著者
山田 竜彦 菱川 裕香子 久保 智史 山口 真美
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.1198-1200, 2012

バイオ由来の液体燃料として,バイオエタノールは,デンプン等の糖類由来は既に商用化され,加えてセルロースからも糖化・発酵法等で製造可能であり開発が進んでいる。一方,ディーゼル油,灯油,ジェット燃料に相当する液体燃料は,パームオイル等の植物油や微細藻類の産するオイルの研究開発が進んでいるものの,地上に最も多量に存在する有機化合物であるセルロースから直接に製造した例はほとんどみられない。<BR>我々は,セルロースから誘導可能なディーゼル油相当液体燃料としてのポテンシャルを持つ有用化合物として「バイオレブリネート」なる物質を見いだし,検討を進めている。バイオレブリネートとは,糖の酸加水分解物により得られる有機酸である「レブリン酸」とアルコール類がエステル結合したレブリン酸エステル骨格を持った化合物である。レブリネート類の燃料としての物理パラメータ(沸点や引火点)は,石油化学でいうケロシンに相当し,ディーゼル油,灯油,ジェット燃料源として期待されている。加えて,MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)やETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)に替わるクリーンなガソリン添加剤(ブースター)としても期待される。<BR>本報告では,紙パルプ産業分野への技術の応用を見据え,種々の製紙スラッジを用いた,簡易な酸加溶媒分解法でのバイオレブリネートの調製について紹介する。反応としては,硫酸を含むn―ブタノールで抄紙スラッジを還流するだけあるが,ブチルレブリネートの生成率は抄紙スラッジのヘキソース基準で50―70%と高収率であった。
著者
山口 真一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織学会大会論文集 (ISSN:21868530)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.46-51, 2015-07-31 (Released:2015-07-31)
参考文献数
11

Sales strategy that uses free digital distribution is a new business model in the creative industry. However, it has raised many important management questions the extent to which free digital distribution either crowd out or complement consumption of products. In this paper, we analyze the effect of free digital distribution on physical sales in Japanese music market. The results showed that the complementary effect of free digital distribution is greater than a substitution effect, so free digital distribution has a significant positive impact on the number of physical sales. It was found that the number of physical sales increases by about 0.27% when free digital distribution views increase by 1%. Furthermore, while a more detailed analysis revealed free digital distribution of works by unknown producers has a positive effect on physical sales, while free distribution of works by well-known producers have no effects. In addition, free digital distribution of long movies has a strong positive effect on the number of physical sales than one of short movies. It was also found that free digital distribution of pop music and idol music has a positive effect on physical sales, while free digital distribution of other music have no effects.
著者
山口 真 小川 哲生
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.386-391, 2014

