著者
松井 正文
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

京都賀茂川において、在来オオサンショウウオが外来種チュウゴクオオサンショウウオによって遺伝子汚染を受けていることが過去の調査で分かっていた。その実態をさらに詳細に把握するため、新たなマイクロサテライトマーカーを開発し、効率よい遺伝子型判定が可能となった。賀茂川以外の河川も対象に調査した結果、遺伝子汚染は急速に進んでおり、賀茂川では在来種は絶滅した可能性があること、別水系の上桂川でも雑種化が進行していることが確認された。このように京都市域におけるオオサンショウウオの遺伝的汚染は予想以上に進行しており、何らかの方法で純粋な日本産を隔離保全していくことが早急に必要である。
著者
小林 文明 藤田 博之 野村 卓史 田村 幸雄 松井 正宏 山田 正 土屋 修一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.53-64, 2007-01-31
参考文献数
27
被引用文献数
4

2002年10月6日から7日にかけて発達した低気圧の北東進に伴い,各地で突風災害が相次いだ.横須賀市内では10月7日04時頃突風災害が発生した.現地調査の結果,被害は100か所を越える住家で確認され,被害域はほぼ直線的で長さ2.5km,最大幅は約150m(平均で30〜50m)であった.被害スケールはF1から局所的にF2であった.被害域は連続しておらず,かつ蛇行していた.また,最も被害の大きかった公郷小学校付近で被害幅が広がっており,竜巻の複雑な挙動が示唆された.最大風速に関しては,被害が最も甚大であった場所の東端に位置する道路標識から少なくとも風速は34〜38ms^<-1>と見積もられ,被害スケール(F1)を裏付けた.今回の突風は以下の理由から竜巻であったと推測された.地上被害の特徴から,1)被害域の幅が狭く直線的である.2)回転性(低気圧性)の風による痕跡が確認された.3)吸い上げ渦とおもわれる痕跡が2か所確認された.4)吸い上げ渦の痕跡近傍では,実際に体育館の屋根や空調室外機が少なくとも高さ10mは吹き上げられた.上空の積乱雲の特徴は,5)強エコー域の南西端に被害域が対応していた.6)ドップラー速度パターンには直径7kmの渦が上空に確認された.7)このメソサイクロンの影響をうける地上観測点では,1hPaの気圧降下が確認された.横須賀市の竜巻被害は,発達した低気圧の暖域で形成された積乱雲群が広範囲にわたりもたらした竜巻(ダウンバースト)の中のひとつに位置づけられる.
著者
松井 正枝 中平 真由巳 高村 仁知 的場 輝佳
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成15年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.22, 2003 (Released:2003-09-04)

アルミニウムは,食品関係の器具容器の素材として広く用いられています.アルミニウム摂取とアルツハイマ_-_症の間に因果関係があるのではないかと指摘する論文がAlfreyらによって発表されて以来,これに関する多くの研究が報告されている.しかし,アルミニウム製調理器具からのアルミニウム溶出に関する報告は多いが,実際に食する料理中のアルミニウム溶出量を測定した報告は少ない.前回の我々の報告において,家庭で行う調理条件で酸性およびアルカリ性の際立った料理を選び,料理中のタンパク質や油のアルミニウム溶出への影響を見るために検討を行い,タンパク質,油の存在は,アルミニウムの溶出を抑制する効果があるという結果を得た.そこで今回は,酸性の料理である,ジャム,およびアルカリ性の料理であるインスタントラーメンを用いアミノ酸のアルミニウム溶出に及ぼす影響を見た.アミノ酸には,グルタミン酸とイノシン酸を用いた. 使用するアルミニウム鍋は,アルミニウム製調理器具から溶出するアルミニウムについてのいくつかの報告があるが,いずれも未使用鍋を用いたものであるため,未使用鍋と繰り返し使用鍋のアルミニウム溶出におよぼす影響について検討を行った.その結果,酸性,アルカリ性の料理共にアルミニウム鍋を繰り返し使用してもアルミニウム溶出量に影響はなかった.アルマイト鍋でも同様の結果を得た.次に,酸性の料理であるあんずジャムおよび干しあんずジャム調理中にアミノ酸を加えることにより,アルミニウムの溶出が抑えられた.アルカリ性であるインスタントラーメンでは,加熱前後の調味料添加によるアルミニウム溶出への影響を検討した結果,加熱前に調味料を添加した時アルミニウムの溶出が抑えられた.今回の実験では、アミノ酸添加量を0.1,0.5 %としたが,アミノ酸の添加量を0.1から0.5%に増やしても効果に差はなかった.
著者
松井 正一 伊理 正夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.306-313, 1980-07-15
被引用文献数
9

