著者
杉浦 幸子 三澤 一実 米徳 信一 山口 真美
出版者
武蔵野美術大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

「超初期学習者」である乳幼児の心理的発達に、「美術館」環境、「アート作品」、それらに関わる「人」が寄与すると仮定し、それらが発する情報を乳幼児が取得する教育プログラムをデザイン・実施し、彼らの反応を映像記録し、保護者、主催者から聞き取りを行った。その結果、主に次の3点が観察できた。乳幼児は、1.色や線、形といった造形要素、照明、床、家具といった建築的要素、周囲の人的刺激に反応する、2.反応に個人差がある、3.過去の経験や記憶と受けた刺激を関連づけている可能性があるそこから、「美術館」は乳幼児の心理的発達に寄与する可能性があるとし、成果を印刷物にまとめ、国内の美術館、自治体に配布・共有した。
著者
荒木 建次 山口 真史
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.84-90, 2019-02-10 (Released:2019-09-20)
参考文献数
57
被引用文献数
1

電動自動車,ハイブリッド車の屋根に太陽電池を搭載し,太陽エネルギーで内部蓄電池を充電する構成の自動車に対する関心が高まっている.この車載用太陽電池は,太陽電池技術だけでなく,社会そのものを大きく変革する可能性をもっている.車載太陽電池により,70%の自家用車が給油や充電なしで走行できるようになるといった試算もある.残念ながら,車載用太陽電池は既存の太陽電池技術の延長線上にはない.つまり,住宅や発電プラント向けのソーラーパネルを自動車の屋根に取り付けただけでは十分に機能しないし,普及も望めない.本稿では,主に太陽電池サイドから,最近の技術開発動向や,本格普及のためにはどのような技術を研究開発する必要があるかについてまとめる.むろん,本技術は総合技術であり,自動車サイド,インフラサイドからのリソースも援用し,総合的なエネルギーソリューションを目指した研究開発が必要である.
著者
田中 辰雄 山口 真一 彌永 浩太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.47-56, 2019-03-20 (Released:2019-06-16)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究ではフリーミアム型コンテンツ産業の例としてモバイルゲームをとりあげ,そこでは多数の製品を出す分散型と,一つの製品に集中する集中型の二つの戦略が存在することを示した.当たり外れの多いコンテンツ産業において一つの製品に集中する戦略は異例であり,ネットワーク効果が働くフリーミアムならではの新しい戦略と考えられる.
著者
寳劔 久俊 山口 真美 佐藤 宏
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アジア経済 (ISSN:00022942)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.2-31, 2022-06-15 (Released:2022-06-29)
参考文献数
51

中国の「農民工」(農村出身の非農業就業者)は,安価な労働力の源泉として,中国経済の急速かつ持続的な発展を支えてきた。しかしながら,労働年齢人口の減少や農村労働力の高齢化とともに,農民工の供給の頭打ち傾向が強まり,賃金の引き上げや企業間の獲得競争も広まっている。そのため,農民工の熟練形成や職場への定着を促進し,コミットメントの向上を図ることが,企業経営者や政策担当者に求められてきている。このような問題意識のもと,中国における製造業の一大集積地域である江蘇省蘇州市において従業員へのアンケート調査を行い,農民工の職務意識を規定する要因を共分散構造分析によって考察した。分析の結果,「職務満足」と「仕事への埋め込み」は「組織コミットメント」を有意に高めること,「組織コミットメント」は農民工の「離職意向」を有意に引き下げること,若年層の農民工(「新世代農民工」)では「仕事への埋め込み」が「組織コミットメント」の高さを支える主要な要因であることが明らかとなった。以上の結果から,新世代農民工の組織コミットメントを向上させるため,新規就業者や若年従業員向けのきめ細かな研修・指導の重要性が示唆される。
著者
山口 真美
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.168-174, 2013-06-30 (Released:2014-07-02)
参考文献数
24

