著者
大塚 俊幸
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.202-227, 2005-04-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
24
被引用文献数
4 3

本稿では,愛知県豊橋市において実施した各種アンケート調査やマンション供給業者への聞取り調査の結果を分析し,居住者側と供給者側の両面から中規模都市における中心市街地居住の実態を明らかにした.豊橋市では,戸建志向が強く,これまでマンション供給量が少なかった.しかし,2001年頃から中心市街地およびその周辺部でマンション供給が活発化している.その背景には,マンション供給業者の経営戦略,建設用地の供給,地価の下落と補助金の投入といった要因がある.一方,中心市街地居住を志向する世帯は少ないながらも存在し,受皿となるマンションの供給次第では,豊橋市のような中規模都市においても中心市街地居住が顕在化するものと考えられる.中心市街地の居住世帯は,居住地選好に際して居住環境の「快適性」よりも都市的利便施設への「近接性」を重視している.しかし,中心市街地居住が顕在化するためには,住宅の広さや駐車場の完備といった住宅自体の「居住性」の高さが不可欠である.
著者
大塚 俊幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.2, 2003

_I_ 研究目的中心商業地縁辺部は、商業地と住宅地の双方を背後に擁することにより、多様な都市機能が複合した生活空間として再生する可能性を秘めている。従来、都市地理学では都市の内部構造について都市機能の地域的分化の観点から論じられることが多く、商業機能と居住機能が複合した生活空間という観点から中心商業地縁辺部について論じた研究は少ない。そこで本研究では、中心商業地縁辺部に焦点をあて、マンションの持つ多様な機能に着目し、店舗併用マンションの立地要因と周辺地域へのインパクトを明らかにするとともに、いかなる地域的要因が絡み合って中心商業地縁辺部の再生に結びついていくのか、そのプロセスを明らかにした。_II_ 対象地区本研究で対象とする四日市市諏訪新道地区(L=716m、会員数107店舗)は、かつては商業の中心であり、現在でも祭りや「市」の舞台にもなっているが、環境変化に伴い住宅地としての色彩が強まっている中心商業地と住宅地との境界地域に位置する地区である。_III_ 研究方法 マンション居住世帯および地区内商業者へのアンケート調査、新規出店者およびマンション供給業者等への聞き取り調査を実施し、その結果をもとに考察した。_IV_ 結果と考察(1)マンション立地と居住世帯当地区では1991年以降、現在建設中のものも含めて6棟の分譲マンションが建設されている。当地区は、本来民間によるマンション建設がなされにくい地域であるにもかかわらずマンション建設が行われた背景には、行政の積極的な誘導による再開発事業の実施がある。6棟中4棟が再開発事業によるものであるが、これらは当初商業系再開発として計画されていたが、厳しい経済情勢のもと計画が変更され、店舗併用マンションという形態になった。マンション居住世帯の家族構成は、30歳代_から_40歳代の夫婦のみおよび夫婦と子ども世帯が全体の約半数を占め、前住地は市内が約3分の2を占めている。居住地選定に際しては、価格、公共交通への依存度、都市的利便性、親との近接性、都心としてのまちのイメージなどの諸要素が絡み合っている。(2)マンション立地が商店街に与える影響マンション立地は個店経営にはすぐには結びつくとは限らないが、街並みが一新されたことにより商店街のイメージアップにつながったこと、そして1階部分に店舗空間が供給されたことにより新規店舗の立地を促す引き金になり、かつての中心商業地であるという街のイメージも作用して、商店街全体の機能集積の拡大に寄与している。具体的には、マンション1階への入居以外にも、商店街の空き店舗へ10店舗の新規出店があった。それらは従来の物販店ではなく、こだわりの店、ショールーム機能を付加した店、実験的性格を有した店、飲食店、サービス業などである。新規店舗の立地要因は、アクセス性、周辺環境、場所性、出店コスト、建物の新しさ、路面店であること、家主との関係、地域コミュニティの存在、マンション居住者への期待などであり、経営主体や経営方針により重視する要因が異なる。(3)中心商業地縁辺部の再生過程中心商業地のコンパクト化により住宅地化を余儀なくされた中心商業地縁辺部は、商業の核心部が駅前に移る以前の中心であり、都市のシンボル的空間であった。そのため、行政もその活性化に向けて積極的に取り組むこととなり、再開発事業により店舗併用マンションの供給を可能にした。それにより商業空間の機能更新を果たすとともに、地区の居住世帯構造に大きな変化をもたらした。当地区は、再開発事業が実施されなければ、居住機能に侵食される地区である。しかし、かつての商業中心としてのポテンシャルが作用し、低層部への商業機能の立地を促すこととなった。このように、中心商業地縁辺部は商業機能と居住機能の双方の影響を受け、それらの機能が複合した生活空間としての再生が期待できる地域である。
著者
日野 正輝 富田 和暁 伊東 理 西原 純 村山 祐司 津川 康雄 山崎 健 伊藤 悟 藤井 正 松田 隆典 根田 克彦 千葉 昭彦 寺谷 亮司 山下 宗利 由井 義通 石丸 哲史 香川 貴志 大塚 俊幸 古賀 慎二 豊田 哲也 橋本 雄一 松井 圭介 山田 浩久 山下 博樹 藤塚 吉浩 山下 潤 芳賀 博文 杜 国慶 須田 昌弥 朴 チョン玄 堤 純 伊藤 健司 宮澤 仁 兼子 純 土屋 純 磯田 弦 山神 達也 稲垣 稜 小原 直人 矢部 直人 久保 倫子 小泉 諒 阿部 隆 阿部 和俊 谷 謙二
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1990年代後半が日本の都市化において時代を画する時期と位置づけられる。これを「ポスト成長都市」の到来と捉えて、持続可能な都市空間の形成に向けた都市地理学の課題を検討した。その結果、 大都市圏における人口の都心回帰、通勤圏の縮小、ライフサイクルからライフスタイルに対応した居住地移動へのシフト、空き家の増大と都心周辺部でのジェントリフィケーションの併進、中心市街地における住環境整備の在り方、市町村合併と地域自治の在り方、今後の都市研究の方向性などが取組むべき課題として特定された。