著者
高橋 幸利 松平 敬史 笠井 良修
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.1591-1597, 2017-08-10 (Released:2018-08-10)
参考文献数
10

ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)ワクチン(子宮頸がんワクチン)接種後に,日常生活が困難な状況に陥った症例が1万人あたり2名程度ある.そのような症例の中で中枢神経系関連症状を呈した32例の髄液を検討し,①Th2シフトを示唆するIL(interleukin)-4,IL-13,CD4+ T cells増加,②IL-17増加(発症後12~24カ月),③IL-8,MCP-1(monocyte chemoattractant protein-1)増加,④GluN2B,GluN1に対する自己抗体増加等が明らかとなった.
著者
平 敬
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

昨年度に引き続き実験装置の製作を引き続き行った。本計画の実験装置はSEA-TADPOLE部+光マスク部+最適化・位相復元計算部の3つに分かれており、SEA-TADPOLE部には干渉計部とSHG-FROG部がある。光マスク部の主要部品としてデジタルミラーデバイスを用いたアクティブマスクを購入した。これにより多数のマスクを製作する手間を省くことができた。SEA-TADPOLE部のうち干渉計部に必要な点光源として新たに偏波面保持ファイバーを2本束ねた系の構築を試みた。SHG-FROG部の組み立て・アライメントを行うための顕微観察系を構築した。SHG-FROG部は未だ完成しておらず、引き続き作業が必要である。SEA-TADPOLE部の完成が特に遅れている。最適化・位相復元計算部として、テスト波形を勾配降下法により復元できるシミュレーションを行った。これにより光マスクを取り入れた位相復元計算への道筋が見えた。各部位の未完成部分を仕上げて全体を統合する必要があり、実験装置完成にはあと数か月を要すると予想される。当初計画と異なり、既に改良された要素部品が導入されているため当初計画の2~3年目に行うはずだった改良はすでに終えていることになる。その代わりに全体の完成が遅れている。成果発表に関しては、実験装置が完成していないため行えていない。シミュレーション部分だけでも論文として発表できるかどうか検討中である。
著者
西脇 仁 奥平 敬元
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.141-155, 2005 (Released:2005-07-01)
参考文献数
62
被引用文献数
3 2 5

領家変成帯中の近畿中央部飛鳥地域に分布する苦鉄質岩は,領家古期 花崗岩類に対して層状に産している.苦鉄質岩のほとんどは,コアもリムもほぼ均一な化学組成を示す半自形~他形の斜長石と角閃石からなる.また,斜長石-角閃石温度計を用いて平衡温度を計算するとおよそ500-600℃となることから,これらの苦鉄質岩は角閃岩相の変成作用を被った変成岩であると考えられる.一部の苦鉄質岩に認められる面構造とマグマ期-亜マグマ期に形成された花崗岩類の片麻状構造が斜交関係にあることから,両者は同じ変形作用を被っておらず,苦鉄質岩の面構造は,少なくとも花崗岩類との接触以前に形成されたと判断される.これらのことから,苦鉄質岩は花崗岩質マグマの定置以前に角閃岩相の変成作用を被った後,花崗岩質マグマに捕獲されたと結論づけられる.
著者
西川 治 奥平 敬元 吉田 昌幸 白石 建雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.Supplement, pp.S75-S85, 2008-09-18 (Released:2011-12-22)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1

出羽丘陵は,東北日本が強い東西圧縮応力場におかれた鮮新世前期から逆断層や褶曲構造を形成しながら隆起を開始し,更新世中期にかけて全域が陸化したと考えられている.この隆起運動に関連した変形構造は,出羽丘陵成立過程の構造運動の実態を明らかにするために重要なデータとなるだけでなく,脆性領域の変形機構や変形様式を理解するための格好の素材を提供している.この見学旅行では,出羽丘陵西縁部に存在する北由利衝上断層群および中央部に位置する鳥田目断層群に伴われる変形構造を観察し,その運動像や変形条件について考察する.
著者
西脇 仁 奥平 敬元
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.6, pp.249-265, 2007 (Released:2008-02-01)
参考文献数
62
被引用文献数
7 8

