著者
松永 康生 神田 径 高倉 伸一 小山 崇夫 齋藤 全史郎 小川 康雄 関 香織 鈴木 惇史1 4 木下 雄介 木下 貴裕
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

草津白根山は群馬県と長野県の県境に位置する標高2000mを越える活火山であり、その山頂部は2つの主要な火砕丘で構成されている。そのうち、北部に位置する白根山では、火口湖である湯釜を中心に活発な活動が観測されていることから、これまで地球化学的研究を中心に様々な研究が行われてきた。一方で、白根山の2kmほど南に位置する本白根山では、歴史時代に火山活動が観測されていないこともあり、幾つかの地質学的な研究を除いてほとんど研究されておらず、地下構造や火山熱水系については不明な点が多い。たとえば、本白根山の山麓には草津温泉、万代鉱温泉、万座温泉など湧出量が豊富な温泉が分布し、それらの放熱量は湯釜周辺からのものを大きく上回ることが知られているが、熱の供給源の位置については未だに不明である。また、本白根山は1500年前にマグマ噴火が起こったことが最近の地質学的研究で明らかにされたものの、マグマ溜まりの状態・位置についてはほとんど分かっていない。本白根山における噴火の発生可能性を議論する上でも、本白根山周辺のマグマ熱水系を解明することは重要である。そこで本研究では、白根山南麓を含む本白根山周辺の23点において広帯域MT観測を行い、地下比抵抗構造の推定を試みた。MT法は電磁気探査手法の一つであり、地下のメルトや熱水など高導電物質に敏感であるため、マグマ溜まりや熱水系の観測に適している。MT法データの3次元解析によって得られた最終モデルから、白根山から本白根山の地下1-3kmにかけて低比抵抗体が広がっていることがわかった。この上部に火山性地震の震源が分布することから、この低比抵抗体は流体に富んだ領域であり、ここから流体が浅部へと上昇し、地震を引き起こしていると考えられる。先行研究において、山麓温泉(草津温泉、万代鉱温泉、万座温泉)は、高温火山ガスと天水が混合してできた初生的な温泉水が、分別過程を経ずに湧出したものであると解釈されていること、この低比抵抗体の他に目立った火山性流体の存在領域が見られなかったことから、本研究ではこれを山麓温泉の流体供給源と考え、以下のようなモデルを提案する。(1)低比抵抗体の下深くには何らかの熱源が存在し、上部に熱と流体を供給する。(2)熱の供給を受けた低比抵抗体内の流体は山頂下へと上昇し、火山性地震を発生させる。(3)流体の一部は断層に沿って本白根山の東斜面へと上昇し、表層に変質領域を形成する。(4)この流体と天水が混同してできた温泉水は東斜面の溶岩中を流れ下り、万代鉱温泉、草津温泉として湧出する。一方、本白根山の直下では、マグマの存在を示すような特徴的な低比抵抗体は解析されなかった。しかし、現状では深部構造を詳細に議論できるほど測定・解析精度が十分ではないので、今回の解析結果からは火山直下にマグマ溜まりが存在しないと結論づけることはできない。今後、マグマ熱水系の推定精度を向上させるため、追加の観測やシミュレーションを実施していきたい。
著者
小林 千草 松永 康佑 Jaewoon JUNG 杉田 有治
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.298-300, 2022 (Released:2022-11-25)
参考文献数
9

筋小胞体カルシウムイオンポンプは代表的なP型ATPaseであり,ATP加水分解のエネルギーを用い輸送を担う.著者らは分子動力学法計算を基にした反応経路解析によりカルシウムイオンポンプによる輸送の分子論的なメカニズムを提唱した.膜タンパク質の構造変化とカルシウムイオン輸送の関係について述べる.
著者
中原 ひかり 松永 康佑
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.204-205, 2020-08-22

