著者
後藤 真千子
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.413-418, 2016 (Released:2017-03-18)
参考文献数
3

ホスピタル・プレイ士(以下HP士と記載)がプレパレーションをすることによって,恐怖心から処置や検査,治療を行うことが困難な患児に対し,処置や治療,検査がスムーズに行われることが可能となることがある.まず,本人と保護者の話をよく聞き,児が処置/検査/治療の意味や必要性を理解しているか,何が不安なのか,親の思いはどうか,を確認する.その後,処置/検査/治療がどういうものかを患児の認知に合わせて説明し,必要があれば,事前に機械,機器を見たり,触れたり,遊んだりするなどして,児の不安を一つずつ取り除いて,児が大丈夫と思えるまで関わる.分離不安がある場合は,HP士と仲良くなることにより,処置/検査/治療にHP士が一緒に入って支えながら乗り切っている.処置/検査/治療が度重なる恐怖体験になり,トラウマになって,体に変調を来すようなときも,不安の原因を一つ一つ解きほぐしながら,患児と一緒に乗り越えるための対処戦略を考え,乗り切っていく.その際に,様々な段階において,各部署のスタッフと連携し,綿密に段取りを決めて,患児の恐怖を最小限にし,乗り越えるためのモチベーションを上げるように工夫している.そのような関わりが,効果的であった症例について,具体的な経過を報告し,HP士と他職種の連携によるプレパレーションの意義について考察したい.
著者
大浦圭一郎 間瀬 絢美 山田 知彦 徳田 恵一 後藤 真孝
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.1, pp.1-8, 2010-07-21
被引用文献数
3

近年,コンピュータによる歌声合成が注目を集めている.中でも隠れマルコフモデル(hidden Markov model; HMM)に基づく歌声合成では,歌い手の特徴を歌声データと対応する楽譜から自動的に学習することができる.2009年12月,無料のオンラインサービス「HMM歌声合成システム: Sinsy」を開始した.ユーザーは楽譜をウェブサイトにアップロードすることで,任意の楽譜に対応した歌声を合成することができる.但し,Sinsyの歌声モデルには70曲で学習した特定話者モデルを用いており,新しい歌い手の歌声モデル追加の際の収録コストが高くなる問題があった.本稿ではSinsyのシステム構成について述べるとともに,話者適応手法により少量のデータから所望の歌い手の特徴を再現した歌声を合成することを検討する.A statistical parametric approach to singing voice synthesis based on hidden Markov models (HMMs) has been grown over the last few years. In this approach, spectrum, excitation, and duration of singing voices are simultaneously modeled by context-dependent HMMs, and waveforms are generated from HMMs themselves. Since December 2009, we started a free on-line service named "Sinsy." By uploading musical scores represented by MusicXML to the Sinsy website, users can obtain synthesized singing voices. However, a high recording cost may be required to train new singer's model because a speakerdependent model trained by using 70 songs is used in Sinsy. The present paper describes the recent developments of Sinsy and a speaker adaptation technique to generate waveforms from a small amount of adaptation data.
著者
糸山 克寿 後藤 真孝 駒谷 和範 尾形 哲也 奥乃 博
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.3, pp.1-6, 2009-07-22

本報告では,楽曲の楽器パート音量操作によってユーザがクエリをカスタマイズすることが可能な類似楽曲検索手法を提案する.楽曲の雰囲気やジャンルは楽曲を構成する楽器およびその音量バランスと強く関係する,という仮説に基づく.楽曲の音響信号を楽譜に基づいて楽器パートへと分離し,その分離信号の音量を操作することで楽曲の音響的特徴を変化させる.楽曲の音響特徴はガウス混合分布で表現され,楽曲間の類似性を分布間の Earth Movers Distance で定義する.実験により,歌声,ギター,ドラムスパートの音量を操作した際にジャンルシフトが起こることを示す.This report presents a novel Query-by-Example (QBE) approach in Music Information Retrieval, which allows a user to customize query examples by directly modifying the volume of different instrument parts. The underlying hypothesis is that the musical genre shifts (changes) in relation to the volume balance of different instruments. Our QBE system first separates the musical audio signal into all instrument parts with the help of its musical score, and then lets a user remix those parts to change acoustic features that represent musical mood of the piece. The distribution of those features is modeled by the Gaussian Mixture Model for each musical piece, and the Earth Movers Distance between mixtures of different pieces is used as the degree of their mood similarity. Experimental results showed that the shift was actually caused by the volume change of vocal, guitar, and drums.
著者
土井啓成 戸田智基 中野倫靖 後藤真孝 中村哲
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.5, pp.1-9, 2012-08-02

