著者
熊本 吉一 小泉 博義 黒沢 輝司 山本 裕司 呉 吉煥 鈴木 章 松本 昭彦 近藤 治郎 清水 哲 梶原 博一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.1429-1434, 1984-11-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
10

急性腸間膜血管閉塞症は,絞扼性イレウスと共に腸管の血行障害をきたす代表的な疾患である.最近我々は塞栓摘除術のみで救命せしめた上腸間膜動脈塞栓症の1例を経験したが発症より手術による血流再開に至るまで3時間40分と短時間であったため腸切除を免れた.また横浜市立大学第1外科のイレウス症例中,術前に動脈血ガス分析をおこなった33例を検討したところ,腸切除を免れた.すなわち腸管が壊死に陥らなかった症例ではbase excessはすべて-2.8mEq/l以上であった.このことより絞扼性イレウスの手術適応決定の指標としてbase excess測定が有用であるとの結論を得たが,本来イレウスにおける手術適応の決定は遅くとも腸管の可逆的な血行障害の時点でなければならず,この点よりbase excessのみでの適応決定は慎重でなければならないと考えられた. これらの経験をもとに,腸管の血行障害における有用な補助診断法としての的確な指標を検討するために犬を用いて上腸間膜動脈を結紮する実験をおこなった.その結果,早期診断の一助として, total CPK, base excessが有用であるとの結論を得た.
著者
篠原 一彰 駒場 智美 橋本 克彦 伊藤 文人 岡田 恵 石田 時也 横山 秀之 松本 昭憲
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.1105-1110, 2014 (Released:2018-01-25)
参考文献数
24

過去17.5年間に,運転中に意識障害発作を発症し当院に救急搬送された203例について検討した.車両の内訳は四輪車165例(四輪車運転手の3.6%),二輪車38例(二輪車運転手の1.1%)で,発作の原因としてはてんかん発作77例,脳血管障害62例などであった.運転中の意識障害発作は稀ではなく,自動運転技術開発の意義は大きい.
著者
篠原 一彰 佐久間 宏規 岡崎 美智弥 松本 昭憲 熊田 芳文 野崎 洋文
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.11, pp.692-696, 1999-11-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
18
被引用文献数
1

Severe pulmonary thromboembolism (PE) during pregnancy occurred in 2 young patients. One patient died from PE recurrence without placement of an inferior vena cava (IVC) filter, but the other survived with emergent filter placement before cesarean section. A 31-year-old woman presented with sudden dyspnea at 34 weeks of pregnancy. On examination, she was cyanotic and echocardiography revealed marked right heart dilatation and pulmonary hypertension. An emergent cesarean section was performed, but soon after the delivery, she fell into circulatory arrest. PE recurrence was suggested as cause, and t-PA was administered into the pulmonary artery. She was resuscitated but she died from another PE recurrence 4 days later. A 25-year-old woman, 35 weeks pregnant was admitted because of threatened abortion. She felt sudden dyspnea 3 days after admission and was diagnosed with severe PE by echocardiography and pulmonary catheterization. A Vena-Tech IVC filter™ was inserted at the suprarenal position to prevent PE relapse. Emergent cesarean section was then carried out uneventfully. Heparin and urokinase were administered postoperatively, and her pulmonary arterial pressure decreased. She was extubated 7 days later, and is now doing well 10 months later. Once severe PE has occurred, its relapse may be lethal. The IVC filter is effective in preventing recurrence. Even if the patient is young, emergent IVC filter placement to avoid fatal PE relapse is essential.
著者
セレスタ ギャヌ ラジャ 松本 昭英 樽谷 勝仁
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.647-652, 2017 (Released:2017-10-28)
参考文献数
27
被引用文献数
1

