%酸素吸入・120分間・計60回,症例2に対しては3絶対気圧下100%酸素吸入・90分間・計30回というスケジュールで行った.両症例とも血尿は消失し,膀胱鏡所見も著明に改善した.明らかな副作用は認められなかった.治療後3年(症例1),および4ヵ月(症例2)の現在まで,再発は認められていない.高圧酸素療法は他の分野においてその方法や効果についてはすでに確立されており,本疾患においてもそれらの方法にしたがって施行すれば患者の負担も少なく,根治的な治療効果が期待できることから,従来の治療法に代わって第一選択の治療となり得るものと考えられた.
著者
森上 太郎 大久保 雄 西川 拓也 上林 和磨 乙戸 崇寛 赤坂 清和
出版者
一般社団法人 日本整形外科スポーツ医学会
雑誌
日本整形外科スポーツ医学会雑誌 (ISSN:13408577)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.30-36, 2020 (Released:2020-08-21)
参考文献数
20

目的:異なる頚部および上肢角度にてDraw-inを行なった際の腹部筋活動を超音波画像装置や表面筋電計を用いて評価し,腹部深部筋の賦活化に有効な肢位を検証すること.対象:健常成人男性22人.方法:頚部肢位4通り,上肢肢位3通りを組み合わせて12通りの肢位でDraw-inを行ない,腹筋群の筋形態および筋活動の変化を各肢位で比較した.結果:頚自動屈曲では腹直筋,外腹斜筋の活動量が増加および腹横筋の筋厚が低下し,上肢挙上位では外腹斜筋の活動量が増加した.結論:頚自動屈曲あるいは上肢挙上させることで腹部表層筋の活動量が増加することから,腹横筋の選択的収縮には頚部および上肢を中間位で安静にさせることが有用であることが示唆された.
著者
大久保 雄 金岡 恒治 半谷 美夏 椎名 逸雄 辰村 正紀 泉 重樹 宮川 俊平
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C1461, 2008

【目的】これまで単純X線画像による腰椎の運動学的研究は行われてきたが,連続的に腰椎挙動を評価した研究は少ない.本研究の目的は,X線シネ撮影装置により立位体幹前後屈時の矢状面腰椎挙動を撮影し,各椎間の可動域及び挙動開始の位相差を比較することである.<BR>【方法】側面X線画像にて腰椎に明らかなすべりのない健常男性9名(平均年齢23.2歳,平均身長171.0cm,平均体重65.2kg)を対象とした.立位にて骨盤を固定した状態の下,体幹前後屈を行わせた腰椎挙動をX線シネ撮影装置にて撮影した.前屈及び後屈動作は腰椎の撮影が行える範囲までとし, 撮影速度は15frames/secとした.得られたX線シネ画像をデジタイズ処理によって各椎間(L1/2,L2/3,L3/4,L4/5)及び腰椎全体(L1/5)の矢状面角度を計側し,前屈及び後屈動作においてL1/5可動域に対する各椎間可動域の百分率を椎間別に比較した.さらに,各椎間の動作が開始した時点を求め,各椎間挙動の位相差を検討した.統計処理は一元配置分散分析を用い,有意水準を5%とした.<BR>【結果】全対象者のL1/5可動域は前屈35±10゜(Mean±SD),後屈10±8゜であった.前屈動作における各椎間可動域の百分率はL1/2:23±8%,L2/3:30±9%,L3/4:28±5%,L4/5:19±11%であり,L2/3の可動域がL4/5に比べ大きい傾向を示した(p=0.06).一方,後屈動作ではL1/2:27±31%,L2/3:39±46%,L3/4:20±23%,L4/5:17±59%と,被験者毎にばらつきが大きく一定の傾向を示さなかった.各椎間挙動の開始時点の比較では,前屈動作においてL4/5の挙動が他の椎間(L1/2,L2/3,L3/4)に比べ有意に遅かったが,後屈動作では椎間別に有意な位相差を認めなかった.<BR>【考察】本研究の結果より,前屈動作ではL2/3の可動域が大きく,L4/5の挙動が他の上位椎間に比べて遅れることが示された.腰椎の前屈可動域はL4/5において最大と言われているが,Miyasakaらは腰椎全体の前屈可動域が40゜未満の場合,L2/3が最大可動域を示すことを報告しており,本研究でも同様の傾向を認めた.また,椎間挙動の位相差に関して,Kanayamaらは腰椎の前屈動作においてL3/4,L4/5,L5/S1の順に挙動が開始することを報告しており,本研究においても類似の結果が得られた.<BR>【まとめ】立位体幹前後屈時の矢状面腰椎挙動を連続的に計側した結果,可動域が中程度の前屈動作においてL2/3の可動域が大きく,L4/5の挙動が上位椎間に比べ遅れることが示唆された.一方,後屈動作では可動域,位相差ともに椎間別で特異的な傾向を認めなかった.
著者
大久保 雄司
出版者
一般社団法人 日本接着学会
雑誌
日本接着学会誌 (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.4-16, 2018-01-01 (Released:2018-10-23)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