歌声の声質には,歌手の個人性が反映されており,他者の声質に自在に切り替えて歌うことは難しい.そこで我々は,歌声の声質を他者の歌声の声質へと自動変換することで,任意の声質での歌唱を実現する手法を提案し,歌唱という音楽表現の可能性を広げることを目指す.従来,統計的声質変換に基づく歌声声質変換が実現されていたが,提案手法では様々な声質に少ない負担で変換可能にするため,多対多固有声変換を導入する.これにより変換時に数秒程度の少量の無伴奏歌声さえあれば,任意の歌手の歌声から別の任意の歌手の歌声への声質変換が実現できる.しかし,その声質変換モデルの事前学習データとして,ある参照歌手の歌声と多くの事前収録目標歌手の歌声とのペアから構成されるパラレルデータセットが必要で,その歌声収録は困難であった.そこで提案手法では,歌唱表現を模倣できる歌声合成システム VocaListener を用いて目標歌手の歌声から参照歌手の歌声を生成することで,その学習データ構築を容易にする.実験結果から提案手法の有効性を確認した.
著者
浜中 雅俊 後藤 真孝 麻生 英樹 大津展之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.100, pp.71-78, 2002-10-25
被引用文献数
5

本稿では、実在する人間の演奏者固有のフレーズを模倣するためには、ジャムセッションの演奏記録から、フレーズを再利用可能な形で切り出し、フレーズデータベース上に蓄積する必要がある.本研究では、自動でフレーズデータベースを作成するための手法として、(1)確率モデルに基づいた発音時刻のクォンタイズとそのモデルパラメータの教師なし推定法、(2)ボロノイ線図を用いたグルーピング手法によるフレーズ分割、(3)局所自己相関関数を用いたフレーズからの特徴抽出法とフレーズの空間配置法、を提案する.This paper describes a jam session system that enables a human player to interplay with virtual players, each of which imitates musical phrases of a human player. In order to imitate musical phrases of a human player, it is necessary to build a database of phrases extracted from session recording. We propose the following three methods for creating a database automatically:(1) a probabilistic-model-based quantization method for estimating the positions of onset times in a score and an unsupervised estimating method for the model parameters, (2) a phrase dividing method using the Voronoi diagram, and (3) a method of extracting the phrase characteristics by using autocorrelations and a method of locating phrases in a space.
著者
室伏 空 中野 倫靖 後藤 真孝 森島 繁生
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.21, pp.1-7, 2009-07-22
被引用文献数
1

本研究では、既存のダンス動画コンテンツの複数の動画像を分割して連結(切り貼り)することで、音楽に合ったダンス動画を自動生成するシステムを提案する。従来、切り貼りに基づいた動画の自動生成に関する研究はあったが、音楽{映像間の多様な関係性を対応付ける研究はなかった。本システムでは、そうした多様な関係性をモデル化するために、Web 上で公開されている二次創作された大量のコンテンツを利用し、クラスタリングと複数の線形回帰モデルを用いることで音楽に合う映像の素片を選択する。その際、音楽{映像間の関係だけでなく、生成される動画の時間的連続性や音楽的構造もコストとして考慮することで、動画像の生成をビタビ探索によるコスト最小化問題として解いた。This paper presents a system that automatically generates a dance video clip appropriate to music by segmenting and concatenating existing dance video clips. Although there were previous works on automatic music video creation, they did not support various associations between music and video. To model such various associations, our system uses a large amount of fan-fiction content on the web, and selects video segments appropriate to music by using linear regression models for multiple clusters. By introducing costs representing temporal continuity and music structure of the generated video clip as well as associations between music and video, this video creation problem is solved by minimizing the costs by Viterbi search.
著者
齋藤 毅 後藤 真孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.100, pp.1-6, 2009-06-18
被引用文献数
2