乳児を対象とした発達過程から見ると言語発達と顔認知発達は類似した点がある。この類似点を述べた上で, 本論では, 顔認知の発達と障害と, コミュニケーション的観点からの顔認知発達の重要性について論じる。複数の処理段階を経て成人の顔処理へと移行する, 顔認知の発達について論じ, さらに顔認知の障害には, 発達初期の初期視覚野の特異性が原因となる可能性があることについて論じる。発達初期の顔学習を示した顔学習モデル(Valentin ら 2003)によると, その情報量から予測されるよりもはるかに速く学習が進むという。この速い顔学習には, 乳児期の未熟な視力がかかわっている。すなわち, 視力が十分に発達していないため, 入力される顔が粗く情報量が少なくなり, 結果として短期間での顔学習が成立するという。こうしたメカニズムについて言及しつつ, 乳児の視力によって顔のどんな情報が学習されやすいか, 顔の全体処理のメカニズムから説明し, 顔を見ることが苦手とされる, 発達障害の顔認知発達についても言及する。
著者
山口 真美
出版者
日本メルロ=ポンティ・サークル
雑誌
メルロ=ポンティ研究 (ISSN:18845479)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.109-117, 2021 (Released:2021-11-06)
参考文献数
7

This paper presents recent visual developmental studies relating to infants. The American developmental researcher Robert L. Fantz developed a new procedure to in- vestigate infants’ cognitive abilities. The preferential looking paradigm shows that infants look longer at some pattern images, and habituation situations to study infants’ cognitive abilities are well-known procedures. Cognitive psychology has revealed infants’ visual abilities by depending on these procedures. During 1980–1990, infants’ basic vision, such as acuity, colour vision, and motion threshold, was uncovered. Recently, the higher vision phenomenon has been clarified, and we call it ‘pre-constancy vision’ in infants.
著者
横須賀 公彦 松原 俊二 山口 真司 戸井 宏行 桑山 一行 平野 一宏 宇野 昌明
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.10, pp.796-800, 2012 (Released:2012-11-09)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

低髄液圧症候群に対する診断・治療については, 近年数多く報告されている. 意識障害を伴う症例報告はあるが重篤な経過をとる症例は少なく, 死亡例は1例のみ報告されている. われわれは, 急激に意識障害が進行し, 1度のドレナージ術と2度のEBPを行うも不幸な転機をとった症例を経験した. 意識障害を伴う症例は両側のCSDHを併発している症例が多く, 血腫量により治療方針を決定することが望ましい. また, 漏出部位の確定が困難でEBPの治療効果が不十分であれば早期に次の治療を行う必要がある. 腰椎部でのEBP, 硬膜外持続投与, 手術による閉鎖術などを積極的に行うべき症例が存在することを知っておく必要がある.
著者
大屋 周期 山崎 嘉孝 中村 剛之 森重 聡 山口 真紀 青山 一利 関 律子 毛利 文彦 大崎 浩一 内藤 嘉紀 大島 孝一 長藤 宏司
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1605-1610, 2020 (Released:2020-12-08)
参考文献数
15

多中心性キャッスルマン病は,リンパ節病理像によって特徴づけられるリンパ増殖性疾患でIL-6高値を特徴としている。症例は17歳の日本人男性,発熱,頭痛,倦怠感,体重減少を伴っていたが,血圧は正常であった。臍下部に可動性良好な腫瘤を触知し,血液検査所見は小球性貧血,低アルブミン血症,IL-6高値,sIL-2R高値,VEGF高値を示した。造影CT検査で55 mm大の骨盤内腫瘤と腸間膜周囲のリンパ節腫大を認め,多中心性キャッスルマン病を疑い骨盤内腫瘍を摘出した。術後,血圧が緩徐に上昇し可逆性後頭葉白質脳症による痙攣を発症した。高血圧の精査で,術前の血中ノルアドレナリン,ノルメタネフリン高値が判明し,摘出標本でIL-6およびクロモグラニンAが陽性であることから,IL-6産生パラガングリオーマと診断した。多中心性キャッスルマン病に類似した発熱,貧血などを来す病態の鑑別診断として,血圧上昇を伴わない症例でもIL-6産生褐色細胞腫・パラガングリオーマを考慮する必要がある。
著者
山口 真由
出版者
信州大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