症例は80歳の男性, 糖尿病性腎症により, 2014年5月に血液透析導入された. 糖尿病に対して2014年11月よりビルダグリプチン (VDG) 100mg/日を投与された. 2015年6月に右上腕シャント部と左上肢前腕部に掻痒を伴う浮腫性紅斑, 水疱とびらんの皮膚症状を認めた. ステロイド軟膏による治療で経過観察するも緊満性水疱が現れ, びらんがさらに広がり, 皮膚症状が増悪した. 皮膚科を受診, 生検の所見ならびに抗BP180抗体が高値であったことにより水疱性類天疱瘡 (BP) と診断, 塩酸ミノサイクリン (MINO) 100mg/日とプレドニゾロン (PSL) 20mg/日の治療開始となった. 2か月後に皮膚症状が治癒傾向にあり, MINOを中止, PSLの投与量を漸減後中止した. しかし6か月後に右上腕シャント部に強い掻痒, 水疱とびらんの皮膚症状の再燃を認めた. MINOとPSLによる治療を再開した. この頃にVDGの薬物有害反応 (ADR) による国内でのBPを発症した症例の報告がありVDGを中止した. 皮膚症状の改善によりMINOを中止, PSLも漸減し, 中止した. 8か月経過したが皮膚症状の再燃はなかった. VDGの副作用による維持血液透析治療中に発症したBPの1症例を経験したので報告する.
著者
田島 康敬 須藤 和昌 松本 昭久
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.245-250, 2009 (Released:2009-08-14)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

脳梗塞を繰り返したHIV感染を伴う神経梅毒の32歳男性例を報告する.症例は右上肢の脱力で発症し,この治療中に発熱,頭痛が加わり各種検査所見からHIV感染をともなう髄膜血管型神経梅毒と診断した.MRAでは脳底動脈,内頸動脈系の描出が不良であり左中大脳動脈の狭窄が顕著であった.ペニシリン投与により臨床症状,髄液,画像を含む検査所見の改善が得られた.しかしながら1カ月後に,意識障害を伴う重度の左片麻痺で再発した.右中大脳動脈は内頚動脈からの分岐部で描出されず,新鮮な梗塞巣が両側性に多発していた.治療により臨床症状,髄液,画像を含む検査所見の改善が得られたが重度の左麻痺が残存した. 本例は脳梗塞で発症し,その後梅毒とHIV感染が明らかになった症例である.近年の世界的なHIV感染の蔓延に伴い,これに伴う梅毒患者数の増加が問題となっており,症例の臨床症状や治療法の検討は大きな課題である.
著者
清水 哲 横山 日出太郎 松川 博史 城島 標雄 有田 峯夫 須田 嵩 五島 英迪 松本 昭彦 田中 耕作 萩原 明 井出 研 近藤 庸人
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.923-927, 1985-07-25 (Released:2009-02-20)
参考文献数
6

乳癌集団検診の二次検診において,コンタクトサーモグラフィーを,マンモグラフィー,エコーグラフィーと共に補助診断法として用い,その有用性,限界について検討を行なった.使用したサーモブレートは,イタリアFinpat社製 “Breast Thermo Detector” であり今回は特に,腫瘤部の温度の高低に注目して診断した.その結果,乳癌症例の正診率は全体で68%, T>2cmでは86%, T〓2cmでは38%であった.病理組織学的には,線維腺腫,乳腺のう胞腫との鑑別は容易であったが,乳腺症との鑑別は難しかった.したがって,コンタクトサーモグラフィーは乳癌の精密検査法としての利用価値は低いとおもわれた.しかし,触診の補助診断法として用いることにより,手軽で安価な検査法としての利用価値があるのではないかと考えられた.
著者
青山 法夫 米山 克也 徳永 誠 南出 純二 小沢 幸弘 山本 裕司 今田 敏夫 赤池 信 天野 富薫 有田 英二 小泉 博義 松本 昭彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.2594-2598, 1991-10-01
被引用文献数
2

