著者
後藤 隆史 東野 哲也 中西 悠 松田 圭二 我那覇 章 鈴木 幹男
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.11, pp.1214-1219, 2013-11-20 (Released:2014-01-16)
参考文献数
10

外耳道外骨腫は, 古くより潜漁夫やサーファー, 特により寒冷な地域でより長い冷水刺激に暴露された者ほど発症率が高く骨増殖も大きいとされている. 今回われわれは, 15年間にわたりサウナに通い, サウナに入った直後の冷水浴を習慣としていた3症例5耳の外骨腫に対して手術を行った. サウナ習慣者の冷水刺激に対する暴露時間は, 職業的に潜水する人やマリンスポーツをする人に比べればはるかに短いと考えられるが, 極端な高温・冷水刺激の反復が外骨腫の発生にかかわった可能性が示唆された.
著者
加藤 榮司 東野 哲也
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.842-848, 2012 (Released:2012-11-23)
参考文献数
18
被引用文献数
1

1992年から2010年までの18年間に高等学校剣道部員を対象にして行った聴覚健診成績を集計した. 純音聴力検査で一つ以上の周波数に聴力閾値30dB以上の閾値上昇を認めた聴覚障害例は225名中45名 (19.7%) 69耳であり, 障害程度は2000Hzと4000Hzで大きかった. 聴力型としては, 2000Hz-dip型, 4000Hz-dip型, 2000-4000Hz障害型感音難聴の頻度が高く, 初年度の健診では正常聴力を示した例も含まれていた. また, 聴力閾値25dB以内の小dipについても2000Hzと4000Hzのみに観察され, 剣道難聴の初期聴力像と考えられた. すべての学年で右耳よりも左耳の聴力閾値が有意に高いことがわかった (p<0.01). 18年間にわたる聴覚健診活動の結果, 聴覚障害の発症頻度減少が認められた.
著者
東野 哲也 加藤 栄司 森満 保
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.33-37, 1995-02-28 (Released:2010-04-30)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

剣道による聴覚障害 (仮称, 剣道難聴) の実態を明らかにするために一高等学校剣道部員33名を対象として純音聴力検査を行った。その結果33人中10人 (30%) に種々の程度の閾値異常を認め, 男子生徒に, また高学年ほどその頻度が高かった。中でも2kHzまたは4kHzのdip型が「剣道難聴」の初期聴力像と推定され, さらに2, 4kHz障害型や2, 4, 8kHz障害型感音難聴に進行した段階で難聴を自覚するものと考えられた。4kHz-dipよりも2kHz-dip型感音難聴を多数認めたことより, 音響のみでなく打撲による内耳へのより直達的な衝撃がその成因に関与するものと推定された。
著者
長井 慎成 東野 哲也 松田 圭二 外山 勝浩 河野 浩万 小玉 隆男
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.110, no.11, pp.707-712, 2007-11-20 (Released:2008-12-25)
参考文献数
15
被引用文献数
4 3

【はじめに】中耳真珠腫の画像診断にはCTが第一選択として用いられるが, 軟部陰影を質的に鑑別するためにはMRIが有用である. 当院では2002年よりMRI撮像に加え, 拡散強調法による撮像を用い真珠腫診断を行っている. これまでに当院にてMRI拡散強調画像で病態評価を行った中耳炎症例を用い, 本撮像法の有用性について検討したのでその結果を報告する.【対象と方法】2002年10月から2006年7月に, 当院で拡散強調画像を加えた側頭骨MRI検査を行った56例を対象とした. 男性35名, 女性21名, 年齢は3歳~76歳で, 平均42.8歳であった.【結果】真珠腫診断における拡散強調像の感度は85.4% (41/48), 特異度は100% (8/8), 陽性的中率は100% (41/41), 陰性的中率は53.3% (8/15) であった. 拡散強調像にて真珠腫を同定できた症例の画像におけるサイズは, 5mmから40mmであり, 4mmの先天性真珠腫は評価困難であった.【考察】今回の検討から, 本撮像法の中耳真珠腫診断における有用性が確認された. 今後本撮像法の分解能が向上することにより, 中耳真珠腫診断におけるMRI検査の位置づけがさらに高まるものと期待される.
著者
加藤 榮司 東野 哲也
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.842-848, 2012
被引用文献数
1