歌唱指導による歌声中の音響特徴の変化を分析し,その変化が歌唱力評価与える影響を調査した.3名の男性アマチュア歌唱者が歌唱指導を受ける前,及び後に収録した歌声(歌謡曲歌唱)を対象に,歌声特有の各種音響特徴を分析した結果,歌唱ホルマントに類似した3kHz付近のスペクトルピークの生起,及びF0変動成分であるオーバーシュートとヴィブラートにおける特性の変化を確認した.聴取実験によってF0情報及びスペクトル情報の変化に対する歌唱力変化を調査した結果,F0変化を指導前から指導後のパターンに変化させた場合の方がスペクトルを変化させた場合に比べて歌唱力の向上が大きい結果となった.また,個々の音響特徴の歌唱力評価への寄与度を比較した結果,ヴィブラート,歌唱ホルマント,オーバーシュート,プレパレーションの順で大きいことが明らかとなった.
著者
根山 亮 後藤 真孝 村岡 洋一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.275-276, 1997-03-12
被引用文献数
2

近年, 計算機とのジャズセッションを実現するシステムに関する研究が多くなされてきた. しかし, これらのシステムは, ある特定の計算機環境でしか動作せず, またぞれぞれのシステムで用意された特定の計算機演奏者としかセッションを行なうことができなかった. 本稿では, ユーザが新しい計算機演奏者を容易に開発・カスタマイズしてWWW上に公開したり, 計算機演奏者をWWW上から自宅のパソコンのような身近な場所にダウンロードし, セッションを行なうことを可能とする枠組を提案する. 特にダウンロードした計算機演奏者がセッションをする際に必要となる通信を, 安全性を確保して行なうための方法, 新しい計算機演奏者の開発労力を削減する方法について述べる. 本システムはJavaで記述されており, Java対応のWWWブラウザ上で動作するので, 計算機環境に依存しない. 我々は演奏者の実装例として, ジャズのピアノトリオのべーシストとドラマーを実装した. ユーザはピアノを演奏することにより, 計算機演奏者と即興演奏を楽しむことができる. 実験の結果, 実際にHTTPサーバからダウンロードしたべーシストとドラマーをWWWプラウザ上で実行し, 人間のピアノの演奏にあわせてリアルタイムに演奏させることができた. また本システムが異なる複数の計算機環境で動作することも確認した.
著者
吉井和佳 糸山克寿 後藤真孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.9, pp.1-8, 2014-08-18

本稿では,多数の楽器音が重畳している音楽音響信号を,音の三要素である音高 (基本周波数)・音色 (スペクトル包絡)・音量に分解するための確率的ソース・フィルタモデルについて述べる.ソース・フィルタ理論は楽器音分析に広く利用されており,楽器音のフーリエ変換スペクトルは,音源信号の基本周波数に起因するスペクトル微細構造と楽器音の音色を表すスペクトル包絡との積に分解される.このとき,スペクトル包絡が全極型モデルで表現できると仮定すると,理論的には線形予測分析 (LPC) を用いて,線形周波数領域でスペクトル包絡を推定することができる.しかし,実際には,調波構造のピークのみがスペクトル包絡からの信頼できるサンプルであるとみなせるため,スペクトル包絡推定に全周波数帯域を利用することは適切ではない.この問題の解決法のひとつに離散全極型モデルが知られているが,多重音に対して適用することはできなかった.本研究では,離散全極型モデルを LPC の多重音拡張である複合自己回帰モデルの枠組みに組み入れることで,調波構造が複数重畳した音響信号を扱うことができる無限重畳離散全極型モデルを提案する.本モデルは,人間の聴覚特性に則した対数周波数領域で定式化されるノンパラメトリックベイズモデルであり,適切な個数のスペクトル包絡とそこからサンプルされた適切な個数の調波構造を推定することができる.実験の結果,提案手法の有効性を確認した.
著者
後藤 真孝 橋口博樹 西村拓一 岡隆一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.728-738, 2004-03-15
被引用文献数
55