従来の浮動小数点表現方式で問題となっていた指数部あふれを解決する新しい表現方式の提案を行う.新表現方式は 指数部と仮数部との境界を動的に変化させることにより 指数部あふれを防ぐとともに 普通の大きさの数に対してはより高い精度を確保することができる.また普通の数ではない数をいくつか考えることにより "数の体系"を閉じたものとする.新しい表現方式が効果を発揮するような計算例も示す.
著者
田村 幸雄 松井 正宏 吉田 昭仁
出版者
東京工芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

外装仕上材からそれらを支える2次部材に変動風圧力が伝達され,最終的に構造骨組を通じて地盤へ伝達されるプロセスを詳細に追い,従来の耐風設計で行われている構造骨組用風荷重と外装材用風荷重の妥当性を検討した。特に,外装材と構造骨組の区別が付かないモノコック構造体や,大スパン屋根の外装材を支持する部材と構造フレームなどにおける構造物全体の挙動と局所的な風圧力が荷重効果に与える影響について検討し,両者を別々に評価する手法を提案し,耐風設計への応用を示した。
著者
田村 幸雄 松井 正宏 吉田 昭仁 小林 文明
出版者
東京工芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本の原子力発電施設やLNGタンクなどは全て海岸線に沿って建設されており,米国中部の竜巻常襲地域の竜巻発生確率などと較べても,これら我が国の高危険度施設の竜巻遭遇確率は遥に高い。本研究では,従来から設計では採り上げられていなかった竜巻等のシビア・ローカルストームの,原子力発電施設,大規模液化天然ガス貯蔵施設,使用済核燃料再処理施設,有害産業廃棄物処理施設など,被害が発生した際に周辺地域,住民に甚大な悪影響を与える重要施設に対する影響と対策,設計・施工に対するガイドラインを検討した。

2 0 0 0 保全遺伝学

著者
小池裕子 松井正文編
出版者
東京大学出版会
巻号頁・発行日
2003
著者
松井 正文 西川 完途
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

止水産卵性種からみたボルネオ産両生類多様性の起源を探るため、ボルネオ島と、その周辺地域についての野外調査・標本調査を行い、形態・音声・分子に基づく系統分類学的な解析を行った結果、アオガエル科、ヒメアマガエル科の一部で高度の固有性が認められたものの、総体的にはボルネオ産の止水性両生類種は流水性種ほどの分化を示さないことが分かった。これはボルネオ島が本来、山地森林に被われていて、低地性の止水性種の生息に適した範囲が限られたためであろう。数少ない固有種は古い時代の侵入者と思われるが、それらの近縁種はスマトラ-ジャワに見られることから、大陸からスンダ地域へ古い時期の進出には2経路あったと推定される。
著者
吉田 昭仁 松井 正宏 田村 幸雄 岡田 玲 勝村 章
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
日本風工学会年次研究発表会・梗概集 平成27年度日本風工学会年次研究発表会
巻号頁・発行日
pp.123-124, 2015 (Released:2015-08-21)