1992年から2010年までの18年間に高等学校剣道部員を対象にして行った聴覚健診成績を集計した. 純音聴力検査で一つ以上の周波数に聴力閾値30dB以上の閾値上昇を認めた聴覚障害例は225名中45名 (19.7%) 69耳であり, 障害程度は2000Hzと4000Hzで大きかった. 聴力型としては, 2000Hz-dip型, 4000Hz-dip型, 2000-4000Hz障害型感音難聴の頻度が高く, 初年度の健診では正常聴力を示した例も含まれていた. また, 聴力閾値25dB以内の小dipについても2000Hzと4000Hzのみに観察され, 剣道難聴の初期聴力像と考えられた. すべての学年で右耳よりも左耳の聴力閾値が有意に高いことがわかった (p<0.01). 18年間にわたる聴覚健診活動の結果, 聴覚障害の発症頻度減少が認められた.
著者
加藤 栄司 東野 哲也 森満 保
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5Supplement2, pp.761-765, 1996-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
11

過去5年間に当科外来を受診し, 原因を特定できない感音難聴506症例のなかに剣道有段者13例が含まれていた. オージオグラムを検討した結果, 閾値異常を示した25耳の中に, 4kHz-dip型6耳 (24%) と全く同数の2kHz-dip型聴力像を示す感音難聴が含まれていた. また, 2, 4kHz障害型5耳 (20%), 2, 4, 8kHz障害型6耳 (24%) 認めたことより, 剣道による感音難聴が2kHz-dip型と4kHz-dip型に由来する聴力障害が複合した形で進行するものと推定された.同対象感音難聴症例506例のオージオグラムの中から2kHz-dip型聴力像または2, 4kHz障害型オージオグラムを抽出すると, 2kHz-dip型が43耳, 2, 4kHz障害型が18耳認められた. これらの症例の中に難聴の原因としての頭部外傷が明らかな例は認められないが, 問診上, 剣道, 交通外傷, 衝突, 殴打, 転倒などによる頭部打撲の既往があるものが半数以上を占めた.以上の結果より, 剣道による2kHz-dip型感音難聴発症の機序として竹刀による頭部の強い衝撃が関与していることが示唆された.
著者
東野 哲三
出版者
大阪府立大学
雑誌
大阪府立大学紀要農学・生物学 (ISSN:03663353)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.127-161, 1963-03-31
被引用文献数
1