消化管吻合部狭窄の治療法として,内視鏡的切開およびブジーによる拡大術の適応と限界について検討した.吻合部狭窄35例(瘢痕性26例,癌性9例)を対象とした.瘢痕性狭窄の長さによる狭窄解除率をみると,2cm未満14/15(93.3%),2cm以上3cm未満8/9(88.9%),3cm以上0/2(0%)であった.一方,癌性狭窄は0/9(0%)と効果不良であった.効果不良例13例(瘢痕性4例,癌性9例)の内,癌性3例を除く10例に他の治療を加えた.3例(瘢痕性1例,癌性2例)に手術,7例(瘢痕性3例,癌性4例)に食道ブジー挿管術を施行した.手術では,狭窄が解除出来たのは1例のみで他は試験開腹および合併症死におわった.食道ブジー挿管術は7例全例狭窄を解除でき退院可能であった.皮膚管瘢痕性狭窄1例のみ皮膚瘻孔を形成し手術を要した.食道ブジー挿管術は難治性吻合部狭窄の非観血的治療法として有用であった.
著者
杉浦 ミドリ 松本 昭子 渡辺 一功 根来 民子 高江洲 悦子 岩瀬 勝彦
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.226-230, 1985 (Released:2011-09-13)
参考文献数
12

歳以降の予後の明らかとなった1歳未満発症の熱性けいれん33例と無熱性けいれん133例を以下の4群に分類して, 成因, 臨床像, 発作像, 脳波, 長期予後について比較検討を行った.A群, 38℃ 以上の有熱時のみのけいれん, B群, 有熱けいれんで初発したが経過中無熱けいれんに移行したもの, C群, 無熱けいれんのうち, 3歳未満で発作消失し精神運動発達正常のもの, D群, 無熱けいれんのうちC群を除いたもの.熱性けいれんの48.5%で無熱けいれんが発症した.A, D群はそれぞれ特異的な特徴を示し, B群は両群の中間的な特徴を示した.C群はA群とは明らかに異なり, D群の予後良好なものと同一の範疇に位置づけられるであろうと考えられた.
著者
松本昭著
出版者
臨川書店
巻号頁・発行日
2002
著者
松本 昭彦 Matsumoto Akihiko
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.85-92, 2009

『枕草子』第二十三段「すさまじきもの」の段には、験力を持った祈祷僧が、物の気を患った者の治療のため、憑り坐しに物の気を移らせようとして加持するのだが、全く効果が表れず、あくびをして横になってしまう、という「すさまじきもの」の一例がある。従来これは「加持に疲れ、何の効き目もないのに倦み飽きて眠くなってしまった験者(祈祷憎)の、やる気のなさを象徴する〈あくび〉」と解釈されてきたが、『古今著聞集』巻六・第二六六話、『栄花物語』巻二十九「たまのかざり」などによると、加持場面での病人のあくびは、物の気が治る兆候として現れており、本段における清少納言の筆致なども考慮すると、験者への皮肉を込めて、「本来あくびが期待される病人ではなく、験者がしてしまう」という文脈に読むべきである。
著者
松本 昭彦
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.12, pp.199-206, 2009-02

絵に求められているものは「個性」とか「新しい表現」なのであろうか。絵を見たり描いたりする際に必要なのは「絵心」や「感性」であろうか。モノを見ることを《入力》,モノを描くことを《出力》に例えると,世間では出力ばかりが強調され過ぎて,表現上の目新しさだけに注目が集まっているように思われる。豊田市立挙母小学校や岡崎市立常磐南小学校等でキミ子方式による似顔絵の指導をして「モノを見る」技術が「モノを描く」技術に先立って重要であるとの感を深めた。授業後の子どもたちの感想を読むと,自ら進んで絵を描こうとする意欲や,暖かい人間関係を尊ぶ心情が見て取れる。似顔絵は地味で卑近な題材ではあるが,昨今の子どもたちの漫画的な様式傾向を打破するのに必要と思われる《見る技術》や《描く技術》を学ぶためには格好の題材であると言えよう。
著者
松本 昭彦
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.8, pp.189-196, 2005-02

絵の描き方を具体的に指示することは,制作者から「個性」と「創造性」を奪い,不自由さと苦痛を与えるものであると言われてきた。しかし,大学生を対象にキミ子方式で授業を行ってきたところ,多くの学生がこの具体的な指示のあるやり方に満足していることが,昨年度末の「学生による授業評価調査」の結果から判明した。絵画教育では,個性や創造性を発揮させるために自由に描かせることが重要なのではなく,自由に描けるように育てていくための具体的かつ系統的な教育方法が必要であると考える。