著者
津川 康雄 小宮 正実
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.92, 2006 (Released:2006-05-18)

1.私大入試と国公立2次試験 大学入試(地理)を取り巻く状況は大変厳しい。それは私立大学や国公立大学(2次試験)の多くが地理歴史科試験科目から地理を除外しており、高校現場も受験指導上、日本史や世界史を受験科目として選択するよう指導していることがその一因と言われている。そして、地理受験生の減少が、これまで地理受験の可能であった大学・学部においても、次々に選択科目から除外されるといった悪循環に陥っている。 たとえば、私立大学(4年制)において地理受験が可能な大学は116大学・378学部である(平成18年度入試)。全国の私立大学総数が670大学、1392学部であり、総数に対しては17.3%、学部総数では27.2%となっている。全体に、私立大学入試における地理受験の状況は厳しいものと言わざるをえない。 国公立大学では北海道、埼玉、筑波、東京、一橋、東京学芸、新潟、福井、愛知教育、名古屋、京都、大阪、和歌山、長崎、札幌市立、高崎経済、首都大学東京、防衛(文部科学省管轄外大学)の18校が2次試験に地理の問題を出題した(平成18年度入試)。地域別特徴として、関東・中部・近畿に偏っており、東北・四国・沖縄地域においては地理で受験可能な大学が1校もない。センター試験において地理A・Bが出題されており、2次試験で地理を出題する必要がないという考えもあろうが、マーク形式では計れない記述式のもつ意味の重要性を鑑みれば、地理のスタッフが多い大学での出題が望まれる。2.大学入試センター試験 大学入試センター試験における地理は地理A・地理Bが設定されている。受験者数は、平成17年度では日本史B(152,072人)、世界史B(93,770人)、地理B(109,805人)であり、日本史に次ぐ受験者数を確保している。それに対して現代社会が平成9年度45,922人であった受験者数が平成17年度に198,746人へと急増している。その理由は地理歴史、公民の2教科が2日に分けて実施されており、歴史と地理を同時選択できないことに起因する。とは言え地理歴史科において高等学校で必修となっている世界史よりも地理の受験者数が多い。センター試験に関しては受験者数の減少を食い止めつつ、私大のセンター試験利用大学への地理選択拡大策等を模索する必要があろう。 このように、受験生にとって地理を選択することは、受験校選択に著しく不利に働くことになる。大学全体からみれば受験生の受験機会を奪うことになり、当該学部の性格にもよるが、ある意味では社会的責任を果たしていないことにもなる。地理受験の機会拡大や地理受験生の増加を促すことが地理学界の発展に直接結びつくとは言い切れないが、日本地理学会が積極的にこの問題に対応することが、高校現場において地理選択を拡大させる原動力になろう。3.地理教育専門委員会の取り組み 地理教育専門委員会では、このような状況に対処するため以下の諸策を実行しつつある。 1 ターゲット大学への要望書の送付 私立大学の中で、受験生への影響力が大きいと思われる有名校や、グローバル化に対応し現代社会の認識が必要となる法学部や経済学部を有する大学に対し、2006年1月に地理入試の実施を求めるための要望書を作成し送付した。すでに関西及び中部の主要私立大学に対しては人文地理学会より要望書が出されていたので、地理教育専門委員会では日本地理教育学会や高校の教員で構成される全国地理教育研究会と連名で関東の主要私立大学に送付した。 2 センター試験実施後の問題・解答の新聞掲載依頼 センター試験実施後、新聞紙上で地歴の問題と解答が掲載される際、地理の問題が一部省略されることがある。そこで、学会として主要新聞社に対し、日本史や世界史と同等の掲載を求める申し入れを2005年から行ってきた。 3 ネットワークの強化 関連地理学会および各種教育機関、地理関連業者間の人的ネットワークの構築を図り、情報交換・情報発信の機会を増やしつつある。とくに、人文地理学会に設けられた地理教育部会とは連携を図りたい。今後は、各都道府県の地理担当教員や研究会を通じて、地理受験の機会増加を各大学に促してもらえるよう学会のサポート体制を整えたい。いずれにしても、大学入試おける地理受験者の増加は地理教育の活性化に結びつくものである。大学入試地理の拡大策を地理教育活性化の突破口の一つと位置づけ、教育現場、関連業者(出版社等)、学会が一体となって取り組む必要が求められよう。これまで、ややもすれば傍観・静観することの多かった学会だが、地理の裾野を拡大するために、あらゆる機会を捉えて活動する必要に迫られている。地理教育専門委員会では、各種アクションプランを実行する中で広く活動を展開していきたい。
著者
日野 正輝 富田 和暁 伊東 理 西原 純 村山 祐司 津川 康雄 山崎 健 伊藤 悟 藤井 正 松田 隆典 根田 克彦 千葉 昭彦 寺谷 亮司 山下 宗利 由井 義通 石丸 哲史 香川 貴志 大塚 俊幸 古賀 慎二 豊田 哲也 橋本 雄一 松井 圭介 山田 浩久 山下 博樹 藤塚 吉浩 山下 潤 芳賀 博文 杜 国慶 須田 昌弥 朴 チョン玄 堤 純 伊藤 健司 宮澤 仁 兼子 純 土屋 純 磯田 弦 山神 達也 稲垣 稜 小原 直人 矢部 直人 久保 倫子 小泉 諒 阿部 隆 阿部 和俊 谷 謙二
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1990年代後半が日本の都市化において時代を画する時期と位置づけられる。これを「ポスト成長都市」の到来と捉えて、持続可能な都市空間の形成に向けた都市地理学の課題を検討した。その結果、 大都市圏における人口の都心回帰、通勤圏の縮小、ライフサイクルからライフスタイルに対応した居住地移動へのシフト、空き家の増大と都心周辺部でのジェントリフィケーションの併進、中心市街地における住環境整備の在り方、市町村合併と地域自治の在り方、今後の都市研究の方向性などが取組むべき課題として特定された。