近畿中央部の初瀬深成複合岩体は,主に片麻状黒雲母花崗閃緑岩とそれと同時形成の苦鉄質岩類から構成されており,E-W方向とNW-SE方向の2つのシンフォームによって特徴づけられるベースン構造を形成している.花崗閃緑岩の片麻状構造は,主に黒雲母クロットの形態定向配列によって定義され,マグマ流~亜マグマ流によって形成されている.花崗閃緑岩中の角閃石の化学組成から,花崗閃緑岩マグマの定置深度は,およそ20 kmと見積もられる.花崗閃緑岩中には,高温の塑性変形組織が見出されている.マグマ流~亜マグマ流による変形と高温塑性変形の最大伸長方向が一致しており,これらの変形作用は花崗閃緑岩の定置に関連して,マグマの固結後に温度の低下とともに連続して生じたと推測される.E-W方向のシンフォーム構造は,領家変成帯中に広く認められるD3期鉛直褶曲構造と平行であることから,片麻状黒雲母花崗閃緑岩は,領家変成帯の鉛直褶曲時の広域応力場において定置したと考えられる.
著者
三田村 圭祐 奥平 敬元 三田村 宗樹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.61-74, 2016-02-15 (Released:2016-06-17)
参考文献数
64
被引用文献数
1

生駒断層帯において,白亜紀花崗岩類中に発達する露頭規模の断層群に対する構造地質学的解析を行った.断層群のスリップデータに基づく多重逆解法により求められた古応力場は,南北引張の正断層型であった.また,断層コアのガウジから分離したイライトのK-Ar年代は,45.2±1.0Ma(粒径0.2-0.4µm)および46.0±1.1Ma(粒径0.4-1.0µm)となった.各粒径区画におけるK-Ar年代値や低温イライトの含有率に有意な差が認められなかったため,母岩の黒雲母K-Ar年代を用いて砕屑性高温イライトの影響を考慮した結果,断層コア形成およびその後の熱水変質による年代として~45-30Maを得た.これらの結果は,生駒断層帯における白亜紀花崗岩類中に発達する露頭規模の断層群の形成が始新世後期〜漸新世前期の伸長テクトニクスに関連したものであることを示唆する.
著者
奥平 敬元 原 郁夫 桜井 康博 早坂 康隆
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.42, pp.91-120, 1993-04-30
被引用文献数
20

岩国-柳井地域領家帯は主に低圧型変成岩(領家変成岩類)と花崗岩類(領家及び広島花崗岩類)から構成される。領家花崗岩類は古期花崗岩類と新期花崗岩類に大別され, 前者はシート状であり後者はストック状である。領家変成岩類は四つの鉱物帯(黒雲母帯, 菫青石帯, ザクロ石帯, 珪線石帯)に分けられ, これらと領家古期花崗岩類は三つのナップ(構造的上位から通津ナップ, 大畠ナップ, 柳井ナップ)を形成している。通津ナップど大畠ナップとの間には, 最高変成作用時の温度圧力条件において約3kb, 200℃のギャップがある。また, 柳井ナップは大畠ナップの構造的下位に位置しているが, 柳井ナップは大畠ナップよりも低温低圧の温度圧力条件を示す。このことは最高変成作用時の温度圧力構造が, 後の造構作用によって改変されたものであることを示している。菫青石帯には二つのミグマタイト帯(天ケ岳及び長野ミグマタイト)が存在するが, これらはより深部(約6kb)で形成され, 破砕帯に沿って貫入上昇し, 現在の位置に定置したものである。ミグマタイト中の含コランダムレスタイトの変成作用の解析結果から二つの変成時相(M0, M1)が識別され, M0変成作用は中圧型に対応することが明かとなった。M1変成作用はミグマタイトや領家古期花崗岩類の貫入直後に行なわれ, この変成作用はこれらの貫入岩の接触変成作用である可能性が高いパイルナップ構造の形成はM1変成作用後で, 領家新期及び広島花崗岩類の貫入前である。
著者
竹下 徹 奥平 敬元
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.453-467, 1995-01-24 (Released:2010-03-11)
参考文献数
79
被引用文献数
1