かねてから、日本のみならず世界中で竜巻や突風、台風による住宅等への被害が問題視されている。建築物以外にも、屋外設置の自動販売機、道路標識、コンテナ、フェンス等への被害が見られる。海外では、独自の竜巻・強風に対する竜巻評価指標を用いている国もある。日本では、「藤田スケール」1)を主に使用している。本研究は、日本で確認された竜巻事例を調査、被害指標を抽出し、現在多く使用されている自動販売機及びコンテナの被害発生風速を実験、解析により推定し、日本における独自の竜巻評価指標を抽出することを目的とする。
著者
曹 曙陽 小林 文明 吉田 昭仁 松井 正宏 菊池 浩利 佐々 浩司 田村 幸雄
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
日本風工学会年次研究発表会・梗概集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.33-33, 2007

平成18年11月7日午後1時過ぎ、国内最大級(藤田スケールF3)の強い竜巻が北海道佐呂間町若佐地区で発生し、死者9名、重傷者6名、軽傷者25名の人的被害及び全壊住家7棟、半壊住家7棟、一部損壊住家25棟、全半壊非住家40棟の被害をもたらした。当該竜巻被害の実態を正確に把握することを目的として、我々は被害発生翌日から、航空機からの上空視察と地上での被害状況調査を実施し、建物被害状況データベースを作成した。ここでは、建築物などの被害状況についてまとめた。

2 0 0 0 OA 日新新薬便覧

著者
松井正作, 児玉秀衛 編
出版者
日新治療社
巻号頁・発行日
1921
著者
松井 正文 西川 完途
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

流水性種からみたボルネオ産両生類多様性の起源を探るため、マレーシア領のマレー半島とボルネオ島のサラワク州において野外調査を行い、得られた標本や組織サンプルから形態・音声・分子に基づく系統分類学的な解析を行った結果、ボルネオの両生類ファウナは高度の固有性をもち、極めて古い時代に周辺地域から孤立して独特の進化を遂げたこと、マレー半島の両生類相の固有性が高いことが明らかになった。
著者
森脇 和郎 鈴木 仁 酒泉 満 松井 正文 米川 博通 土屋 公幸 原田 正史 若菜 茂晴 小原 良孝
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

日本産野生動物種には、日本列島の生物地理学的な位置づけを反映して独自の分化を遂げたものが少なくない。これらの起源を解明することは、日本の研究者が日本に生息する種を対象にするという「自国に目を向ける立場」を別にしても興味深い。従来、日本産野生物動種については形態的分析に基づく分類学的および生態学的な研究がおもに行われてきたが、この方法論だけではこれら野生種の起源を解明することは難しい。近年著しい進歩を遂げた分子遺伝学的解析法は、集団遺伝学的な種の捉え型と相まってこの問題の解決に大きな力を発揮することが期待される。一方、わが国における人口の増加、経済活動の増大に伴う国土の開発、自然環境の汚染などによって、自然界における野生動物種の分布が改変され、時にはそれらの生存する脅かされるに至った現状を注視すれば、日本産野生種の分布や起源を検討するタイミングは今をおいてない。本研究は、日本産野生動物種の中から各分類群に属する代表的な動物種を選び出し、種内変異や近緑グループとの関係を明らかにして従来の分類体系を再検討するとともに、系統分類学および生態的に異なる動物種の起源について総合的に比較検討することを目的としている。ハツカネズミ・イモリ・メダカ・ウニ・ホヤなど日本に古くから生息する動物種は生物実験材料としての実用性と将来性に富む素材であり、実験動物の開発・利用という観点からもその重要性は見過ごすことはできない。野生種の起源を遺伝学的な観点から解明する研究は、必然的に種分化の遺伝機構にも踏み込むことになろう。この機構の基盤にはHybrid dysgenesisという現象にみられるように、その根底には発生機構、生殖機構の遺伝的制御という問題も包含しており、今後の生物学の新しい展開への有効な基盤となる可能性を秘めている。