著者
首藤 明日香 首藤 謙一 麻生 由莉江 田仲 美咲 福岡 拓郎 松井 正格 牧草 一人
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.190-204, 2021-12-28 (Released:2022-01-14)
参考文献数
16

本症例は,歯周治療に伴う異常所見を見逃さなかったことで,医科への受診や血液検査では看過されていた重篤な甲状腺機能低下症を伴う橋本病(慢性甲状腺炎)の発見・治癒に至り患者の健康に寄与することができた1症例である。あまり周知されていない橋本病と歯周疾患との関連,特に出血傾向について考察し報告したい。広汎型重度慢性歯周炎患者に対し全顎的な基本治療の過程において,歯肉溝からの易出血を認めた。かかりつけ医・二次医療機関の血液内科・口腔外科専門医など3医療機関への対診を繰り返すも,出血性疾患の存在は否定され続けた。上顎前歯部歯周組織再生療法(エナメルマトリックスデリバティブ・EMD応用)の翌日,歯肉溝からの異常出血ならびに血餅形成を認めた。根気強く対診を繰り返した結果,ようやく4番目の医療機関において自己免疫疾患である橋本病(慢性甲状腺炎)と診断された。初診より1年以上が経過していた。重篤な甲状腺機能低下症を伴い,生命の危険がある状態であった。甲状腺ホルモン補充療法後,全身浮腫の改善により運動や食事制限をすることなく体重は90 kgから30 kg減少した。甲状腺機能低下症改善後の歯周組織再生療法(EMD応用)では術後出血は認めなられなかった。歯周組織所見は改善しSPT移行後6年が経過するが良好な歯周組織を維持している。本症例は,日常的に観血的治療を行う歯周治療の特殊性が,異常所見の早期発見に繋がり,ひいては患者の全身的健康に大きく寄与する可能性を示唆している。
著者
田村 幸雄 須田 健一 吉田 昭仁 松井 正宏
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
日本風工学会年次研究発表会・梗概集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.40, 2007

2005年12月25日,JR羽越本線特急いなほ14号が寒冷前線の通過中の山形県酒田市付近において,突風に煽られて脱線し,死者5名,負傷者32名の痛ましい惨事が発生した。運転手や乗客の証言や当時の気象状況等から判断して,脱線に突風が大きく絡んでいたであろうことは明白である。しかし,事故から1年以上経過した現在(2007年2月)においても,突風が竜巻によるものかダウンバーストによるものか,あるいは他の原因によるものかを,気象庁は一切明らかにしていない。また,最近の一連の突風災害に対して社会が大きな関心を持つようになった最大の要因である当該脱線事故をもたらしたこの突風について,気象庁のHPに公開されている「災害をもたらした竜巻一覧(1971~2006)」にも「災害をもたらした気象事例(平成元~17年)」にも収録されておらず,まるで何事もなかったかの如き様子である。本報告は,脱線現場の直ぐ西側にあり,突風によって破壊した農機具小屋に作用する風力実験結果,および基礎,壁面,屋根面などの飛散状況の詳細な調査に基づいて,破壊と飛散のシナリオを検討し,当時の風況を推定したものである。
著者
松井 正之
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.83-87, 1988
被引用文献数
4

受注選択問題の純理論的モデルの解析については, いずれも生産能力が一定の場合に限定されている.他方, 生産能力が可変な能力切換問題は, 別個に論じられている.本研究は, 生産能力の切換えが可能な受注選択方策を持つジョブ・ショップの受注残数の制御方策について一考察を行っている.すなわち, 注文がポアソン到着に従うM<G, G>;/1(N)型生産モデルを提示し, セミ・マルコフ決定過程による定式化によって利得の最適化を行い, 能力切換えと受注選択の結合方策の2レベル構造に関する知見を示している.簡単のために, 受注選択には静的選択方策を採用し, 能力切り替えに要する時間と費用はゼロとしているが, 今後の展望としてこのモデルの拡張のみならず, 本研究と製品利益管理との関係を指摘している.
著者
原 知子 安藤 真美 伊藤 知子 井上 吉世 大塚 憲一 大野 佳美 岡村 由美 白砂 尋士 高村 仁知 武智 多与理 露口 小百合 中原 満子 中平 真由巳 西池 珠子 林 淑美 深見 良子 藤村 浩嗣 松井 正枝 的場 輝佳 水野 千恵 村上 恵 山下 貴稔 湯川 夏子 渡辺 健市
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.23-27, 2004-01-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
20
被引用文献数
3 1