二次元で描かれたイラストを立体的に動かす技術が発展しており、近年多くのコンテンツで利用されている。本研究では、Live2Dを用いたキャラクターの疑似的な立体表現と、従来の3DCGによる立体表現を重ね、それぞれ異なるカメラワークと立体表現の組み合わせによる映像を制作する。異なる立体表現を同時に提示することで得られる空間認識刺激を利用した映像表現手法について報告を行う
著者
輪湖 建雄 土田 孝 松永 康男 濱本 晃一 岸田 隆夫 深沢 健
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.602, pp.35-52, 1998-09-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
22
被引用文献数
9 6

阪神・淡路大震災で被災した神戸港のケーソン式岸壁の復旧方法として背面固化による方法が考えられた. 特に嵩上げと耐震性向上を必要とする場合, 従来, 港湾・海洋環境での施工実績が乏しかった軽量混合処理土工法を, 港湾施設へ増粘剤等を用いないで水中施工で適用することが要求された. このため, 筆者らは室内試験・現場打設試験を行って課題を抽出し, それらを満たす施工システムを構築して本施工を実施した. その後, 追跡試験によりその妥当性を検証できた. こうした一連の課題解決方策は, 軽量混合処理土工法ばかりでなく, 他の固化処理工法を適用する上で役立つものと期待される.
著者
松永 康佑
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021

樺太アイヌ古式舞踊の記録・継承を目的として、樺太アイヌ協会員の方々の舞踊の収録・モーションキャプチャ計測・撮影を行い、顔、衣装を含めた再現CG映像の制作を行った。過去に携わった伝統舞踊CG映像の経験をふまえつつ、AIベースの顔作成手法を取り入れた本制作のワークフローについて説明する。
著者
星 葵 亀田 光宏 榊 聡子 井上 翔太 小林 紀子 熊谷 雄基 松永 康二郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.A-65_1-A-65_1, 2019

<p>【背景・目的】</p><p>我々は食欲の評価指標であるCNAQを用いることで,食欲低下のある慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者は6ヶ月後に体重が減少し6分間歩行距離が低下することを報告した.一方で,COPD患者は,%標準体重(% ideal body weight:%IBW)が90%未満の場合に栄養障害と判断され,栄養障害が重症化するほど改善が困難なため,体重が正常範囲の時点で栄養障害を予測する必要性がある.本研究では,栄養障害のないCOPD患者の食欲低下が体重と運動耐容能に与える影響を検証した</p><p> </p><p>【方法】</p><p> 対象は,当院呼吸器内科にて外来通院している栄養障害がなく食欲低下しているCOPD患者6名(年齢77.6±3.4歳,FEV1.0%34.7±7.3%,%IBW97.5±3.6%,BMI21.7±0.8,CNAQ25±2)とした.初期評価時より6ヶ月後の体重と%IBWの変化率,及び6分間歩行試験(6MWT)の変化率に対し,Wilcoxon符号付順位和検定を用いて比較した.有意水準5%未満とした.</p><p> </p><p>【結果】</p><p> 初期評価と比較し6ヶ月後の体重が5.4±2.7kg減少,%IBW9.4±4.7%減少した(p<0,05).また,6MWTが66±33m減少した(p<0,05).</p><p> </p><p>【考察】</p><p> COPD患者では,%IBWが90%未満の軽度体重減少の場合は食事指導などの栄養治療の適応となるが,90%以上では正常体重と判断され経過観察となる.しかし,今回の結果より経過観察となる正常体重のCOPD患者が食欲低下を認めた場合,6ヶ月後には栄養障害に移行し運動耐容能が低下することが示唆された.今後は,CNAQを用いて食欲低下を評価し,栄養障害を予測し早期の食事指導を開始し,呼吸リハビリテーションを併用することで治療効果を高めていく必要がある.</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>人を対象とする医学研究に関する倫理指針に基づき,各症例に対して説明と同意を得た.</p>
著者
松永 康史
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学保育学部研究紀要 = BULLETIN OF SCHOOL OF EARLY CHILDFOOD EDUCATION AND CARE OHKAGAKUEN UNIVERSITY (ISSN:13483641)
巻号頁・発行日
no.20, pp.159-174, 2019-11-30