繊維素原料としての竹パルプの利用面を開拓するために,また竹パルプより抄造された紙の性質を改善するために,パルプの主要部分である竹繊維の理化学的性質並びにその微細構造を十分理解しておく必要がある.一方パルプ原料としての竹材の伐採時期は化学的にはいつがよいか,或はまた竹材の化学成分から見てパルプ化の方法としては,如何なる蒸煮法が適当であるか等も明らかにすべき重要な問題である.これら竹繊維の利用を中心とする化学的な諸問題を,追究した結果を要約すれば次のようである.1 竹材の伐採時期について 発筍後1〜2ケ月の筍はリグニン含量が成竹の約50%であり,そのホロセルロース含量並びに繊維素の平均重合度は成竹と殆んど変らない.従って化学成分上では成竹に比べて遜色がないが,絶乾物の収量が低いのでパルプ原料としては難点がある.しかし発筍4〜6ケ月以後は生育15年以上に至っても,リグニンの含量は殆んど差がない.すなわちすでに4〜6ケ月で木質化は完了しているのである.従って4〜6ケ月後の幼竹は成竹と蒸解性に大きな差はない.またこの幼竹は,竹稈の形態並びに絶乾物収量上にも,或は繊維膜構造上においても成竹と全く変らず,従って竹材は4〜6ケ月乃至遅くとも1年にしてパルプ原料として使用可能である.これは木材の伐採時期とは比較にはならぬほど早い.それ故竹の伐採時期は従来考えられていた3〜5年よりさらに早めて,4ケ月〜1年にて使用するよう栽培面で改良を加えることが望ましい.2 竹材の化学成分 竹材の化学成分組成を見るに,リグニンは約20%で松材より少ないが,ペントザンは20〜25%でかなり多い.そのためアルカリ抽出物が極めて多い.例えば1%NaOH抽出物として竹材の30%近くが溶出する.この抽出物中の主要構成糖はキシロースでその他にアラピノース等の微量の糖を伴う.従ってアルカリ蒸解では脱リグニンは容易であるが,ヘミセルロースが溶出し易いので,その蒸煮法については注意を要する.3 竹材の薬液浸透性 竹の導管は直径が大きく上下に通じているので,これを通路とする竹稈軸方向の浸透が最も速やかであり,次に膜が薄い柔細胞を通じての切線方向並びに内側からの半径方向の浸透が速く,外側並びに節部はその特殊な構造のため浸透が極めて遅い.また繊維組織は緻密で,細胞内腔及び紋孔が極めて狭少なため浸透性が最も悪い.従って竹材は初期の組織間浸透は松材と同程度に進み,速やかにその平衡点に達するが,その後の繊維組織内の浸透は著るしく遅い.元来蒸解とは脱リグニンによる繊維組織の離解であるから,問題となるのは内部の浸透である.かゝる意味では竹材の薬液の浸透は容易とは言えない.次に竹チップに対する各種溶液の浸透状態を比較するに,化学成分の影響によってアルカリ溶液が最も浸透速やかであり,水,黒液,酸及び塩類の順に浸透は遅くなる.4 竹材の蒸解 竹材はへミセルロースが多く,組織内の薬液浸透が遅いので,亜硫酸(石灰)法では黒煮を起し易い.従って同法は適当でない.しかし中性亜硫酸塩法ではこのような危険はなく竹材には好適である.一方クラフト法は薬液の浸透がよく蒸解は容易であるが,へミセルロースが溶解し易くパルプ収量が低下する恐れがあるので,竹材には必ずしも好適とは言えない.従ってクラフト法を適用するときは,出来るだけへミセルロースの溶出の少ない条件を選ぶか,薬品使用量を節減することを考えて同法の欠点を補うようにすべきであろう.(a)二段蒸煮:希アルカリによりあらかじめ可溶成分を抽出除去することにより,クラフト蒸解における薬品量が一部節減出来るのではないかと考えて実験を行ったが,結果はカセイソーダ抽出時に竹材がその抽出量に比例してアルカリをかなり消費するので,二段蒸煮の効果は表われず,この方法では蒸解薬品の節約は出来ないことがわかった.アルカリ抽出の代りに酸加水分解前処理を行っても同様効果は認められなかった.(b)クラフト一段法:竹材の蒸解速度は松材の10倍も早く,130℃前後の比較的低温度の蒸煮でもパルプ化が可能である(松材は170℃).従って1段法では低温蒸煮により蒸解を早目に止め,残存リグニンを多段漂白により除去するようにするがよい.蒸煮薬品の添加量については収率,脱リグニンの状態等から考えて有効NaOHはチップ当り16〜18%使用するのが適当であろう.5 竹繊維素の重合度分布 竹の天然繊維素の平均重合度は約1700で,直接硝化法による場合は分布曲線上に2個のPeak (D. P. 1000及び2000)が認められ,その分布の状態は松材のそれに類似しているが,均一性においてこれより高い.しかし竹のホロセルロース中の繊維素の重合度分布曲線にはPeakが1個見られるのみである.また竹のα-繊維素の場合は,それがうけたアルカリ処理の影響が著るしく,重合度はかなり低下している.このように重合度及びその分布状態において,竹の繊維素は松材のそれに比べて大差が見られず,従って繊維素製品の物理的性質に対する繊維素重合度の影響については,松材繊維の場合と同様に考えてよい.6 竹繊維の微細構造 (a)層状構造:竹繊維は膨潤に際して極めて多種多様の膨潤形態を表わすが,その膨潤形態における特徴は,二重乃至三重膨潤が起ることである.