本論文では,研究者が研究目的で共通に利用できる著作権処理済み音楽データベースの,制作方針と構成について述べる.他の研究分野では,以前から多様な共通データベースが構築され,研究の進展に大きく貢献してきていたが,音楽情報処理の分野では,従来,共通楽曲データベースや大規模な楽器音データベースは存在していなかった.そこで我々は,RWC(Real World Computing)研究用音楽データベースとして,「ポピュラー音楽データベース」(100曲),「著作権切れ音楽データベース」(15曲),「クラシック音楽データベース」(50曲),「ジャズ音楽データベース」(50曲),「音楽ジャンルデータベース」(100曲),「楽器音データベース」(50楽器)の6つを構築した.全315曲に対し,音響信号,標準MIDIファイル,歌詞のテキストファイルを用意し,50楽器に対し,音域全体を半音間隔で収録した単独演奏音を用意した.これらを共通ベンチマークとして活用することで,様々なシステムや手法の比較・評価が可能になる.また,統計的手法や学習手法を活用した,データベースに基づく多様な研究の進展も期待できる.さらに,学会等における研究成果の対外発表の際にも,著作権の制約を受けずに自由な使用ができるようになる.本データベースはすでに広く利用され始めており,音楽情報処理の研究分野の発展に寄与していくことが期待される.This paper describes the design policy and specifications of a copyright-cleared music database that is available to researchers as a common foundation for research.Shared databases are common in other fields of academic research and have frequently made significant contributions to progress in those areas.The field of music information processing, however, has lacked common databases of musical pieces and large-scale databases of musical instrument sounds.We therefore built the RWC (Real World Computing) Music Database which contains six original collections: the Popular Music Database (100 pieces), Royalty-Free Music Database (15 pieces), Classical Music Database(50 pieces), Jazz Music Database(50 pieces), Music Genre Database(100 pieces), and Musical Instrument Sound Database(50 instruments).For all 315 musical pieces, we prepared audio signals, standard MIDI files, and text files of lyrics.For the 50 instruments, we captured individual sounds at half-tone intervals.These collections will provide a benchmark that enables researchers to compare and evaluate their various systems against a common standard.The database can also be used to stimulate research in database-oriented approaches that use statistical methods and learning techniques.In all cases, researchers can use the database for research publications and presentations without copyright restrictions.The RWC Music Database has already been widely used and will contribute to further advancements in the field of music information processing.
著者
深山覚 後藤真孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.14, pp.1-7, 2014-08-18

ダンスと音楽が連動したデータから機械学習を行い、新しく入力する楽曲に対して 3 次元コンピュータグラフィックスのキャラクタのダンスを自動生成できる手法 MachineDancing を提案する。従来、ダンスの断片を準備しそれを確率モデルなどを用いて音楽に合わせて接続することでダンス自動生成が実現されてきた。しかしダンスの断片を切り貼りするのみで、ダンス動作自体の学習・生成手法とはなっておらず、生成結果のバリエーションに限界があった。本研究ではダンス動作の確率モデルとしてガウシアンプロセス (GP) を用い、ダンスと音楽の対応関係のみでなく、ダンス動作自体をも学習することで、新たな動作を楽曲に連動して自動生成できる手法を提案する。
著者
小川 祐樹 山本 仁志 和崎 宏 後藤 真太郎
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.45-56, 2011-09-30