本稿では、武富健治によるマンガ『鈴木先生』の第1,2話を対象とし、教師の「自己理解」を射程に入れた「子ども理解」について考察・教材化し、授業の構想を試みる。考察では、教師自身がこれまでの生活の中で築いてきた自分の見方や考え方があり、そのフィルターを通してしか子どもを理解できていないことを示し、教師の「自己理解」の必要性を記した。そのことを踏まえ、子ども理解と学生自身が自らを見つめ直す機会としての授業を構想した。
著者
松永 康生 神田 径 高倉 伸一 小山 崇夫 小川 康雄 関 香織 鈴木 惇史 齋藤 全史郎
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

草津白根山は長野県と群馬県の境に位置する、標高2000mほどの活火山である。山頂に位置する湯釜は強酸性の湖水を有し、その地下では度々活発な地震活動が観測されている。また、本白根山麓には草津温泉や万代鉱温泉などの湧出量の豊富な源泉が存在することから、山体の地下には熱水系が発達しているものと考えられている。地球化学的な研究によれば山頂部の噴気や湯釜湖水、また山腹の幾つかの温泉は、気液分離した貯留層由来である一方、本白根山麓の草津温泉や万代鉱温泉などは、より初生的なマグマ性流体がこの貯留層を経由せずに天水と希釈され噴出したものと解釈されている(Ohba et al., 2000)。白根山を東西に横断する測線にて行われたAMT法による調査では、深さ3~4kmまでの比抵抗構造が明らかにされ、山体の西側に厚さ最大1kmほどの低比抵抗体が見つかった。これは変質した第三紀火山岩であると解釈されている。地球化学的な調査と合わせるとこの変質帯が不透水層として働くことで、山腹の温泉と山麓の温泉のそれぞれの経路を分け、混合を妨げていると考えられた(Nurhasan et al., 2006)。また、万代鉱周辺で行われたAMT法による調査では、源泉より地下へと広がる低比抵抗体が確認され、こちらは流体の供給路と解釈されている(神田ほか, 2014)。このように源泉ごとの生成過程の違いや、地下浅部の構造はある程度は分かっているものの、より詳細な深部の構造については未だによく分かっていない。そのため今回は表層への熱水の供給経路やその供給源、さらには草津白根山の火山活動全体の駆動源であるマグマ溜りの位置を明らかにすることを目的とした広域帯MT観測を本白根山において行った。調査は山体西側の万座温泉から本白根山頂を経て万代鉱温泉に至る東西約10kmの測線上の計12点において広帯域MT観測を行った。得られたデータのうち三次元性の強いデータを除去し、Ogawa and Uchida(1996)によるコードを用いて2次元インバージョンを行った。このようにして得られた比抵抗構造の特徴として、①山頂から西側の万座温泉地下へと細長く伸びる長さ数キロほどの低比抵抗体②東斜面の表層付近に広がる低比抵抗体③東斜面深部に見られる高比抵抗の大きなブロックの存在があげられる。②については、前述のAMT法観測(Nurhasan et al., 2006)により推定された変質した第三紀火山岩であると考えられる。この低比抵抗体の下部には深部へと続く高比抵抗ブロック(③)が見られる。ただし、観測データのうち特に長周期側で得られたデータは人工ノイズ源の影響を受けている可能性もあり、このような構造が実際に存在するかはよりデータを精査し検討する必要がある。ポスターでは、これまでに得られている結果について発表する。
著者
松永 康佑 小松崎 民樹
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.58-61, 2008-02-01 (Released:2011-10-14)
参考文献数
17

複数の階層的時間スケールにまたがるタンパク質の“複雑”なダイナミックスを特徴づけるために,従来のリヤプノフ指数を有限サイズ領域に拡張した有限サイズリヤプノフ指数という解析手法を導入する。粗視化タンパク質モデルの折れたたみダイナミックスに対して,この手法を応用するとともに,観測された異常拡散現象について議論する。
著者
松永 康志 大田 涼子 坂東 信行 山田 博章 湯浅 宏 金谷 芳雄
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.720-724, 1993-04-15 (Released:2008-03-31)
参考文献数
10
被引用文献数
6 13

