著者
斉藤 弥生
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-15, 2009 (Released:2018-10-01)

介護労働に不安定雇用が多く、低賃金という状況を、スウェーデンでは、他業種との労働条件格差、女性職場と男性職場の格差の問題として捉え、解決しようとしている。本稿では、介護職員の労働条件を向上させるために、スウェーデンにみられる3 つの取り組みについて、整理分析を行った。まず第一に、「パートタイム失業」 という新たな概念を生み出し、強いられたパートタイム就労を顕在化させ、社会問題とした。第二に、「ジェンダーフリーポット」の合意である。これは、2007年労使協約に向けたLOによる要求事項の一つに盛り込まれたもので、月給2万クローナ未満の女性に対し、一律、月額205クローナの給与の上乗せをするというものである。この恩恵を受けたのは、まさに介護職員であった。第三に、介護分野における多様な働き方の開発と提案が労使により検討され、実施されている。このような近年の課題に対するアプローチが、中央労使交渉システム、連帯賃金政策などの伝統的なスウェーデンモデルのもとで行われている点は興味深い。 スウェーデンモデルが時代と共に変容していることは多くの先行研究で指摘されているが、 同モデルは介護職員の労働条件を向上させるための装置として、今なお重要な役割を果たしている。

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著者
斉藤俊彦著
出版者
産業技術センター
巻号頁・発行日
1979
著者
斉藤 知洋
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.133-156, 2014-04-30 (Released:2022-03-05)
参考文献数
21

本稿の目的は、母子世帯および父子世帯出身者の教育達成過程および文化資本に着目して、家族構造間の教育達成格差が生じるメカニズムについて検討を行うことである。 全国規模の社会調査データである『二〇〇五年社会階層と社会移動全国調査』(SSM調査)を用いた多変量解析の結果、以下の点が明らかになった。(1)ひとり親世帯出身者は、二人親世帯に比べ、高等教育進学以前の教育達成段階(高校進学、高校学科)において不利を被っている。(2)しかし、高校学科と高等教育進学に対する負の効果は母子世帯のみに限定された。(3)ひとり親世帯出身者の教育達成上の不利は家庭の文化資本(文化財・親の最終学歴)が媒介要因として機能している。(4)家族構造と高等教育進学をつなぐ媒介要因として、高校のトラッキング機能が働いている。 本分析から、母子世帯および父子世帯では家庭の文化資本が寡少になりやすいことが子どもの教育達成に負の影響を与えていることが明らかになった。その要因として、ひとり親世帯における学歴階層性が挙げられ、ひとり親世帯は、子どもへの教育投資や子どもへの教育期待が希薄になりやすい独自の文化的環境をなしている可能性が示唆された。
著者
斉藤 国治 小沢 賢二
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究 (ISSN:21887535)
巻号頁・発行日
vol.26, no.161, pp.24-36, 1987 (Released:2021-09-22)

Chun-Qiu (春秋) or the Spring and Autumn Annals is a chronicle of Luo (魯), a state of Ancient China, covering the period from 722 bc to 479 bc. It includes astronomical records such as solar eclipses, comets, planetary motions etc.. Among these data, solar eclipses, 37 in total, have been examined by many scholars to make clear the calendar of the period. Conclusion is that 33 among the above-mentioned 37 eclipses can be identified with those listed in Oppolzer's "Canon der Finsternisse", while the remaining four have been abandoned as doubtful because no eclipses can take place on the dates of the records. The present paper shows that two of the hitherto-doubted data (# 15 and # 22 of the Chun-Qiu eclipse numbers) can be turned out to be real eclipses solely by changing the year-numbers in the documents as follows. (1) In case of the # 15 eclipse, the original document says, "On a kui-mao day (癸卯) in the sixth month of the seventeenth year of Lord Xuan (宣公) ,a solar eclipse occurred" Simply change the "seventeenth" to the "seventh" in the document, then this record correspnds to Oppolzer's No. 1445 partial eclipse which was visible as much eclipsed as 0.36 in Qufu (曲阜), capital of Luo, in early morning on May 8, in 602 BC. (2) In case of the # 22 eclipse, the document says, "On the first day and geng-chen (庚辰) day in the tenth month of the 21st year of Lord Xian (襄公) a solar eclipse occurred." This hitherto-doubted record recovers its righteousness only by changing the "21 st" to the "26 th". Then the record is identified with the eclipse of Oppolzer's No. 1588 which was seen in Qufu in the evening of October 23, in 547 BC. At this time the sun set at 17:23 while being eclipsed as much as 0.26. (3) Julian days of these re-located eclipses are kui-mao and geng-chen, the same as in the originals. This cannot be a mere coincidence since probability of coincidence by chance between the sexagesimal dates is as small as 1/60. (4) The discovered misprints of dates may have been originated from any disorder of the bamboo tablets or from mistranscriptions in the later times. Anyway, addition of these two eclipses will be useful in order to study the calendar system of the Chun-Qiu Period.
著者
斉藤 国治
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究 (ISSN:21887535)
巻号頁・発行日
vol.22, no.145, pp.21-34, 1983 (Released:2021-10-06)