フッ素樹脂は,多機能を有する合成樹脂であるが,接着性が乏しいという唯一の欠点を持つ。よって,フッ素樹脂と異種材料を接着する場合は,フッ素樹脂の表面改質が必須となる。従来の低温プラズマ処理では接着性が不十分となるが,プラズマ処理中に加熱する( 熱アシストプラズマ処理する) ことで,接着性が劇的に向上することを見出した。当初は,プラズマを発生させるための電力密度を高く設定することによってプラズマ処理中の表面温度を200℃以上に調節していた。しかし,プラズマ処理面積の拡大にともない,装置の改造費用が高額となるため,実用化する上で大きな障壁となっていた。そこで,ヒーターを使用して熱アシストプラズマ処理することを検討した。低電力密度であってもヒーターで加熱すれば,フッ素樹脂の接着性が大幅に向上することを実証した。フッ素樹脂の接着性を向上するためには,酸素を含む官能基の生成に加えて,表面硬化が極めて重要であった。
著者
山本 洋之 大久保 雄司 小川 一文 内海 邦広
出版者
一般社団法人 プラスチック成形加工学会
雑誌
成形加工 (ISSN:09154027)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.104-114, 2010
被引用文献数
3

In this study, the physical performance (adhesion resistance, heat resistance, abrasion resistance, chemical resistance) extremely thin, highly durable and chemically adsorbed fluorocarbon film with low surface energy on the metal surface (the thickness is about 1 nm order.) was evaluated, and the evaluation results (durability, demolding resistance) on the actual injection molding performance up to 100,000 shots using a test mold were reported. <BR>The demolding resistance could be drastically decreased without losing the mold shape and dimensional accuracy by using the chemically adsorbed and highly durable fluorocarbon film.<BR>From these results, this technique should be useful for molding various elastomers such as silicone and urethane resin which are difficult to release from a mold for making high precision products such as optical components and chemical chips.
著者
田中 大貴 馬場 雪乃 鹿島 久嗣 齋藤 朋也 大久保 雄太
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.2M303, 2018

<p>本研究では、運転時の位置情報や速度・加速度等の運転データを用いたドライバー識別に取り組む。既存研究では十数人のドライバー識別を対象にしていたのに対し、本研究では、最大1万人という大規模なドライバー識別を扱う。実データを用いた実験により、提案法がベースラインよりも精度良くドライバーを識別できることを示した。特に、位置や時間に関する特徴量が大規模ドライバー識別に極めて有効であることを示し、また、速度や加速度情報もドライバーの識別に一定の寄与があることを示した。</p>
著者
大久保 雄作 三品 美夏 茅沼 秀樹 渡邊 俊文
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.31-35, 2015 (Released:2015-11-24)
参考文献数
8

排尿困難を主訴として、8歳、去勢雄のゴールデン・レトリバーが来院した。肉眼的に症例の会陰部は腫脹しており、逆行性尿路造影検査では会陰部尿道内にテニスボール大の腫瘤性病変が確認された。排尿困難の改善を目的として、会陰部正中から外科的にアプローチし、腫瘤周辺の尿道の一部分とともに腫瘤を摘出し、同時に外尿道口の再建を行った。摘出した腫瘤は病理組織学的に平滑筋腫と診断され、摘出後は良好な臨床経過が得られた。
著者
内村 正史 多羅尾 信 宮本 康二 大久保 雄一郎 原 明
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.1685-1689, 2009 (Released:2009-12-04)
参考文献数
13