(E)-4-[1-[4-[2-(Dimethylamino)ethoxy]phenyl]-2-(4-isopropyl)phenyl]-1-butenyl]phenyl monophosphate (TAT-59) is a new drug for the treatment of breast cancer. Physical and chemical stability of a tablet consisting of TAT-59 powder and a few excipients (Formulated tablet), a tablet consisting of only TAT-59 power (TAT-59 tablet) and TAT-59 powder itself itself was evaluated based on water content, tensile strenght, porosity, the amount of TAT-59 and its hydrolysis product, DP-TAT-59.The water content of Formulated tablet increased with relative humidity (RH), whereas that of TAT-59 tablet and TAT-59 powder scarcely changed. The equilibrium water content of Formulated tablet was much greater than that of the TAT-59 tablet or TAT-59 powder due to adsorbed moisture by the excipients. The tensile strength and porosity of Formulated tablet decreased and increased linearly, respectively, with increasing water content. The degradation rate of TAT-59 decreased in the following order : Formulated tablet>TAT-59 tablet>TAT-59 powder. The relationship between equilibrium water content and degradation rate of the Formulated tablet was determined by the Carstensen equation, in which the interaction order between the durg and water content was 1.9, and the degration of TAT-59 in Formulated tablet was related to water content. Thus, it was found that the degradation of TAT-59 was accelerated by compression and addition of excipients.
著者
松永 康佑
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、仮想身体表現のための計測システムの構築を目指している。従来の計測システムは運動解析と形状計測を別々に行うものであり、同時に記録できるシステムが求められた。また、多点運動解析では、計測点が増加するに従い、編集時間増加の問題があった。これらの問題解決のため、本研究では田の字型紙マーカを用いた、計測システムの構築を行った。この計測システムの有効性は確認できたが、計測精度や認識速度の点において問題が残った。
著者
松永 康
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

前半は,金属的性質を持つ単層アームチェア型ナノチューブを選択成長させるための最適なシース電場をヒュッケル・ポアソン法を用いて定量的に評価した.最適シース電場はチューブ長の3乗に逆比例し,ある長さより長いチューブに対しては外部シース電場制御による選択成長が可能であるとの結論を得た.次に自己磁場と有限長という効果を取り入れるためスラブモデルを設定し,電子の束縛状態の固有関数を近似的に解いた.有限の厚みのシートと平行方向に磁場を配置し,シートの中心面に原子核による正電荷を分布させる.遮蔽効果を考慮し,電場・磁場の両効果を取り込んだ一電子の波動関数は超幾何関数で表すことができ,これらの関数の各領域における接続条件とエネルギー固有値の条件によって決まる新たな束縛状態(ランダウモード)を発見した.具体的にはシートの中心面を挟んで進行方向が異なるモードが存在する波数条件を見いだすことに成功した.そして最近注目されている電気的破壊の実験結果において報告者が指摘している新たなランダウモードが影響を与えているのではないかという一つの証拠を見つけた.これは一定電流値以上を流した大半径多層チューブでは殻が一枚ずつ消失して細ってゆき(thinning),また単層チューブのロープでも同様の破壊(breakdown)が,特に空気中で起こるというものである.そこで報告者が得たモードとこれらの現象について考察し,成果を学術雑誌にまとめた.結論として,カーボンナノチューブという特異な幾何学条件と電磁気条件によって,新たな量子力学的束縛状態が発見された.この新たなランダウモードは,印加電流による自己磁場が強くないと存在しない,マクロな電流には寄与しない,チューブ外側に状態密度が存在するためbreakdownやthinningに強く関与する,ことなどがわかった.このモードが存在するとチューブ周りのガスやチューブ壁上の付着物を活性化させ,その結果炭素壁の結合が破壊されると考えられる.