地域SNSは,地域コミュニティの活性化のための新たなサービスとして期待が集まっているが,災害時などの緊急事態に対応するためのネットワーク基盤としても重要な役割を果たす。近年,SNSのネットワーク構造やコミュニケーション構造の特徴分析は多くの研究でなされているが,災害時の情報共有や復興支援にSNSのどのようなコミュニケーションがなされ,活用されたのかの分析はなされていない。本研究では,佐用町(兵庫県)で発生した大規模水害において,地域SNSがどのような使われ方をしたのかをSNS上のネットワーク分析をおこなうことで明らかにする。具体的には,災害発生以前のコミュニケーション構造と災害発生時のコミュニケーション構造の変化に着目し,日常のどのようなコミュニティが災害時の中心的なコミュニティであったのかを明らかにする。分析の結果,災害直後において災害支援を志向するコミュニティが現れること,また,地域への関心が初期から高いコミュニティは将来への災害対策を志向したコミュニティへと推移すること,さらに,災害発生後に行政への意見を志向するコミュニティが現れることが分かった。
著者
後藤 真 松本 勇太郎 舟木 伸夫 望月 衛
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.299-304, 1996
被引用文献数
1

症例は14歳女児で右下腹部痛を主訴に来院.虫垂炎が疑われ超音波エコーを施行したところ,右下腹部に 8 X 7cm の辺縁不整で内部不均一な腫瘤像と周囲の echo free space が描出きれ,翌日にはふらつき歩行と貧血が出現した.画像所見と臨床経過から卵巣出血が疑われた、貧血が高度となったため入院4日目に開腹したところ,腫瘤は手拳大の右卵巣内血腫で,腹腔内出血は300ml であった,血腫部分を楔状に摘除し,可及的に卵巣は温存した. 卵巣出血は性的に最も成熟した20代後半から30代前半に多いが12歳から報告があり,思春期女児では急性腹症としてとくに虫垂炎との鑑別上念頭におくべき疾患と考えられた.成人においてもこれまで間腹して診断される場合が少なくなかったが,本症はショック症状など大量出血をきたさない限り保存療法とすべきで,本症の診断には腹部超音波検査が必須と考えられた.
著者
吉井 和佳 後藤 真孝
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.20, pp.1-6, 2009-07-22
被引用文献数
1

本稿では,楽曲のライムライン上の適切な時刻に適切なコメントを自動付与するシステム MusicCommentator について述べる.近年,ユーザが動画全体に対してではなく,動画中のある時刻に対してコメントできるオンライン動画共有サービスが人気を博している.本研究では,音楽演奏の動画に含まれる音楽音響信号を対象とし,音響的特徴量とコメント特徴量との確率的同時生成モデルを提案する.システムはまず,多くの楽曲とそれに付与されたコメントから確率モデルを学習する.その後,別の楽曲が入力として与えられた場合に,どの時刻に対して,どのような単語を用いてどのくらいの長さのコメントを新たに付与できるかを確率モデルを用いて推定する.このとき,言語的制約として単語間の連接を考慮し,文の合成をおこなう.実験の結果,入力楽曲の音響的特徴量だけを用いてコメント生成した時に比べ,すでに付与されたコメントを参考にしてコメント生成を行うと精度が向上することがわかった.This paper presents a system called MusicCommentator that suggests suitable comments for appropriate temporal positions in a music clip. Recently, an online video sharing service in which users can provide comments for temporal events occurring in video clips not for entire clips has gained a lot of popularity. We focus on musical audio signals included in video clips of music performances and propose a probabilistic model that jointly generates acoustic features and comment features. The model can be trained by using many music clips and their corresponding comments. Given a new clip as input, the system then determines appropriate temporal positions of comments and estimates their content and length. Finally, comment sentences are generated by taking word concatenations into account as language constraints. Our experimental results showed that comment accuracy was improved when the system used not only acoustic features of an input clip but also users' comments in the clip.
著者
後藤 真孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.37, pp.59-66, 2007-05-10