半導体に適当な波長のレーザー光(励起光)を照射すると,価電子帯の電子は伝導帯に励起され,励起電子とその抜け孔である正孔は,Coulomb力により励起子と呼ばれる束縛状態を形成する.この励起子は光を放出して再結合し,その光が再び励起子を生成する.このような過程で形成される励起子と光子の複合準粒子は励起子ポラリトンと呼ばれる.GaAsやCdTeなどの材料系の結晶成長技術の進展により図L2のように鏡に相当する2つの層(微小共振器)の間に半導体量子井戸をサンドイッチした系が作られ,そこでの励起子ポラリトンの振る舞いが注目されている.この系では,半導体の励起子のエネルギーに相当する光は鏡の間に閉じ込められ,いわゆるキャビティ(共振器)状態になっている.(山本喜久ら:日本物理学会誌第67巻第2号「解説」参照.)この系に励起光を照射すると励起子ポラリトンの密度が増えていくが,その過程で励起子ポラリトンを構成する電子,正孔,光子は,お互いの相互作用に起因して様々な興味深い特徴を示す.まず,密度が増えてくると熱平衡統計力学に基づいて励起子ポラリトンのBose-Einstein凝縮(BEC)が起こる.この変化により,観測される発光強度は大きく増大する.この点は第1閾値と呼ばれる.さらに密度を上げていくと,再度,光強度が急激に増加する領域-第2閾値-が存在する.従来,この第2閾値は,励起子ポラリトンの構成粒子である励起子が電子と正孔に解離することで,非平衡状態である半導体レーザーへ移行する現象と解釈されてきた.しかしながら,励起子の解離によって非平衡性を生じるという論理には必然性がない.このため,第2閾値の起源としては,冷却原子系でも話題になっているように,熱平衡状態を維持したまま電子や正孔のFermi粒子性が高密度領域で顕在化し,これらが"Cooper対"を組んで凝縮している可能性,つまり,Bardeen-Cooper-Schrieffer(BCS)状態のような秩序相が生じている可能性も指摘されてきた.これまで第2閾値について多くの実験的な検証が行われてきたが,その起源については統一的な見解は得られていなかった.その理由の一つには,電子や正孔の束縛対の形成や解離といった物理を含み,かつ,熱平衡領域から非平衡領域にまでわたるBECやBCS状態,半導体レーザーを統一的に記述できる理論が存在しなかったことが挙げられる.そこで我々は最近,系を準熱平衡とみなせる状況ではBCS理論に,非平衡性が重要となる状況ではMaxwell-Semiconductor-Bloch方程式(半導体レーザーを記述できる方程式)に帰着する理論を提案した.この枠組みに基づいて解析を行うと,BECからBCS状態や半導体レーザー発振にいたる諸状態を一つの枠組みで記述でき,これらの関係性を明らかにすることができる.その結果,現在知られている実験では,確かに励起子ポラリトンBECは非平衡領域である半導体レーザーへ連続的に移行し,これにより第2閾値が生じていることが分かった.さらにその場合には,第2閾値においては励起子の解離が生じるわけではなく,束縛対の形成機構が変化していることが明らかになった.これらの結果は,今回提案した統一的な理論の重要性を示しているだけでなく,今後,密接な関連をもつ高温超伝導や冷却原子系などの研究分野に新たな知見を与える可能性も秘めている.また,熱平衡領域とそれから遠い非平衡領域をつなぐという意味において,非平衡統計力学などへの領域を超えた波及効果も期待される.
著者
山口 真美
出版者
中央大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、乳児期の顔認知発達に関する多くの研究成果を産出した。乳児の注視行動を計測する行動実験では、表情や顔向きのような顔の動きが顔認知を促進することを明らかにし、自然場面で見られるような顔の社会的情報の重要性を示した。さらに顔観察時の脳活動計測から、顔の同定や母顔などの既知顔認識が生後7-8ヶ月頃に発達することを示し、顔認知の社会的側面の発達過程の解明に大きく貢献した。
著者
金沢 創 山口 真美 北岡 明佳
出版者
淑徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、乳児の知覚を検討するプロジェクトの一環として、「錯視図形」をキーワードに、乳児の視知覚の発達を実験的に明らかにしたものである。平成18年度においては、(1)拡大運動と縮小運動の感度の非対称性、(2)正方形と円を重ねたとき、背後の円の輪郭を補完するアモーダル補完、(3)2つの重なった領域の明るさの順序により、2つの透明な領域が重なっていると解釈される透明視、のそれぞれについて、その知覚が発生する時期を実験的に検討した。それぞれの成果はInfant Behaviour and Development誌、Perception誌、などの国際的な学術雑誌に発表された。また、平成19年度は、(1)右方向と左方向に運動しているランダム・ドットを重ねると、2つの透明な面が見える運動透明視、(2)共同研究者である北岡が作成した、緑と赤の小さな領域が囲まれた色影響により彩度が低下する色誘導刺激、についてそれぞれ知覚発達を検討し、これらの成果をPerception誌やInfant and Child Development誌に発表した。さらに最終年度の3月までに、(1)静止しているランダムドットの一部の領域の色を、時間的に次々に変化させていくと、運動する輪郭が知覚されるいわゆるcolor from motion刺激や、(2)局所においてはバラバラに動いて見えるバーが、それを隠す領域を配置すると四角形が補完されるパターン、(3)輪郭と白黒の配置から、絵画的な奥行き手がかりが知覚されるパターンなどの知覚発達も検討し、(1)についてはInfant Behaviour and Development誌に発表され、後者2つについては、Journal of Experimental Psychology、およびVision Research誌にそれぞれ掲載されることが2008年4月現在、決定している。
著者
仲佐 輝子 山口 真由美 沖中 靖 目鳥 幸一 高橋 周七
出版者
社団法人日本農芸化学会
雑誌
日本農藝化學會誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.1491-1498, 1995-11-01
被引用文献数
12 16