酸価1∼4.5の段階的に劣化度が異なる劣化油1,2,3を用いて,揚げ玉,まいたけの天ぷら,コロッケを調製し,揚げ物および揚げ油の官能評価による風味とPCテスターによる極性化合物量の関係について検討した.1.新鮮油,劣化油1,2,3の4種の劣化程度の異なる油及びそれらで調製された製品の風味に有意差が認められた.これら4種の油は酸価,粘度,極性化合物量が段階的に異なるもので,揚げ玉,まいたけの天ぷら,油自体の風味の評価結果は,これらの要素と対応した.新鮮油,劣化油1,2,3の順に風味評価は低下したが,劣化油1から極性化合物量15%の劣化油2の間で低下が顕著であった.また,劣化が進行した油において官能評価ではその違いが認め難くなる傾向にあった.コロッケでは油の劣化による風味評価の低下は小さかった.2.揚げ玉やまいたけの天ぷらでは極性化合物15%程度まで,コロッケでは,25%程度まで風味評価のよい揚げ物を調製できた.3.極性化合物量15%以上で風味評価が低下するとともに風味の劣化度合いを弁別し難くなる傾向があったことから,栄養的にも嗜好的にも,揚げ油の極性化合物量を15%以下で管理するのが適当であると考えられた.
著者
松井 正文
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.50-64, 1987-12-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
19
被引用文献数
27

近畿地方以北に分布するカスミサンショウウオ-トウホクサンショウウオ複合群244個体のアイソザイムについて,デンプンゲル電気泳動法を用い,17遺伝子座における変異を調べた。これまでに命名されていた6種(トウホク,クロ,ホクリク,アベ,トウキョウ,カスミ)は比較的小さなNeiの遺伝的距離(2種個体群間距離の平均の最小値=0.22)によって,たがいに明瞭に区別された。しかし,これらの種間にみられた遺伝的な関係と,これまで認められてきた系統関係との間には大きな不一致があった。白馬村産のサンショウウオ個体群は,他のすでに命名されている種と比較した場合に,独立種として認めるに足るほどの大きな遺伝的相違を示した。この結果にもとづいて,白馬村産の個体群を新種ハクバサンショウウオとして記載する。この種は中部地方飛騨山脈に含まれる,長野県の山地帯に分布する。カスミサンショウウオ-トウホクサンショウウオ複合群に属し,鋤骨歯列が浅いこと,鋤骨歯数が少ないこと,トウホクとカスミの中間的体型をもつこと,卵嚢外被に縦条を欠くこと,独特のアイソザイム泳動パターンをもつこと,で特徴づけられる。
著者
松井 正文 富永 篤
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.175-184, 2007 (Released:2008-08-14)
参考文献数
21
被引用文献数
4 4

三重県伊賀市の前深瀬川水系,前深瀬川と川上川にはオオサンショウウオが生息している.しかし,この2河川の合流部にはダムの建設が予定されている.このために水系内の地域個体群間で分断,小集団化が生じた場合,遺伝的多様性が減少し絶滅に至る可能性がある.そこで,水系内のオオサンショウウオの核DNAに見られる遺伝的多様性の現状を把握するため,AFLP法を用いて調査した.その結果,この方法が近縁種やミトコンドリアDNAで区別される個体群との相違の検出に有効であることが分かった.しかし,この方法では前深瀬川水系内部と,その近傍の河川に生息する個体間で特定の遺伝的集団のまとまりを検出することができなかった.今回の結果から,この水系内に生息するオオサンショウウオの遺伝的構成は特定の地域集団ごとに決まっていない一方で,地域集団間で絶えず交流が保たれているのでもなく,出水による流下や,人為的な移動を含む極めて複雑なものと考えられたが,今後,より解明度の高い手法を用いた検討が必要である.
著者
小林 文明 松井 正宏 吉田 昭仁 岡田 玲
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
風工学シンポジウム論文集 第24回 風工学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
pp.115-120, 2016 (Released:2017-03-18)