親とは何か――この問いに対する法的に普遍的な答えは、いまだ与えられていない。例えば、わが国においては、両親の婚姻又は親子の血縁のいずれを重視するかによる緊張関係がある。わが国に先んじて、社会的変化に直面し、各州が競って親子法制を進化させた合衆国の親子法を題材として、普遍的な「親子の要件」を抽出することを、本研究の目的とする。その際に、婚姻と血縁に収斂すると思われている親子の要件について、それとは異なる可能性や、父と母の決定に関して異なる哲学に基づく別個の法理が形成されている可能性を検証する。
著者
山口 真一
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策レビュー
巻号頁・発行日
vol.11, pp.52-74, 2015

<p>本稿では、近年多く発生しているネット炎上の特徴と実態を、先行研究や実証分析を基に整理したうえで、名誉毀損罪の非親告罪化、制限的本人確認制度、インターネットリテラシー教育、捜査機関における炎上への理解向上といった観点から、あるべき政策的対応を考察する。</p><p>実証分析の結果、以下の5点が確認された。第一に、炎上は、2011 年以降、毎年 200 件程度発生し続けている。また、それは特に Twitter で多い。第二に、「炎上に加担したことがある」人はわずか1.5%しかいない一方で、「炎上を知っている」人 は90%以上存在する。第三に、インターネット上で「非難しあってよい」と考えている人は10%程度しかいない。さらに、「非難しあってよい」と感じている確率に有意に正なのは、「炎上に加担したことがある」人のみである。第四に、インターネットを「怖いところだ」「攻撃的な人が多い」と感じている人はそれぞれ70%以上存在する。特に、炎上を知っている人は「攻撃的な人が多い」と感じている確率が有意に正となっている。第五に、若い人ほどインターネットに対して「言いたいことが言えるのがよい」「非難しあってよい」と感じている。</p><p>また、以上を踏まえた政策的対応の考察では、プロバイダ責任制限法の炎上負担軽減効果と限界に触れたうえで、「①名誉棄損罪の非親告罪化」「②制限的本人確認制度の導入」「③誹謗中傷(炎上)に関するインターネットリテラシー教育の充実」「④捜査機関における炎上への理解向上」の4つを挙げた。そして、①には slippery slope の問題が、②には違憲である可能性とそもそも効果が薄いという問題があることを述べ、③と④に積極的に取り組むことを提案した。</p>
著者
山口 真美
出版者
中央大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

質感知覚の初期過程を解明する研究を行い、光沢感や金色カテゴリの獲得が乳児期にあること、乳児における影を知覚する能力を解明した。また、光沢感の形成メカニズムを明らかにする研究や、乳児におけるカテゴリカル色知覚の脳内処理、質感にかかわるクロスモダリティの研究について現在も研究を推進している。さらに、複数の企業への玩具作製の技術指導および共同研究も行っている。2014年夏には、東京都現代美術館で開催された「ワンダフルワールド展」での作品協力なども行い、多方面への知識の普及に貢献できたと考える。
著者
山口 真一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.4-15, 2021-09-20 (Released:2021-10-15)
参考文献数
40

本稿の目的は,企業現場で急速に発展している組織・消費者間コミュニケーションについて,近年の学術研究ではどのようなデータが収集・分析されているのか紹介することである.分析を①テキスト分析,②行動データ分析,③アンケート調査分析の3つに整理したうえで,それぞれの分析における「具体的なデータ収集・分析方法」「分析で明らかにできること」「適しているテーマ」を述べる.