本稿では、音楽音響信号の様々な要素を理解できる技術を応用することで、エンドユーザの音楽の聴き方をどのように豊かにできるかを探求する我々の研究アプローチを紹介する。我々はその研究事例として、7種類の能動的音楽鑑賞インタフェースを実現してきた。能動的音楽鑑賞とは、通常の受動的な鑑賞とは異なり、能動的にインタラクションしながら音楽を鑑賞する方法である。例えば、楽曲構造を見ながら楽曲内で興味のない区間を簡単に飛ばしたり、楽曲中の楽器の音色を変更したり、音楽コレクションをブラウジングして興味のある楽曲やアーティストに出会ったりするためのインタフェースを開発した。これらを通じて、音楽理解技術の重要性とそれが実際にエンドユーザの役に立つことを示す。This paper introduces our research approach aimed at enriching end-users' music listening experiences by applying technologies for understanding musical audio signals. Toward this goal, we have built seven active music listening interfaces. Active music listening is a way of listening to music through active interactions. For example, we have developed interfaces for skipping sections of no interest within a musical piece while viewing a graphical overview of the entire song structure, for changing the timbre of instrument sounds during music playback, and for browsing a large music collection to encounter interesting musical pieces or artists. These interfaces demonstrate the importance of music-understanding technologies and the benefit they offer to end users.
著者
後藤 真孝 村岡 洋一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.901-911, 1994-05-25
被引用文献数
22

本論文では,複数の打楽器のみで演奏された音楽から各打楽器音の発音時刻と強度を認識する音源分離システムについて述べる.音源分離とは,複数の音源の音が混在している音響信号からそれぞれの音を分離して認識する技術であり,曲の音響信号からその楽譜を作り出す自動採譜において,中心となる重要な処理である.従来,楽音を対象にした音源分離システムは研究されてきたが,それらの手法は打楽器音に対して適用することができない.そこで本論文では,打楽器音の音源分離を実現する認識手法を提案する.本手法では,事前に登録してある打楽器音のテンプレートパターンと入力パターンとの距離を,改良したテンプレートマッチングにより求めてしきい値処理する.我々は,音量補正法,音源分離を実現する距離尺度,選択的注意の機構の三つの点でテンプレートマッチングを改良した.これにより,複数の音が混在したり音量が変化した場合にも各打楽器音を認識できる.本システムをワークステーション上に実装し,打楽器音の音源として電子楽器を用いて実験した結果,8Beatのドラムパターンの演奏音を音源分離することができた.
著者
水野 淳太 緒方 淳 後藤 真孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.46, pp.31-38, 2008-05-15

本稿では,エピソードと呼ばれる音声ファイルの集合から成るポッドキャスト(音声ブログ)を対象とした,類似エピソードの検索手法について述べる.動画共有サイト等で,あるコンテンツの再生後に関連・類似したコンテンツを提示する機能を持つものが多いが,それらは書誌情報やタダユーザの視聴履歴に基づいている.本稿では,エピソードを音声認識した結果に基づいて,音声認識結果を confusion network に変換し,そこからエピソードを特徴づけるキーワードセットを抽出して,キーワードセット間の類似度を計算することで,関連エピソードを検索・提示できる手法を提案する.単語正解率や話者数など,傾向の異なるいくつかのエピソードに対して実験を行い,本手法がどのような場合に有効であるかについて評価を行った.本成果は,音声認識に基づくポッドキャスト検索サービス PodCastle で,関連エピソードを提示するためにも利用できる.Given podcasts (audio blogs) which are sets of speech files called episodes, this paper describes a method for retrieving similar episodes. Although video sharing services usualy have a function of showing a set of relevant /similar content after playing back a piece of content, they are based on bibliographic information, tags, and users' playback behaviours. In this paper, we propose a method that extracts keywords from confusion networks converted from speech recognition results and then retrieves and shows relevant episodes on the basis of similarity between those keywords. We evaluated this method using several episodes including a variety of speech recognition accuracy and the number of speakers. This result can be applied to show relevant episodes on PodCastle, a podcast search service based on speech recognition.