Male Wistar rats were fed on a 1% cholesterol plus 12% lard containing-diet for 2 weeks (HC group). Accumulation of cholesterol and triacylglycerol was observed in their livers. The level of cholesterol in plasma of HC group was increased to 1.6 times that in the normal (Nor) group, while the level of triacylglycerol was lower than that in the Nor group. Plasma lipoproteins in the HC group were characterized by an increase in very low density lipoprotein (VLDL)-plus low density lipoprotein (LDL)-cholesterol level and a decrease in high density lipoprotein (HDL)-cholesterol level. Subsequently, the diet of the HC group was switched to a normal diet, and this group was divided into two groups of HCN and HCND. HCND group was orally administered Du-Zhong leaf extract, and HCN group was given tap water ad libitum. After feeding for two more weeks, the levels of plasma and hepatic cholesterol in the HCND group significantly decreased, and the level of hepatic triacylglycerol in this group was also lower than that in HCN group. The ratio of HDL-cholesterol to total cholesterol became greater by the administration of Du-Zhong leaf extract. On the other hand, the level of VLDL-+LDL-cholesterol in HCND group was significantly lower than that in HCN group. While no difference of acetyl-CoA carboxylase activity in liver was observed among HCN, HCND, and Nor groups, the activity of fatty acid synthetase in HCND group was lower than that in the HCN group and was nearly equal to that in the Nor group. These results suggest that Du-Zhong leaf extract may have recuperative effects for hypercholesterolemia and fatty liver.
著者
牛川 憲司 板垣 英二 丸山 雅弘 半田 桂子 大塚 大輔 下山 達宏 関 博之 小澤 幸彦 山口 真哉 滝澤 誠 片平 宏 吉元 勝彦 石田 均
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.74-82, 2005
参考文献数
19
被引用文献数
3

症例は54歳, 男性。平成7年頃に糖尿病と診断されていたが放置していた。平成13年8月末より腰痛を認め, その数日後より右下肢に浮腫が出現した。さらに左下肢にも浮腫を認めるようになったため同年9月20日当科入院となった。身体所見では両下肢の圧痕性浮腫と両側の側腹部に表在静脈の怒張を認めた。胸部〜大腿部造影CTでは, 肝静脈流入部より中枢側ならびに腎門部より末梢側の下大静脈は正常に存在していたが, 肝静脈流入部から腎門部にいたるまでの下大静脈は欠損しており, 著明に拡張した奇静脈および半奇静脈が描出された。なお, 腎門部より末梢の下大静脈は第3腰椎レベルで下行大動脈の背側を横切り半奇静脈に連なっていた。さらに, 両側の大腿静脈, 外腸骨静脈, 総腸骨静脈および腎下部下大静脈, そしてそれに連なる半奇静脈の血管内腔には器質化した血栓が連続性に充満していた。また, 胸腹部MRAでは腹腔内に側副血行路と考えられる無数の静脈が描出された。以上より, 広範な深部静脈血栓症を伴った肝部から腎部におよぶ下大静脈欠損症と診断したが, 本例は側副血行路の著明な発達, 増生により両下肢の浮腫は保存的治療のみで自然に軽快した。下大静脈欠損症では, 血管の走行異常による血流うっ滞をきたす可能性があるにも関わらず実際に静脈血栓症を合併することは稀である。本例において広範な深部静脈血栓症を合併した原因としては, 高度の腰痛により食欲不振をきたし脱水傾向となったことから血液粘稠度が増加し, その状態で臥床状態が続いたこと, それに加えて合併する糖尿病による凝固亢進状態が関与した可能性が考えられた。
著者
山口 真希
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.191-201, 2012

知的障害児の数概念の発達は単純に「遅れ」るのだろうか。知的障害児が生活のなかでどのようにインフォーマル算数の概念を獲得していくのかについてはあまり明らかにされていない。本研究では,知的障害のある中学生(N=15)を対象に,数概念(計数,多少等判断,保存)および均等配分課題を実施し,知的障害児の数概念発達を日常的行為との関連で明らかにすることを目的とした。その結果,知的障害児について以下のことが示された。(1)数概念の発達は,生活年齢ではなく精神年齢に関係する。ただし,課題の取り組み方は同じ精神年齢の通常発達児と異なっている部分がある。(2)精神年齢,数概念の発達がともに幼児期段階であっても簡単な演算スキルを有している生徒がいる。(3)均等配分方略の差異は,生活年齢ではなく精神年齢に関係する。また精神年齢で対応させた通常発達児と比べると均等配分課題の成績がやや低い。(4)計数概念の有無,多少等判断概念の有無によって,採用する均等配分方略に違いが見られる。以上より,知的障害児の数概念と均等配分方略は相互に関連して発達し,通常発達児と異なるプロセスを経ている可能性が示唆された。
著者
是澤 範三 毛利 正守 蜂矢 真郷 山口 真輝
出版者
京都精華大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

日本統治時代、台湾に多くの日本古典籍が渡った。その中でも、国立台湾大学(旧台北帝国大学)には『日本書紀』の多くの貴重な写本がある。本研究では、国立台湾大学における『日本書紀』の収蔵状況について調査し、特に貴重な三本を選び出版する。第一弾として圓威本『日本書紀』が2012年に台湾大学図書館より出版される。