The Chin Shu or Official History of the Chin Dynasty,130 volumes in total, was finished by Fang Hsüan-ling et al.in A.D.635.Astronomical records are included in its astronomical chapters. The data cover the periods from A.D.221 to A.D.420, including the times of the Three Kingdoms, the Former and Later Chin Dynasties. Among the whole records, the solar eclipses, the moon's occultations of the planets and the trespassings of the planets with one another are examined numerically by the method of astronomical chronology. The following conclusions are obtained. (1) Among 82 solar eclipses; 49 are proved to have been visible as eclipsed either at Loyang (capital of both the Wei and the Former Chin Dynasties) or at Nanking (capital of the Later Chin Dynasty). Visibility of the recorded eclipses is 49/82 = 60 percents. (2) Among 52 records of the moon's trespassings against at the planets,19 occultations and 25 trespassings are identified. So identification rate of the records is 44/54 = 81 percents. (3) Among 46 records of close encounters of the planets with one another, 36 are proved to be reasonable. So identification rate of the data is 36/46 = 72 percents. (4) The remaining percentages of the above records are classified as questionable because of their impossibility of identification. However, some of them turn reasonable if we try a tiny revision, for instance, change the date or the planet's name in the records. This proves to be a result of copying errors. In the case of solar eclipses, ancient technique of eclipse prediction may be another cause of poor coincidence.
著者
渋谷 節子 斉藤 巌 菊池 浩光 高岡 和夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.55-65, 2006-01-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
19

われわれは1991年以降, 末期癌告知や余命告知後に失意や無力感に陥った癌患者に対して, 心理的介入として受容的なカウンセリングとサイモントンのイメージ療法にバイオフィードバック法を併用した.これまでイメージ療法を行った36名のアンケート調査では, イメージ療法の効果について, 「心身とも楽になった」23名(63.9%), 「症状が軽減した」17名(47.2%), 「生きる希望をもった」16名(44.4%), また治療意欲では, 「期待ができるので続けたい」18名(50%), 「積極的に治療したい」18名(50%)などの結果が得られた.心理テストでは17名のうち13名(76.5%)に抑うつが認められたが, イメージ療法後ではこのうち11名(84.6%)に抑うつの改善が得られた.これらの結果から, イメージ療法は末期癌患者に対する心理的介入として有効であることが示唆された.また, これらの療法が著効し, 癌性骨髄症から回復した末期癌患者についても併せて報告する.
著者
黒田 満 斉藤 剛 渡辺 由美子 東 正毅
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.555-562, 1997-03-15

計算機援用の形状設計に有用な,曲率が弧長の区分2次関数となる曲率微分連続な補間曲線の導き方について述べている.弧長によってパラメトリック表現されるこの曲線は,曲率がスパン内に変曲点を持たず比較的変化が少ないという好ましい性質を持っている.汎用の数式処理システムを導入して与点通過と境界条件からなる非線形連立方程式を解いてこの曲線を導いている.記号式も数値と同様に処理できるのでアルゴリズムを簡潔に記述することができるとともに種々の境界条件をデータとして与えることができる.また,導出された曲線の各スパンをG2連続な2クロソイド弧で局所的に近似する方法を示して従来曲線との整合性をとっている.
著者
横山 紘子 斉藤 康秀 二瓶 直子 澤邉 京子 津田 良夫 小林 睦生
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第58回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.22, 2006 (Released:2006-06-07)