この三重膨潤の観察並びに膨潤により分化した層の計算から,竹繊維膜の層数は最少6層(くびれ部の3層,膨潤部の3層)からなることが認められる.また偏光顕微鏡直交ニコル下における竹繊維横断面の明暗層を合計すると,同じく6〜8層が存することが伺われる.さらに銀化処理せる横断面の顕微鏡観察により,竹繊維の膜壁には7〜9層が存在し,薄層(S1_0,S2_0,S3_0,S4_0及びT)と厚層(S1,S2,S3及びS4)とが交互に重なり合って出来ていることがわかった.(b)フィブリル走向:偏光顕微鏡並びに膨潤等顕微化学的研究結果より,薄層はフィブリルが繊維軸に鈍角に,厚層は鋭角に配列していることが推察出来る.(c)理化学的処理による微細構造の変化竹繊維は上記のように層状構造が明瞭で,フィブリル走向の異る層が交互に配列しているため,理化学的処理に対してはかなり特異的な態度を示す.例えば叩解処理により竹繊維は切断よりも層の剥離,割裂,フィブリル化の方が起り易い.また叩解の進行により繊維膜は外側から分離するが,場合によってはS1_0,S2_0等の層の影響によって特異な蛇腹状のたるみを生ずる.さらに叩解が進めばその部分が割裂し層の剥離並びに破砕が起る.剥離膜は微細にフィブリル化する.一方化学的処理例えば酸処理により,S1_0〜S3各層は変化を受け,細かくフィブリル束に横断され,一部は溶解消失する.しかしS4_0より内層にはその作用が達せず,従って銅安液処理により,S3層までのものとS4_0層より内層のものとからなる特異な膨潤体となって表われる.7 竹パルプの叩解性 (a)濾水性:ビーターのクリアランスの大なる場合の叩解では,小型繊維の竹BKPはブナBKPと同様,ロール刃と承刃との間を素通りする傾向があり叩解は遅い.ビーターのクリアランスの小なる場合は,竹BKPにおいても両刃間における圧力が大となり,その結果叩解速度は増大する.今フリーネスで表わした叩解速度を比較すれば,竹,松,ブナ各BKPは夫々3.3,2.7,1となり,竹BKPが最も大であり従って叩解が容易である.一方濾水時間(これはパルプ紙料の表面,専ら繊維形態特にその大小に支配される因子であるが)で叩解度を測れば,繊維の形状からしてこれは当然松,竹,ブナBKPの順序になることが予想される.しかるに濾水時間による叩解速度を比較すれば,竹,松,ブナ各BKPは夫々2.8,1.3,1となり竹パルプが極めて大である.これらのことは竹繊維がその特異な膜構造とヘミセルロース高含量のため,如何に叩解によりフィブリル化し,粘状化し易いかを示している.(b)比表面積:竹繊維は多層構造を有し,非結晶領域の部分がかなり多いため,未叩解竹パルプの比表面積はブナ,松材パルプよりかなり大である.前記のように竹パルプは叩解が早いので,比表面積もかなり変化すると考えられる.今叩解による比表面積の増大速度を比較すれば,竹,松,ブナ各BKPのそれは夫々5.6,5.0,1である.すなわち叩解により多層構造の竹繊維は,主として層の剥離,割裂を受けて膨潤,フィブリル化し比表面積が著るしく増大する.8 竹紙の強度 (a)抗張力及び破裂度:竹パルプはへミセルロースを多く含有するため,松材パルプより抗張力,破裂度に及ぼすへミセルロースの影響は大なる筈である.しかし未晒パルプの場合はその表面がリグニンで蔽われているため,へミセルロースの影響は表われないので,小型繊維の竹紙の抗張力,破裂度は松材のそれより遙かに弱い.しかし漂白すればへミセルロースの影響が表われ,竹パルプは叩解による膨潤,層の剥離並びにフィブリル化が活 となり,繊維間の接着及び絡合がよくなる.結果として竹紙の抗張力,破裂度は漂白により松材のそれのように低下することがないので,松材との強度差が殆んどなくなる.しかも叩解によりこれら強度は著るしく増大する.(b)引裂度:竹繊維はその多層構造から極めて強靭なるため,引裂きに対し松材繊維より抵抗性を示し,従って竹紙の引裂度は松材のそれより遙かに高い.しかし叩解の進行とともに竹紙の引裂度は低下する.(c)耐折皮:この強度は抗張力,破裂度の性質をかねているが,特に繊維の形態すなわち長短,大小に著るしく影響されるので,竹パルプのような小型繊維からなる紙の耐折度は極めて弱い.しかし竹パルプは叩解による層の剥離,並びにフィブリル化が顕著で接着力を増大するため,叩解の進行により耐折度は著るしく改善され松材のそれに接近する.しかしながらパルプを漂白すると耐折度は著るしく低下する.従って晒竹パルプは筆記・印刷紙用に,また未晒竹パルプは耐折度が高いので軽包装紙用パルプとしてその使途が考えられる.
著者
原 由起代 稲葉 順子 東野 哲也 鳥原 康治 森満 保
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.543-547, 1994-07-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
6