Dynamics and thermal modeling in low-pressure/high-temperature metamorphic belts (LPMs) are reviewed. LPM found in the world is formed under such P-T conditions that the pressure is lower than that of the aluminosilicate (Al2SiO5) triple point (about 400MPa), and the peak temperature ranges between 500 and 700°C. Such anomalously high temperatures at relatively shallow depth indicate that the geothermal gradient in the upper crust exceeded 50°C km-1 at the time of LPM formation. Although the steady state geothermal gradients in the upper crust necessary for the formation of LPM could be reached by continuously supplying a huge amount of magma in the upper crust [OXBURGH and TURCOTTE (1971)], such a steady state model is unlikely because of no observation of entire melting of the lower crust which is the outcome of the steady state model. Rather, transient heat sources such as the intrusion of magma, circulation of hot fluid, subduction of young oceanic plate or spreading ridge and convective thinning of the mantle lithosphere have been proposed to be the possible heat sources for LPM. Based on the heat transfer calculations, the duration of high-temperature condition by the intrusion of magma which is several kilometer wide, is less than 1Ma, and that by the circulation of hot fluid is poorly constrained. Even in the thermal model where the highest-temperatures in the country rocks attained by the intrusion of magma are assumed to be recorded as the metamorphic temperatures, the volume of magma necessary for the formation of LPM is more than 50% of the total volume of the crust [HANSON and BARTON (1989)]. Among these thermal models of LPM, subduction of young oceanic plate or spreading ridge is a likely model of LPM, not only because there are many occurrences of LPM evolved from accretionary sedimentary piles at trench, but because the ridge subduction can cause volcanism in the forearc [e. g., DELONG et al. (1979)] in addition to the anomalous heat supply to sediments from the asthenosphere. In order to further constrain the dynamics and thermal model of LPM in future, the P-T path and the duration of low-pressure type metamorphism must be accurately estimated petrologically, and the relative timing between metamorphism and deformation must be thoroughly investigated.
著者
中屋 晴恵(益田晴恵) 三田村 宗樹 奥平 敬元 篠田 圭司 西川 禎一 隅田 祥光
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

アジア諸国で拡大しつつあるヒ素汚染地下水の形成機構を研究した。バングラデシュの調査では,ヒ素を含む緑泥石が完新世の帯水層上部で化学的風化作用により溶解してヒ素を地下水中に溶出させていることを明らかにした。パキスタンやベトナムの調査でも整合的な結果が得られた。ヒ素を含む酸水酸化鉄が還元により分解されるとした定説を翻し,この観察事実はヒ素汚染地下水形成の最初期の過程として一般化できる。
著者
吉田 勝 奥平 敬元 有馬 真 古山 勝彦 加々美 寛雄 小山内 康人
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1)平成11年度と12年度の2年間ににかけて、インド原生代変動帯を主題とし、UNESCO-IUGS-共催事業国際地質対比計画(IGCP)No.368プロジェクトの総括研究を行った。補助金によって蛍光X線分析装置と走査電子顕微鏡を購入し、後者には既存のEDXを装着し、研究地域の岩石・鉱物の分析的研究を行い、多くの成果を得た。インド楯状地及び関連地域の内いくつかの重要地域の野外研究を実施した。インドから科学者2名を招聘し、同位体年代分析あるいはインド原生代変動帯に関する全般的な情報提供を頂いた。また、インドの研究協力者らによってインド半島原生代変動帯の重要地域の地質研究成果のとりまとめが行われた。これらによってインド亜大陸の原生代変動帯に関する広く新しい知見が得られ、多くの国際集会に参加して研究発表、討詮及び研究のまとめを行った。2)これらの研究の結果、インドの原生代変動帯はメソ原生代のロディニア・東ゴンドワナの集合テクトニクスで重要な役割を演じたこと、ネオ原生代には基本的には再変動であったことが示された。最近Powellら(Gondwana Research 4,PP.736-737)などによって東ゴンドワナのネオ原生代集合モデルが提案されているが、我々の研究成果は、この新しいモデルはさらに精密な検討を要することを強く示唆している。3)これらの研究成果は研究分担者、協力者らによって国際誌等での学術論文公表135編・国際シンポジウムなどでの研究発表59題、国際誌特別号や学会メモアなど18冊の論文集冊などとして公表され、或いは印刷中である。4)本研究の成果報告書として「インドの原生代変動帯:IGCP-368の研究成果」(英文、GRG/GIGE Misc.Pub No.15)が発行された。本書は全376頁で、第1章:東ゴンドワナ研究の最近の進歩、2章:東ゴンドワナのテクトニクス、3章:インド半島のテクトニクス、岩石とミネラリゼーション、4章:アフリカと周辺地域のテクトニクス、岩石とミネラリゼーション、5章:南極のテクトニクスと岩石・6章:その他のゴンドワナ地域の地質、7章:IGCP-368プロジェクトの活動-国際シンポジウムとフィールドワークショップ-から成り、公表論文リスト、講演リスト、文部省提出書類ファイル一式が付録として付けられている。