蚊の吸血嗜好性は疾病媒介能を評価する上で重要な形質である。近年、わが国へのウエストナイル(WN)ウイルスの侵入・定着が危惧される中、PCR法を中心に野外捕集蚊の吸血源動物種が推定されてきているが、実験的に吸血嗜好性を評価する試みは全く行われていない。そこで我々は、わが国においてもWNウイルスを媒介する可能性の高いと思われる、アカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカの3種類の蚊の吸血嗜好性を、ほ乳類と鳥類の2者選択実験により詳細に検討した。実験は、三連結した30cm立方アクリル製箱の左右それぞれにマウスとウズラを一定時間保定し、中央から放した蚊50頭がどちらに移動するかを観察、吸血蚊からはDNAを抽出し吸血源動物種の同定を行った。その結果、ヒトスジシマカはマウスを、チカイエカはウズラを多く吸血したが、アカイエカでは特定の傾向は見られなかった。次いで、麻布大学構内の動物舎で捕集した吸血蚊の吸血源動物種を、チトクロームbおよび16S領域のPCR産物から得た塩基配列をもとに推定したところ、アカイエカ(89%)とチカイエカ(71%)は鳥類を、ヒトスジシマカ(100%)はほ乳類を吸血していたことが判明した。2者選択実験と野外捕集蚊における吸血源動物種特定の結果を総合すると、ヒトスジシマカとチカイエカでは両結果はほぼ一致し、前者は「ほ乳類」を、後者は「鳥類」を好む傾向にあることが示された。一方、アカイエカでは、野外捕集蚊は鳥類を多く吸血していたが、2者選択実験では繰り返しによってよく吸血される動物種が異なった。アカイエカの吸血嗜好性は柔軟性が高く、環境条件に依存して容易に吸血源を変えることができると考えられる。実験に供した3種を比較すると、WNウイルスのヒトへの媒介種としてはアカイエカがより重要な役割を果たすであろうことが示唆された。
著者
高橋 俊明 井根 省二 竹内 雅治 伏見 悦子 関口 展代 木村 啓二 林 雅人 斉藤 昌宏 高橋 さつき
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.749-754, 2003 (Released:2005-03-29)
参考文献数
15

1995年から2001年の6年間に4例の劇症型心筋炎 (男2例, 女2例, 年齢21~67歳) を経験した。診断は臨床症状, 心電図, 心エコー所見などから総合的に行い, 3例では病理学的に確定診断された。4例全例が発熱などの感冒症状で発症し, 1例は心肺停止で来院し, 蘇生できなかった。残り3例は初発から5~7日後にショック状態で入院し, 一時ペーシング, カテコラミン, ステロイドパルス療法, そのうち1例では経皮的心肺補助 (PCPS) を導入したが, 3例とも入院1~10日後死亡した。心電図では心室調律, 異常Q波, ST上昇, 低電位を呈した。血清酵素の著明な上昇, 代謝性アシドーシス, DICは予後不良の徴候と考えられた。劇症型心筋炎の救命のためには, まず本症を早期に的確に診断すること, そして積極的に補助循環を導入し, 急性期を乗り切ることに尽きる。
著者
斉藤 孝信
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.2-33, 2022-06-01 (Released:2022-07-27)

NHK放送文化研究所が2016年から7回にわたって実施した「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」の結果を報告する。 大会後の調査では、大会を『楽しめた』と答えた人が7割を超えたが、コロナ禍での開催については5割以上の人が、開催しながら自粛を求められたことに不満を持った。 大会前には多くの人が経済効果を期待し、日本の伝統文化などをアピールしようと意気込んでいたが、コロナ禍によって叶えられなかった。また、東日本大震災からの“復興五輪”であると思えた人は、大会前は半数以下で、大会後、復興に役立ったと実感できた人は3割未満であった。一方で大多数の人がテレビを通じて競技観戦を楽しみ、若い年代を中心に多くの人がスポーツへの関心を高めた点で、純粋なスポーツ大会としての開催意義は大きかった。 大会をきっかけに「多様性に富んだ社会を作るための取り組みを進めるべきだ」という意識や障害者への理解が高まった。一方で、多様性に対する自身の理解の進み具合や日本の現状については不十分だと感じている人が多い。また、身近で障害者に接している人ほど環境面や意識面でのバリアフリー化が進んでいないと感じている。こうした課題を克服するためには大会後も粘り強い啓発が必要で、メディアが今後も障害者スポーツをもっと取り上げることを6割以上の人が望んでいる。
著者
阿部 紀之 井手 一茂 渡邉 良太 辻 大士 斉藤 雅茂 近藤 克則
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.24-35, 2021-01-25 (Released:2021-02-25)
参考文献数
49
被引用文献数
1

目的:社会的フレイルはリスク因子として重要だが,評価法が統一されていない.本研究の目的は専門家の評価による内容的妥当性のある社会的フレイルの要素を明らかにすることである.方法:PubMedで検索し入手した社会的フレイル関連26論文から抽出した要素のうち,7名中5名以上の評価者が4条件(負のアウトカム予知因子,可逆性,加齢変化,客観性)を満たすと評価した要素を抽出し分類した.結果:4条件を満たす要素は経済的状況(①経済的困難),居住形態(②独居),社会的サポート(③生活サポート者の有無,④社会的サポート授受),社会的ネットワーク(⑤誰かと話す機会,⑥友人に会いに行く,⑦家族や近隣者との接触),社会的活動・参加(⑧外出頻度,⑨社会交流,⑩社会活動,⑪社会との接触)の5分類11要素が抽出された.結論:先行研究で用いられている社会的フレイル22要素のうち,内容的妥当性が示唆された要素は11要素であった.