後天性外耳道閉鎖症は, 炎症性, 外傷性, 術後性の3つに分類できる. 炎症性外耳道閉鎖症とは感染後に外耳道に線維性閉鎖を来たすものである.今回われわれは, 外傷や手術の既往のない後天性外耳道閉鎖症3例5耳を経験した. 3耳に中耳炎, 2耳に慢性外耳道炎の既往があつた. 今回の症例では真珠腫の合併例は認めなかつたが, 文献的には真珠腫合併の報告例があり, この場合早期に手術的治療が必要であると考えられた.病理組織学的には, 4耳中3耳に線維脂肪組織, 1耳に慢性炎症細胞の浸潤を認め, 両者は異なつた病態であることが示唆された.
著者
坪井 康浩 東野 哲也 牛迫 泰明 森満 保
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.717-725, 1996

1995年5月までに宮崎医科大学耳鼻咽喉科にて行われた人工内耳手術は25例26耳であり, このうち2耳において顔面神経迷路部に近接する電極で顔面神経刺激が誘発された. 第1症例の原因は聴神経腫瘍による骨破壊や手術による骨削開で蝸牛骨包と顔面神経管の間の骨隔壁が脆弱となり漏電が生じたものと思われた. また第2症例では内耳梅毒に伴う骨病変のため迷路骨包の導電性が変化したためと考えられた. 術前のCTで, 迷路骨包と顔面神経管を境する骨が不明瞭であつたり, 迷路骨包の骨に病的所見を認める症例では顔面神経刺激誘発の可能性を考慮しておく必要がある. 本合併症に対して現時点では該当するチャンネルを不活性にするしか方策はないが, 電極の構造的な改良やマッピングの工夫とともに症例によつては蝸牛と顔面神経との間に手術的に絶縁体挿入の策も考慮すべきと考えた.
著者
清水 謙祐 鳥原 康治 中山 明峰 福留 真二 佐藤 伸矢 東野 哲也
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.96-102, 2012 (Released:2012-06-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