2015年2月13日15時すぎに神奈川県厚木市内で発生した突風被害は,極めて局所的に被害が集中し,推定風速は20 m/sと推定され,F0(JEF0)スケールに相当した。今回の渦は,メソスケールのシアーライン上で形成された積乱雲前面におけるガストフロントで発生し,上空の積雲(アーク)と連なり,親渦が存在するという構造を有していた。ガストフロントに伴い複数発生した渦の一つであり,渦の接線風速もそれほど大きくなく,明瞭な漏斗雲は形成されず,地上の飛散物によって渦は可視化された。ガストフロントにおける上昇流が寄与した“2次的な竜巻”すなわちガストネード(gustnado)と考えられた。
著者
小林 文明 松井 正宏 吉田 昭仁 岡田 玲
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
風工学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.24, pp.115-120, 2016

2015年2月13日15時すぎに神奈川県厚木市内で発生した突風被害は,極めて局所的に被害が集中し,推定風速は20 m/sと推定され,F0(JEF0)スケールに相当した。今回の渦は,メソスケールのシアーライン上で形成された積乱雲前面におけるガストフロントで発生し,上空の積雲(アーク)と連なり,親渦が存在するという構造を有していた。ガストフロントに伴い複数発生した渦の一つであり,渦の接線風速もそれほど大きくなく,明瞭な漏斗雲は形成されず,地上の飛散物によって渦は可視化された。ガストフロントにおける上昇流が寄与した"2次的な竜巻"すなわちガストネード(gustnado)と考えられた。
著者
松井 正之 内山 広樹 藤川 裕晃
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.139-145, 2005-06-15
被引用文献数
3 2

オンデマンドSCM環境下では,チェーンにおける在庫の適正水準をオンラインに管理することが,過剰在庫で売れ残りを抱えることや品切れの機会損失を減らすために必要である.特にPCなどの短サイクル製品においては,部品や製品の発注が多段階に影響し,生産・流通段階の各拠点で把握できる在庫変動をリアルタイムに捉えて迅速に対応することが必要である.それには,需給系列の変動を迅速に検出する機能が必要である.本研究では流動数図表上で,新聞売り子問題により設定された移動基準在庫量(インディケータ)を,累積和管理図のVマスク法で継続的にチェックしてアクション(投入)を行う管理法を開発した.この開発は,PCを流通しているA社の倉庫を対象に行われ,約42%の累積在庫削減が得られた.
著者
山岡 桂子 山岡 尚世 高柳 ともえ 松井 正輝 沖永 真奈恵
出版者
日本医療薬学会
雑誌
病院薬学 (ISSN:03899098)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.428-433, 1995-10-10

We compared a 7% lidocaine cream (Preparation C) prepared at our hospital using a commercially available 5% dental xylocaine ointment (Preparation K) for application as a lacal anesthesia for skin patients when employing a laser beam for stability and anesthetic performance. Both preparations did not show any water separation or color change at 5℃, 25℃, 40℃ at RH 75℃ with a 95℃ or more residual rate. Furthermore, water evaporation in both preparations was not observed and was within the limit of measurement error. Significant change was not recognized in the expansibility of the preparation. The results of the viable cell count study according to Standard Plate-Counting Method and Specific Plate-Counting Method under the four conditions were negative (10 bacteria or less/g) with no observation of bacterial colonies. The anesthetic effect lasted 120 min for Preparation C with the 60-min application, while Preparation K only showed diminution of pain for 30 min.
著者
山岡 桂子 山岡 尚世 高柳 ともえ 松井 正輝 沖永 真奈恵
出版者
Japanese Society of Pharmaceutical Health Care and Sciences
雑誌
病院薬学 (ISSN:03899098)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.428-433, 1995