症例は19歳,男性.2007年9月18日午前1時ごろ心窩部痛出現,徐々に症状増強し近医救急車搬入.腹膜刺激症状及び腹部単純CTにて腹水貯留を認め,急性腹症の診断にて当院救急車搬入.収縮期血圧80,脈拍93,搬入時顔面蒼白.腹部造影CTにて短胃動脈破裂による腹腔内出血が疑われ,かつ出血性ショックと判断し緊急手術施行.腹腔内は大量の血液が貯留し,胃体部後壁,脾上極の短胃動脈に出血部を認め,同部を含めた胃部分切除をおこなった.術後1日目に人工呼吸器より離脱し徐々に回復.病理組織検査ではElastica van Gieson染色で小動脈中膜の異常断裂像を認めFibromuscular dysplasia(以下FMD)の所見と考えられた.まとめ:若年者に発症した短胃動脈瘤破裂は腹部内臓動脈瘤の中でも非常に稀であり若干の文献的考察を加え報告する.
著者
大久保 雄平 福井 巌 坂野 祐司 吉村 耕治 前田 浩 米瀬 淳二 山内 民男 河合 恒雄 石川 雄一 山本 智理子
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1138-1141, 1996-09-20

44歳,家婦。1年3ヵ月来の肉眼的血尿,排尿困難を主訴に1994年6月初診。経膣的な触診にて膣前壁に柔らかい腫瘤を触れ尿道腫瘍を疑った。尿細胞診では腺癌を疑わせる多数の悪性細胞集塊を認めた。尿道膀胱造影にて尿道憩室を2つ認め,尿道鏡にて尿道括約筋の近位と遠位の2カ所にそれぞれの憩室口を認めた。膣からの圧迫により近位の憩室から表面平滑な小豆大の腫瘍が突出したのでこれを切除したところ,病理学的には低分化型の移行上皮癌が疑われた。尿道憩室癌の診断にて8月9日前方骨盤内臓器全摘術,インディアナパウチ造設術施行。近位憩室内に認められた腫瘍は病理学的に管状,乳頭状および嚢胞状など多彩な腺様構造を呈し,核が上皮細胞の表面に突出した,いわゆるhobnail(鋲くぎ)パターンを認め,mesonerphric adenocarcinomaと診断した。術後,局所に放射線照射を追加し退院。術後1年4ヵ月の現在再発,転移を認めていない。女子尿道mesonephric aenocarcinomaはその組織発生に関していまだ統一された見解はなく,自験例は文献上44例目と思われる。
著者
相澤 卓 金 泰正 吉川 慎一 間宮 良美 秋山 昭人 大野 芳正 大久保 雄平 三木 誠 橘 政昭
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.463-468, 2002-03-20
被引用文献数
6 4

(目的)近年,医療費抑制などの目的で種々の疾患においてクリニカルパスの導入が試みられている.当院でクリニカルパスを用いて治療したTURP(経尿適的前立腺切除術)症例について検討した.(対象・方法)平成11年6月より12年3月までの間にTURP目的で入院した69症例のうち32例にクリニカルパスを使用し,治療を計画した.これらの患者の入院期間,医療費給付点数等を各症例について計算し,同時期に入院し,クリニカルパスを使用しなかった37症例と比較した.(結果)クリニカルパス導入症例では平均入院期間±標準偏差は12.7±2.8日であり,平均医療費給付点数±標準偏差は48,424.2±4,437.5点であった.クリニカルパスを使用しなかった症例では平均入院期間±標準偏差は14.7±5.2日であり,平均医療費給付点数±標準偏差は55,365.5±16,805.1点であり,入院期間はやや長く,医療費給付点数もやや高い傾向にあった.(考察)クリニカルパスを使用することで効率的な診療ができ,医療費抑制にもつながることが示唆された.また,それぞれの患者の個別性にも注意を払い,クリニカルパスを作成していかなけばならないと考えられた.