We report herein on psychiatric comorbidity in patients with dizziness in a psychiatric hospital with an otolaryngologist. Psychiatric comorbidity was revealed in 270 (68.9%) of 392 patients with dizziness. Of 270 patients with dizziness and psychiatric comorbidity, anxiety disorders were revealed in 149 (55.2%), mood disorders in 36 (13.3%), somatoform disorders in 5 (1.9%) and adjustment disorders or post-traumatic stress disorder in 15 (5.5%) but in addition organic mental disorders were also seen in 21 (7.8%) and schizophrenia in 15 (5.6%). Phobic postural vertigo was diagnosed in 30 (7.7%). These patients were not only treated by otolaryngologists, but also received psychiatric therapy or were prescribed psychotropic drugs. We believe that cooperation between psychiatrists and otolaryngologists in hospitals or regions can improve the mental condition and quality of life in patients suffering from dizziness with psychiatric comorbidity.
著者
清水 謙祐 春田 厚 牧野 浩二 東野 哲也
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5Supplement2, pp.880-885, 1996-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
24

他覚的不随意的筋性耳鳴の2症例を経験した. 5歳男子症例の耳鳴は2kHz付近にピークをもつクリック音で, 耳鳴に一致して鼓膜内陥, 中耳コンプライアンスの変化, 耳管の開放が観察された, また, 45歳女性症例の耳鳴は500Hz付近にピークをもち, 耳鳴に一致して軟口蓋の痙攣が観察された. これらの事により耳鳴の原因は, 症例1では口蓋帆張筋と鼓膜張筋, 症例2では口蓋帆挙筋の間代性痙攣によるものと推察された.
著者
岩崎 聡 宇佐美 真一 髙橋 晴雄 東野 哲也 土井 勝美 佐藤 宏昭 熊川 孝三 内藤 泰 羽藤 直人 南 修司郎
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.149-155, 2017 (Released:2019-02-13)
参考文献数
8
被引用文献数
1

平成28年2月下旬に日本耳鼻咽喉科学会に登録している人工内耳実施施設109施設を対象に日本耳科学会人工聴覚器ワーキングループによるアンケート調査を実施した結果を報告する。85%の施設で平均聴力90dB未満の患者が人工内耳手術を希望されていた。48%の施設で一側の平均聴力90dB未満の患者に人工内耳手術を行っていた。82%の施設が1998年の適応基準の改訂が必要と考えていた。人工内耳手術を行った最も軽い術側の平均聴力レベルは91dB以上が20. 7%、81〜90dBが51. 7%、71〜 80dBが14. 9%であった。93%の施設で適応決定に語音明瞭度も重要と考えていた。67%の施設が両側人工内耳を実施したことがあった。本アンケート調査結果を踏まえて、成人人工内耳適応基準改訂が必要と考えられた。
著者
松田 圭二 牛迫 泰明 春田 厚 東野 哲也 安達 裕一郎 深江 陽子 堀之内 謙一 森満 保
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.187-192, 1992
被引用文献数
1

騒音レベル80-100dB (A), 中心周波数250Hz-4kHzの某新聞社輪転機室就業員24人の聴力レベルの変動を8年間にわたり追跡した。 24人中21人は聴力レベルに大きな変化なく, 年齢による生理的聴力損失にほぼ添う経過であった。 3人にc<sup>5</sup> dipがみられたが, 難聴の発現, 進展時期に関しては個人差が大きく, 一定の傾向はなかった。 4kHzと8kHzの聴力レベルは, c<sup>5</sup> dipのある者で各年ごとのばらつきが大きく, 聴力正常な者ではばらつきが小さかった。 また, 2例にc<sup>5</sup> dipの深さに左右差があった。 これらはこの個体が 「c<sup>5</sup> dipが始まり固定するまでの期間内」 にあること, 言い換えれば内耳損傷がなお現在進行していることを示すものと思われた。 また, 耳栓使用で騒音性難聴発生が抑制できることが改めて確認できた。
著者
東野 哲也 加藤 栄司 森満 保
雑誌
Audiology Japan (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.33-37, 1995-02-28
被引用文献数
9