We compared a 7% lidocaine cream (Preparation C) prepared at our hospital using a commercially available 5% dental xylocaine ointment (Preparation K) for application as a lacal anesthesia for skin patients when employing a laser beam for stability and anesthetic performance. Both preparations did not show any water separation or color change at 5°C, 25°C, 40°C at RH 75% with a 95% or more residual rate. Furthermore, water evaporation in both preparations was not observed and was within the limit of measurement error. Significant change was not recognized in the expansibility of the preparation. The results of the viable cell count study according to Standard Plate-Counting Method and Specific Plate-Counting Method under the four conditions were negative (10 bacteria or less/g) with no observation of bacterial colonies. The anesthetic effect lasted 120 min for Preparation C with the 60-min application, while Preparation K only showed diminution of pain for 30 min.
著者
三浦 景祐 松井 正宏 真栄城 玄一
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
風工学シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.24, pp.337-342, 2016

台風のような自然現象の観測データを用いた風速予測には不確定性が存在するため、その影響も考慮する必要がある。一つは極めて稀に起こりうる事象に起因する現象論的不確定性、もう一つは知識やデータの不足に起因する認識論的不確定性である。前者は事象の偶然性に関わるものであるため、新たな観測データが蓄積したとしても低減させることができない。一方、後者は経験や知識を蓄積することで低減させることができるものである。本研究では、確率分布パラメータの推定方法が台風気圧場に及ぼす影響を検討するとともに台風観測記録のデータ数や分布パラメータの推定方法が風速評価に与える影響についても検討を行い、不確定性の低減を図る。
著者
小林 康宏 松井 正宏
出版者
一般社団法人 日本風工学会
雑誌
JWE : 日本風工学研究会誌 : Journal of Wind Engineering (ISSN:09121935)
巻号頁・発行日
no.135, pp.105-106, 2013-04-30
参考文献数
3

本研究は日本に来襲する台風気圧場パラメータの統計的性質について調べる。&nbsp; 耐風設計の設計風速を決定するために台風モデルを用いたモンテカルロ・シミュレーションが行われることがある。この時に重要なことは、台風気圧場の再現性と、風速場モデルの精度であると言われている。台風気圧場の再現性を向上させるために、過去の台風の気圧場の性質を調べることは重要である。このような研究は、日本の台風に対して、藤井、光田らの一連の研究<sup>1)</sup><sup>~</sup><sup>3)</sup>があるが、その研究以降20年以上経過しており本研究では最新のデータもふまえ1951年~2010年のベストトラックおよび1961年~2010年の日本全国の気象台における大気圧の地上観測記録を用いて気圧場を表すパラメータを求め北西太平洋全域にわたる分布について調べた。<sup></sup>
著者
藤野 治 松井 正和
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.241-246, 1982-05-05
被引用文献数
1

炭素チューブをアトマイザーに用いたときのイッテルビウムのフレームレス原子吸光分析について基礎的検討を行いリン酸塩鉱物へ適用した.本法により検量線を作成した結果(10〜40)ppbの範囲で直線となった.一酸化二窒素-アセチレン炎に比較し,感度は約150倍高いことを示した.又共存塩類はイッテルビウム(35ppb)の(10^2〜10^3)倍にかけてほとんどの元素が干渉を示さなかった.しかし高濃度のカルシウムとリンが同時に共存すると,イッテルビウムの原子化速度は速くなり.ピーク吸光度が増大した.ゼノタイムやモナズ石試料は硫酸に溶解,希釈し,そのまま炭素チューブアトマイザーに入れて直接定量を行った.得られた含有値は誘導結合高周波プラズマ(ICP)発光分光分析による結果と極めてよく一致した.又アパタイト鉱物は硝酸に溶解後,10M過塩素酸において,0.1M ジ-2-エチルヘキシルリン酸-シクロヘキサン系で抽出分離し,有機相中のイッテルビウムを測定,定量した.